江之浦測候所の続きです。

 

屋外型の”美術館”ともいえる江之浦測候所。

様々な時代が生み出してきた美がそこかしこに埋め込まれ、

その数は50以上。

 

全体の風景を愛でるだけでも十分だけど、

それぞれの遺物には来歴があり、それらを意識しながら眺めないと

漠然とした印象に終わってしまいそう、、

受付で頂いた小冊子に書かれた個々の説明を読み

歴史的広がりを認識することで、対象物に厚みが出ます。

 

歴史的広がり、、、一番古いもので今から4億年以上前!

様々な時代がクロスオーバーします、飛鳥時代、天平時代あり、明治時代あり。

フランス産のもの、イギリス産のものも。

 

ただの石っころ、と素通りしそうになって、慌てて小冊子に目を落とし、

”xx時代のxxにあったもの”、と知り、にわかに色めき立ったりして。

 

ただ、ちょっとリスキーなのは、毎回対象物の前で冊子で説明書きを読んで、、

を繰り返していると、鑑賞というよりそれは単なる”事実確認”。

事実を照合して納得する、って美術鑑賞とはちょっと違うかも。

 

どうやって鑑賞したらいいのだろう、、、と思い、出した結論は:

 

・地図を見ながら見たいものがどこにあるのか探す。ちょっと宝探しみたいでワクワク。

・見つけたら冊子でそれぞれの来歴・意味を確認する。

・でも、それに加えてなにかしら新たな発見をすべく対象物と対峙し、

 自分なりの視点を加えていく、、、

そんな鑑賞方法・ペースでまわっていったら、ワクワクがとまらなくなりました。

 

例えば受付を済ませて真っ先にたどり着く待合棟。

もうこの時点で作品”展示”は始まっています。

 

説明には:

「・・・・大テーブルには樹齢一千年を超える屋久杉が使われている。

その木目と年輪には荒々しく過酷だった過去の自然の痕跡が見出せる。」

 

そうそうこれ、来る前に予習をしたときにも大きな樹齢一千年以上の屋久杉テーブルがある、

という情報を目にしていました。

 

次にじっくり見てみます。

独特の木目と孔、存在感があるなぁ。

一枚板っぽいけどよく見るとパッチワークのようになっている部分もあり、もろい部分を

補強でもしたのかしら?

 


 

さらに、説明書には続きがありましたー

 

テーブルの片側を支えるのは、高野山の末寺、大観寺にあった石製の水鉢。」

 

ほんとうだ、水鉢だ。上に置かれている、というよりなんか埋め込まれているみたい。

テーブルの片側を支えるってどういう意味?

 

 

 

違う角度から見て納得。なんと、こんなふうに板を貫いていたのか。

文章にあるとおり、本当に支えています。

高野山と屋久島のランデブー!

 

 

 

そして杉本さんがコーディネートしたであろう椅子。

椅子の説明はないけれど、包み込むような背もたれがおしゃれ。

右から左にかけて、背もたれが傾斜して低くなっていきます。

 

個性の強い屋久杉を邪魔することなく置かれた椅子。

一見おとなし目、だけどよく見ると背もたれの斜めのラインが

さりげなく自己主張していました。

 

 

 

ネット上に飛び交う「テーブル=屋久杉」の情報にばかり気を取られていたけど、

テーブルの足としての水鉢や、ラインのきれいな椅子など、いろいろ掘り下げる余地があります。

 

出だしの部分だけでもこんなにいろいろ見どころがあって、

これは見るほどに味が出るタイプの場所みたい。

 

同じく待合棟の壁にはこんなものが。

 

 

 

作品タグをつけないのがこの測候所の基本ですが、これにだけはついていました。

いわば番外編のように置かれていたせいかもしれません。

大河ドラマの題字を杉本さんが担ったという話、ブログにも以前書いたっけ。

 

 

 

 

そして待合棟内洗面所の脇にも見るべきものが。

左は「江戸時代の道標 右こうや左よしの至」。

高野街道と吉野街道の分岐点にあった道しるべ。

 

さらに何の説明もなく突如杉本さんの写真作品が。

有名な「劇場」シリーズです。

 

 

 

さて、話は前後しますが、根府川駅発バスが到着したのがこちら↓

江之浦測候所参道、という石碑があります。

もともとこの場所は、”甘橘山の榊の森を切り開いて整備された”(冊子より)。

 

 

 

参道入口付近にあるのは「不許葷酒」の石柱。

”匂いの強いものと酒は入山を許されない”という意味の石柱なのですがーー

 

 

 

冊子には

「しかし甘橘山では酒の字は半分埋まっている」と、敢えて書かれており、

これはわざとやったの?、来る前に飲酒した人がいてもOKよ、という印?

などと疑問がふつふつ。

 

 

この参道には、朝鮮灯篭と人頭石彫(18世紀英国)もあるようで。

 

 

 

人頭ってこれかなぁ、、他にそれっぽいものもなく、

とりあえずこれということにするか。

 

 

 

下は赤沢蜂巣観音。

江之浦の集落では、室町期の観音像が祀られていたものの

平成21年の放火で焼失。

復活のしるしに再建したものがこちらです。

受付より手前にあります。

 

 

 

中には円空仏がありました。

鑿の跡だけでなく、一部朽ちているのか、切込みが多数。

説明を読むと、「尊顔に蜂が巣を作った」と。

冊子の結びが素敵:「人蜂合作の仏様だ」。

こちらの名称「赤沢蜂巣観音」の意味がわかりました。

 

 

 

さて、ここまで書いて、ここでいったん切ります。

まだ待合棟から一歩も外に出ていませんが、今日はこれにておしまい。

 

 

 

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