チンギス・ハン軍がサマルカンドに迫っている。サマルカンド軍は迎え撃ったが全滅されられた。
これを受けてシャリマー姫は全住民を安全なところに避難させて、自分ひとりでチンギス・ハン軍と対決しようと決心する。残ったのはほんの少数の部下。
製作年:1951、監督:George Sherman、脚本:George Drayson Adams、原作:The Golden Horde(Harold Lamb)
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
シャリマー姫(アン・ブライス) サマルカンドの姫
リリー(ペギー・キャッスル) シャリマー姫の侍女
トルガ(Donald Randolph) サマルカンドの宰相
ナザ(?)サマルカンドの占星術師
ハラット隊長 (?) サマルカンド軍の生き残り
ガイ卿(デビッド・ファラー) 十字軍のリーダー
ギル(リチャード・イーガン) ガイ卿の部下
フライヤー・ジョン(Poodles Hanneford) ガイ卿の部下
チンギス・ハン(マーヴィン・ミラー) タタール人
ジュチ(ヘンリー・ブランドン) 息子
トゥグルク(ハワード・ペトリー) ハンの部下、カルムイク人
ラーヴェン(ジョージ・マクレディ) ハンの部下、シャーマン
◆ 補足・感想
サマルカンドのシャリマー姫がチンギス・ハン軍と対決するのだが「どうせガイ卿が大活躍して相手を倒すのだろう」と思っていたのだが、そうではない。「シャリマー姫がほぼ自力でチンギス・ハン軍と対決する」というストーリーになっている。これがグッド。
全体としてはコメディではないのだが、個々の場面はわりとコメディっぽい作りになっている。ガイ卿が張り切ってシャリマー姫を助けようとするのだが、シャリマー姫は「私がちゃんと考えてるんだから、邪魔しないで」という雰囲気。
預言の偽造。シャリマー姫は敵に対して「このような預言がある」と言って惑わせる。実はこの預言は偽造されたもの。彼女は占星術師のナザに対して「こんな預言を作って」と指示する。ナザは「預言はそんなものではない」とボヤキながら預言を作る。
リリーとギルはすぐにラヴラヴ状態になってウキウキ。シャリマー姫やガイ卿の言いつけをあまり真面目に聞いてなかったりする。
サマルカンドの宮殿には秘密の領域があり、秘密のドアを通して行き来できる。最後に、ドアの位置を見破られる。
最後のところでシャリマー姫はトゥグルクに毒を入れた飲み物を渡すが、トゥグルクは飲まない。そして十字軍との戦いで死亡する。もしトゥグルクが毒を飲み死亡するストーリーにすれば、全編を通して、ガイ卿=十字軍の存在意義はなくなるので、これで良いだろう。
サマルカンドまで十字軍が来て、さらにイスラムの姫を助けるなんてことはありえないのだが、映画はフィクションなので許す。サマルカンドは地図で見るとカスピ海の東1000キロほど。
預言と予言。これには明確な違いがある。預言とは「神から預かった言葉」で、宗教者が神から言葉を預かって、神の代わりに人々に伝えるもの。
一方、予言は単に「××が起きる」と言うもの。それには宗教的な意味はない。
本作の字幕は「預言」となっている。ただのこの違いを踏まえたものではない。
■ あらすじ
◆ チンギス・ハン軍が来た
チンギス・ハン軍がサマルカンドに近づいて来た。チンギス・ハンは、自分の息子ジュチ、カルムイク人の部下トゥグルクにサマルカンド征伐の命令を下した。そして二人への監視役としてシャーマンをつけた。チンギス・ハンが一番信頼するのはシャーマンである。注、ジュチとトゥグルクは別々に配下の部隊を持っている。
チンギス・ハンが率いる本隊は、元の位置のまま。
サマルカンド軍は迎え撃ったが全滅させられた。注、この場面は描かれていない。
イングランドから派遣された十字軍はサマルカンドを目指していた。途中でサマルカンド軍の残党ハラット隊長と出会った。注、チンギス・ハン軍は東から、十字軍は西から近づいているので、ちょいとおかしいのでは?
◆ シャリマー姫は住民を撤退させた
サマルカンドの宮殿に十字軍とハラット隊長が到着した。
宮殿の入り口には「サマルカンドを破壊しようとする者は、自身が破壊される/HE WHO COMES TO DESTROY SAMARKAND SHALL HIMSELF BE DESTROYED」という預言が彫ってある。注、英語だけど(笑)。
自軍敗退の報を受けたシャリマー姫は覚悟を決めた。全住民を安全なところに撤退させて、自分の力だけでチンギス・ハン軍と対決する。残るのはリリーなど侍女たち、宰相のトルガ、占星術師のナザ。
ガイ卿は協力を申し出たが、シャリマー姫は無視した。
シャリマー姫の戦略は「自分の魅力を利用して相手側のリーダーを篭絡する」と言うものである。彼女の美貌を考えれば、それなりの成功確率があるだろう。
シャリマー姫はガイ卿に対して「十字軍はでていくように」と申し渡した。
◆ ジュチ、トゥグルクの部隊が到着した。
ジュチ、トゥグルクの部隊が宮殿に到着した。
ナザが来て預言を喋った。「城の門が開いており姫が残っている。あなた方を待っていたのです。いつの日か東の国から偉大な征服者が現れるという預言があります。そして姫はその征服者と結婚する。サマルカンドだけではなく、世界を征服する」。注、もちろんのこの預言は単なる偽造である。
シャーマンは「これは罠だ」と言う。当然の疑問である。現れたシャリマー姫は宮殿を案内して罠ではないことを見せた。
その後、豪華な食事を出して接待した。
だがしかしシャリマー姫には誤算が発生した。軍のリーダーは一人であると思っていたからである。
シャリマー姫は困ったが、聡明な彼女は打開策を思いついた。ジュチとトゥグルクは仲が良くないようである。これを利用することにした。
それともう一つ困ったこと。またガイ卿配下の十字軍が現れた。ガイ卿はジュチ、トゥグルクと話して「西方に踏み込むな」と警告した。後でシャリマー姫はガイ卿に注意した。今度は十字軍は本当に宮殿の外に出た。
ガイ卿が立ち去る時に、突然シャリマー姫にキスをする。彼女は驚く。リリーは面白がって笑った。補足、この時点ですでにギルとリリーはラヴラヴ。
狙い通りにジュチ、トゥグルクはシャリマー姫をめぐって対立関係となる。ここでシャーマンは「ハンに判断してもらう」と言って二人を止める。
二人の使いが宮殿から出発した。
しかしこの使いは二人とも途中で十字軍に殺された。
◆ チンギス・ハンは使いを出す
さて報告が来ないことに疑問を持ったチンギス・ハンは、自分から使いを出すことに決めた。伝えるのは「町を襲う」。ただこれだけである。二人の使いが出発した。
今度も十字軍は使いの二人を襲った。一人は撃ち取ったが、もう一人は背中に矢が突き立ったまま走り去った。
この使いは宮殿に到着してシャーマンに会った。ここでシャーマンは自分が出した使いが殺されたことを把握した。使いは指示通りに「町を襲う」とだけ伝言をして息絶えた。
シャーマンはジュチとトゥグルクにハンの言葉を伝えた。「町を襲う」。そしてもう一つ「あの女(シャリマー姫)を殺せ」。後半はハンの指示ではなく、自分の考えだが、ハンの指示であるかのように二人に伝えた。二人は「姫はどちらのものか?」と聞いていたのだが、シャーマンはそれを無視した。
シャーマンは自らナイフを持ってシャリマー姫を探したが見つからない。注、秘密領域にいるので。
◆ シャリマー姫とガイ卿が会う
シャリマー姫とリリーは宮殿の外にでてガイ卿に会いに行く。
十字軍は避難しているサマルカンドの住民を守り、生き残ったサマルカンド軍の訓練をしている。
夜になり、宮殿を遠くに眺めながら二人は話した。シャリマー姫は国を作った曾祖父と曾祖母の話をした。
ガイ卿もいろいろ話して、二人はラヴラヴの感じ。「あなたは信用できる」。
ガイ卿は「ここの方が安全だ」と言うが、しかしシャリマー姫はリリーと宮殿に戻った。自分で解決するつもりである。
◆ トゥグルクを煽る
シャリマー姫はトゥグルクに会った。ジュチに対する敵意を煽った。
「私を自分のものにしたいなら恐れを捨てなさい、チンギス・ハンに対する恐れも捨てなさい」と挑発する。
しかしさすがのトゥグルクもハンに対する反抗はできない。さらにシャリマー姫は煽り続けた。
「予言を覚えている?あなたは私とともに世界を支配する。それとも単にハンの奴隷なの?」
「チンギス・ハンの前には誰でも滅びる」と言うが、さらに「預言ではサマルカンドは守られる、チンギス・ハンは城の前で滅びる」。
ここまでシャリマー姫に煽られてトゥグルクはジュチを攻撃した。激しい戦いが行われた。シャーマンは「罠だ~っ!」と叫んで止めたが、シャーマンも切られた。
この戦いはトゥグルクが勝ち、ジュチは死亡した。
トゥグルクは部下にさらにチンギス・ハンとの闘いの準備を指示した。
トゥグルクはシャリマー姫に結婚を迫った。彼女は「結婚は三日目の満月の夜。それが預言」という。そのように言いながらトゥグルクの飲み物に密かに毒を入れた。
◆ 十字軍とトゥグルクの戦い
最後の段階に突入したということで宰相のトルガや侍女は秘密領域から宮殿の外に逃れることにする。
しかし秘密の扉をトゥグルクに知られてしまった。トゥグルクの軍は、秘密領域になだれ込んだ。侍女たちは逃げまどった。注、トゥグルクは毒を飲んでいない。
しかしここで十字軍が駆けつけた。十字軍とトゥグルク軍の激しい戦いが繰り広げられた。トゥグルク軍は敗北した。
シャーマンはまだ生きていて、この状況を見届けた。
◆ チンギス・ハン軍は撤退した
ハンの軍隊が到着した。その前に瀕死のシャーマンが現れた。
「ここは呪われています。邪悪な霊が支配しています。撤退してください」。
ハンはジュチの死体を片付けさせた後、全軍に撤退命令を下した。
それを見てガイ卿とシャリマー姫はキスをした。ガイ卿は当地に残るつもりである。
■ 出演作
◆ アン・ブライス
(1951)サマルカンドのシャリマー姫/The Golden Horde
(1951)丘の上の雷鳴/Thunder on the Hill
(1951)私はあなたを忘れない/二つの世界に住む男/The House in the Square/I'll Never Forget You/Man of Two Worlds
(1945)ミルドレッド・ピアース:母と娘の戦い/Mildred Pierce
(1950)われら自身のもの/Our Very Own
(1951)歌劇王エンリコ・カルーソ/The Great Caruso
(1948)ピーボディ氏と人魚/Mr. Peabody and the Mermaid
(1957)ヘレン・モーガン物語/The Helen Morgan Story
(1957)脅迫/Slander
(1955)公爵の陰謀/The King's Thief
(1954)野生の女ローズマリー/Rose Marie
(1953)兄弟はみな勇敢だった/All the Brothers Were Valiant
◆ ペギー・キャッスル
(1950)海の無法者/海賊の女/BUCCANEER'S GIRL
(1953)ギャングを狙う男/99 River Street
(1957)死からの帰還/死人の憑依/Back from the Dead
(1951)サマルカンドのシャリマー姫/The Golden Horde
(1955)二挺拳銃の女/Two-Gun Lady
(1957)地獄の十字路/Hell's Crossroads