世界エイズデーHIV/エイズ啓発特別イベント初日の12月1日、国連合同エイズ計画(UNAIDS)のナンバー2であるグニッラ・カールソン事務局次長とアジア太平洋地域事務所のイーモン・マーフィー所長が会場の大阪市中央公会堂を訪れました。
(写真 大阪市中央公会堂前で、左から慶應義塾大学の樽井正義名誉教授、カールソン事務局次長、マーフィー所長)
イベントには高校生など若い参加者が多かったことから、スウェーデンの元国際開発大臣でもあるカールソン事務局次長は、2030年が達成目標となっている国連の持続可能な開発目標(SDGs)を紹介し、「HIV/エイズ対策といま取り組むことが、世界を変える大きな力になります」と次世代へのメッセージを伝えました。
2016年にスタートしたSDGsは2030年までに世界が達成すべき17項目の共通目標を掲げています。公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行終結は、このうち保健分野に焦点を当てた目標3の重要なターゲットに位置づけられているほか、ジェンダーの平等や教育など他の多くの分野にも大きな関連があるからです。
また、カールソン事務局次長は3階の展示コーナーを訪れ、メモリアルキルト&フォト展『Legends of AIDS Community - エイズ勃興期を駆け抜けた人々』などの見学しながら、展示を担当するHIV陽性者やアクティビストのグループから日本のHIV/エイズ対策の歴史について、詳しく話を聞きました。とくに血液製剤でHIVに感染し、亡くなった赤瀬範保さんが制作した『愛のキルト』については、日本のメモリアルキルト展示運動の創設者として知られる染色家の斎藤洋さんから1990年代前半の日本国内の雰囲気を含め、制作当時の模様を聞き、深く感銘を受けていました。
HIV/エイズの流行について、国際機関は日本をフィールドではなく、資金拠出者としてのみ見がちな傾向が以前からあります。その意味では、キルトや写真を通して日本国内でHIV/エイズの流行との困難な闘いを続けてきた人たちの存在を具体的に知り、なおかつ若い世代の人たちにはいまエイズ終結を目指すことの意義を広い視野のもとで伝えるなど、この日のカールソン事務局次長の参加はそれ自体が過去から未来へとつながる重要なイベントでもありました。
カールソン事務局次長は第32回日本エイズ学会学術集会・総会の会場で初日の2日午後に開かれる一般公開講座でも、冒頭でスピーチを行う予定です。