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BIASの周囲を取り巻く防御隔壁の前にやってくると、赤い軽装アーマードスーツを身に付けたゲートガーディアンが話しかけてきた。


「お前は既に登録しているスクリーマーか?それとも新人か?」
「なにせ命知らずが多くてね、顔を覚えきれないのさ……」


「もしお前が新人なら、FRDのIDをイリーガルチェッカーに入力しろ。」


先ほど首屋で入手した5桁のIDコードをチェッカーのキーボードに入力。
ほどなく、許可メッセージが認証ディスプレイに浮かび上がる。

「All Green 」


同時にガーディアンのヘッドマウントディスプレイに、確認情報が表示。
「No.42961 Hunter Class90 Legality Screamer 」


「! いったい何者だオマエ・・・」
「ルーキーのくせに、この異常なハンタークラス値は・・・」


ハンタークラスとは、BIAS内での戦闘結果とスクリーマーの身体能力から算出される称号値で、この値が高いほど優秀なスクリーマーとされる。


本来は塔内での戦いにより、アップデートされていくものなのであるが、
身体能力がずば抜けている場合、稀に高デフォルト値となる者がいる。
つまり、竜の戦闘能力が異常に高いことを意味しているのである。


「あ?どういうことだ?」


「いや、なんでもない・・・要するにお前さんが異常にタフだということだ。」


「あぁ、よく言われる。殺しても死なない奴だと(苦笑」


「OK、確かに認証した。お前を登録済みのスクリーマーとして認める。」
「この門から先は一切の統治法が適用されないエリアだ。」


「内部において法的庇護は存在しない!」
「以上の事を承認するならば、門に描かれた紋章に手を合わせろ。」


門には逆十字架を模したセンサーが配されていた。


「統治法?仮に有効だとしてもどんな恩恵があるというんだ・・・」
聞こえよがしに、つぶやく竜。


「そんなものに期待していない。頼れるのは自分だけだ。」
竜が右手の掌をセンサーに重ねる。


刹那、竜の体内のマイクロマシンに記録されたデータをセンサーが読み取り、データベースへアクセス。BIASのゲートロックが開錠された。


「Caution! BIAS Gate Open! Entry Process Start! 」
アラートメッセージが周囲に響き渡る。


「プシューッ!」
頑強なエアロックが解除。


「ゴッゴゴゴゴ・・・」
地獄の底から響くような音たて、ゲートが左右にスライドしていく。
今、魔塔BIASの門が開かれたのである!


「おい!タフガイ」
竜の背後から、先ほどのガーディアンが声をかける。


「ん?」


「機会があったら、酒でも飲もうや!」

「まあ、お互い生きていたらの話だが……」


ガーディアンに背を向けたまま、天に向かい拳を突き上げ、サムアップ。BIASへと踏み出す竜。


「生き延びてやるさ。必ずな・・・」
「いくぞアル! 地獄の釜の蓋が開いたようだ。」


「にゃっ!」


あたりは、まるで生き物のように脈動する、奇怪な生体燐光壁により、
ぼんやりと照らし出されていた。
周囲3メートルぐらいは、視認可能な照度である。

吐き気を催す死臭のような瘴気が漂い、動く者の気配はない。
入塔前の想像とは異なり、竜とアルの周囲を静寂が取り巻いていた。


「静かだね・・・それにこの臭い・・・くっさぁ!」


「入った瞬間に、エンカウントするかと思ったんだがな・・・」


「うん」


「だが、油断はするなよ。」
「いたるところに、糞みたいなトラップが仕掛けられているはずだ。」


「了解。」

「オフェンシブモードは準備完了だよ。」


「よし、索敵を行いながら前進するぞ。」


「おっけぇ!(`゜ω゜´)ゝ」


一歩を踏み出そうとしたその時!
彼らの目の前を子犬ほどの大きさの存在が横切った!


「フギャーッ!」

アルが威嚇の声を上げる。


「DOM!!」
竜の88ヘルファイアーハンドキャノンが火を噴き、眩いマズルフラッシュが周囲を一瞬照らし出す。


「ジャァァァァッ・・・」
断末魔の声が通路に響き渡った。


「ネズミ・・・」


「のようだな。ただし大分でかい。しかも、このツラ見てみな。」
「遊園地のホストとしては上等なキャラだ。(笑」


「!」
「うっわぁ・・・キショイ(´Д`)」


足元に転がっている、その生物の顔は・・・
前頭部・両頬・顎から顔の中心部に向かいサーベルタイガーの様な牙が生えており、顔の中心には邪眼を想像させる単眼が位置していた。


カッターラット。
BIAS内を徘徊する変異体(ビースト)には正式な学術名は存在せず、
塔内でそれらと対峙したスクリーマー達によって略称がつけられている。


毒爪により獲物をひっかき、弱らせた後、
顔に生えた4本の牙で獲物に噛み付き、消化液を注入、

体液を吸い取る。蜘蛛のような特性を持つ下級ビーストである。


「この程度の奴なら、こいつ(ハンドキャノン)を使う必要は無いな。」
「弾がもったいない。NINJYA SHOOTERで十分だ。」


NINJYA SHOOTERとは、古来、忍者が使用した手裏剣に酷似した武器で、ガス噴射により、星型の鋭利な刃が敵の身体に食い込み、内臓された圧縮TNT火薬が爆発するという武器だ。


使い捨てではあるが、コストパフォーマンスの高さから、低レベルスクリーマーご用達のライトウェポンである。


「ホストのお出迎えも終わった。」
「いよいよ、楽しいアトラクションに向かうとするか。」


「う~っ」


「なんだ?」


「遊園地でネズミって、ソレ・・・。」


「レベルレッド以前にそんなアミューズメントパークが存在したらしい。」
「今は、変異体がうろつき、その全体がホラーライド状態だがな。」
「まぁ、ここよりは幾分マシな場所だ。」


「はぁ・・・そんなのばっかり(´゜ω゜`)」
うなだれるアル。


「よし、行くぞ!」
「今日のダイブは、様子見だ。」


「レベル2へのエントリーを確認次第、撤収する。」
「気をぬくなよ。」


「らじゃぁ~♪」


いよいよ、BIASの内部に侵入した竜とアル。
滑り出しは好調と見られた。しかし!

その行く手には、未だ見ぬ数多の強敵と罠が、彼らを待ち構えていた。


to be continued・・・