aids2018のブログ
  • 05Dec
    • 緊急シンポ「A型肝炎のアウトブレイクと対策」(永易至文)

       2日目にも肝炎に焦点をあてたシンポジウムがあったが、A型肝炎の流行をまえに、学会最終日にも緊急シンポジウムが組まれた。 駒込病院、東京医大、大阪医療センター、九州医療センターから、東京・大阪・九州の状況が報告された。いずれもエイズ拠点病院からの報告で、MSM(男性間で性行為する人)でHIV陽性の患者さんの症例だが、各病院の受診者数から考えと、高い割合の発症が出ているし、このほかにHIV非感染のMSMの発症もあることを考えると、感染流行が如実にうかがわれる。アウトブレイクと称してよい状況が確認された。 ウイルス株の系統分析の紹介もされていた。現在、MSM間に流行している株は、2015年に台湾で、ついで2016年にヨーロッパで流行したものとおなじあり、近年日本で流行してきたものとは異なるという。 欧州での流行開始は、それに先立ちアムステルダムで開催されたLGBTの大規模イベント「ユーロプライド」との関連も指摘されている(ユーロプライド自体は欧州都市で毎年、回り持ちで開催され、世界中から参加者が集まる)。ゲイツーリズムと呼ばれる、ゲイの旅行行動と、旅先での旺盛(?)な経済活動や性行動との関係は、感染症の流行分析にも押さえておきたい視点だ。 日本でも、東京、名古屋、大阪、福岡と、今回の流行地域には、ゲイイベント(パレードやクラブ)やスポット(バー、ハッテン場)が展開し、出会いを促進するツール(スマホアプリなど)と安価な移動手段(早割、LCC等)でつながっている。ゲイツーリズムに乗って運ばれてきたウイルスが、台湾、欧州を経て、日本にも到達したようだ。 今後の対策として、駒込病院の今村顕史医師から、東京で対策に取り組んだ経緯が紹介された。予測しない流行対策に、あらかじめ組まれた予算はない。手持ち研究班費用のやりくりと、MSMコミュニティーー具体的にはコミュニティーセンターaktaとぷれいす東京との共同で、情報発信に努めた。 MSM間の流行ということで、ゲイバッシングにつながらない配慮が求められる。予防にはワクチン接種が有効だが、一般に広報することでワクチン不足を招きかねない。必要な人へダイレクトなメッセージングが大切だ。 同時に、性行為時の注意喚起には限界もある。発症者からは1か月近く、便中にウイルスが見られ(しかもノロウイルス並みに大量)、パートナーなど周囲の人への二次感染への留意も指摘された。 現在、アウトブレイクは収まりつつあるとはいえ、流行は長期化も予想される。2015年に台湾で流行したときも、約1年半、継続したという。ゲイツーリズムの現実も含め、オールジャパンで取り組む必要がある、と強調された。 全体討論でも、(今回は拠点病院からの報告のため)HIVの人へはまだ伝えるルートがあるが、非感染の人へどう伝えるか、またワクチン接種のときMSMが性感染予防だと言いづらいことも指摘された。 MSMコミュニティの一人としては、流行の事実と感染経路を正しく理解し、責任ある機関から終息の声明がされるまで性行動を抑制する、性行為後の身体の異変に注意する(家庭内感染などへの注意)、ワクチン接種の検討などが重要ではないだろうか。接種の費用の考え方や「言い訳」については、前回の拙稿もご参照ください。 aktaによる、MSM向けアラート情報  

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  • 04Dec
    • 会長招請講演『HIV感染症の治療:過去、現在、そして未来』(満屋裕明)

      この数十年、人類は種々の「新興・再興感染症」に遭遇してきた。無論その多くがウイルス感染症で、それらはHIV感染症/AIDS、SARS、エボラ出血熱、West Nile 脳炎、高病原性トリインフルエンザと多彩に及んだ。 我々は対応に困窮した。21世紀はウイルス感染症との戦いになると言われながら、我々はまだ多くのウイルス感染症に対して有効な防衛手段を手にしていなかったからである。1980年初頭に、新しい疾患として登場したHIV/AIDSは、生物学と医学の領域にもかつてない大きなインパクトをもたらした。20世紀後半になって、分子生物学、結晶解析学、構造生物学等が、生物学の領域に進入、基礎生物学と医学という2つの明確に分離されていた領域の距離は一気に短縮された。HIV/AIDS の研究領域はそうした基礎生物学と医学が接近しているものの中では最たるものであろう。それは、次々と死亡して行く主として若年層の男女を目の前にして、基礎生物学と医学が、如何にこの疾患についての理解を深めるかより、何を患者と感染者にもたらし得るかが最も厳しく問われ続けてきたからである。治療法模索の1980年代初頭、AIDSは文字通り「死の病」であった。しかし、HIV/AIDSの病状と予後は今世紀に入っての治療の進歩によって大きく改善、適正な治療を受ければ20歳の感染者の生命予後は40~50 年或はそれ以上とされる程となり、HIV/AIDSはまさに「コントロール可能な慢性感染症」と定義されるようになった。今やHIV/AIDSの化学療法は「予防としての治療(Treatment as Prevention)」という大きな局面を迎えている。既感染者が天寿を全うできるようになって、新規の感染を完全に阻止できれば、『HIV感染者/AIDS発症者ゼロの日』 が射程内に入る。本講演ではHIV感染症の治療薬開発の過去と現在を検証し併せて今後の我々に課された使命について討議する。満屋裕明(国立国際医療研究センター研究所、米国国立癌研究所・NIH、熊本大学医学部附属病院)ブログ編集者注:会長招請講演は12月2日午後1時から第1会場で行われました。  

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    • 風に吹かれてばかりもいられない エイズ予防指針をテーマにシンポジウム (宮田一雄)

       今年1月に改定されたエイズ予防指針について、改定の背景と課題を議論するシンポジウムが学会最終日の4日午前、第7会場で開かれました。 エイズ予防指針は1999年の感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)施行に伴い、最初の指針が半年後に告示されました。それまでのエイズ予防法が感染症法に廃止統合され、エイズ対策遂行の法的な根拠が必要だったからです。流行の状況や治療の進歩、社会的課題の変化などに対応するため、ほぼ6年ごとに見直しが行われており、現行指針は3度目の改定指針となります。エイズ予防指針については、これまでも見直しのたびごとに専門の委員会による議論が重ねられ、おおむね妥当な内容なのですが、その一方で指針が決まってしまうとそのフォローアップが十分にできず、次の見直しの時期には必ず「書いてあることはもっともですが、結局、絵に描いたモチに終わってしまいました」という反省とも批判ともつかない声が上がります。こうした弱点を克服するため厚労省の研究班には「エイズ予防指針に基づく対策の推進のための研究班」が設けられ、日本エイズ学会の松下修三理事長が主任研究者となっています。シンポジウムはその松下理事長と疫学の研究者である人間環境大学大学院の市川誠一教授が座長となり、基礎、社会、HIV検査、臨床の4分野からそれぞれの専門家が報告を行いました。「問題点を洗い直し、どういうことができるかを考える」シンポジウムです。個別の報告を紹介し始めるとあまりに長くなってしまうので、ここでは思い切って割愛するという荒業で対応します。発表者の皆さん、すいません。全体の報告のトーンは、シンポ冒頭で松下座長が「ボブ・ディランの歌を思い出します」と語ったその一言に象徴されていたように思います。予防指針の課題を洗い直していくと、実は「前から言われていたことばかり」であり、「アンサーは分かっているのだけれど、どうやっていいか分からず、風に吹かれてフリーズしている状態」というわけです。日本エイズ学会がこのシンポジウムを企画したのもまさしくこのフリーズ状態を解凍するためでした。もちろん限られた時間の中で解凍作業が完了するわけではなく、来年11月に熊本で開かれる第33回日本エイズ学会学術集会・総会でも引き続き、シンポジウムが開催されるということです。政策へのこうした関与は日本エイズ学会に求められる責務のひとつなのかもしれません。議論の蓄積が(おそらく5年後になると思われる)予防指針改正に反映されることを期待します。 

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    • Legends of AIDS Community(大西赤人)

        今回の日本エイズ学会学術集会・総会では、一般公開HIV/エイズ啓発特別イベント「メモリアルキルト&フォト展 Legends of AIDS Community-エイズ勃興期を駆け抜けた人々」に実行委員の一人として携わりました。1980年代初頭、人類に、ひいては日本に襲いかかった死をももたらす未知の病=エイズに対し、それぞれの立場で立ち向かった「レジェンド(故人)」たちの存在を振り返ろうと試みた企画です。  当事者、医療者、支援者……立場や背景は違えども、何らの治療法もなかった絶望的な時代に、疾病そのものばかりでなく、社会の偏見や差別とも闘った彼らの足跡は、歴史の中に埋もれさせてはならないと思います。 メモリアルキルトは現物を掲示することが出来ましたが、Aゼロ判の大型フォトパネルに関しては、材料となる写真を改めて探さなければなりませんでした。故人を知る人の連絡先が判らなかったり、何とか関係者を見つけ出しても写真を持っていなかったり、苦労がありました。スナップ写真に甘いピントで写っているだけの横顔をトリミングし、"これがパネルになるのだろうか?"と思いながらも、"貴重なショットなのだから"と作業を進めたりもしました。  また、紹介のキャプションは、「レジェンド」周辺に居られた故人を良く知る方にお願いして、新たに書いていただきました。単純な略歴ではなく、ひとりひとりの実像の一端を伝えてくれる文章になったものと思います。  12月1日、2日は大阪市中央公会堂で一般展示が行なわれ、併せて2日、3日、4日の学会場でも一部のキルトとフォトパネル(A1判)が展示されました。辰野金吾が設計に関わったという中央公会堂には初めて足を踏み入れましたが、壮麗な3階中集会室に並んだ「レジェンド」は、厳粛な重みを持って静かに佇んでいました。一方、国際会議場12階のクローク横に置かれたキルトとパネルにも、賑やかに行き交う学会参加者の多くが立ち止まり、目を留める様子が見受けられました。  残念ながら今回、どうしても連絡がつかなかった例、あるいは、連絡はついたものの遺族の方が展示を固辞された例もありました。もちろん、その他にも、たくさんの「レジェンド」がエイズと闘い抜いたはずです。今後とも、それらの人々の生きた証を私たちの記憶に刻んで行きたいと思います。ネットワーク医療と人権 大西赤人

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    • 特別講演3 日高庸晴「性的指向と性自認を視野に入れたエイズ予防教育の実現を」(永易至文)

      「私は白阪会長のもとで社会分野のプログラム委員をしており、各分野の概観を話せと特別講演を仰せつかったのですが、自分の研究のことしか話せないので……」。苦笑しながらそう切り出したのは、宝塚大学の日高庸晴さん。性的マイノリティ当事者、とくに若者調査の第一人者だ。1998年、木原班や市川班といった研究班に属して以来、20年の区切りでもある。 HIVは、MSM間での広がりがその中心であることは言うまでもない。都会に限らず、地方においても同様だ。いまでこそLGBTという言葉は人口に膾炙するが、98年当事、ゲイ・バイセクシュアル男性、ひいては性的マイノリティにかんする信頼できる調査は日本に存在しなかった。 海外にはHIVにかぎらず当事者のメンタルヘルスにかんする調査がすでに蓄積され、自尊感情の低さや孤独感の強さが指摘されてきた。日高さんは企画したネット調査「REACH」でそれらを追試し、日本でも同様の傾向が見られることをつぎつぎ明らかにしていった。 さらに、学校時代のいじめの経験、性教育での記憶、はじめてのセックス、そのときの状況……さまざまなデータをとり、当事者のリアル像を突き止めていった。 現在はゲイ/MSMにかぎらない、レズビアン、トランスジェンダー、Xジェンダーなど、さまざまなセクシュアリティに及ぶ10代の若者の、いじめ、不登校、自傷行為の経験についてもデータが積み重なっている。いじめや不登校では30%前後、MTFトランスジェンダーではじつに57%の経験率だ。一方、一般の児童生徒は3%という。「刃物で自分を傷つけたことがありますか」という自傷行為経験を問う定型的な質問には、首都圏での男子中高生での経験率7.5%という報告に対し、ゲイで3倍近い17%、レズビアンやトランスジェンダーでは50%前後という。 その背後に見えてきたのは、教室で無自覚に、あるいは「ウケ」を狙って発される教師の性的マイノリティにかんするジョーク、いわゆる「ホモネタ」だった。児童生徒は、教師のなにげない一言に深く傷ついている。しかし、教師もまたこれまで性的マイノリティについて学ぶ機会はなかったのだ。(日本性教育協会の機関紙に報告がありますので、あわせてご覧ください。)  教師たちへの取り組みを進めたい。学校で児童・生徒に性の授業を伝えたいーー。あらゆるツテや機会をたどって教育委員会や学校へ働きかける、日高さんの文字通り「死に物狂い」の行動力は、敬服の一言につきる。 しかし、「ようやくアポイントを得て会いに行っても、どの県、どの市の担当者からもなぜか怒られ、説教されるんです。なんでこんな提案をうちにしにくるんだ、と。あれぐらい怒られた時期はなかった」。苦しい日々のなかから、それでもいくつかの学校ーー全国の数に比せば砂浜で指輪を拾うような思いでつながった学校と、取り組みを進めてきた。教師への研修、生徒の実態調査、そして授業案づくり、だ。 生徒の出席番号に紐付けした調査では、生徒たちの性の実態や、生徒のなかにも当事者がいること、授業を受けることで変わっていくことなどが見え、どの生徒がということは当然開示しないが、教師たちは結果報告に一様に驚くという。「子どもの人生を変える先生の一言、授業がある」と日高さんはいう。それはホモネタへの転落であることもあれば、年に一度の授業でも生徒に希望と未来を送るケースでもあるのだ。 2015年4月、文科省は通知を出し、翌年には教師向けの解説を発行。いまや各県・各教委の態度はまさに手のひらを返すようだという。日高さんの多忙な日々はこれからますます続くにちがいない。 しかし、20年まえのその出発点には、HIV感染するMSMの若者たちのリアルに到達し、彼らへのまなざしや社会の環境を変えてゆきたいという社会疫学の視点があったのだろう。医は、病を癒し、人を癒し、国を癒す3階があるというが、国が癒えて、はじめて病も人も癒える。 調査者と改革者の両面をもつ日高さんの、ますますの活躍をお祈りせずにはいられない。

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  • 03Dec
    • U=Uって何だか? その分からない感をキャンペーンの力に (宮田一雄)

       抗レトロウイルス治療を継続し、HIV量が検出限界値未満の状態を維持していれば、HIV陽性者から他の人へのHIV性感染のリスクは実質的にない。このメッセージは《U=U》と呼ばれ、世界各地で理解を広げるキャンペーンが展開されています。日本国内ではどうなのか。学会2日目の3日午後4時半から第5会場でシンポジウム《U=U(Undetectable = Untransmittable) 誰が何をどう伝えるか:陽性者の人権とスティグマゼロへの取り組みを視野に入れて》が開かれました。Undetectable = Untransmittableといわれても、なんだかよく分からないと感じる方がいでしょうね。かく言う私も、たった2つの単語を打つ間に3回も綴りを間違えてしまいました。ああ、ややこしいなあという愚痴は抑えて先に進みましょう。日本語に訳すと『検出限界値未満=感染しない』。えっ、まだ分かりにくい?そうかもしれません。ただし、この日朝の総会では『U=Uの科学的エビデンスを日本エイズ学会として支持する』との立場が公式に確認され、午後の会長講演でも白阪琢磨会長が重ねてそのことに言及しています。今学会注目のイシューと言っていいでしょう。シンポジウムは会場が比較的、小さな部屋だったこともあり、立ち見が出るほどの超満員でした。分かりにくい。でも、気になる。最近はHIV/エイズ対策への関心の低下がしばしば指摘されているだけに、この「気になる感」は重要です。逆にいえば、だからこそ立ち上がり段階のこの時期に課題をしっかり議論しておきたいということでもあります。シンポではまず、創設間もないU=U Japan Projectの山口正純さんが国際的なキャンペーンの流れや考え方を説明しました。これまでの研究の蓄積で、抗レトロウイルス治療を受け、体内のHIV量が検出限界値未満の状態を6カ月以上、維持しているHIV陽性者から他の人にHIVが性感染するリスクは実質的にないというエビデンスが得られています。2016年7月にHIV陽性者やアクティビスト、基礎、臨床、疫学の専門家らが、このエビデンスに関するコンセンサス声明を発表し、キャンペーンはスタートを切りました。この2年余りの間に、国連合同エイズ計画(UNAIDS)や世界の主要都市、および国レベルでも賛同を表明するところが増えています。 (参考までに写真はUNAIDS発行のU=U解説書。API-NETに日本語版もあります)予防としての治療(T as P)がどちらかというと医療提供者中心の予防メッセージであるのに対し、U=UはHIV陽性者の人権を重視し、社会的な排除や差別を解消することに主眼がおかれています。日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスの高久陽介代表は、Futures Japanのウェブ調査などの結果から、検出限界未満なら感染しないということを知っている人の割合がHIV陽性者で80%、ゲイ男性で40%、一般住民30%であることを示し、U=Uの認知度向上がHIV陽性者のQOL向上の観点で重要だと述べました。また、内部障害の身体障害者認定基準がU=Uとの間でミスマッチになっていることから、意識レベルの課題だけでなく、制度的な対応が必要なことも指摘しました。さらに、さまざまな事情でU=Uの達成に至らない陽性者が存在する中で、《U=U「だから」差別しない》 というメッセージでいいのか?という点にも注意を喚起しました。シンポの2日前(世界エイズデー当日)に大阪でU=U啓発のクラブイベントを開催したMASH大阪の塩野徳史さんはU=Uと予防啓発をめぐる以下の6つのメッセージを1年がかりで準備したことを明らかにしました。・みんなリスクを持っている・SEXも恋愛もあきらめない・早く分かればメリットも大きい・つけて、やろうぜ・治療すれば、うつらない・HIV以外にも性感染症はあるそのうえで、パートナーなどに性行為でHIVが感染することに不安を持つ人がその不安を解消できること、キャンペーンを通じHIVステータスについて話せる雰囲気が広がれば、無防備な性行為も変わっていく可能性があることなど、心理面からの予防効果にも期待を寄せました。北海道大学病院の渡部恵子さんは看護師の立場から、医療現場でU=Uについてどう伝えているかを報告しました。会場ではU=U Japan Projectの資料が配布され、日本語のキャッチコピーを募集していることも紹介されました。あくまで私見ですが、「U=U」は分かりにくいメッセージではありますが、その分からなさが逆に「何だろう?」というフックを生み出し、妙に気になるという考え方もできます。キャッチコピーは《U=U》で押し通し、「何だろう?」の部分に分かりやすく説明する文章やビジュアルなどを付けていく手法が日本には適しているようにも思います。U=Uはキャンペーンのメッセージとして訴求力が強く、魅力的ですが、課題も多く抱えています。関心は人によって多様であり、課題もそれぞれの関心のありようによって異なってくるかもしれません。したがって、説明はなるべく簡潔に、しかしいくつも用意する方がいいし、その説明の作成にあたっては、現場のコミュニティのニーズに応えるかたちで日本エイズ学会の専門知を提供するといった関係の構築もあり得ます。そして、こうした関係が持続できれば、それ自体が互いの理解を深める有意義なキャンペーンになりうるのではないか。そんな期待もできそうです。

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    • HIVとA肝・B肝、からまる糸を解くために (永易至文)

       ヴィーブヘルスケア(株)との共催プログラム「HIV診療におけるHBV、HAV感染予防の重要性と共感染のインパクト」を聴講した。 近年、A型肝炎のアウトブレイクが伝えられるなか、時宜を得たセッションだった(明日の緊急シンポジウム「A型肝炎のアウトブレイクと対策」も楽しみ)。 九大・古庄憲浩医師、東大医科研・四柳宏医師から、B型肝炎やA型肝炎についての詳しい解説のほか、名古屋医療センター・横幕能行医師が、HIV診療の現場から陽性者と肝炎との関連について、陽性当事者が自身の肝炎経験について、そして情報発信につとめるコミュニティセンターから、それぞれ報告があった。 横幕医師のお話では、 名古屋医療センターの患者の10%がA型肝炎、B型肝炎は約50%が既往歴がある。 B型肝炎をもつ人の薬剤選択では、HIV薬が同時にB型肝炎の発症を抑える効果もあり、受診ごとに血液検査でチェックもできる(陽性になることで、皮肉なことだが、むしろ健康維持にメリットがある)。 心配なのは、非感染者がB型肝炎にかかったとき。一般の医療者は、B型肝炎で治療中の患者が性的にアクティブで、HIVに感染するとはなかなか考えない。治療中にHIVにも感染すると、B型肝炎の治療薬はHIV治療薬でもあり、そのかん単剤でHIV治療することになる。薬剤耐性ができて、のちにHIV治療の薬剤選択の幅が狭まることがある。 名古屋で開催しているコミュニティ向け検査会(NLGR)では、B型肝炎は20%ぐらいの既往が見られるが、残りの8割の人に、肝炎についてーー具体的にはワクチンで予防できることを伝えていく必要がある。 といったことが興味深かった(私のメモです。不正確な記述はご容赦ください)。 コミュニティセンター「akta」の岩橋恒太氏は、昨年来、A型肝炎の流行が報告され、アラート(警報)を発する活動のなかで、つぎのようなことを指摘した、。 性感染症としてのA型肝炎という認識が、一般の医療者に乏しい。 当事者間でも流行中の情報が伝わっていないし、1990年代末の前回の流行についても知られていない。 予防法はあるが、ワクチン接種にはお金がかかる。勧めづらい。 当初、「ケツナメで感染する」といった伝え方をしていたが、肛門に入れた指や生で挿入したペニスなどを口に含むことで、糞便中のウイルスがうつることもあるので、きめのこまかい伝え方が必要。 などといった話をされた。 性感染症としての肝炎については、もっともっと知ってほしいテーマだ。私は2000年代のはじめ、自分が編集していた同性愛者のコミュニティマガジンで、毎号、HIVなどセクシュアルヘルスにかんする記事にも注力した。その2号で「肝炎を病むの記」と題し、B型肝炎で入院したゲイの体験記と、しらかば診療所の井戸田一朗医師の解説記事を作成したことがある。今回のプログラムでも、具体例が必要と強調されていた。 上記の記事でも、最後にワクチン接種が勧められていた。現在、私は陽性者をふくむ性的マイノリティ版のライフプランニング相談などにあたっているが、生命保険・医療保険についての問い合わせはやはり多い。公的健康保険の高額療養費制度もあり、入院・治療に多額のお金はかからず、民間の医療保険に入る必要は少ない。むしろ「病気にならない」ことが大事。具体的には、禁煙、減量(脱ガチムチ)、そして性感染症をもらわない(陽性者はこれ以上、もらわない)ためのセーファーセックスがなによりの「医療保険」だ(ジャンププラスさんのニューズレターもご参照。こちらの4〜5ページ)。民間保険に入るおカネがあれば、ワクチン接種こそが保険かもしれない。 セクシュアルヘルスという観点とともに、具体的なおカネ回しの視点からの語りはいかがだろう。 一般病院で接種するときも、「来年、東南アジアへ短期駐在が内定したので」など、上手にウソをつくことも大事、とつけ加えている。 (写真は、aktaが配布しているA型肝炎にかんするパンフレットとカード)

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    • 今日の学会場から

      ワークショップ看護受診中断者を"ゼロ"にする(12月2日)看護師、ソーシャルワーカー、心理士の3人の演者の皆さんのご発表とフロアとの質疑応答を通して、受診中断を予防するための方策を検討しました。受診中断に関連するメンタルヘルスのアセスメントを定期的に行うこと、スマートフォンのアプリを用いて服薬・受診等に関して意識づけを高める工夫を行うこと、受診の無断キャンセルがあった際に介入を行うことなど、日常の臨床で取り組むことができる方策が具体的に示されました。患者さんと丁寧に向き合うチーム医療の重要性を再確認しました。大阪医療センター臨床心理室安尾利彦

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  • 02Dec
    • 共催シンポジウム「HIV感染症とAging(臨床)」(永易至文)

       医薬の発達でHIV陽性者の余命が平均寿命に近づく「祝福すべき」状況とともに、さまざまなセッションで、高齢化に伴う課題が深刻さを増していることが報告されている。このシンポジウムでは、まずACCの照屋勝治医師から、高齢化にともなう厳しい状況の報告が続き、私はメモを取る手が休まらなかった。 ACCで患者数のピークは、2002年には20代であったが、いま(2017年)は40代であり、50代以上の患者は34%とのこと。じつに3人に1人は50代以上となった現実に、かつての「エイズは若い人を蝕む病」のイメージは完全に消えた観がある。 そのときなにが問題となるか? さまざまな合併症が出現しており、HIV自体の治療はうまくいっているものの、合併症治療に課題が生じているという。腎臓はHIV(ウイルス)自体に腎臓障害を誘発する作用があったが、一部の治療薬の薬毒がさらに腎臓に打撃を与えるものだった。糖尿病も血糖コントロールが不十分で、慢性腎疾患へ。透析も年2~3人ずつ増えている。心臓疾患も少なくないほか、骨粗鬆症は40代から男性でも5割ぐらいに骨塩量減少がみられる。(医療に素人のメモなので、不正確な記述はお許しください。) そしてHIV陽性者は加齢、すなわち身体の老化が通常より10年早く進行し、多くの合併症の併発は、多種多様な服薬を余儀なくさせる。ACCでは65歳以上の35%は1日に10剤以上を服薬しており(ポリファーマシー)、そうすると薬剤間の相互作用情報が不十分で、思わぬ副作用が懸念される事態もあるという。 合併症への留意として照屋医師があげたのは、タバコと体重(減量)。ゲイコミュニティに属する私は思わず膝を打った。社会的ストレスのせいか、ゲイに喫煙者が多い印象があるし、モテる体型としての「ガチムチ」はいまも人気だ。これはMSMの陽性者にそのまま重なるのだろう。禁煙はできても、彼らに体を小さくし、ヒゲをそらせることは、そのアイデンティティを挫(くじ)くものでもあるかもしれない。モテのためなら死んでもいいのか……。 そこに加え、照屋医師はメンタルヘルスの低下が黙過できないことを紹介した。主には適応障害とうつ病であるが、患者の8.6%がメンタル疾患の診断を受けている。そうした患者は、しばしば受診中断をきたすことになる。また、薬物使用の経験率も、一般人に比べて非常に高い(これはゲイ側の集計数にRUSHが含まれるせいかもしれないが)。 こうしたメンタルヘルスの課題は、しばしば命にもつながっている。ACCでは陽性患者が年に10〜15名程度亡くなり、たしかに発症から死へ至るかたは現在もいるが、数人は自殺をされ、それ以上に、なぜか家で亡くなっていたというパターンも少なくない。死去者の20%弱が自死と不明死という。筆者にも、そのように突然死した陽性の友人・知人がいる。 後半、北海道医療センターの上村恵一医師からは。精神科医として自殺予防の視点から、精神疾患のいくつかについて解説があった。そのうえで、HIV診療と精神科診療との連携が、患者も精神科受診を遠慮する、主治医側も紹介しにくいと思い込む、受け手の精神科の側もHIVについて理解が乏しいなど、連携の齟齬について、現場ならではの観察が述べられた。 最後に印象に残ったのは、患者の、自分が他人の迷惑になっているという「負担の知覚」を減少させ、自分の居場所がないという感覚を払拭して所属意識を回復させることが、自殺予防の肝であるとまとめられたことだった。 ひるがえってゲイコミュニティのことを考えた。 ゲイに生まれてごめんなさい、HIVにかかってごめんなさい、ゲイや陽性の僕はそもそも家にも学校にも会社にもいてはいけないんだ……骨がらみ刻み込まれてしまっているこの感情は、どうすれば治すことができるのか。医師は、薬は、病院は、どこかにあるのだろうか。 副題につけられた「重要性を増すメンタルヘルスマネジメント」が、ひときわ重く響いて見えた。(特定非営利活動法人パープル・ハンズ事務局長) 

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    • シンポジウム8と10(塩田達雄)

      12月3日の基礎系のシンポジウムは、シンポジウム8『HIV cure & reservoir』とシンポジウム10『HIVワクチン開発の過去、現在、未来』です。『HIV cure & reservoir』で発表するDr.Ole Schmeltz Søgaardは、HIV感染症のcureを目指すデンマークの臨床家ですので、臨床の先生方にも是非聞いて頂きたく思っております。また『HIVワクチン開発の過去、現在、未来』は16:30 ~ 18:20の予定ですが、ここで発表予定のDr.Jerome H. Kimの発表だけ、Dr. Kimご自身のご都合で11:25 ~ 11:50に行われます。有効性が確認された唯一の予防ワクチンの臨床試験RV144のお話しを伺う予定ですので、奮ってご参加下さい。

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    • シンポジウム2と4(塩田達雄)

      基礎系のシンポジウム2「インターフェロンのインパクト」とシンポジウム4「HIV感染症とAging(基礎)」とが終了しました。参加者は少なめでしたが、どちらも活発な議論が交わされました。シンポジウム2では、徳永先生が、HIV感染に対するインターフェロンの影響について見事なレビューをお話下さり、過去のcontroversialな報告も要はstoichiometryの問題である、との明快な解説をして頂きました。一方、ジンポジウム4では、西川先生から、がんもHIVと同様に免疫逃避を繰返して発症に至るとのお話を頂きました。

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    • 問われる人権課題 ポジティブトーク(宮田一雄)

       HIVに感染している人たちが当事者として自らの「いま」を語る「ポジティブトークセッション」が学会初日の12月2日午後2時から、第5会場で開かれました。 昨年の第31回学術集会・総会で初めて開かれ、その時の生島嗣会長から第32回の白阪琢磨会長にも、とくに続けてほしいという要請があったセッションです。 その要請にこたえ、今回は日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスの高久陽介会長に加え、今回は尾辻かな子衆院議員が座長となり、3人の男性が登壇しました。 最初の方は薬物使用者として逮捕され、刑務所での生活も体験されていますが、その刑務所生活の中で「すごく人間扱いされ、社会では人間扱いされなかったのにどうしてだろう」と感じたそうです。HIV陽性であること、薬物を使用していることに対し、いわゆる日本の社会が、刑務所と比べても人を「人間として扱おうとしない」要素を抱え込んでいるとすれば、そのことはHIV/エイズ対策が担うべき課題のひとつでもあります。 この方はまた、出所時の経験として、「おかえり」と声をかけられたことが、生きる支えとなったことも、涙で声を詰まらせながら語っていました。個人の感想で恐縮ですが、ああ、ここにも榎本さんに助けられた方がいるといまさらながらにあの人懐こい笑顔を思い出しました。2番目の方は、新宿2丁目のバーで親しくなった男性から(たぶん催眠作用のある薬物を入れた)飲み物を飲まされ、意識を失っている間に性行為を強要されたことがHIV感染のきっかけだったと語っています。性暴力を受けた経験が心理的に服薬の継続を困難にし、支援のサービスを受けることもためらわせてきたということです。今は特定非営利活動法人ぷれいす東京のミーティングに参加するようなり、ボランティアスタッフの研修も受けて同じ病気で苦しむ人たちの役に立つことを目指しています。そうなるまでには、ぷれいす東京に100回から200回は電話をかけ、電話相談スタッフからは「名前を言わなくても声を聞いただけで分かりますよ」と言われるほどだったそうです。支援には長い積み重ねが必要なことを示すエピソードでもあります。最初の方も、2番目の方も、HIVに感染して自分は幸せだったと思うと語っていたことも印象的でした。HIVに感染しなければ出会えなかった人たちと出会うことができ、経験できなかった体験を得ることもできたということです。もちろん、その背景にはHIV感染や薬物使用に伴う事情、あるいはそこに至る様々な困難を背負ってきたという事情もあるでしょう。2番目の方は、ぷれいす東京のボランティア研修を受けた時からポジティブトークのスピーカーとして話すことを目的にしてきたとも語っていました。セッションの意義はおそらく、当事者の話を聞くことと同時に、自らが語りたいことを語れる場が存在することにもあるようです。3番目の方は、内定の際にHIV感染を告げず、虚偽申告をしたとして、病院から就職の内定取り消しを通告された方です。今年7月に内定取り消しは違法だとして病院を運営する社会福祉法人「北海道社会事業協会」(札幌市)に損害賠償を求める訴訟を起こし、報道でも取り上げられたので、ご存知の方も多いと思います。報道では十分に伝えきれていない経緯などを丁寧に報告されました。お話の内容はあまり詳細に報告できませんが、「嘘をついた」と言われる過程にも嘘とは言えないやり取りがあったように私には受け止められました。また、それ以前に医療機関が個人情報の保護をどこまで重視しているのか、厚生労働省のガイドラインが有名無実化しているのではないかといった問題点も浮上しています。座長の高久さんからは「日本のエイズ対策の中で人権の問題に真剣に取り組む必要がある。HIV感染を理由にして医・職・住(いしょくじゅう)の権利が失われている状態には耐えられない」との指摘がありました。 

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    • エイズイベント1日目終了(運営事務局)

      一般公開初日が無事終了しました。皆様誠にありがとうございました。ご出演いただきましたET-KING様からもメッセージを頂戴いたしました。大阪市立中央公会堂 12月2日(日)  ▼【Legends of AIDS Community -エイズ勃興期を駆け抜けた人々-】   メモリアルキルト&フォト展 ▼【UNAIDS世界エイズデー展示 "MILES TO GO. GAPS TO FILL"】 ▼【エイズデーポスターとキャンペーンテーマで振り返る日本のエイズ展】 ▼【薬と医療の啓発塾 健康相談&体験フェア】 ▼【エイズ啓発スペシャルトーク:久坂部羊&仲野徹】 ▼【第1回HIV/AIDS啓発ジャズコンサート】 大阪大学 The New Wave Jazz Orchestra 高槻市立冠中学校 The Crown Jazz Orchestra Takatsuki 大阪芸術大学 O.U.A.Big Band プロミュージシャン 大阪音楽大学 Jazz Ensenble Two

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    • シンポジウム3 関西圏におけるHIV/AIDS・薬物依存のセーフティネットの現状

      「安心していられる場」がキーワードのように感じられました。広報のことが話題になりました。「安心していられる場」を必要としている人がどうつながれるのか?当事者の仲間同士のネットワークによる紹介は、つながれている人にだけしか提供できないかもしれません。HIV診療に携わる医療従事者が窓口になるためには、私たちが、地域の社会資源と顔の見える関係を築いておかなければならないんだなぁと改めて感じました。薬物のことは得意ではない…と私たち医療従事者が避けてしまうと、薬物依存からの回復を目指したい人が、地域の社会資源につながれないのかもしれない。間に精神科医療機関があれば安心?でも、それを引き受けてくれる精神科医療機関があるのか???窓口をどう引き受けていくのか…医療ソーシャルワーカーとしてこれからも考えていきたいと思いました。

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  • 01Dec
    • 世界エイズデーのプレイベントに参加して(塩田達雄)

      大阪市中央公会堂でのプレイベントに参加しました。会場である大阪市中央公会堂が100周年を迎えることや世界エイズデーが30周年を迎えること等々を全く知らなかった私ですが、松井大阪府知事、吉村大阪市長のビデオメッセージに始まるこのプレイベントには強い感銘を受けました。白阪会長自身のお言葉を借りると「少々派手目な市民公開講座」でしたが、赤字状態が続く国家予算の元、「選択と集中」が求められる今日、世界エイズデーに併せて、より「派手なイベント」を開催する方が、より効果的な啓発が可能かも知れないな、と思いました。この点、社会系の先生方による検証をお願いしたく思います。

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    • 日本のLegendsとの邂逅 カールソンUNAIDS事務局次長が特別イベントに参加(宮田一雄)

       世界エイズデーHIV/エイズ啓発特別イベント初日の12月1日、国連合同エイズ計画(UNAIDS)のナンバー2であるグニッラ・カールソン事務局次長とアジア太平洋地域事務所のイーモン・マーフィー所長が会場の大阪市中央公会堂を訪れました。    (写真 大阪市中央公会堂前で、左から慶應義塾大学の樽井正義名誉教授、カールソン事務局次長、マーフィー所長) イベントには高校生など若い参加者が多かったことから、スウェーデンの元国際開発大臣でもあるカールソン事務局次長は、2030年が達成目標となっている国連の持続可能な開発目標(SDGs)を紹介し、「HIV/エイズ対策といま取り組むことが、世界を変える大きな力になります」と次世代へのメッセージを伝えました。 2016年にスタートしたSDGsは2030年までに世界が達成すべき17項目の共通目標を掲げています。公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行終結は、このうち保健分野に焦点を当てた目標3の重要なターゲットに位置づけられているほか、ジェンダーの平等や教育など他の多くの分野にも大きな関連があるからです。 また、カールソン事務局次長は3階の展示コーナーを訪れ、メモリアルキルト&フォト展『Legends of AIDS Community - エイズ勃興期を駆け抜けた人々』などの見学しながら、展示を担当するHIV陽性者やアクティビストのグループから日本のHIV/エイズ対策の歴史について、詳しく話を聞きました。とくに血液製剤でHIVに感染し、亡くなった赤瀬範保さんが制作した『愛のキルト』については、日本のメモリアルキルト展示運動の創設者として知られる染色家の斎藤洋さんから1990年代前半の日本国内の雰囲気を含め、制作当時の模様を聞き、深く感銘を受けていました。 HIV/エイズの流行について、国際機関は日本をフィールドではなく、資金拠出者としてのみ見がちな傾向が以前からあります。その意味では、キルトや写真を通して日本国内でHIV/エイズの流行との困難な闘いを続けてきた人たちの存在を具体的に知り、なおかつ若い世代の人たちにはいまエイズ終結を目指すことの意義を広い視野のもとで伝えるなど、この日のカールソン事務局次長の参加はそれ自体が過去から未来へとつながる重要なイベントでもありました。 カールソン事務局次長は第32回日本エイズ学会学術集会・総会の会場で初日の2日午後に開かれる一般公開講座でも、冒頭でスピーチを行う予定です。

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    • 朝早いですが

      明日から始まる今年のエイズ学会。基礎のシンポジウムの1つ目「インターフェロンのインパクト」は、初日=2日(日曜日)の朝1番です。シンポジウムの最初の演者でもある国立感染症研究所の徳永先生に多少のレビューをしていただくようにお願いしました。みなさま、是非、ご来場下さい。第五会場「10階1009」9時からです。よろしくお願いします。(文責:阪大微研;中山英美)

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    • いよいよ開幕 大阪怒涛の4日間 (宮田一雄)

       いろいろあった2018年もとうとう師走に突入しました。12月最初の土曜日は30周年の節目を迎えた世界エイズデーでもあります。大阪市中央公会堂(大阪市中之島5丁目3-51)では午後1時から、第32回日本エイズ学会学術集会・総会(2~4日)と連動した一般公開HIV/エイズ特別イベントが開幕します。2日の日曜日まで、2日間の日程です。 盛りだくさんのイベントが予定されています。プログラムは今学会公式サイトの第32回学会の公式サイトにも掲載されているのでご覧ください。学会最終日まで、大阪万博開催決定記念・・・ではないけれど、怒涛の4日間の幕開けです。  2日目は学会初日とかぶります。どちらに行くか。どちらも行きたいよ。学会参加の皆さんにとっては、ちょっと切ないですね。中之島を東奔西走することになるかなあ。 3階の展示会場では、メモリアルキルト&フォト展『Legends of AIDS Community - エイズ勃興期を駆け抜けた人々』も2日間、開催しています。 《エイズ出現から35年余り、適切な治療を受ければ、この病によって亡くなる例は稀となりました。しかし、エイズが勢力を増しつつあった絶望的な時代に闘ったレジェンド(故人)の足跡を忘れることは出来ません。そこには、とりわけ後世の視野に基づけば、不足や誤りも含まれていたかもしれませんが、私たちは一面的な評価とは離れ、ありのままの彼らを記憶に留めて行きたいと考えます》 う~ん、これは行かねば、ということで開幕前の準備が整ったところで会場写真を撮らせていただくことにしました。 こんなときに私ごとで恐縮ですが、レジェンドのおひとり広瀬泰久さんの写真の脇には、若き日の私もちょこっと登場しています。その縁でささやかな思い出の文章も載せていただきました。寄稿の動機は単に私が目立ちたいだけだったのですが、それはそれとして(一面的な評価とは離れていただいて)、あのころの、そして広瀬さんの記憶と雰囲気の一端でもお伝えすることができれば幸いです。

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  • 30Nov
    • 12月2日に一般公開講座『彼ら/彼女らが語るとき、今わたしたちができること』 (東優子)

      誰もが尊厳とプライドをもち 、自分らしく生きられる社会を ―スティグマ・差別・偏見にさらされながら、禁止法の壁に阻まれながらも、逆境に屈することなく闘い続ける活動家がいます。ひとりひとりの活動が、仲間とつながり、大きなうねりとなって 医療・福祉・社会を変え、「エイズ」を変えてきました。ブラジルやマレーシアを拠点に、世界で活躍してきた二人の活動家(José Araújo Lima FilhoとKhartini Slamah)をお招きし、活動の軌跡を辿り、市民・当事者 運動と官民協働のありかた、国際社会の潮流について学びたいと思います。冒頭には、UNAIDS事務局次長Gunilla Carlssonさんにもお話いただきます。広く一般市民の方にご参加いただけるよう参加費無料で、同時通訳がつきます。チラシはコチラ( https://www.c-linkage.co.jp/aids32/subimg/1121.pdf )からダウンロードしてください。     日時:12月2日(日)14:00-16:00(13:40受付開始)会場: 大阪国際会議場12F 特別会議場テーマ:医療・福祉・社会を変える当事者の「ちから」〜市民運動・官民協働のありかたを海外の事例に学ぶ〜 ※無料・同時通訳あり講師の紹介ジョゼ・アラウージョ・リマ・フィーリョさん(ブラジル)NGO「EPAH-Espaço de Prevenção e Atenção Humanizada」代表。サンパウロ市在住のブラジル人社会活動家。1985年に HIV陽性と診断され、HIV陽性者自身による相互支援・権利獲得運動の黎明期に参画。治療薬のなかった時代、エイズがまだ「死の病」とされた時代を生き抜き、当事者運動のリーダーとして世論や政策を力強く動かしてきた。1994年7月に横浜で開催された「世界エイズ会議」に参加して以来、全国各地で講演と対話を重ねてきたアラウージョさんに影響を受けた専門家・活動家は日本にも多い。カルティニ・スラマ(マレーシア)マレーシアを拠点に、国際社会を舞台に精力的に活動を続けている社会活動家。同性愛や「異性装」(出生時に割り当てられた性別に期待されるものとは異なるジェンダー表現を含む)が法的に禁止されている同国で、1980年代よりトランスジェンダー・セックスワーカーとして当事者運動を牽引。APTNやAPNSWといった国際的なネットワーク組織の立ち上げにも関わるなど、国境を越えた当事者コミュニティの「顔」。30年にもおよぶ活動功績が讃えられ、2017年11月にはAPCOM・HEROアワードなどが授与されました。

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  • 28Nov
    • 『曝露前予防服薬(PrEP)の提供とモニタリングに必要な最低基準』(宮田一雄)

      曝露前予防服薬(PrEP)は、HIVに感染していない人がHIV感染の予防目的で抗レトロウイルス薬を服薬することで、治療研究の成果がもたらした新たな予防策として注目されています。対象となるのは、HIV感染の高いリスクに曝されている人に限定されているのですが、じゃあ、誰がその「高いリスクに曝されている人」であり、具体的にどのようなかたちで服薬を進めていくべきなのか(逆にいえば、どのようなかたちでは服薬してはならないのか)。スウェーデンのストックホルムでは11月15、16日の2日間、『EU/EEAにおける曝露前予防服薬:PrEPサービスの提供とモニタリング:最低基準と主要原則』と題した会議が開かれ、このあたりの事情がヨーロッパではどうなっているのかを話し合いました。専門に研究している方にはもう明確になっていることなのかもしれませんが、「そうかPrEPというものがあるのなら、試してみようかな」と思っている人にはなかなかそうした知識や情報が届いていないという現実もあるようです。 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトは11月27日(火)付のFeature News《Call for minimum standards of PrEP provision and monitoring in Europe》でこの会議の様子を伝えています。エイズ&ソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログには日本語仮訳を掲載しましたので、こちらも参考にしてください。現状は『PrEPを提供している西欧の数都市では、ゲイ男性など男性とセックスをする男性の間での新規HIV感染診断数が減少している。しかし、ヨーロッパ全体でみるとPrEPへのアクセスや理解は、HIVの流行の行方を変えるだけの影響を与えるには至っていない』『域内のPrEP利用者のほとんどはゲイ男性など男性とセックスをする男性で占められているが、その大多数は正式にPrEPのアクセスを得ているわけではなく、多くの人がオンラインで薬を入手し、医学的な支援とモニタリングを受けないままに服薬を続けている』ということです。会議では『高度専門機関の枠を出て、PrEP利用者となり得るコミュニティの人たちと相談しながら提供を進めることがより広範な保健医療ケアの入り口となる』ということも指摘されました。また、PrEP普及に見合った対応の整備は、予算の増額を期待せずに進めなければならないという切ない事情を抱えているところが多いので、『PrEP提供者の分散化、より広範な保健サービスとの統合が求められることになる。このため、サービス提供者にはPrEP提供に必要な最低限の安全基準を示しておかなければならない』ということです。では、そのために何をするのかということですが、この辺りはいろいろ書いてあるのでHATプロジェクトの日本語仮訳をご覧ください。もちろん、これはヨーロッパの話であり、日本ではまた事情が異なる面もあります。同時に、日本もいずれ同じ課題に直面するかもしれません(あるいはすでに直面し始めているのかもしれません)。第32回日本エイズ学会学術集会でPrEPが取り上げられる機会には参考にしていただければ幸いです。

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