吉良上野介(ムロツヨシ)には,家督を継げない吉良孝証(ムロツヨシ二役)という弟がおり,兄に金の無心を断られると出家したとは言いながら浮浪者のような生活をしていた。

 

 

 そんなとき,例の松の廊下の事件が起き,吉良上野介は浅野内匠頭(尾上右近)に切りつけられる。

 

 

 浅野内匠頭は切腹となったが,実は吉良上野介も切りつけられた傷が原因で亡くなってしまう。

 

 

 吉良家も当主が逃げ傷で亡くなったとなると不名誉であり,お家取り潰しの危機に陥っていた。

 吉良家の家臣斎藤宮内(林遣都)が思い出したのは,上野介とそっくりな弟孝証のことだった。

 

 

 彼を探し出し,説き伏せた上で上野介の身代わりにすることに成功する。

 

 

 彼は兄と違って慈悲深く,家臣や領民たちに優しく振る舞った。

 

 

 家臣たちは最初は訝ったが,上野介は実は良い人だったと信じるようになる。

 

 

 ただ,孝証の放蕩的であった性格は変わらず,吉良家の財産で吉原通いもするようになった。

 

 

 そこで孝証は大石内蔵助(永山瑛太)と知り合う。

 互いに正体を知らずに意気投合したふたりだったが,やがてそれぞれの事情に気づくようになる。

 

 

 孝証は内蔵助に自分の首を差し出すと言い,内蔵助もすぐに後を追うと誓う。

 

 

 それは,赤穂藩も吉良家も柳沢吉保(柄本明)の策略で窮地に陥っており,それぞれの家臣や領民を救うためには,そうするしかないと考えられたためだった。

 

 

 だが,討ち入り当日,いくつかのアクシデントによって,内蔵助はすんなり打たれるはずの孝証になかなか出会えなくなる。

 

 

 ようやく納戸で出会えた内蔵助は,予定通り孝証の首を打とうとするが,刀が天井に引っかかり,大量の塩とともに上野介の塩漬死体が屋根裏から落ちてくる。

 孝証が身代わりを務める以上,上野介の死体をどこかに隠さなければならなかったが,宮内は赤穂の塩で上野介を塩漬にして納戸の天井裏に隠していたのだった。

 そうなれば孝証の首は必要がない。

 

 内蔵助は塩漬の上野介の首を取って勝ちどきを上げる。

 だが,上野介の首を取られまいとする吉良家の家臣たちと首の取り合いになり,ラグビーさながらの大騒動になる。

 結局,赤穂浪士たちは浅野内匠頭の墓前に上野介の首を供えることができ,史実通り全員切腹になる。

 

 孝証は内蔵助の死を惜しみながらも身代わり時代に仲良くなった女中の桔梗(川口春奈)と何処かに去る。

 

 

 桔梗は,上野介が別人になっていたことには気づいていた。

 

 

 

 赤穂浪士の話をいくつかの史実の解釈を変えて,上野介が実は身代わりだったかも,と想定したコメディ。

 

 とは言え,松の廊下も最後に首を取られたのも身代わりではなく実際の上野介という設定なので歴史の大幅改編という感じでもない。

 

 生首ラグビーのくだりは,ちょっとハメを外しすぎな気もするけど,原作者が脚本も書いているので,そもそもがそういうノリなのかもしれない。

 

 気軽に楽しめる娯楽作。

 

 

 

 杉元佐一(山崎賢人)は日露戦争の二百三高地で鬼神のごとき戦いぶりを見せ,不死身の杉元と呼ばれるようになった。

 

 

 出征前,杉元は故郷で梅子(高畑充希)と恋仲だったが,杉元の家で結核が出てしまい家は焼かれ,梅子とも結婚できなくなった。

 杉元の幼なじみである剣持寅次(泉澤祐希)は元々梅子に片思いをしていたが,杉元が彼女と結婚できなくなったことで,梅子と結婚し子どももできた。

 しかし梅子は目の病気が悪化し,その治療費はとても寅次が支払える額ではなかった。

 

 そんな状況で杉元と寅次は戦場で再会したが,寅次が自分を庇って亡くなってしまう。

 そのため,戦後の杉元は鬱々として暮らしていたが,それでも寅次に墓を建ててやったり,梅子や子どものために少しでも金を工面したいと思い,北海道に残って砂金を取っていた。

 

 そんなとき杉元は,同じ砂金取りの後藤竹千代(マキタスポーツ)から,アイヌが集めた砂金から作られた莫大な額の金塊の話を聞く。

 のっぺら坊と呼ばれる男がアイヌを皆殺してその金塊を強奪したが,その男は獄中でも決して金塊のありかを白状しなかった。そして24人の囚人たちにそのありかの地図を刺青にして入れ,全員の入れ墨が揃わないとその場所が分からないようにしたという。

 その囚人たちが,その後,脱獄したという話を聞くが,杉元は酔っぱらいの与太話だと信じなかった。

 

 

 しかし酔いが覚めた竹千代は,話しすぎたと言って杉元を殺そうとする。

 杉元を仕留め損ねた竹千代は森に逃げるが,熊に殺される。

 杉元は竹千代の死体に地図の刺青が彫られているのを見て金塊の話が真実だと知る。

 

 その後杉元も熊に襲われるが,アイヌの少女・アシㇼパ(山田杏奈)に助けられる。

 

 

 杉元がアシㇼパに金塊の話を打ち明けると彼女は,自身の父親(井浦新)は殺されたアイヌのひとりだったと語り,その仇討のために杉元と行動をともにすることにする。

 

 一方,大日本帝国陸軍第七師団の鶴見篤四郎中尉(玉木宏)と戊辰戦争で戦死したとされていた新選組副長・土方歳三(舘ひろし)も,それぞれ金塊の行方を追っていた。

 

 

 大日本帝国陸軍の目的は,陸軍の軍資金であったが,鶴見自身は別の考えを持っており,蝦夷共和国復活を目指す土方と同様に新国家の樹立をもくろんでいた。

 

 

 金塊の正確な額ははっきりせず,いろいろな想像がなされていたが,実際には建国が可能なほどの莫大な額らしいという話にも信憑性があった。

 

 杉元とアシㇼパは,刺青人皮の手がかりを探すため小樽で奇妙な刺青について聞いて回る。

 杉元とアシㇼパが森に帰るときふたりの噂を聞いた刺青の囚人笠原勘次郎(島津健太郎)と白石由竹(矢本悠馬)が後をつけてきたが,彼らはアシㇼパの仕掛けたリスを獲る罠にかかる。

 

 杉元とアシㇼパは捉えた囚人の皮を剥ぐのではなく,刺青を紙に写していたが,笠原は第七師団の尾形百之助(眞栄田郷敦)のライフル射撃で死ぬ。

 

 

 杉元は尾形を負傷させ川岸に転落させる。

 

 

 一方,木に縛っていた白石は,口の中に隠し持っていたカミソリで縄を切り逃走する。

 

 

 追いかけた杉元と揉み合いになりふたりとも極寒の川に落ちる。

 ふたりは命を奪うほどの寒さに直面するが,白石は協力する代わりに見逃すという取引を提案し,ふたりは白石が持っていた銃弾で火を起こして一命を取り留める。

 その後,白石はアシㇼパに刺青を写させ,囚人を脱獄させた首謀者土方歳三の話をして姿を消す。

 

 

 谷垣(大谷亮平)ら第七師団の軍人4人が,尾形を負傷させた犯人を追って杉元の前に現れるが,杉元は谷垣以外の3人を熊の巣穴におびき寄せて撃退する。

 

 

 杉元とアシㇼパはコタン(村)に帰り,杉元はコタンで暮らすアシㇼパの祖母や大叔父と話したのち眠るアシㇼパを置いて街へ去る。

 

 

 

 その後,杉元は鶴見中尉に捕らえられ,部下の二階堂浩平・洋平(栁俊太郎)に殺害されかけるが,アシㇼパと白石に助けられて兵舎から脱出することに成功する。

 

 

 

 

人気漫画原作の実写化。

 

 こういうのは,だいたい原作ファンから色々と言われるものだが,この映画に関しては,ほとんどが再現度の高さに対する賞賛であり,実際にも素晴らしい。

 特にアシㇼパに山田杏奈を持ってきたところで,勝ちは見えていた気がする。

 白石の矢本悠馬もドンピシャ。

 

 これも長編の序盤だけであり,そういう意味では「何じゃこりゃ」と言いたくなった沈黙の艦隊と同じなのだが,この映画は描かれている部分だけでも十分に面白い。

 そうなると続編が気になるところだが,こちらはネトフリになる。

 ネトフリは契約しているので,自分的にはオッケー。

 

 山崎賢人は,キングダムもあるのにこんな大作にいくつも出て大丈夫か?と思っていたら,キングダムは撮影済の次回作で終わりのようだ。

 

 

 

 

 有名な劇団である「水滸」の次の作品の最終オーディションが,山あいのペンションで行われることになり,主宰の本郷によって7人の役者たちが集められた。

 

 久我和幸(重岡大毅)は水滸のメンバーではなかったが,他の6名笠原温子(堀田真由),元村由梨江(西野七瀬),中西貴子(中条あやみ),雨宮京介(戸塚純貴),本多雄一(間宮祥太朗),田所義雄(岡山天音)は皆,メンバーだった。

 

 

 久我は水滸に憧れており,自分が最終オーディションのメンバーに選ばれたことを喜んでいた。

 

 

 ただ,これまでのオーディションで自分がいちばん素晴らしいと思った麻倉雅美(森川葵)という名女優が最終オーディションに残っていないことが不思議だった。

 

 

 ペンションに入ると食堂のモニターに「大雪で閉ざされた山荘」という架空の密室シチュエーションに従って行動するようにという指示が映し出される。

 

 

 翌朝,メンバーがリビングに集まると「笠原温子が首を絞められて殺された」という設定のメッセージが伝えられるが,笠原の死体はなかった。

 

 残った6人は,次の作品の設定が連続殺人事件で1人目の被害者が笠原という設定だと考え,犯人捜しの演技を始める。

 田所はひとりだけ部外者だと言う理由で久我を犯人だと疑う芝居をする。

 

 

 久我はアリバイ作りのために本多と同じ部屋で寝ることにする。

 

 

 次の朝には,元村由梨江が花瓶で撲殺されたという設定のメッセージが伝えられるが,凶器の花瓶には本物の血痕がついており,5人は本当に事件が起きているのではないかと疑い始める。

 

 

 田所は相変わらず久我を疑い続けるが,なぜか本多は久我を庇ってはくれない。

 

 更にペンションから出て行こうとした雨宮が首を絞められて殺される。

 

 

 本多は警察に連絡しようとするが,田所の持っていた動画によれば3日目の夜は本多以外の全員が同じ部屋で過ごしており,雨宮を殺せるのは本多だけだった。

 

 一方,2日目の夜を久我とともに過ごした本多には元村を殺せない。

 

 7人をペンションに集めたのは本郷ではなく,彼の名を騙った麻倉だった。

 彼女は最終オーディションに落選したが,その後,笠原が東郷と身体の関係を持って役を手に入れていたことが分かる。

 

 

 そのとき,麻倉と笠原が揉み合いになり,止めに入った雨宮が目を怪我してしまった。

 麻倉宅を出た後,笠原は帰り際に「雨宮が目を怪我したために事故を起こした」と麻倉へ嘘の電話をした。

 

 この電話で足を止めた麻倉は車にはねられてしまったのだった。

 

 麻倉は本多に協力させて笠原,元村,雨宮の3人を殺す計画を立てた。

 それが,この連続殺人だったが,麻倉に人殺しをさせたくなかった本多は,笠原らに麻倉のシナリオを渡して殺される姿を演じてもらっていた。

 

 

 本多には麻倉にまた舞台に戻って欲しいという想いがあったのだ。

 そして,その想いは実現し,麻倉は車椅子の女優として本多たちと舞台に復帰する。

 

 

 

 

 タイトルを見て,本当に「ある閉ざされた雪の山荘で」という設定の推理劇かと思ってしまった。

 

 アイディアが出尽くしたと言われる設定の下でどんなトリックを見せてくれるのかと思っていたら,こういう内容で拍子抜けした。

 

 多重構造の話というところは良いのだけど,それをやるとトリックに見えるものが結局,ほとんど無意味になってしまうところが残念。

 特に本物の「ある閉ざされた雪の山荘で」を期待していた者としては割り切れない。

 

 出演者はみんな好きな俳優なんだけど,その良さが発揮できていたかというと,そこも残念。

 

 

 

 

 園田梨枝(蓮佛美沙子)は,父康夫(升毅)の反対を押し切り,高校を3年で中退して,女優になるため地元熊本の田舎町から上京した。

 

 

 最初のオーディションで,偉そうな演出家に10秒以内で泣くように求められたが涙は出なかった。

 

 それでも何とか女優になり地道に活動していたが,不倫スキャンダルで干されてしまった。

 スキャンダルと言っても実際には何もしていなかったが,信じてくれる人もおらず,そう思われるような行動を取ったこと自体が問題だと言われると反論もできなかった。

 

 そんなとき事務所の社長が,密着ドキュメンタリーの仕事を取ってくる。

 

 

 梨枝は,父と喧嘩別れし10年も帰っていない地元で撮影をすることは気が進まなかったが,社長がせっかく取ってきた仕事でもあるし,家族に気づかれないうちにこっそりと撮影して帰ってしまおうと思っていた。

 

 父が入院していることは聞いていたが,会いに行くつもりもなかった。

 

 ある程度はちゃんとしたドキュメンタリーだと思っていたが,瀬野咲(伊藤万理華)という見るからにペーペーのスタッフがひとりだけで来て,ホテルも用意されておらず梨枝の実家に宿泊する予定だと聞き,梨枝は腹を立てる。

 

 

 梨枝はホテルを取るよう咲に要求するが,そもそもホテルらしいホテルもなく,安いという理由で咲が予約したのはラブホテルだった。

 

 

 梨枝は自分で探すと言い,ひとりで歩き出すがタクシーどころか人通りもない。

 ようやく通りかかったタクシーを見つけ,必死の思いで止めると,高校の同級生サルタクこと猿渡拓郎(上川周作)が運転手だった。

 

 

 梨枝が充電の切れかかった携帯で事務所に文句を言おうと悪戦苦闘している内に到着したのは何と実家だった。

 

 

 梨枝が文句を言おうとしている内に,サルタクは行ってしまう。

 梨枝は仕方なく呼び鈴を押すが,誰もいないようだった。

 念のためと思って,昔から鍵を隠してある植木鉢の下を探ると相変わらずそこに鍵があり,梨枝は実家にこっそりと入る。

 しばらく家の中を探るが,あまりにも何も変わっていないことにおどろく。

 

 

 そうしている内に,弟の勇治(吉田仁人)が帰ってくる。

 

 

 10年前は幼かった勇治が立派な高校生になっていることに驚くが,おとなしい性格は変わっておらず,帰宅していることを姉の飯塚真希(三倉茉奈)には黙っておいて欲しいという頼みを聞いてくれる。

 

 翌日から始まった撮影は,行ったこともない駄菓子屋で思い出を語ったり,赤の他人のお墓の前でしんみりする(梨枝は今でも涙を流すことはできない)といったやらせばかりだったが,梨枝が抗議すると,咲はドキュメンタリーにも演出は必要だという謎理論で押し切ろうとする。

 

 咲は同期入社の男がすでにドラマを任されてるのに,未だにバラエティ班の下っ端であり,上司の「この撮影が成功すればドラマ班への移動も考えてやる」という口約束にすがっていた。

 そのため,なんとか結果を出そうと焦っていたのだ。

 

 梨枝は咲のいい加減な演出プランと,なぜかサルタクが撮影の手伝いとして付いて回っていることにいらだっていた。

 

 

 その後も何の思い入れもない古い劇場で撮影をしたり,咲が持参したドローンが墜落したりと,空回りとしか言いようのない撮影が続いた上,咲が足を捻挫してしまう。

 

 

 その為,梨枝は父が入院している病院へ行くハメになり,そこで会いたくなかった姉の真希と出くわし,大げんかになってしまう。

 

 

 真希は,早くに亡くなった母に代わって梨枝や勇治の面倒を見てきており,梨枝の反抗期の対象は父と姉だった。

 

 梨枝が女優という無謀に見える夢を持ったのには亡くなった母が関係していた。

 元々,梨枝は人目につくことが苦手だったが,小学生の時,成り行きで学芸会の主役をやることになってしまった。

 しかし,思い切ってやってみたところ,意外に好評で母は大喜びしてくれた。

 梨枝は母に,いつも難しい顔をしているお父さんを笑顔にするために女優になると言い,母もそれを応援してくれたのだった。

 

 梨枝のその想いは父や姉に伝わることはなく,むしろ関係をこじらせてしまった。

 

 そして姉との関係は,梨枝が姉の結婚式に出席しなかったことで完全に途切れていた。

 それでも真希は父の病状だけは梨枝に伝えていたが,梨枝は見舞に行こうともしなかった。

 

 咲が上司に梨枝と父親の関係が悪く,その父親が入院中だという報告をすると,上司からはそれを撮影しろと命じられるが,梨枝からは強く拒絶される。

 

 

 咲はさすがに気が進まなかったが,結局,康夫の病室に隠しカメラを設置してしまう。

 

 一方,梨枝は実家で卒業アルバムを見てドキュメンタリーに出てくれそうな同級生を探すが,そこで勇治に焼き飯を作ってやることになる。

 その焼き飯は,かつて父が梨枝に作ってくれたもので,梨枝も自然に作り方を覚えてしまったものだった。

 梨枝は父とのつながりは何もなかったと思い込んでいたが,こんなこともあったことを思い出す。

 

 撮影が再開され,梨枝は通っていた高校で友だちが少なかったという思い出を語る。

 又,病院前のファミレスで偶然再会した店員の同級生は,ファミレスで孫と一緒に梨枝の記事をスクラップしているおじいさんがいるという話をするが,咲は盛った作り話だと思い,もっと自然な話を求める。

 

 

 そのとき真希からショートメールが入り,梨枝は父に何かあったのかと思い病院へ急ぐ。

 だが真希の要件は,梨枝が父の見舞のために戻ってきたというのが,嘘だったことへの叱責だった。

 

 梨枝は病院で真希と出くわしてしまったとき,とっさに父の見舞に来たと嘘をついていたが,梨枝が撮影をしているところがSNSに上がっており,真希は妹が仕事に来ていただけだと知ってしまったのだ。

 その上,咲が仕掛けた隠しカメラが見つかってしまい,真希は激昂する。

 

 梨枝は咲に隠しカメラを設置したことを責め,東京に帰ろうとする。

 実家で荷物をまとめようとした梨枝は,父が自分の記事や出演作をすべてスクラップしたり録画していたことに気づく。

 

 梨枝はいつも父が作ってくれた焼き飯を作ってタッパーに詰めると,咲に連絡して病院へ向かう。

 病室で怒り狂う真希を制して,梨枝は焼き飯を父に食べさせるところを咲に撮影させる。

「うまか」と言う父に梨枝は,お父さんが作った方が美味しいから,又,作ってと言う。

 

 後からサルタクにあのときどうしてカメラを回したのかと聞かれ,梨枝は「カメラが回ってないと泣いちゃうから」と答える。

 

 

 

 

 

 久々の蓮佛美沙子主演映画で,相手役が伊藤万里華となると観ないわけにはいかない。

 話としては割とありがちだが,演技が良くて結構引き込まれる。

 

 蓮佛美沙子の演技が下手な女優役も上手いし,伊藤万理華のドタバタも笑える。

 家族の中でいちばん年少の弟が,いちばんしっかりしているというところも面白い。

 

 三倉茉奈が舞台挨拶に来ていたのだが,自分が座った三つほど隣の席に佳奈が来ており,一部の噂のように仲が悪いわけではないんだなと思った。

 

 

 

 

 東京から蔑まれていた埼玉県人が埼玉解放戦線の活躍によって自由と平和を勝ち取ってから3ヶ月後,埼玉解放戦線を率いる麻実麗(GACKT)と壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は「日本埼玉化計画」を推し進めていた。

 

 

 しかし,埼玉県人には横のつながりが薄いという問題があり,百美は埼玉県民の各鉄道の代表に対して,埼玉県内を横に繋ぐ鉄道,武蔵野線の建設を提案した。

 

 

 だが,武蔵野線よりも東京や東京ネズミーランドに行く鉄道を造るべきだとの意見が優勢になる。

 

 麗は埼玉県民の心をひとつにまとめるため,越谷に「海」(しらこばと水上公園)を造ることを提案し,ビーチ造営に必要な砂は和歌山県・白浜から白い砂を調達することにした。

 麗は百美に各鉄道の代表の説得を任せ,千葉解放戦線から船を借りて出航した。

 

 

 船旅の途中,和歌山解放戦線から救助を求める無線が入ってきた直後,船は嵐に遭遇して難破する。

 和歌山の海岸に流れ着いた麗を救ったのは,滋賀解放戦線のリーダーである滋賀のオスカルこと桔梗魁(杏)だった。

 

 

 和歌山の白浜は大阪府の植民地と化しており,和歌山県民や奈良県民、滋賀県民たちは大阪府民から虐げられていた。

 

 大阪府を支配しているのは冷酷な府知事の嘉祥寺晃(片岡愛之助)だった。

 

 魁は,白浜の砂が白い理由は和歌山の姫君(トミコ・クレア)が祈りを捧げているお陰だが,姫はどこかに幽閉されており,月に一度,祈りのために外に出されると言う。

 

 

 魁はひとまず麗を連れて滋賀に戻ることにした。

 

 

 一方,捕らえられた埼玉解放戦線員たちは,嘉祥寺によって甲子園球場の地下に放り込まれ,千葉解放戦線の浜野さざえ(小沢真珠)と浜野あわび(中原翔子)はタコ焼きを食べさせられ,関西弁を喋る「大阪人化第1形態」へと変貌した。

 

 

 麗は甲子園で何かが起きていると感じ,3日後に甲子園で行われる少年野球大会を探ることにし,一方,埼玉で麗の帰りを待つ百美は,白鵬堂学院の野球部部長に甲子園の少年野球大会で和歌山県人に麗を見なかったか聞いてくれるよう頼む。

 

 

 麗と魁は甲子園に潜入したが,魁が裏切り,麗は大阪府警に捕えられ,大阪人化第1形態,大阪人化第2形態へと変貌させられてしまう。

 

 

 麗が甲子園の地下に連れていかれると,そこは人を大阪人化する粉の精製工場であり,他県の人々が強制労働を強いられていた。

 

 牢に入れられた麗は埼玉解放戦線の仲間と再会したが,麗は幼少期にマイアミのビーチで亡き母から救世主として滋賀を救うよう言われた夢を見る。

 目覚めた麗はなんとか大阪人化から脱し,仲間の手引きにより牢から脱獄して滋賀へと向う。

 

 一方,魁は嘉祥寺に,麗を差し出した見返りに強制労働の仲間と和歌山の姫を解放するよう要求したが,嘉祥寺は約束した覚えはないと言い放つ。

 

 

 埼玉の百美が,白鵬堂学院が持ち帰った甲子園の砂を調べると砂に混じった粉に人を大阪人化する成分を検出する。

 滋賀解放戦線の協力を得て滋賀に落ち延びた麗は,魁の母(高橋メアリージュン)がかつて滋賀解放戦線の元リーダーであることと「滋賀のジャンヌ・ダルク」と呼ばれていたことを知る。

 

 「滋賀のジャンヌ・ダルク」の肖像画を見た麗は,彼女こそが自分の実の母であり,魁は麗の実の弟であることを知る。

 麗が子どもの頃,マイアミビーチだと思い込んでいたのは琵琶湖のマイアミ浜だった。

 

 麗と魁は和解する。

 そこに百美からの伝書鳩が現れ,嘉祥寺は人を大阪人化する粉を使って日本全土を大阪の植民地にする計画を進めていることを知らされる。

 

 人を大阪人化する粉の実は淀川流域で栽培されていることから,麗は滋賀,奈良,和歌山の代表を集めて嘉祥寺の野望を阻止する作戦を提案した。

 それは瀬田川の水門を閉じて琵琶湖の水を止め,淀川を渇水させて粉の実を枯らすことだったが,滋賀県民は滋賀が水没するとして反対する。

 

 麗と魁は必死で滋賀県民を説得し,提案を受け入れた滋賀県民は彦根城へと避難する。

 

 

 瀬田川の水門は閉鎖されて粉の実を枯らすことに成功したが,そこのことを知った嘉祥寺は大阪・兵庫・京都の連合軍10万人を投じて水門を破壊するために出陣する。

 

 

 軍勢がわずか5000人と劣勢な滋賀・奈良・和歌山の連合軍は「とび太くん」の看板を軍勢に見立てることにして,麗は仲間たちに後を任せると強制労働者を解放するために甲子園へと向かう。

 

 

 おなじみの有名人対決が始まり,滋賀県は西川貴教を繰り出すが,大阪府から菅田将暉,神戸(兵庫県)から戸田恵梨香,北川景子を出されて苦境に陥る。

 

 

 苦し紛れに奈良県が出したのはせんとくん,加護亜依,明石家さんま,桓武天皇という微妙なライン。

 

 一方,兵庫県は藤原紀香を出すが,嘉祥寺自身が,実家は和歌山と明かしてしまう。

 

 嘉祥寺は神戸市長と京都市長を見捨てて大阪に戻る。

 

 甲子園に乗り込んだ麗は,強制労働者たちや和歌山の姫を解放し,粉の精製工場を壊滅させた。

 しかし,麗は和歌山の姫から,嘉祥寺の真の計画はミサイルに改造した通天閣に粉を満載し,東京に撃ち込んで丸ごと大阪化することだと知らされ,大阪へ向かう。

 

 大阪に着いた麗は嘉祥寺に捕まってしまい,通天閣ミサイルは発射されてしまうが,麗から連絡を受けた百美は埼玉の各鉄道の代表たちをまとめ上げ,極秘裏にミサイルに改造されていた埼玉県唯一のタワー・行田市の「古代蓮の里展望タワー」を発射する。

 行田タワーは宇宙空間で通天閣ミサイルを撃破し,嘉祥寺の野望は阻止される。

 

 一連の悪事が明るみにされた嘉祥寺は逮捕され,関西に平和が戻り,滋賀県民は水没した滋賀を復興させる。

 

 埼玉では,麗が白浜から持ち帰った白い砂によって「しらこばと水上公園」が造られ,遂に武蔵野線が開業する。

 

 舞浜まで直通したことにより埼玉県民は直接東京ネズミーランドへ行けるようになり,麗と百美もネズミーランドへと向かう。

 

 

 

 おなじみのおバカ映画だが,今回は舞台を関西に移している。

 関西人同士のケンカで,滋賀県民の定番のセリフ「琵琶湖の水止めたろか」を使って話を展開する。

 

 前回の島崎遥香のポジションが朝日奈央になってしまったのは,時の流れか。

 

 

 NMBから川上千尋ひとりだけというのも寂しい。

 

 有名人出身地合戦に出る人は,映画には出演しないものの,出演者よりも強いインパクトを残すところが美味しい。

 

 二階堂ふみが,この世界にいちばん自然に溶け込んでいるのも興味深い。

 

 

 片岡愛之助と藤原紀香という実夫婦のやりとりは,いろいろな緊張を含んでいて面白いが,さすがに藤原紀香はかつて島田紳助に鍛えられただけあって,シャレが分かる。

 

 この映画の世界は,荒唐無稽で非現実的だが,不正がばれれば大阪府知事も逮捕されるという点では,現実世界よりもよっぽどまともだと感じさせられる。

 

 

 

 

 東京の建築事務所に勤めるインテリアデザイナーの水島悟(二宮和也)は,40歳になっても独身だった。

 

 

 彼は自分が内装を担当した広尾の喫茶店「ピアノ」で美春みゆき(波瑠)という女性と知り合うが,彼女が自分のデザイン趣向を理解してくれたことから好意を持つようになる。

 

 

 みゆきは,海外の雑貨を扱う小さな商社に務めているということだったが,なぜか携帯電話を持っておらず,毎週木曜日の同じ時間に「ピアノ」に来て会うという方法しかなかった。

 

 

 悟は出張で大阪に行くことになったが,本来は木曜日には戻れるはずだったもののトラブルで帰ることができなかった。

 

 次の木曜日に悟は先週行けなかったことをみゆきに謝罪し,その後,悟はみゆきと親友の高木(桐谷健太),山下(浜野謙太)と共に焼き鳥屋に飲みに行った。

 高木と山下は悟とみゆきの出会いを「アナログな付き合い」だなと言った。

 

 悟とみゆきは毎週木曜日に会い,順調に仲を深めていったが,悟が誘ったクラシックのコンサートの途中でみゆきは突然席を立ち,涙を流しながら悟に「ごめんなさい」と告げると会場から出て行ってしまい,それから2週間,みゆきは「ピアノ」に姿を現わさなかった。

 

 大阪に出張していた悟は母の玲子(高橋恵子)が危篤との知らせを聞き,東京に戻ったが死に目には間に会えず,通夜が木曜日だったため,みゆきに会うこともできなかった。

 

 翌週の木曜日に悟とみゆきは「ピアノ」で会い,みゆきはクラシックコンサートのことを謝罪し,悟を夜の海へ誘った。

 みゆきは夜の海は昼の美しさがわかるから好きだと言った。

 

 その後も悟とみゆきは会い続け,秋に悟はみゆきを自分のお気に入りの小さな教会を案内した。

 

 

 みゆきはクリスマスの時期にまた来たいと言った。

 この木曜日は休日だったので初めて昼間に会い,二人は海に行き,落ちていた凧の糸で糸電話を作り,悟はみゆきに告白した。

 

 

 みゆきも何かを告げようとしたが,その声は波の音にかき消されてしまった。

 

 みゆきへのプロポーズを決意した悟は,高木と山下に相談して婚約指輪を購入し,次の木曜日,指輪を持って「ピアノ」へと向かったが,みゆきはその日は急用で早めに帰宅した。

 

 悟は来週ちゃんと話したいことがあると告げ,みゆきも悟に話があると返した。

 翌週の木曜日に悟は指輪を持って「ピアノ」に行ったが,みゆきは現れず,1ヶ月以上が経ち,フラれたと思った悟は「ピアノ」に行くことをやめる。

 

 悟は,そのころ大阪支社に1,2年常駐してくれと頼まれ,引き受けることにした。

 

 

 悟はみゆきへの思いを断ち切るかのように大阪で働き続けていたが,ある日,わざわざ大阪に来た高木と山下が悟のもとを訪れ,どうしても話したいことがあると切り出した。

 

 ラジオ局で働く山下の妻・香織(佐津川愛美)は局で要らなくなった大量のCDを持ち帰ったが,山下はその中の1枚のジャケットにみゆきそっくりな女性がいることに気づき,みゆきの過去を知った。

 美春みゆきは本名ではなく,彼女はかつて数々の国際コンクールを総なめにした天才バイオリニストの古田奈緒美だった。

 彼女は,20歳の時に留学先で知り合ったドイツ人ピアニストのミハエル・チューリングと結婚し,ナオミ・チューリングの名義でヨーロッパで活動していたが,ミハエルの死を機に日本に帰国し,音楽業界から引退していた。

 

 その後,奈緒美は経歴を隠すために美春みゆきと名乗り,知り合いの輸入商社で働いていた。

 

 

 そして,みゆきがあの日「ピアノ」に行けなかった理由は,彼女がタクシーで向かう途中で交通事故に遭い,意識不明の重体となっていたのだった。

 

 悟は,高木と山下のツテで香津美に会いに行ったが,意識はあるものの,脳障害と下半身麻痺により意思の疎通ができない状態だった。

 悟が病床のみゆきと対面しても彼女は呼びかけに反応することはなかった。

 

 悟はみゆきの日記を読む機会があった。

 ヨーロッパから帰国した彼女はなかなか日本での暮らしに馴染めないでいたが,ふと立ち寄った「ピアノ」を心から落ち着ける場所だと気に入っていた。

 又,「ピアノ」の内装を手がけ,自分の過去に無理に触れないでくれていた悟に惹かれるようになっていた。

 みゆきが糸電話越しに話したメッセージは「私,悟さんと生きていきたい」だった。

 さらに日記には,いつか悟に聴かせるために久しぶりにバイオリンを手にしたことも綴られていた。

 

 悟は建築事務所を辞めて独立し,みゆきの家の近くの海の見える場所に自らの事務所を構えた。

 悟は今まで避けてきたリモート通話や3DCGを駆使したデザインなどにも挑戦し仕事も軌道に乗り始めた。

 悟は毎日仕事を終えるとみゆきの家に行き,彼女を車椅子に乗せて海辺を散歩するのが日課になった。

 

 そしてクリスマスの日に悟はみゆきをあの小さな教会に連れ出し,無反応のままのみゆきにプロポーズした。

 

 1年後,悟がみゆきを連れていつものように海辺を散歩していると動かないはずのみゆきの手が悟の手に触れる。

 悟はみゆきが反応を示したことに驚くと,みゆきは「今日、木曜・・・」と呟いた。

 悟はこれからずっと木曜日だと言いながら涙を流し,みゆきは悟の涙を拭った。

 

 悟は,みゆきがステージの上で悟のためにバイオリンを弾いている光景を思い浮かべた。

 

 

 

 ビートたけしの小説の映画化作品だが,どうにもギクシャク感が抜けない。

 設定も陳腐だし,色々なエピソードが,どこかで聞いたようなものの寄せ集め。

 そして,肝心な主人公2人の「アナログ」へのこだわりに説得力がない。

 演技については,みんな自然で上手いけど,このストーリーでは物語の凡庸さを強調する結果になっている。

 

 

 

 

 終戦直前,特攻隊員の敷島浩一(神木隆之介)は出撃後,機体の不調を訴え,大戸島の不時着場に着陸する。

 整備兵の橘宗作(青木崇高)らがいくら調べても機体に不具合は見つからなかった。

 敷島は,生きて帰れという両親の願いを叶える為,嘘の故障で特攻を忌避したのだ。

 整備兵の中には,それを察知した者もいたが,敷島を責めることはなかった。

 

 その夜,海岸に多数の深海魚が浮かぶのを見た敷島が不審に思っていると,警報が鳴り響く。

 米軍の攻撃ではなく,大戸島で「ゴジラ」と呼ばれている怪物が海から上がってきたのだった。

 大型の恐竜程度の大きさだったが,小銃では歯が立たなかった。

 橘は敷島に零戦の20ミリ機関砲を撃つように命じ,敷島は操縦席に忍び込む。

 しかし,ゴジラの姿を目前に見た敷島は怖じ気づいてしまい,せっかくゴジラが射線上に入ったのに操縦席から逃げ出してしまう。

 

 翌日,敷島が意識を取り戻すと,橘以外の整備兵はすべて死んでいた。

 終戦になり日本に帰る船の中で,橘は,亡くなった整備兵たちが持っていた家族の写真を敷島に押しつける。

 

 敷島が自宅に戻ると,家は焼け両親は亡くなっており,隣家の太田澄子(安藤サクラ)は子どもたちを全員亡くしていた。

 特攻隊員なのに帰ってきた敷島を見て,澄子は彼を激しくなじる。

 

 

 敷島が腑抜けたように暮らしていると,泥棒と呼ばれて逃げ回っていた女から赤ん坊を押しつけられる。

 彼女は大石典子(浜辺美波)と名乗り,明子という赤ん坊は,彼女が空襲のさなかに母親から預けられたという。

 典子と明子はズルズルと敷島の家に居着いてしまう。

 事情を知った澄子も明子の世話をするようになる。

 

 一方,アメリカとソ連の軍事対立は終戦後も続いており,アメリカは海上で水爆実験を行う。

 

 敷島は,典子と明子を養う為に機雷撤去という危険な仕事に参加する。

 磁気機雷が反応しないという船は,木造のおんぼろ船であった。

 メンバーは船長の秋津清治(佐々木蔵之介),学者風の野田健治(吉岡秀隆)と手伝いの若者水島四郎(山田裕貴)だった。

 同じようなもう一隻の船とペアを組み,二隻の間に渡したワイヤーで機雷を海底から切り離し,浮上したところを機関砲で撃って爆発させるという仕事だった。

 元々,優秀な零戦パイロットだった敷島は射撃が上手く,浮上した機雷を次々に爆破していった。

 

 こうして敷島の家は次第に豊かになり,日本自体も復興を遂げていった。

 典子は,明子を澄子に預けて働きに出るようになるが,これは家計の為とというよりも女性も自立して働くべきだという彼女の考えによるものだった。

 

 

 

 その頃,アメリカの軍艦が謎の生物によって破壊されるという事件が起きた。

 その破壊力や壊れ方からクジラなどの生物によるものとは思えなかった。

 

 

 その生物は海中を日本に向けて進んでいた。

 しかし,アメリカは日本政府に対して,ソ連を刺激する可能性があるため,日本近海での軍事行動は取らないと伝えてきた。

 その代わりに沈没処理予定であった重巡洋艦高雄を日本に引き渡してくれることになった。

 

 秋津と敷島たちの機雷処理船は,高雄到着までその生物を足止めする任務を任された。

 武器は回収した機雷を使うという無茶な任務である。

 

 秋津はその生物のことを軽く見ていたが,いざ実物が現れるとその巨大さに驚き,退却の命令を下す。

 

 

 それは,かつて敷島が見たゴジラに他ならなかったが,水爆実験による放射能を浴びて巨大化した上に口から放射能を帯びた熱線を吐くというとんでもない化け物になっていた。

 秋津たちはゴジラから逃げながら機雷を海に流してゴジラの直前で爆発させたが,ほとんど効果がなかった上に,ゴジラの負った傷は見ている間に治っていった。

 

 

 野田は機雷をゴジラの口の中で爆発させようとしたが,起爆装置が外れてしまう。

 敷島は機関砲で機雷を撃ち爆発させる。

 ゴジラのダメージは前よりも大きかったが,やはりすぐに回復し,もう一隻の機雷処理船は破壊されてしまう。

 

 そのとき重巡洋艦高雄が到着し,ゴジラに砲撃をするがほとんど効果がなかった。

 ゴジラに襲いかかられた高雄は,転覆直前に至近距離から主砲を撃つ。

 ゴジラにはかなりのダメージがあったが,やはり見ている間に回復していった。

 

 気を失った敷島は病院で目を覚ますが,生き残ったのは秋津の船の乗組員だけだった。

 

 日本政府はゴジラの上陸を阻止する為に防衛線を張ったが,いともたやすく突破され,ゴジラは典子の働く銀座に現れる。

 

 

 

 

 典子は助けに来た敷島と一旦は合流できたが,ゴジラの熱線による爆風で吹き飛ばされてしまう。

 

 

 

 

 

 野田たちは,国が当てにならない以上,民間の力でゴジラを退治するほかないと考え,旧海軍の軍人たちを集めて協力を呼びかける。

 

 

 それは,ゴジラの身体に多数のフロンガスボンベを巻き付けてガスの泡で浮力をなくして海溝深くまで沈め,そこでエアバッグを開いて今度は急速に浮上させ,水圧による強烈な圧力差で身体を破壊するという作戦だった。

 しかし,これでも万全とは言えない上,戦闘機などによるゴジラの誘導が必要だった。

 

 戦闘機は終戦の際に米軍によりすべて破壊されていたが,一機だけ破壊を免れた機体が残っていることが分かる。

 敷島たちが,それを見に行くと,倉庫の中に覆いを被された局地戦闘機震電が置かれていた。

 

 震電は,先尾翼を持ち後方にプロペラを設置し,機首には30ミリ機関砲4門を備えた最新鋭機だったが,開発段階で終戦になり実戦投入はされていない機種だった。

 放置されボロボロの機体を改修できるのは,敷島の知る限り橘だけだった。

 しかし,終戦後の混乱で橘の居所はなかなか判明しなかった。

 そこで敷島は,関係者に大戸島部隊の全滅は橘の責任だという噂を流す。

 すると案の定,その噂を聞きつけた橘が現れ,敷島をボコボコに殴る。

 

 

 ようやく橘と再会できた敷島は,震電の復活と改造を依頼する。

 30ミリ機関砲4門の内,2門と燃料タンクの一部を取り外し,そこに爆弾を搭載させる。

 敷島は水圧作戦が失敗したときは,震電でゴジラの口の中に突っ込むつもりだった。

 

 

 上陸してきたゴジラを敷島が震電で海溝付近まで誘導し,旧海軍軍人たちの船でフロンガスボンベとエアバックを縛り付けたワイヤーをゴジラの身体に巻き付ける。

 

 

 ガスボンベが開かれ,ゴジラは海溝の底まで沈んでいく。

 そこでエアバッグが開き,今度は急浮上を始めたが,途中で浮上が止まる。

 

 

 ゴジラがエアバッグを食い破ったのだ。

 

 そこで,ゴジラにワイヤーを巻き付けた2隻の船で左右に引っ張り,ゴジラを浮上させようとするが,力が足りない。

 そのとき,水島が率いる多数の民間船が現れ,牽引を手伝う。

 

 

 水上に現れたゴジラの身体は崩れかけてはいたが,まだ生きており,強烈な熱線を吐く。

 

 

 そのとき敷島が操縦する震電が再び現れ,ゴジラの口の中に突っ込んで爆発する。

 

 

 それによりゴジラの身体は砕け散る。

 

 敷島は橘の作った脱出装置によって爆発直前に脱出していた。

 戻った敷島は,亡くなったと思い葬儀までした典子が生きていたことを知り,再会を喜ぶ。

 海溝に沈んでいったゴジラの肉片の中には,拍動を続けている部分があった。

 

 

 

アカデミー賞受賞の話題作。

 

 時代設定だけではなく,そこかしこに1954年のオリジナルゴジラのオマージュがちりばめられている。

 また,ゴジラと言えばこの曲でしょう,という曲が流れることによってゴジラの世界に引き込まれる。

 

 オリジナルゴジラは世界中で評価された名作であり,ゴジラ-1.0が高く評価される理由のひとつは,その世界を現代の技術で再現したことにあると思う。

 アカデミー賞受賞の特殊効果については,やはり水の表現があまりにも自然でとてもCGとは思えない。

 ミニチュアを水槽に浮かべると,どうしても波が大きくなりすぎて,本物の水なのにリアルさがなくなる。

 かつて円谷英二は,寒天の海にミニチュアの戦艦を乗せて航跡を絵で描いて撮影したが,時代は変わった。

 ミニチュアのビルの代わりにCGで描かれたビルの倒壊も恐ろしくリアルである。

 ただ,これは震災やテロで本物のビルが本当に倒壊する映像を観客である我々が知っているからこそ感じることができるリアルさであり,ちょっと複雑ではある。

 

 又,民間の力でゴジラに対処するというくだりは,シン・ゴジラを思い出させる。

 

 オリジナルゴジラのオキシジェン・デストロイヤーが震電に置き換わっているが,どちらも戦争の遺物という点では共通点がある。

 震電は後方に大きなプロペラがあるため,恐ろしく長い着陸脚を採用しているが,それでも試験飛行でプロペラが滑走路に接触して曲がってしまうという不具合があった。

 また後方プロペラというのは,脱出装置と極めて相性が悪く,プロペラが回っていると,パイロットを吸い込んでしまう。

 この映画では,射出座席のような脱出装置が設定されている。

 ただ,なんだかんだと言っても震電は格好いいので,映画向きではある。

 

 オリジナルゴジラは,極めて陰鬱な映画である。

 ゴジラに破壊された街や,避難する人たちの様子は,その10年ほど前に実際にあった戦争を思い起こさせるし,隻眼の芹沢博士が,自ら開発したものの兵器転用を恐れたオキシジェン・デストロイヤーとともに海底に潜り,水爆実験で蘇ったゴジラと共に死ぬのである。

 怪獣という題材を選びながら,中身は全く子ども向けではない。

 しかもモノクロ映画の時代なので,より一層,恐怖心を煽り,子どもにとってはトラウマ級の怖さである。

 

 ゴジラ-1.0は,オリジナルゴジラから陰鬱さを取り除き,未来に希望が持てるように工夫されている。

 敷島の特攻忌避も肯定的に描かれ,最後も芹沢博士のようにゴジラとともに死ぬということもない。

 死んだと思った典子は生きている。

 アメリカで人気があるのもこういう前向きなところが関係しているのかもしれない。

 

 映画作品としての完成度はオリジナルゴジラの方が上だと思うが,今さらもう一度陰鬱なゴジラを描く必要はないと思うので,これはこれで良いかなとも思う。

 

 

 

 

 ゆとり世代と言われた坂間正和(岡田将生),山路一豊(松坂桃李),道上まりぶ(柳楽優弥)だったが,彼らも30代半ばになり,時代はZ世代へと移り変わった。

 

 

 正和はかつて居酒屋チェーン店「鳥の民」を経営する「みんみんホールディングス」で働いていたが,新入社員の山岸(仲野大賀)からパワハラで訴えられ,会社を辞め実家の坂間酒造を継いでいた。

 その山岸もZ世代の若手社員平田(加藤清史郎)や小野(新谷ゆづみ)からパワハラで訴えられる時代になっていた。

 

 

 正和は妻,茜(安藤サクラ)との間に2児をもうけていたが,相変わらずうだつが上がらず,酒造の宣伝のための動画配信チャンネル「さかまっちチャンネル」も再生回数は全く伸びなかった。

 

 

 未だ女性経験のない教師,山路は,マッチングアプリを通して知り合った女性とデートをすることになったが,自信のない山路は自らの首にかけたタブレットを通じてレンタルおじさん麻生(吉田鋼太郎)をデートにリモート参加させ,女性に逃げられてしまう。

 

 

 飲みに出かけた正和と山路の前に中国でエビチリビジネスを展開しているはずのまりぶが現れる。

 彼は事業に失敗して帰国し,家族を養うこともできず困っており,結局,坂間酒造で働くことになった。

 

 

 坂間酒造は,正和の以前の勤務先「みんみんホールディングス」に日本酒を卸していたが,その会社は韓国企業に買収されて「辛心食品」になり,居酒屋も韓国料理店「豚の民」へとリニューアルされた。

 その結果,韓国からやってきた新しい上司のチェ・シネ(木南晴夏)が会社を仕切り,今後は韓国のマッコリに力を入れたいので坂間酒造との契約を打ち切ると言い出す。

 

 正和がせめて1年だけでも猶予が欲しいと頼んだところ,チェ・シネは,マッコリを作るかノンアルコールの日本酒を作るか,いずれかを契約続行の条件として承諾する。

 

 一方,山路の勤める小学校に教育実習生と転校生が来ることになった。

 かつて教育実習生で痛い目を見た山路だったが,新たな教育実習生,望月かおり(上白石萌歌)に心をときめかせてしまう。

 転校生はアメリカ人とタイ人であり,山路はお国柄の違いにとまどう。

 

 

 また熱血の元ラガーマンの教育実習生・脇田(林家たま平)にタックルを決められて骨折してしまう。

 

 山路はなんとか職場復帰したが,結局かおりと会話もできないまま終わってしまった。

 

 坂間酒造には伝説の杜氏・服部一幸(吉原光夫)が戻ってきていたが,プライドの高い彼にマッコリ作りやノンアルコール日本酒の製造を頼むことは難しかった。

 しかし,まりぶたちに乗せられてノンアルコールの日本酒造りにチャレンジすることにしましたものの,満足がいく味わいに仕上げることはできなかった。

 

 やむなく正和は,チェ・シネに酒飲み勝負を持ちかけ,正和はマッコリを,チェ・シネは坂間酒造の酒を交互に飲んでいった。

 正和は泥酔して倒れてしまったが,チェ・シネは平気だった。

 

 彼女が飲んでいたのは,何とか完成していたノンアルコールの日本酒「ゆとりゼロ」だったが,それに後から気づいたチェ・シネは坂間酒造との取引を続けることにする。

 

 一方,正和は知らない家の中で意識を取り戻したが,なぜか下半身丸出しになっていた。

 

 

 正和は,この家でかつて山路を振り回した元教育実習生・佐倉悦子(吉岡里帆)が寝ているところを目撃し,見知らぬ男の姿を目撃して逃げ帰える。

 

 ところが,その後,正和には思い当たるフシもないのに悦子から「妊娠しました」というメールが届いた。

 

 この頃から坂間家に中国から精力増強剤が大量に届くようになり,茜は正和が浮気をしているのではないかと疑ったが,これはまりぶの仕業だった。

 まりぶは「エビチリ大王」という動画チャンネルで,正和たちには内緒で中国の動画配信サイトで坂間家の日常を面白おかしく配信していたのだった。

 

 

 又,正和の妹・ゆとり(島崎遥香)も動画配信にチャレンジしており,ハロウィンの日にチャイナドレスを着て渋谷からの生配信をした。

 

 

 この動画の日本国内の再生回数はわずかだったが,中国では大人気を博していた。

 

 まりぶの動画配信が正和たちにバレ,まりぶは姿を消した。

 まりぶの動画で正和は「負け犬」,茜は「鬼嫁」と呼ばれていた。

 坂間家の家族は怒り出したが,正和はこれが我が家の日常だと開き直る。

 

 ところが,次の動画は,ハロウィンの夜に酒に酔った正和がZ世代の若者に絡み,殴られて流血し,警察に助けを求めたものの血をハロウィンの仮装と間違われて相手にされなかった様子が撮影されていた。

 その上,正和は浮気をしたことを自白していた。

 

 悦子は茜に現在彼女が住んでいる家はシェアハウスであり,コロナ禍で国に帰れなくなった外国人や困っている人たちを匿っていたと説明する。

 

 

 そして,チェ・シネとの飲み勝負の後,泥酔して倒れていた正和を悦子が連れて帰ったところ,正和はシェアハウスの人々とすっかり仲良くなり,どれだけ茜のことを愛しているかを熱弁していたという。

 

 

 新年を迎えても行方をくらましたままのまりぶは,新たな動画を投稿していた。

 それは、正和兄弟の母である和代(中田喜子)が仏壇の亡き夫に語りかけている動画だった。

 

 まりぶの隠しカメラは仏壇の中に仕掛けられており,家族が亡くなった父親に色々な本音を話すシーンが撮られていたのだった。

 

 

 

クドカン作のテレビシリーズ続編映画。

 

 こうしてみるとテレビシリーズ以降も活躍している人ばかりで,なかなかの豪華キャストになっている。

 仲野大賀なんて,今度は大河ドラマの主演だし。

 岡田将生は,格好いい役は絶対に引き受けず,悪人役や抜けている善人役などばかりを選んでいる。

 

 話題のテレビドラマ「不適切にもほどがある!」でも存分に描かれているように,クドカンにとって,ジェネレーションギャップを笑いに変えるのはお手の物。

 そういえば,岡田将生も「不適切にもほどがある!」で面白い役どころだった。

 

 「ゆとり世代」と「Z世代」という大人から見れば紙一重くらいの違いでも,これほどに違うということを見せつけてくれる。

 確かに「ゆとり世代」にリモート会議はなかったし,日本企業が韓国資本に買収されるなんてあまり想像できなかった。

 

 登場人物はみんな,悪人ではないものの,しょうがないよねというレベルで自己中心的なところがリアルで良い。

 

 楽しく笑いながらちょっとしたアイロニーも効いていて面白い映画だった。

 

 

 

 一条逸子(広瀬すず)こと広澤真緒里は,東京の街角で歌を歌っている小塚路花(アイナジエンド)を見かける。

 

 

 真緒里は高校生の頃,北海道に住んでおり,畜産大学を卒業して牧場で働いていた潮見夏彦(松村北斗)に家庭教師をしてもらっていた。

 ある日彼から,真緒里と同じ高校に通う自分の妹が,学校になじめていないので友だちになってやって欲しいと頼まれる。

 真緒里は夏彦から聞いたクラスに行き,ひとりでいる路花に話しかける。

 彼女はほとんど言葉を話すことができず,誰とも友だちになれなかった。

 

 路花は小学生の時,東北の震災で家族を失っていた。

 そのとき,ひとりになってしまった彼女が覚えていたのは,姉,希(キリエ)の交際相手だった夏彦のことだった。

 姉から紹介されたときは恥ずかしかったが,何となく信頼できる人だと感じていた。

 夏彦が大阪の大学に進学すると聞いていた小学生の路花は,震災後の混乱に紛れてひとりで大阪に来た。

 

 だが,夏彦を見つけることはできず,たまたま出会った御手洗礼人(七尾旅人)という路上ミュージシャンと暮らしていた。

 震災のショックで話すことができなくなっていた路花だったが,歌が上手く,しゃべれなくなっても歌だけは歌えた彼女は,御手洗と一緒に路上ライブをしていた。

 だが,中年男が小学生の女の子を連れ回しているとして警察に通報され,御手洗は警察に連行される。

 路花も保護されそうになったが,逃げ出してひとりで野宿をして暮らすようになった。

 

 地元の小学生の男子たちと仲良くなった路花は,夜は大きな木の上で過ごしていた。

 その小学生たちの担任だった寺石風美(黒木華)は,生徒から彼女の話を聞いて探しに行く。

 木の上で歌っていた彼女を見つけた風美は,路花を自分の家に連れて帰る。

 彼女が震災に遭ったことを知った風美は,インターネットの掲示板で路花とキリエの行方を捜す夏彦の存在に気づく。

 夏彦は震災の混乱で,進学が決まっていた大阪の大学には行かず,地元に留まっていた。

 

 夏彦と連絡が取れた風美は,路花を彼に託すがやがて里親が決まり,路花はそこで暮らすことになる。

 

 

 ところが高校生になった路花は里親の元を飛び出し,北海道に住んでいた夏彦の家に転がり込む。

 

 

 真緒里と路花は仲良くなり,ふたりで歌を歌って時を過ごしていたが,やがて路花は里親の元に連れ戻されてしまう。

 

 真緒里の家は,母楠美(奥菜恵)も祖母明美(浅田美代子)も水商売をしてきており,男に頼る生き方をしていた。

 真緒里は,それが嫌で高校を卒業したら家から出たいと思っていたが,母楠美に牧場主の横井(石井竜也)という恋人ができてから家が急に羽振りが良くなる。

 

 真緒里は最初,その関係を嫌がったが,東京の大学に進学するという名目で家を出ることができるのではないかと思い,横井に学費の援助を頼む。

 横井は気前よくそれを引き受けただけではなく,家庭教師として自分の牧場で働いていた夏彦を送り込んでくれた。

 真緒里は元々,勉強嫌いだったが,夏彦に勉強を教えてもらったことと,家を出て東京に行きたい一心で努力して東京の大学に進学した。

 

 だが,在学中に母が横井に振られ,授業料の支払いや仕送りが途絶えてしまった。

 真緒里はそれ以降,一条逸子と名乗り,男たちを手玉にとって暮らすようになる。

 結局,自分が嫌った母や祖母の生き方をなぞってしまったのだ。

 

 キリエと名乗る路上ミュージシャンが路花であることにすぐに気づいた逸子は,彼女にマネージャーになって売り出してやると言う。

 

 

 逸子が派手な色のウイッグをかぶっていたため最初は気づかなかった路花だったが,彼女が真緒里であることに気づき,再会を喜ぶ。

 

 

 逸子は自由に使えるという豪邸にキリエを連れて行くが,それは彼女の元恋人(豊原功補)の留守宅だった。

 そこでしばらく暮らし,その間にキリエは路上ライブで顔を売る。

 

 風琴(村上虹郎)と名乗るミュージシャンも加わり,彼女は次第に注目を集めるようになる。

 

 

 だが,元恋人の家には,本人が恋人(松本まりか)を連れて帰ってきてしまい,逸子とキリエは出ていかなければならなくなる。

 

 逸子は,今度は波田目という中年男の家にキリエを連れて行く。

 逸子はキリエに,あいつは結構変態だから気をつけてと言ったが,彼は機嫌良く2人を住まわせてくれた。

 

 一方,その間,逸子はキリエを根岸(北村有起哉)という音楽関係者に引き合わせたり,路上ライブを主催する松坂珈琲(笠原秀幸)や日高山茶花(粗品)といったミュージシャンとの共演も手配して彼女の売り出しを図っていった。

 

 だが,ある男の視線を感じた逸子は「しばらく姿を消す」と言ってキリエの元からいなくなる。

 その後,波田目はキリエに逸子に騙されたと言い出し,キリエを犯そうとするが,かろうじて平静さを取り戻し,彼女を追い出す。

 逸子は結婚詐欺師として数億円を荒稼ぎしたと報じられた。

 

 松坂の企画した路上ライブは盛り上がり,キリエの歌も観客たちを感動させていた。

 しかし,近隣からの騒音の苦情や許可証を持参するのを忘れてしまったことからキリエの歌の途中で警察から中止の要請が入り,現場は大混乱になる。

 

 そんななか,キリエにサプライズで花束を渡す役割だった逸子は会場の手前で,自分が騙した男にナイフで刺されてしまう。

 

 

 

 

岩井俊二監督の最新作

 

 岩井監督の映画はどれも素晴らしいが,この映画もやっぱりすごい。

 

 アイナジエンドの歌唱力と監督の演出力が合わさり,他にはない世界を紡いでいる。

 

 一番感心したのは,キリエが根岸の無茶振りでカフェで歌うシーン。

 カフェで突然歌い出す彼女は,最初の数秒はただの変な人だが,やがてすべての客がその歌に感動し,「2番も聞きたいですか」と問う根岸に全員が拍手で答える。

 このシーンは,演出された映画の一場面ではなく,彼女が歌えば,本当にこうなるだろうという説得力がある。

 

 その他にも彼女が口ずさむように歌うオフコースの「さよなら」なども良かったが,これらの曲はサントラにも収録されていないのが残念。

 

 岩井作品の広瀬すずは,ラストレターといい本当に別格だし,松村北斗もはまり役。

 キタリエ旦那(笠原秀幸)も歌えるんだなぁ。

 

 黒木華もやっぱり良いし,様々なミュージシャンの参加も楽しい。

 

 岩井監督が作る世界の居心地の良さは素晴らしい。

 

 この映画のもう一つのテーマである震災についても,切り取り方が秀逸だが,一部は監督自身の経験も踏まえていることが新聞に書かれていた。

 

 

 

 

 

 海上自衛隊のディーゼル潜水艦「たつなみ」は,ディーゼル潜水艦「やまなみ」が未確認の潜水艦に衝突したのをソナーで察知したが,「やまなみ」は救難信号を出すことなく沈没していった。

 

 

 「やまなみ」は艦長・海江田四郎(大沢たかお)をはじめ乗組員72名が全員死亡したと発表されたが,「たつなみ」艦長・深町洋(玉木宏)は,海江田の類い希なる操艦技術と遺体を確認したのがアメリカ海軍だけという点に疑問を持ち,事故当時のソナー音声をソナーマン・南波栄一(ユースケ・サンタマリア)らと共に再検証した。

 するとノイズ交じりの音声のなかに事故発生の直前に潜水艦のハッチが開けられた音があることに気づく。

 

 その事故は偽装であり,海江田はデビット・ライアン大佐の同行のもと「シーバット」の初の試験航海へと出発していた。

 

 

 「シーパット」計画とは,極秘裏に建造した日本初の原子力潜水艦「シーバット」に核ミサイルを搭載し,所属はあくまでも米軍とすることで「非核三原則」の適用外とするものであった。

 海江田と「やまなみ」乗組員全員は「シーバット」乗組員として選ばれ,米軍の協力を得て「やまなみ」の沈没事故を偽装して脱出し,全員死亡したことにして存在自体がトップシークレットである「シーバット」に配属されたのだった。

 

 「シーバット」の航海は順調に進み目的地であるアメリカ海軍の原子力潜水艦「キーウェスト」との合流地点に到着したが,海江田はソナーマンの溝口拓男(前原滉)に周囲を探索させ,他にも2隻の原子力潜水艦「オクラホマシティ」「ナッシュビル」が潜んでいることを探知すると,音響魚雷を発射し,アメリカ海軍の原子力潜水艦のソナーが麻痺している間に「シーバット」をアメリカ海軍の管理下から脱走させた。

 

 「シーバット」の突然の脱走に日本政府は,書類上ではアメリカ軍の所属である「シーバット」に日本政府が関与していることの発覚を恐れ,深町に自衛隊にアメリカ海軍よりも先に「シーバット」を捕らえるよう指示した。

 

 深町は,海江田が小笠原諸島を南下してマリアナ海溝に向かうと予測して「たつなみ」を出航させる。

 

 一方,アメリカ合衆国大統領は「シーバット」の捕獲もしくは撃沈を命じ,アメリカ海軍太平洋第7艦隊の全艦を出動させる。

 

 「シーバット」は海江田の操艦技術により,自衛隊とアメリカ海軍の追跡を振り切り,あえて第7艦隊が待ち構えるフィリピン沖に浮上させ,すでに「シーバット」には核弾頭を搭載したトマホーク対艦ミサイルが搭載されていることを明かす。

 

 そして「シーバット」のアメリカ海軍からの離脱と海江田を国家元首とする独立軍事国家「やまと」の建国を宣言した。

 

 

 「やまと」への乗艦を許された深町から真意を問われた海江田は「「やまと」によって地球をひとつの国家とする,それがこの世界から戦争をなくす唯一の方法だ」と答える。

 

 

 アメリカ大統領は「やまと」を正式に敵艦と認定し,第7艦隊に撃沈を命じたが,「やまと」は魚雷などの兵器を一切使わずにアメリカ潜水艦を撃退してみせる。

 

 

 

かわぐちかいじ原作漫画の実写化

 映画の終了後には,思わず「え,こんだけ?」と言ってしまいそうになったほど序盤だけであり,当然,「キングタム」みたいに今後,続編が制作されるのだろうと思っていた。

 

 ところが,なんと続編はアマプラ・・・

 しかも,続編の方はミサイルもバンバン撃って楽しそう。

 

 アマプラの予告編みたいな映画を金取って見せるというのは,いくらなんでもひどくはないだろうか。