たまに「オペアンプを変えられたら嬉しいのですが」とお問い合わせをいただきます。
たしかに交換できる構造になっているアンプは多いですし、交換すれば安価で音が変えられますからね。しかし、AoMではオペアンプをICソケットに載せたアンプは作っていませんしこの先も作る予定はありません。
アンプの音は電子部品だけではなく定数や部品の位置、配線の仕方などのあらゆる要素で決まります。突き詰めていくと部品そのもの以外の方が影響大きいとさえ思います。そんな設計しているアンプで主要部品を変えてしまうと動作が設計値から大きくずれてしまいます。
AoMではEins Flugelの(B)と(C)でさえ部品にあわせて定数を変更しているくらいです。そのための予備実験もEins設計前に当然しています。
また、ICソケット自体もより良い部品の位置と配線をしていく上で障壁になります。ソケットがあると入力ピンも出力ピンも電源ピンもその分長くなりますし、ICは差し込んであるだけですから接触抵抗もあります。突き詰めていったアンプではその影響ははかり知れません。
これは主観ですが、私が実際に比較した際は設計の良いアンプではIC交換やコンデンサ交換よりもソケット有無での音の変化は大きかったです(測定値に変化が出る場合もあります!)。一方で変化がほとんど感じられないアンプも結構ありました。そういうものはあまり設計が良いとは言えなかったり特性が悪いものでした。
以上の理由でAoMではオペアンプが交換できるアンプを出すつもりはありません。
緩い設計をすればそれなりに動くオペアンプは増やせますが、標準のオペアンプすら決められなくなってしまいます。それに、定番の定数やそこから大きく外れない値で部品を転がすのに技術は要りませんからAoMや私がやらなくても良いと思っています。
オペアンプ交換は個人的には好きではありませんし技術的に見てもおすすめできるものではありませんが、あまり技術的に詰めていないアンプなら交換する遊び方も良いかもしれないとは思います。(私も15年ほど前に一通りやっています)
突き詰めた設計をしていないアンプならば、交換した方が出音が良くなる可能性があるかもしれないからです。
ただしそこには相応のリスクがあります。恐らく設計者やメーカーは責任を持ってくれないでしょう。
技術と耳の性能が卓越した、そして技術に対して謙虚な設計者がきっちり部品を選んで設計したアンプの音が一番良いと思いますけどね。最近はそういう品物に出会うことも少なくてちょっと寂しいです。