曝露前予防服薬(PrEP)は、HIVに感染していない人がHIV感染の予防目的で抗レトロウイルス薬を服薬することで、治療研究の成果がもたらした新たな予防策として注目されています。対象となるのは、HIV感染の高いリスクに曝されている人に限定されているのですが、じゃあ、誰がその「高いリスクに曝されている人」であり、具体的にどのようなかたちで服薬を進めていくべきなのか(逆にいえば、どのようなかたちでは服薬してはならないのか)。スウェーデンのストックホルムでは11月15、16日の2日間、『EU/EEAにおける曝露前予防服薬:PrEPサービスの提供とモニタリング:最低基準と主要原則』と題した会議が開かれ、このあたりの事情がヨーロッパではどうなっているのかを話し合いました。
専門に研究している方にはもう明確になっていることなのかもしれませんが、「そうかPrEPというものがあるのなら、試してみようかな」と思っている人にはなかなかそうした知識や情報が届いていないという現実もあるようです。
国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトは11月27日(火)付のFeature News《Call for minimum standards of PrEP provision and monitoring in Europe》でこの会議の様子を伝えています。
エイズ&ソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログには日本語仮訳を掲載しましたので、こちらも参考にしてください。
現状は『PrEPを提供している西欧の数都市では、ゲイ男性など男性とセックスをする男性の間での新規HIV感染診断数が減少している。しかし、ヨーロッパ全体でみるとPrEPへのアクセスや理解は、HIVの流行の行方を変えるだけの影響を与えるには至っていない』『域内のPrEP利用者のほとんどはゲイ男性など男性とセックスをする男性で占められているが、その大多数は正式にPrEPのアクセスを得ているわけではなく、多くの人がオンラインで薬を入手し、医学的な支援とモニタリングを受けないままに服薬を続けている』ということです。
会議では『高度専門機関の枠を出て、PrEP利用者となり得るコミュニティの人たちと相談しながら提供を進めることがより広範な保健医療ケアの入り口となる』ということも指摘されました。
また、PrEP普及に見合った対応の整備は、予算の増額を期待せずに進めなければならないという切ない事情を抱えているところが多いので、『PrEP提供者の分散化、より広範な保健サービスとの統合が求められることになる。このため、サービス提供者にはPrEP提供に必要な最低限の安全基準を示しておかなければならない』ということです。
では、そのために何をするのかということですが、この辺りはいろいろ書いてあるのでHATプロジェクトの日本語仮訳をご覧ください。
もちろん、これはヨーロッパの話であり、日本ではまた事情が異なる面もあります。同時に、日本もいずれ同じ課題に直面するかもしれません(あるいはすでに直面し始めているのかもしれません)。第32回日本エイズ学会学術集会でPrEPが取り上げられる機会には参考にしていただければ幸いです。