数度のエンカウントとバトルを繰り返し、竜とアルがたどり着いたのは、
突き当たりに扉のある袋小路であった。
扉には奇怪な紋様が描かれており、
竜が手を触れると、きしむような音をたて、左右に開いていった。
室内は薄暗く、死臭が漂っており、最奥の祭壇の上に置かれたランタン状オブジェクトが、周囲を怪しく照らし出してる。壁面では、松明、否!
松明の様に光る異形の生物が無数に揺らめいていた。
「うぁ!なにアレ(゜Д゜)」
「キモチワル~」
「ドール(Dhole)だ。」
軽く疼く首筋のアザに手を当て、竜が答える。
懐の古代書は共鳴していない。
エンカウントする眷属の霊格により、感応力が変化するようだ。
ドールとは、スクリーマー達からトーチワームと呼ばれるミミズに酷似した生命体で、頭頂部の生体発光器官から催眠性の光を放ち、引き寄せられた獲物に溶解液を吹きかけ、捕食する。催眠光を遮るバイザー類さえ装着していれば、取るに足らぬ下級ビーストである。
「だが、妙だな・・・」
「なにが?」
「ドールにしてはサイズが小さい。」
「元々のサイズは数百メートル。」
「あそこにいるのは大きめに見ても3メートル足らず。小さすぎる。」
「どういうこと?」
「おそらく、何らかの力によって、抑制されているんだろう。」
祭壇を調べようと歩み寄った、その時!
部屋の中央の窪みが光り出し、奇怪な姿をしたヒューマノイドタイプの
ビーストが揺らぐように出現した。
食屍鬼(グール)。その姿は、まるで膨れ上がった腐乱死体・・・。
ゴムのような弾力のある皮膚、ヒヅメ状に割れた足、イヌに似た顔、その指先にはかぎ爪。ファットマンと呼ばれるビーストである。
「竜!後ろ!!」
「BLAM!」
振り返りもせず、後方のファットマンに向け、ハンドキャノンのエナジーブリッドを叩き込む!あっけなく崩れ落ちる敵。
「よっわ~w」
「いや・・・まだだ。」
「えっ?」
倒されたはずのビーストは、あたかも高速度撮影のような速度で
損壊した体組織を瞬時に修復させ、再び起き上がってきた。
ショットガンモードにシフト!振り返りざま、散弾を射出!!
再び崩れ落ちる敵。
「これで暫くは、静かになるはずだ。」
「しばらく?」
「そうだ。」
「こいつは半幻影だ、手ごたえがなさ過ぎる。」
「スイッチを切らない限り何度でも生き返ってくるはずだ。」
「ということは・・・」
「多分、スイッチは、そこのオブジェクトだ。」
「解析してみてくれ」
「うん。」
アルの瞳孔が縦に細く絞られ、アナライズモードに移行。
体内のナノマシーンが持つデータベースにアクセス/検索。
瞬時に該当する答えを引き出す。
「名称ハンドライト。光子プールタイプのアーティファクトです。」
「接触に対しての、ハザードは認められません。」
「やはりな・・・そいつは、アルハザードのランプだ。」
「明かりを灯すことで、異世界を投影する。」
ドール達はこのオブジェクトに光エナジーを注ぎ込み、オブジェクトは
異世界「幻夢郷」のドールやグールのアストラルボディを不完全な形で
現世に投影。塔の持つ呪力が半実体化させる。
原理は異なるが、先だってエンカウントした際のリッパーの蘇生劇と
同様、永遠に繰り返される悪夢のエンドレスムービー・・・
「スイッチさえ切れば、全てが収束するはずだ。」
台の上のオブジェクトを手にし、上部にある突起を押し込む。
途端、周囲のドールが放つ光がオブジェクトに向けて集まり、
オブジェクトが一瞬輝いた後、収束。
アーティファクトの動作が止まった。
「BINGO!」
周囲のトーチワークの群れとファットマンの死体が、
元々そこに存在しなかったかの様に掻き消える。
途端に照度が下がり、生体隔壁による燐光のみが部屋を、
ぼんやりと照らしだした。
入手したアーティファクトを腰のベルトフックに装着。
「お宝入手だ。移送ポイントの位置は?」
「ここより西方向、5ブロック先のダークゾーンの中だよ。」
「近いな・・・」
「いくぞ、アル。こいつがあればダークゾーンを抜けられそうだ。」
「移送ポイント確認後。即、ESC。」
「シティに戻り、WSの情報収集を行う。」
「よぉ~し、いこかぁ~!」
「ミルクとお風呂が待ってるぞぉ~っと♪」
「なぁ、アル。」
「んっ?」
「お前、それしか楽しみが無いのか・・・」
「・・・(´・ω・`)」
to be continued・・・