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Analog of Magic もみじとクラフトマンのblog

Analog of Magic (AoM)のブログです。
アナログ回路を中心とした話題をお届けします。

GND分離ポータブルヘッドホンアンプ【Zwei Flugel】【Eins Flugel】など各種アンプなどを販売中

今年もよろしくお願いします。

 

最近やったこと・やっていること

 

1.有名なホームページの自作ヘッドホンアンプ記事に沿って製作されたアンプを測定しました
2.据え置きヘッドホンアンプを製作(また中身はほとんどパワーアンプですけれど)
3.おもちゃDACを設計中

4.オフ会&試聴会&勉強会準備中

 

 


1.有名なホームページの自作ヘッドホンアンプ記事に沿って製作されたアンプを測定しました

 

このアンプ(ディスクリートのヘッドホンアンプ)はコンセプトによくあっていると思うのですが、妙な考察をしている人が結構いるようで賛否両論あるようです。実際に見かけた例だとゲインの理論値も出せない人がフィードバック量について何か言っていて、その理解度で何を語れるのか甚だ疑問です。

このアンプを組み立てた方が「このアンプは巷で言われているような欠点があるのか」と疑問を持たれていたので、お借りして測定と考察をしました。※普段はこのようなことはしません。


測定前に回路図を見たところ、誰でも作れる構造・部品点数で音質もそこそこ良いというコンセプトにはばっちりハマっていると思いましたし、計算してみても特別悪い部分は少ないと思います。何より製作者様が測定データをしっかり公開しているのが良いですね。他を批判するだけで、ご自身の技術がどの程度あるかの参考になるデータも公開しない人が多い界隈ですので。

ただし気になる部分が全くないわけではなく、私ならそうはしないという部分もいくつかありました。作りやすさやわかりやすさを考えたら、そうなるのかもしれませんが。


このアンプは詳細を記した本が出るそうですし、私が考察と測定したものは組み立てた方にお渡ししたので詳細はここでは書きません。測定結果は、THD+Nや最大出力など製作者様の公開されているものはほぼ同じ結果になりました。十分な再現性があると思います。歪み成分や各部動作も、測定前に考察した通りの結果が得られました。

 

音質も数値ももっとよくできるでしょうけれど、そうすると「誰でも作れる」からは外れますしトラブルシューティングも難しくなります。アンプ自作を始めるきっかけ・ここから勉強してみようというきっかけには大変良いアンプだと感じます。このアンプは真似して作っておしまいなのではなく、あくまでも自作を始める一歩目だと強く感じます。それなりに音が良いアンプがほしいだけなら、少しお金出して適当なものを買えばいいだけですし。

 

 

 

2.据え置きヘッドホンアンプを製作

 

ちょっと久しぶりに据え置きヘッドホンアンプを作りました。メインで研究していた回路ではなく、基本的な回路で細かいところを少し詰めたものです。

ヘッドホンアンプはパワーアンプと比べゲインが低めなので単純に補償容量を増やす…とスルーレートが落ちてしまいますからこのあたりは好みに合わせて適当な値をねらいました。とはいえ、あまり初段のコンダクタンスを落とすと今度は雑音が増えますから、このあたりは好みや考え方によってうまく調整する必要があります。(オペアンプの歴史の中でも、初段gmの違いで特性を変えている品種がありましたね。)

 

私はほとんど選別しない主義ですので部品は一切選別していません。出力用のトランジスタはヘッドホン用なので中電力パワートランジスタです。それ以外のアンプ部のトランジスタはすべて面実装としました。

ポータブルアンプと比べ最大出力が桁違いに大きいことと、DCサーボによるオフセットの収束時間が少し必要であるため、電源on・off時には出力を切り離すようになっています。過去に制作したパワーアンプや据え置きヘッドホンアンプでもやっていましたが、今回はリレーをオムロンではなく秋月で売っているものにしてみました。たぶん音も違うでしょうけど、直接比較していないのでわかりません。

 

どうでもいい蘊蓄はこれくらいにして、特性を貼っておきます。利得は+3倍。33Ω負荷での1kHz THD+Nです。BW:80kHz、発信器の出力インピーダンス600Ω。


0.0007%は測定限界です。最大出力は33Ω負荷で2Wくらい。アイドリング電流を絞っているので最大出力付近ではAB級動作です。測定時のシールドが甘いことと設計上の限界もありますが、この値ならまあ良いと思います。何箇所か暫定の部品になっているのでそれはいずれ交換しましょう。

※この後、改良しましたのでノイズフロアが若干下がっています。

 

 

 

 

3.おもちゃDACを設計中です

 

おもちゃDACを設計しています。荷物を減らしたい・でもDAPをアンプにつなぐのではなくDACがほしい試聴時などに使えるようなものです。SPDIF入力・XLR出力(+RCAか3.5mm)です。出力インピーダンスは若干高いですが外付け部品が最小のDAC ICでシンプルな構造にしようと思っています。
5V入力のみ動作するように設計しています。部品点数は少ないDACですが電源を少しこだわったら電源周りの部品点数が増えてしまいました。5Vで直接動かす部分はありません。

据え置きアンプやパワーアンプにつなぐことを前提としているので、バランス出力もできるようにしています。基板サイズに対しXLRコネクタの大きいこと…(笑)。

 

 

 

4.オフ会&試聴会&勉強会準備中

 

会員登録みたいなのは済ませました。ちょっと窓口の人がテンパっていたので本当に登録できているのかは…?場所を予約してみましょう。詳細はまた別途書きますが、初回は2月中のどこかでやりたいと思っています。

 

 

会の内容は交流&少しだけ勉強です。もちろん参加費は無料。

主にオーディオアンプ(プリでもパワーでもヘッドホンでも)を作る人やその中身に興味のある人、中の人(私)に何か教えてあげたい人などに参加してほしいです。ご自慢の機器を聞かせたい方もどうぞ。パワーアンプだとみんなでブラインド試聴できますが、ヘッドホンアンプでもそれができないか検討中です。

 

また今はご自分で設計していなくても、有名な回路の動作が知りたいとか発振してるアンプを聞かされて自作界隈に不信感がある、詳しく見える人がいたけどトラブルシュートもできてないし特性も見せてくれない…といったことに疑問をお持ちの人の参加も歓迎します。

 

このオフ会は開催してもすぐには(数回は)人がくるとは思っていません。もしかしたら0名かもしれません。気になることを話せる場所があることに意味があると思うのでそれでも良いのです。

年越しも間近になり半田しながら新年を迎える覚悟が整いましたクラフトマンです。

今からポータブル1台と据置用の基板を3枚の半田と、民生機のリチウムセル交換をします。

無事に年を越せるんでしょうかこれ…

皆様に本年も大変お世話になりました。

良いお年をお迎え下さい!∩^ω^∩
ハッピーニューイヤー!(迫真
本業の音響機器系のお仕事がちょっと面白い局面をみせており、寒い季節ですが楽しみクラフトマンです。
会社の方のお子さんが学級閉鎖うんぬんなんて耳に入ってくる季節ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

先日年末の挨拶に取引先へ行った時の事をちょっと雑記として残そうかと思います。


以前お願いして樹脂ケース用の加工冶具の作成を音速でしてくれた方が、冶具の調子や能力の不足がないか尋ねてくれた。
この冶具はステンレスの厚板をパワフルレーザー加工であばばばばばぁ!!!っと切って、ベンダーでグイグイ曲げて作ってあり、恐ろしく制度が良く使い勝手が良い。
全く不足は無くむしろ過剰なクオリティでヘアライン仕上げでカッコいいし感謝しかない。



この取引先は(うちもグループに同業ありますが)各種の工作機械も揃っていて、技術面も高く高信頼。
三現主義の塊みたいな職場で、何か改善のアイデアを持ち込むとツールボックスミーティングが自然と始まる。
図面が無くまんがレベルのイラストだとしても、意見が自然と出てきて纏まりそれがすぐ形になる。
こう言った事がさらっと出来るのはきっと、意気込みや意識だったり知識や経験にプラスして興味を持ち続けているんじゃないかと思います。

来年のどこかで何か用の(一点物かな?)ケース、削り出しとかなんとかで依頼させて下さいと申し送りました。
快く引き受けてもらえたので、色んな可能性を考えながら来年に想いを馳せるクラフトマンでした。

秋のヘッドフォン祭2019に参加された方お疲れさまでした。AoMブースにきてくださった方、ありがとうございます。

 

 

当日はZwei FlugelやEins Flugelなどの主力ポータブルアンプのほか、Nutubeを用いた試作ハイブリッドアンプを展示しました。現物はありませんでしたが高性能・低電圧動作フルディスクリートアンプの資料などもありました。

NutubeハイブリッドはNutubeを用いたアンプとしてはずば抜けた特性の良さで好評でした。コルグの方にもお褒めいただき大成功だったと思います。

 

 

 

 

時間や手持ちの部品によりなかなかユニークな基板になりました。このNutubeハイブリッドアンプのプロトはNutubeを片chでひとつ使用し、初段をNutubeの差動アンプとしています。歪みの小さな範囲を使用することで一般的な回路より歪みを大幅に減らすことができます。

差動にすると二次歪みが0になって真空管ぽさが失われるのではないか…?と思う人もいるかもしれません。しかし0になるのは素子が理想的な理論上の話であり、実際の素子では0にはなりません。差動なのに気持ち悪いですが、今回のNutubeハイブリッドアンプは二次歪みがメインです。

 

図 基本波と歪み波の様子

 

また音質のためにカップリングコンデンサは入力のみ、出力はダイレクトカップリングとしていました。(反転入力端子にNFBをかけるための構造でもあります。)素子の性能や癖もあり簡単なようでいて、少しだけ難しい構造のアンプです。

 

 

 

 

技術的にまだ詰められる余地はありますが、AoMとしては半導体アンプがメインストリームで、真空管はカテゴリーがちょっと違うのですがどこまでやろうかな…?

 

 

ヘッドフォン祭ではZweiやEinsの評価も上々でした。一部、AoMの半導体アンプのなかで一番特性の悪い(と言ってもかなり良いですが)アンプが一番評価良かったビルダーの方も見受けられました。エンドユーザーであればなんら問題はないのです。ビルダーの方がアンプの評価を音の好みだけで決め、音質と好みの区別が出来ないのは残念でした。

 

有名メーカーの設計者の方が前回のヘッドフォン祭でAoMのアンプを視聴して下さった時は、とてもエンジニアらしい視聴をされていましたよ。

 

 

 

 

追記(2019年11月7日)

Nutubeハイブリッドアンプの時間がなくて詰められていなかった部分を少し調整しました。ジャストな値の素子が手もとになかったため、前回よりは良い・満足いくところよりは手前に調整した特性を以下に示します。

なお今回調整したのは試作1号機です。こちらのほうがスペースに余裕がありますし、万が一Nutubeを壊してしまっても1ch分しか作っていないのでダメージは少ないです。

 

1kHzのTHD+Nは特性の良くない半導体アンプに匹敵する値になってきました。ただし帯域幅が半導体アンプより狭いため、10kHzの歪みは無負荷でも1kHzより大きく0.7V出力時に0.05%ほどでした。

下限には限界があるものの今回の回路ではほぼ自由に歪みの量が調整できそうです。今は値を追求するために低い周波数の歪みが低い・高い周波数はそれに劣る状態ですが、低い周波数の歪みを悪化させてできるだけ均一に調整することも理論上は可能です。試してはいません。動くとは思いますが。

 

 

まだ続きます。

 

追記(2019年11月8日)

むしゃくしゃしてやった、双三極管は差動用だと思った (電子回路屋・半導体世代)

 

後学のためにNutubeを試してみました。
歪ませるにしても、まずはどの程度の特性が出るのか確認しないといけませんし、歪みの主成分が本当に偶数次歪みなのかも確認しておきたいのです。はたしてNutubeにはその素子特有の測定に表れにくい良さがあるのか、その音は特性によるものなのか。

 

 

・Nutubeとは何なのか
21世紀に登場した新しい真空管です。中が真空になっているかはわかりません。双三極管なので増幅素子が2個入っていますが、直熱管でありふたつのフィラメントで片側の端子を共用しています。この構造のため、使い方は限られます。(カソードの電位が違う用途…2段直結などは1パッケージでは困難です。)
実は出始めのころに一度試そうと思ったことがあるのですが、特性が期待できないこととコストの問題で断念でしたのでした。今回も半導体並みの特性が出るとは思っていません。個人的にはまず素性がわからないと使う使わないにも至りません。

 

 

・回路を考える
今回はNutubeの構造やデータシート上の特性から考え、1パッケージのNutubeを差動として使うことにしました。ただし、トランジスタほど性能がそろっていないでしょうしgmも小さな素子なのでゲインも低く、差動にしても大きな性能向上は果たせないことが予想できます。

またプリアンプにしてもヘッドホンアンプにしても、何らかの出力ドライバが必要です。Nutubeを使ったハイブリッドヘッドホンアンプは多いので、今回はうちでもヘッドホンアンプとし、出力ドライバは負荷が重くても歪みが小さなオペアンプ(実測した中から選らんだもの)でダイレクトに駆動します。

今回はNutubeで差動アンプを構成するためその部分の出力も差動出力になりますから、これを直接オペアンプで受け、合成し出力とします。(いくつか注意点があります。後述。)

こういった構造のため主電源は±9V、フィラメント電源はフローティングの約1.2Vとします。

 

 

・制作したものの測定値
手持ちの部品で動かしたので一部最適値ではなく、その部分を直せばもう少し値が下がりますがとりあえずとった測定結果を示します。Nutube部での歪みを見るために無負荷になっています。

ゲインは+2倍です。
つまり1V出力時の入力電圧は0.5V、4V出力時の入力電圧は2Vになります。Nutubeを入力部に使用したアンプとしては圧倒的な低歪みだと思います。また歪みの主成分は2次歪みであることを確認しています。

よく見るNutubeの使い方より歪みが小さいのはグリッドとカソード間の電位差の変化量が通常の使い方より小さいためでしょう。そのためアノード電流の変化も小さく、歪みが小さい領域を使用しているということです。
なお今回は歪みの主成分が2次歪みであることを確認していますが、真空管を用いたアンプだからといって必ず2次歪みが大きいわけではありません。たとえば波形の頭がつぶれていたら、そこは奇数次高調波を含みますし。

 

 

・注意点
<br>Nutubeは周波数特性が悪い(カットオフ周波数が低い)ため、初段をNutubeの差動とし
2段目以降を半導体のハイブリッドアンプとする場合は後段のゲインと周波数特性に注意が必要です。位相が180度回った時点で0dB以上のゲインがあると発振します(増幅回路の基本です!)から、このような構造にする場合は2段目以降を十分に低いカットオフ周波数で補償しておく必要があります。Nutubeはgmが極めて低いため、補償のためのコンデンサは現実的な容量のものが使用できます。(実際にデータシートから数値を計算して、補償値を計算してみると面白いと思います。)

 

 

同様の内容をホームページにもまとめてありますから、こちらもどうぞ。

https://analogofmagic.web.fc2.com/nutube01/nutube01.htm

気温の上下が大きく霧が出ましたね…咳喘息気味のクラフトマンです。

KORG Nutube を使って何か作れないかなーとうなってまして、PHPAかマイクプリとかいいかな?
って事でPHPAにひとまず組み込んでいます。
(どっちかと言えば圧倒的にマイクプリ向き)

変換基板を用意しましたが在庫の都合でこんなひどいお姿となってしまいました…


まさかのファミカセ!


あまり作例のない回路構成で試作中で、全体の動作として狙った通り動いています。

ただ、Nutubeと半導体のパラメータ差が要所で大きく、Nutubeの振る舞いが悪く全体が振り回されている状態です。

回路規模を最小構成から始めて少し付帯回路をつけた所で、最終的にはもう少し規模を大きく出来たらと思います。

実験なので1CHしか組んでいませんが、現状でひとまず音出しが出来ていてL側の信号を出力のLRに配線した状態です。(1CHだけど2回路点灯してますね…)

最低限の成果が上がった場合、ヘッドフォン祭りに隠し持って行こうかな?

たまに「オペアンプを変えられたら嬉しいのですが」とお問い合わせをいただきます。

たしかに交換できる構造になっているアンプは多いですし、交換すれば安価で音が変えられますからね。しかし、AoMではオペアンプをICソケットに載せたアンプは作っていませんしこの先も作る予定はありません。

 

アンプの音は電子部品だけではなく定数や部品の位置、配線の仕方などのあらゆる要素で決まります。突き詰めていくと部品そのもの以外の方が影響大きいとさえ思います。そんな設計しているアンプで主要部品を変えてしまうと動作が設計値から大きくずれてしまいます。

AoMではEins Flugelの(B)と(C)でさえ部品にあわせて定数を変更しているくらいです。そのための予備実験もEins設計前に当然しています。

 

また、ICソケット自体もより良い部品の位置と配線をしていく上で障壁になります。ソケットがあると入力ピンも出力ピンも電源ピンもその分長くなりますし、ICは差し込んであるだけですから接触抵抗もあります。突き詰めていったアンプではその影響ははかり知れません。

これは主観ですが、私が実際に比較した際は設計の良いアンプではIC交換やコンデンサ交換よりもソケット有無での音の変化は大きかったです(測定値に変化が出る場合もあります!)。一方で変化がほとんど感じられないアンプも結構ありました。そういうものはあまり設計が良いとは言えなかったり特性が悪いものでした。

 

以上の理由でAoMではオペアンプが交換できるアンプを出すつもりはありません。

緩い設計をすればそれなりに動くオペアンプは増やせますが、標準のオペアンプすら決められなくなってしまいます。それに、定番の定数やそこから大きく外れない値で部品を転がすのに技術は要りませんからAoMや私がやらなくても良いと思っています。

 

オペアンプ交換は個人的には好きではありませんし技術的に見てもおすすめできるものではありませんが、あまり技術的に詰めていないアンプなら交換する遊び方も良いかもしれないとは思います。(私も15年ほど前に一通りやっています)

突き詰めた設計をしていないアンプならば、交換した方が出音が良くなる可能性があるかもしれないからです。

ただしそこには相応のリスクがあります。恐らく設計者やメーカーは責任を持ってくれないでしょう。

 

技術と耳の性能が卓越した、そして技術に対して謙虚な設計者がきっちり部品を選んで設計したアンプの音が一番良いと思いますけどね。最近はそういう品物に出会うことも少なくてちょっと寂しいです。

先日会社の部下からLINEが来て、お買い物依頼を受けました。
頻繁に秋葉原に行っているのを知っているし、気軽に頼んでよかよ?って言ってあるんです。
初めて手書きのメモを写真で送られてきて、以下のようなものだったんですがかなりのハードミッション。

のっけから何が書いてあるのかわからないが、これがその一部。

上はペンが書けるかどうかの線、下がお店の名前だったそうです。

これが判明したので以下の文字も何とか判別出来ました。


読み取る力が試される、日本語ってやっぱり難しい…

音質良し使い勝手良しのZwei Flugelと同じサイズで、違う部分に重点を置いたアンプを作ってみました。上位機種でも下位機種でもありません。別の解釈をしたモデルです。そのため音の傾向は似ています。空間表現や細かいニュアンスが少々異なります。

 

 

Zweiは電源電圧4.8Vを標準とし、それを上回っても安全に、下回ってもしばらくは粘る構造にしています。しかしそのために選んだ部品では雑音は少し大きめになってしまいました。また電源電圧も低いため、いくら電源レールまで振れる構造としていても最大出力は小さめです。
PHPAとしては十分な出力を有していると思いますが、音量の大小の差が大きい音源を600Ωで能率も低いヘッドホンを使って爆音で楽しみたいときはちょっと心もとない場合があります。基板上に比較的スペースがあったので配線などは詰めやすく、空間表現などはZweiのほうが有利です。(この比較は同じ技術レベルの人が設計した場合の話です。)

 

 

そこで動作電圧の引き上げ(電池4本→6本)と低雑音化を重点に置いたEins Flugelを設計しました。今回は思想の差により部品と定数が違う2種類を製作しています。
設計・試作時の考え方を説明するため一部具体的な部品名を挙げていますが、部品で音や特性が決まるわけではありません。すべては使い方次第ですので、部品は音の参考にもならないです。ご注意ください。(適切な設計ができていない場合はその限りではありません。)

大きな構造の差(ICかディスクリートか)も特性や理論を無視して論じる場合は参考にすらなりません。どちらもやってきた人が適材適所で必要な性能を出せる設計したものが好ましい結果が得られるでしょう。長らく双方やってきたのでそう思います。

 

どちらも回路の後ろ半分は共通。電源ぎりぎりまで振れる出力も、大きな電流が流れても電圧降下を最小限に抑える高性能電源SWも同じです。電池が増えたことで使用できる基板面積が減り配線が窮屈になりましたが、Zweiと同様に音は高いクオリティでまとまっています。

 


・Eins Flugel(B)
より低雑音・低歪み。
入力インピーダンス変換部でTIの最新世代オペアンプを試すのに設計したもの。
低利得の回路を設計するには少々大きすぎるGB積、2次補償のようなゲイン・位相図に若干の
不安を持ちつつも試作しましたが、ボリューム最大では100kHz矩形波応答はとても良いですし(図1)、THD+Nも極めて良好です。一般的な定数で設計するとノイズはもっと大きくなります。

ただし、ボリューム後の出力インピーダンスが大きくなるボリューム位置(15時方向)にし、入力信号を調整し特定の出力振幅にしたところ若干のリンギングが確認できました(図2)。
10kHz矩形波では生じませんからオーディオ機器としては大きな問題ないのかもしれませんが、
個人的にはあまり気持ち良いものではありません。これよりひどいアンプたくさん見てきましたけどね。。。

 

図1

 

図2


電源電圧約6.8V時・利得約3倍のTHD+Nは以下のグラフ(図3)のようになりました。このデータをとった際の電圧はちょっと下がりすぎているので、通常動作時の7.2V以上ならば33Ω負荷で最大200mW弱は出ます。
出力電流には余裕があるため負荷インピーダンスが下がれば最大出力はより大きくなります。

 

図3


(B)で使用したこのオペアンプは重たい負荷でも高域の歪みが悪化しにくかったので、小出力なら直接イヤホンも鳴らせるようです。出力電流が大きくても歪むオペアンプも多い中で優秀でした。

 


・Eins Flugel(C)
(B)の気になった部分を解消したもの。ボリュームのどの位置でも100kHz矩形波応答は良いです(図4・図5)。トレードオフで雑音は増えましたが入力換算値はZweiより小さくなっています。ただしゲインが違うので出力では同じくらいになっています。

 

図4

 

図5

 

こちらは大きすぎないGB積、素直なゲイン・位相特性、過去によく測定していて使い勝手がわかるものの中からMUSES8920を選択。(B)と同じ定数だと特に高い周波数の歪みが悪化するので(実測しても悪化します。)、当然ですがICにあわせて定数も調整しています。

 

電源電圧約6.8V時・利得約3.2倍のTHD+Nは以下のグラフ(図6)のようになりました。こちらのほうが少しだけゲインが大きいです。このデータをとった際の電圧はちょっと下がりすぎてICの動作下限を割ってしまいました…。通常動作時の7.2V以上ならば33Ω負荷で最大200mW弱は出ます。
出力電流には余裕があるため負荷インピーダンスが下がれば最大出力はより大きくなります。

 

図6


(C)で使用したMUSES8920は重たい負荷だと高域の歪みが増えるので、単体でヘッドホンドライバのような用途には向かないです。特に動作電圧ぎりぎりではかなり苦しいです。

またTexas InstrumentsやAnalog Devicesのオペアンプと比べると入力オフセット電圧がデータシート上でも実測でも少し大きいように感じます。MUSESシリーズはいくつか販売されていますが、個人的には使いやすくそこそこ特性の良いMUSES8920以外を積極的に選ぶ理由は見当たりませんね。

 


音の基本的な部分はどちらも同じでニュートラル。ニュートラルな音を実現するには、ドライバをしっかり駆動する出力の応答の良さが必要です。それを実現するためには電流がとれればいいわけではありませんし、抵抗負荷でのスルーレートが大きければ有利というわけでもありません。ここはノウハウ…思い込みやただ試したことではなく理論的に裏打ちされた経験が重要な部分です。

(B)と(C)は細部のニュアンスは少々違います。音は主観になってしまいますが、(B)は流行りの音に近く少し元気で音がストレートにくる感じ。(C)は爽やか、雰囲気の良い空気感があります。空間表現はどちらもほぼ同じで滲みは少ないですが、Zweiほどの位置の正確さはないかもしれません。打ち込み音源で塊感を感じたい場合は特にハマります。

 

特性はどちらも

・約2.2MHz(-3dB)

・電池のもちはアイドリングなら20時間以上(指定の電池による)

・実用域での歪みは0.001%以下(1kHz・80kHz LPF)

と十分な値になっています。

 

どちらも難聴予備軍もにっこりの音量まで上げても音が崩れませんから出力面の使い勝手は良いと思います。能率の悪い平面駆動ヘッドホンでも音量がとれるのははもちろん、音のキレや表現力も出ています。
電源が単四電池6本(エネループ指定)なので電源の使い勝手はいまいちかもしれません。
電源面での使い勝手と空間表現はZweiのほうがいいですね。Zweiもたくさん出たら改良しましょうー。

 

 

販売しているものをまとめたページです。

 

 

音楽が好きだから。電子回路が好きだから。
コストを抑えつつも卓越した性能と音質のポータブルヘッドホンアンプ。

 

・Eins Flugel

GND分離アンプを同じケースで別の解釈をして制作したアンプ。

G=+3でもZwei Flugelより低雑音、大出力時の歪率も低下。

電源電圧upで最大出力の向上(33Ω負荷で180mW前後)。

(詳細制作中)


・Zwei Flugel
 GND分離出力。バランスよりシングルエンドのほうが良いと思うを体現したアンプ。
 紹介ページ https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12423646844.html
 特性 https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12424918829.html
 カテゴリ一覧 https://ameblo.jp/analog-of-magic/theme-10107818274.html

 

・Vier Flugel
 バランス出力。大きな最大出力が必要な時向け。
 紹介ページ https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12405422469.html
 特性1 https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12405424033.html
 特性2 https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12405424801.html
 カテゴリ一覧 https://ameblo.jp/analog-of-magic/theme-10107208567.html


※大きな最大出力がほしい時以外はZwei Flugelをお勧めします。部品配置はそっくりですがプリント基板設計がかなり違い、Zwei Flugelが設計面でも音でも上位です。

 

Eins Flugel 3.5mm4極のみ 39,000円

Zwei Flugel 3.5mm4極版 38,000円

Zwei Flugel 4.4mm5極版 40,000円

Vier Flugel  4.4mm5極版 40,000円

Vier Flugel  2.5mm4極版 32,000円(在庫セール)


 

・Alter Flugel VT

真空管・トランジスタハイブリッド・フルディスクリートアンプ

https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12457944593.html

 

 Alter Flugel VT  44,000円


低雑音や電池が持つなどの特徴を持つ、派生種的ヘッドホンアンプ。

・今のところありません。

 

 

 

試作機やコストや労力を無視して性能を追求したアンプ、リファレンス。

・紹介していませんが多数あります。