「3E 31 36-にいちゃん。5E 3C 2F 54-目的地はビーストシティだろ?」
妙な数列を唱えながら、カウンターにもたれかけ、話をつづける小男。
どうやら背中に背負ったカスタムPCから脳に結線されている
データバスの内容が言語中枢にリークしているらしい・・・。
「お前は?」
「俺は- 44 3E 3C-ラット。ガイアブラザースの舎弟だ。」
「クレジットさえ貰えれば-FF 2C 00-どんな情報でもお望み次第だ。」
「ようするに情報屋か?」
「-2F 48 44-そんなところだ。」
「で、その情報屋が何の用だ?」
「あぁ。取っておきの情報がある。-C0 C0 80 80-買わねぇか?」
「いらん。」
「おいおい、ちょっと待てよ-00 FF FF-決して損はしない情報だぞ」
「かなりヤバイ奴らが-BF BF-00-あんたの事を探してるんだがな・・・」
「?」
「しかもそいつらは-FD D7 BD-アンタの命を狙っている。」
「と、ここまでの情報はサービスだ-FF 00 FF-どうだい、続きを聞きたくねぇか?安くしとくぜ。」
「そうか。それは大変だ。」
まるで他人事のように平然と言い放つ竜。
「しかも、そいつらが本当に狙っているのは俺の命じゃなくて、
こいつって訳だ。」
内懐から無造作に、一冊の古びた本を取り出す。
現在では珍しい皮の装丁で、表紙には不思議な紋様が描かれている。
「!? 知っていたのか?-00 FF 00-」
「あぁ・・・俺にも高性能の情報収集デバイスがついているんでな。」
チラリとスツールの上で毛づくろいしているアルに目をやる。
「ニャ?」
「何でそんなもんに-61 64 00-手を出したのかはよく分からんが、SITが動き出すぐらいだ。そいつにはとんでもねぇ価値があるんだろ。」
「いったいそいつは?」
SIT。それはレベルレッド以降、暫定政府機構により作られた、Security・Impart・teamの略称である。表向きは統治地の秩序を乱す、ならず者達を規制する警察機構とされていたが、その実、暫定政府機構の不利になる反動因子の強制粛清を行う、ゲシュタポのような存在で、人々からは毒虫のように嫌われていた。
「さぁな。」
「だが、ヤツラにとってはライナスの毛布ぐらいには大切なものらしい。」
「要は価値観の問題だ。」
「あんたも分不相応な問題に首をつっこむと、痛い目をみるぞ。」
「気をつけたほうがいい・・・」
「価値観の-00 FF 00-問題って訳だ。」
「Turue! さすが情報を商品にしているだけはある。飲み込みが早いな。」
「分かった-61 64 00-どうやら俺のビジネスは此処には無いらしい。」
「実は俺もこれからビーストシティに向かうところだ。」
「-2C 00 00-もし、向こうでなにかあったら声かけてくれ、」
「あぁ・・価値観が合致したらな。」
食事と一時の休息を取り、竜とアルが店を出ようと戸を開けた瞬間・・・
「DOM!!」
衝撃波が竜の耳元をかすめた。
「ヤレヤレ・・・早速お出ましか。まったく、落ち着かない町だ。(笑」
「第一級情報犯罪者 RYU KAIMON(開門 竜)持ち出したオブジェクトを返還し、すみやかに投降せよ。」
「これは警告ではない命令だ!さもなくばデリートする!!」
「俺はビーストシティに行かなければならないんだ。」
「こんなところでグズグズしてられるか・・・」
竜のその目には、何者も抗えない強烈な決心が浮かんでいた。
「アル。」
「ニャ?」
「コード・ブルー発動!」
「周囲の状況をアナライズ。アクティブエネミーをロックオンだ。」
「りょ~かい♪」
アルの瞳孔が細く引き絞られ、青色から金色に変化。尻尾が立ち、
耳が微動する。少女のような声は無機質なマシンボイスに変化。
「i acceptance! all data analysis completion. redy to connection!!」
「Turue!」
ハンドキャノンをブラスターモードにチェンジ。
まるで無人の荒野を歩むがごとく、敵に向かい、真っ直ぐに進んでいく。
すべての攻撃を完全予測。最小限の動きで避け、迎撃する。
サイバーオペレーションにより、脳の反応速度と筋力を強化した
ソルジャーだけに使用が可能な銃撃格闘術。ブラストアーツだ!!
竜の攻撃により、次々と倒されていくSITの精鋭達。
死の間際、彼らの顔には驚愕の表情が浮かんでいた。
数刻後、ビーグルのバッテリーと弾丸の補給をウエポンショップで手早く済ませた2人は町の出口に立っていた。
「さて、補給は終わった。出発するぞ」
「えーっ!(゚Д゚;)」
「2~3日休んでいこぉよぉ~TT たまにはセミヒューマンフォームでお風呂にだって入りたいしぃ~」
「False! ここで休んでいればまた、SITが来る。」
「ビーストシティまでたどりつけば特別法が適応される。やつらもおおっぴらには手を出してこれないはずだ。」
「むぅ~・・・しょうがないかぁ・・・┐(´д`)┌」
「そういうことだ。」
「ビーストシティまであとわずかの距離だ。一気につっ走るぞ!」
ビーグルの出力をホイールスピン寸前まで上昇させ、クラッチミート!
強烈な加速とともに発進したビーグルは、彼方に見えるビーストシティに向かい、疾走を開始した。
謎の本、それを追うSIT、竜と呼ばれる男がその身につけた格闘技術。
幾多の謎を残し、新たなる伝説は、魔塔BIASの元に結実していく・・・。
to be continued・・・