2020年7月、日経新聞の連載「私の履歴書」で杉本博司氏の半生を概観しました。

この方は写真、絵画といった枠を超えて縦横無尽に活躍し、

まったく分類不可なアーティストさんだなぁと痛感したのを覚えています。

 

その1カ月間の連載の終盤に力説されていたのが「小田原文化財団 江之浦測候所」でした。
小田原そばの根府川に広がるランドスケープアートです。

 

”測候所”という堅い名前のせいもあり、ここが一体どういう場所なのか

その時はつかみづらかったのですが、NHK「日曜美術館」で特集が組まれたりして

徐々に情報が入ってくる中、

”様々な歴史が出会う美の理想郷”かな、と漠然と感じていました。

 

当時「私の履歴書」で氏が述べていたことをまとめると:

・自分自身、作家活動の集大成を考える年齢に達したと感じている;

・まとまった土地に現代・古代美術を見せる空間、演劇空間を置く構想ができた;

・そこで提示するものには歴史的意味を持たせる。

・古代人は自分の場を天空のなかで確認してきた。それをアートの起源とみなし、生命再生・折り返し・通過点に関わる冬至・夏至・春分・秋分を観測する作業に立ち返りたい;

・そこにかすかな未来へと通じる道が開いていると思うから。

 

 

そういう氏の思いがびっしり詰まっている場所、それが江之浦測候所です。

このほどその江之浦測候所を初体験。

様々な歴史的遺物がちりばめられたこの広大な敷地全体がひとつの大きなアート作品であり、

ふらっと散策するだけで十分楽しめます。

 

でも、お勧めは、入口で頂く解説書をもとに、ひとつひとつ丹念に見ていくこと。

杉本さんの溢れる思いを感じることができるので。

知らなければさっさと通り過ぎてしまうような敷石にも意味が込められていて、

発見することで心憎いまでの杉本氏のこだわりが、じんわり心に沁みてきます。

 

今日のところはざっとしたランドスケープを以下に貼付。

これから少し時間をかけて、歴史と美の交差点「江之浦測候所」について

感想を述べて行きたいと思います。

 

 

入口の石柱には「江之浦測候所」の文字が彫られています。

 

側面に、杉本さんの名前を発見。

 

 

絶妙な配置。個々の石にも意味が込められてます。その辺の話はまた別途。

 

 

かねがね行きたいと思っていた海に向かって開けた競技場、イタリアのタオルミーナを

想起させる一画も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高低差を利用したダイナミックで巨大なアート空間です。

 

 

個人的に、再びホキ美術館を思い出してしまう造形。


 

 

 

 

 

 

 

 

極上のテイストのアート空間なのでした。つづく・・