こんにちは。
このブログでは、鍼灸師として大切な3つの力――
①治療力
②知識
③コミュニケーション力
についてお届けしてきました。
最終回となる今回は、**「コミュニケーション力」**です。

■ 治療が上手くても、通ってもらえない理由
「治療には自信があるのに、なぜかリピートが少ない」
「患者さんが途中で来なくなってしまう」
そんな悩みを抱えている鍼灸師は少なくありません。
その原因の多くは、コミュニケーション不足にあります。
どんなに治す力や知識があっても、
「この先生は分かってくれる」「信頼できる」
そう思ってもらえなければ、患者さんは継続して通院しません。

■ 鍼灸師に求められる“聞く力”と“伝える力”
コミュニケーションには2つの側面があります。
1.患者さんの話をしっかり聞くこと
 何に困っているのか、何を期待して来ているのかを丁寧に聞き出すことで、
 患者さんは安心し、心を開いてくれます。
2.こちらの意図をわかりやすく伝えること
 鍼灸の理論や病態の説明を、患者さんの立場に立って噛み砕いて話すことが重要です。
 難しい専門用語ではなく、例え話や図などを使って説明すると、
 「なるほど、だから通う必要があるのか」と納得してもらえます。

■ 信頼関係がリピートを生む
治療に来てもらい、継続してもらい、そして紹介につなげるには、
信頼関係の構築がすべての基盤です。
これは特別なスキルではなく、
「きちんと向き合う姿勢」や「共感する心」で誰にでも身につけられる力です。
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✅ あなたは患者さんの声をしっかり聞けていますか?
✅ 治療の必要性をわかりやすく伝えられていますか?
✅ 来院のたびに信頼関係が深まるようなやりとりができていますか?

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3回シリーズをお読みいただき、ありがとうございました。
今後も、皆さまの臨床や経営に役立つ情報をお届けしてまいります。
 

なぜ鍼灸師に“知識”が必要なのか?
一昔前と違い、いまの患者さんは自分の身体や病気について、驚くほど勉強しています。
ネット検索で病名や治療法、薬の副作用まで調べて来院される方も少なくありません。
そのような時代において、東洋医学の知識だけでは患者さんの信頼を得るのは難しくなっています。
鍼灸師には、現代医学と東洋医学の両面から病態を理解し、説明できる力が求められます。
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東洋医学と現代医学の“橋渡し”をする
たとえば「メニエール病」。
現代医学では内リンパ水腫と診断される疾患ですが、東洋医学では痰飲としてとらえることができます。
このように、現代医学の構造的・機能的な理解と、東洋医学の病理概念の間に整合性を見い出すことが、患者さんに納得のいく説明と治療を提供するうえで非常に重要です。
片方だけに偏るのではなく、両者の視点を重ね合わせることで、
患者さんにとって納得感のある説明と効果的な治療方針が生まれます。
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知識を実践に落とし込むには?
どれだけ本を読んでも、知識は「点」のままでは役に立ちません。
症例を通じて、知識を“線”にし、“面”として整理していく作業が大切です。
日々の臨床で「なぜこの治療が効いたのか」「なぜ効かなかったのか」を分析し、
東洋医学的・現代医学的視点から言語化・記録していくことで、
知識は少しずつ、あなたの“治療戦略”として積み上がっていきます。
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最終的に必要なのは「予測」と「解決」
経験を重ね、知識が体系化されてくると、次の力が育ちます。
•    予後を予測する力:「この患者さんはどれくらいで改善するか」「どういった経過を辿るか」
•    問題解決能力:「なぜ治らないのか」「どこにアプローチを変えるべきか」
これらは、**単なる“知識の量”ではなく、“知識の使い方”**によって養われるものです。
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✅ 東洋医学と現代医学の整合性を意識していますか?
✅ 症例から学びを記録・整理していますか?
✅ 治療の予測や問題解決の視点を持っていますか?
次回はいよいよ最終回。
どんなに治療力があり、知識が豊富でも、それだけでは患者さんは定着しません。
第3回は、「コミュニケーション力」についてお届けします。お楽しみに!

こんにちは。
日々、臨床の現場で患者さんと向き合う中で、こんな疑問を抱いたことはありませんか?
「もっと患者さんの症状を改善させたい」
「リピートにつながらないのはなぜだろう」
「技術に自信はあるのに、うまくいかないことがある」

それは、鍼灸師としての“3つの力”のバランスが関係しているかもしれません。
このメルマガでは3回にわたって、鍼灸師にとって最も重要な3要素――
①治療力
②知識
③コミュニケーション力
について掘り下げていきます。
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第1回:「治す力」がすべての出発点
患者さんは「治りたい」と思って、あなたの院を訪れます。
だからこそ、直後効果があり、再現性のある治療は何よりも重要です。
もちろん、すべての症状が1回で劇的に改善するわけではありません。
しかし、「来てよかった」「楽になった」とその場で実感してもらえる変化を提供できれば、次の予約につながる確率は格段に高まります。

直後効果を正しく評価するには?
以下のような客観的な指標を用いて、変化をしっかり確認することが重要です。
•脈診、腹診
•圧痛や硬結の変化
•理学的テスト
•関節可動域(ROM)の変化

「なんとなく良くなった気がする」ではなく、変化を“見える化”することで、患者さんの納得感と信頼感が高まります。
再現性を持たせるには?
効果があった治療をその場限りで終わらせないためには、
•どのような刺激をどこに加えたのかという具体的な治療法
•患者さんの病態をどう捉えたのかという診立ての過程
これらを丁寧に記録し、検証することが不可欠です。
「なぜ効いたのか」がわかれば、似た症状に対して再現性のある治療が可能になります。
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✅ あなたの治療は直後効果を的確に評価できていますか?
✅ 効果を再現できるような記録・分析をしていますか?

次回は、「知識」をテーマにお届けします。
患者さんの信頼を深めるには、東洋医学だけでなく、現代医学の知識も必要です。
どうぞお楽しみに!
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*五枢会治療セミナー
再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。
興味がある先生・学生の方は下のホームページをご覧になって下さい。
http://5su.muto-shinkyu.com/

QOL(生活の質)向上に資する鍼灸医療 ― 「治す」から「活かす」への視点転換
鍼灸治療の目的が、単なる症状の除去や緩和に留まらず、患者の生活の質(QOL)を包括的に向上させる医療的アプローチであることは、私たち臨床家が常に念頭に置くべき視点です。
QOLとは、単なる健康状態だけでなく、「社会的・精神的・身体的に、どれだけ自立して充実した生活を送れているか」を包括的に評価する概念です。
したがって、鍼灸治療がQOLに寄与しているかどうかを確認するには、患者の生活機能・役割遂行・行動の幅の回復に着目する必要があります。
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◆ QOLに貢献する鍼灸介入の具体例
① 就労・家事の継続・復帰支援
•    慢性腰痛の軽減によってデスクワークや立ち仕事が継続可能に。
•    頸肩腕症候群・四十肩への介入により、家事・育児・重労働が困難でなくなる。
•    週1回の定期施術で倦怠感・頭重感が軽減し、集中力が改善 → 業務能率向上という事例も。
② 趣味・運動・地域参加の回復
•    膝関節痛・股関節の可動域改善により、ハイキング・旅行・社交ダンスの再開が可能になる。
•    呼吸機能・全身倦怠感の改善により、散歩・ボランティア活動の再参加が実現。
③ 高齢者の自立支援・健康寿命延伸
•    転倒予防のための平衡感覚・筋緊張調整に、定期的な鍼灸介入が有効。
•    夜間頻尿・睡眠障害・食欲低下など多因子の機能低下に対し、全身調整的アプローチが功を奏す。
•    結果として、ADL/IADLが維持され、介護予防・施設入所遅延に貢献する。
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◆ 鍼灸師が担う“生活支援型医療”としての立ち位置
西洋医学が病名診断・急性期治療に特化する一方で、鍼灸は以下のような「隙間の医療」を補完・強化する機能を果たします:
•    原因不明の倦怠感や不定愁訴に対する対応
•    多剤併用・過医療への介入予防
•    精神的ストレスによる身体症状への介入
•    医療と生活の“中間領域”をケアする役割
したがって、鍼灸師は「治療者」としてだけでなく、患者の生活の伴走者としての立ち位置を自覚することが求められます。
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◆ 最終メッセージ:「価値は、伝えて初めて伝わる」
患者は「症状が軽くなった」だけでは治療の継続理由を見いだせません。
「以前できなかったことが、できるようになった」
「体の不安がなくなり、行動の自由が戻った」
というような、生活レベルでの変化を認識してもらうことが、治療価値の可視化になります。
🔹 治療効果の最終的な評価軸は、“行動変容”と“生活の回復”です。
🔹 それを患者と共に確認し、言葉にして伝える力が、鍼灸師に求められる“臨床コミュニケーション力”です。
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このようなQOLの視点を日々の臨床に落とし込み、施術中の会話・治療計画・セルフケア指導に織り交ぜていくことで、患者のモチベーションを高め、治療継続率も向上していきます。
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*五枢会治療セミナー
再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。
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―鍼灸治療を“続ける”ことで得られる価値を伝えるー
前回は、治療直後の変化を伝えることで、患者さんに鍼灸の「即時効果」を実感してもらう方法をお話ししました。
しかし、本当の意味での鍼灸の価値は、「続けることで体が変わる」ことにあります。
鍼灸治療は単発で完結するものではなく、体質を根本から整える力があります。
この“変化の積み重ね”こそが、継続の価値です。

たとえば、こんな変化が見られます:
•体質傾向の改善:「冷えやすさがなくなってきた」「胃腸の調子が安定してきた」
•エネルギーの回復:「朝の目覚めが良くなった」「疲れにくくなった」
•風邪をひきにくくなる:「季節の変わり目も元気に過ごせるように」
•睡眠の質の向上:「ぐっすり眠れて、朝スッキリするように」
•若々しさの維持:「顔色が良くなった」「肌のつやが出てきた」

これらは一つ一つが小さな変化かもしれませんが、生活の質を底上げする力があります。
そして患者さんには、「これらの変化は自然に起こったわけではなく、あなたが鍼灸を継続したからこそ得られた成果ですよ」と、きちんと伝えることが大切です。
「続ける意味があった」と思ってもらえたとき、鍼灸治療は“価値のある習慣”になります。
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次回は、鍼灸治療によって得られるQOL(生活の質)の向上についてお伝えします。
「治療」だけではなく「人生そのものが豊かになる」ことを、どう伝えるかを考えていきましょう。
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*五枢会治療セミナー
再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。
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【第1回】鍼灸治療直後の変化を“見える化”して伝える
鍼灸治療の良さは、私たち鍼灸師にとっては「言うまでもないこと」です。しかし、患者さんにとってはどうでしょうか?
たとえ技術的に素晴らしい施術をしていても、それが“価値”として伝わっていなければ、患者さんはその意味を理解できません。

まず最初に伝えるべきは「鍼灸治療直後に起こる変化」です。
効果が“今ここで”実感できることは、患者さんにとって強い印象を残します。

具体的には以下のような変化を、客観的に、わかりやすく伝えましょう:
•脈診の変化:「脈が弱々しかったのが、力強くなりましたね」「早すぎた脈がちょうどよい速度に整ってきました」
•腹診の変化:「お腹の硬さが取れて、全体に柔らかく弾力性のあるお腹になってきました」
•関節可動域の改善:「肩の上がりが〇〇度改善し、上腕が耳につくようになっています」、「膝の動きが〇〇度改善し、踵がお尻につくようになりました」
•筋緊張の変化:「この辺りの張りが緩んでいますね」
•圧痛の変化:「ここを押しても痛みが減っているのが分かりますか?」

ポイントは、言葉と体感の両方で“ビフォー・アフター”を共有することです。
これにより、患者さんは「鍼って効くんだ」と“自分の身体で理解”してくれます。
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第2回では、「鍼灸治療を継続することの価値」についてお伝えします。
継続することで、身体がどう変わるのか? どんな未来が待っているのか? その伝え方を一緒に考えていきましょう。
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再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。
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“伝える”から“一緒に変わる”へ ― 行動変容を支援するコミュニケーション実例
前回は「伝わる説明の工夫」についてご紹介しましたが、今回はもう一歩踏み込んで、患者が“自ら変わりたくなる”関わり方に焦点を当てます。
ただアドバイスするのではなく、患者の中にある意欲や気づきを引き出す。
そのために有効なアプローチを、具体例とともにご紹介します。
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🔸行動変容のステップを見極める:トランスセオレティカルモデル(TTM)
人が行動を変えるプロセスは、以下の5段階に分けて考えることができます。
1.    無関心期(変える気がない)
2.    関心期(少し意識し始めている)
3.    準備期(変えようとしている)
4.    実行期(実際に変えている)
5.    維持期(継続している)
それぞれの段階に応じて、かける言葉は変わります。
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🔸【実例】運動不足が気になる患者さんへの声かけ
🟠 無関心期:
患者:「運動とかまったくやってないですね。時間もないし。」
✅ 鍼灸師:「そうですよね、忙しいと運動まで気が回らないですよね。
“やった方がいい”と思いつつ、やれてない理由って、他に何かありますか?」
👉 相手を否定せず、内省を促す問いかけを。
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🟡 準備期:
患者:「最近ちょっと歩こうかなと思ってるんですよね。」
✅ 鍼灸師:「それ、いいですね!どのタイミングで歩こうと思ってますか?
たとえば帰り道に1駅分だけ歩くとか、どうでしょう?」
👉 行動の具体化・習慣化を一緒に考えるのがポイント。
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🔸やる気を引き出す言葉の力:動機づけ面接の考え方
❌ NG:「〇〇した方がいいですよ」「やめた方がいいです」
✅ OK:「そう思うようになったのは、何かきっかけがあったんですか?」
👉 説得するのではなく、患者の中にある“変わる理由”を引き出す問いかけが、最も力を持ちます。
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こうしたコミュニケーションの工夫によって、
患者の行動が変わり、鍼灸治療の効果がより長く、深く定着するようになります。
次回以降,「こんなケースを取り上げてほしい!」というリクエスト,大歓迎です!
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再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。
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「わかりやすく伝える」ことも治療の一部です ― 説明の工夫あれこれ

鍼灸師にとって、確かな技術を持つことはもちろん大切ですが、それだけでは十分ではありません。
「治療の効果をどう伝えるか」「生活指導をどう納得してもらうか」というコミュニケーションの技術が、患者の行動を変えるカギを握っています。
今回は、「説明の工夫」に焦点を当て、よくあるシーン別にそのまま使える例をご紹介します。
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🔸専門用語を使わずに、身体の状態を伝える
❌ NG:
「気の流れが滞っています。バランスが崩れている状態ですね。」
✅ OK:
「体の中の“めぐり”が少し鈍くなっています。水が流れにくくなると淀むように、今の体もそんな状態になっているんです。」
👉 抽象的な言葉を、比喩(例:水の流れ、道路の渋滞など)に置き換えることで、患者の理解が深まります。
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🔸生活指導も、言い方ひとつで受け取り方が変わる
❌ NG:
「冷えは良くないので、冷やさないようにしてください。」
✅ OK:
「朝晩の寒暖差が大きいですよね。体はそうした変化にすごく敏感です。寝る前に5分だけ足湯をすると、体の緊張が和らぎ、ぐっすり眠れる人が多いですよ。」
👉 「ダメ」ではなく「こうすれば良くなる」という前向きな提案が、行動につながります。
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🔸その患者さんに合った言葉を選ぶ
🧠 理論派タイプには:
「このツボは、腰の筋肉をゆるめる神経に関係しているんです。」
🎨 感覚派タイプには:
「治療のあと、足元がしっかりして体が軽くなるような感覚が出てくると思います。」
👉 相手の思考スタイルに合わせて表現を変えると、納得度がアップします。
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再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。

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鍼灸師に求められる新たな役割 〜「治療者」から「教育者」へ〜
日々の臨床において、鍼灸治療が症状を改善させる力を持っていることは、多くの鍼灸師が実感していることでしょう。しかし、それだけで患者の健康が維持されるとは限りません。
一時的に症状が緩和しても、生活習慣や身体の使い方、ストレスへの対処が変わらなければ、再発は避けられません。
このような背景を踏まえると、鍼灸師には「治療者」としての役割に加えて、「教育者」としての視点」が求められる時代が来ているといえるでしょう。
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鍼灸治療の効果を「持続させる」ために
患者の訴える症状の背景には、姿勢のクセや不規則な生活、運動不足、心理的ストレスなど、身体と心の両面にわたる多様な因子が複雑に関わっています。
鍼灸治療で一時的な改善が見られても、それらの根本的な原因が解消されなければ、治療効果は短命で終わってしまいます。
こうした問題に対処するために必要なのが、患者自身の行動変容を促す関わり=患者教育です。
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患者教育の要は「伝え方」と「タイミング」
教育的アプローチとは、単にアドバイスを与えることではありません。患者に“気づき”を促し、納得と実践に結びつけるためには、伝える技術=コミュニケーション力が重要です。
ここで有用なのが、行動変容のステップを整理した**トランスセオレティカルモデル(TTM)**です。
これは、
1.    無関心期(まだ変わる気がない)
2.    関心期(少し意識し始めている)
3.    準備期(変えようとしている)
4.    実行期(実際に行動を変えている)
5.    維持期(変化を継続している)
という5段階で、人が行動を変えるプロセスを理解する理論です。
たとえば、「運動した方がいい」と伝えても、無関心期にいる患者にとっては響きません。関心期に入って初めて、適切なアプローチが効果を持ち始めるのです。
このように、患者の現在地を見極めたうえでの説明・提案が、教育的関わりの質を大きく左右します。
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教育者としての視点を持つ鍼灸師へ
これからの鍼灸師に求められるのは、単に「症状を取る」技術者ではなく、
患者の健康意識を高め、生活を整える力を引き出すファシリテーターです。
鍼灸治療の効果をより深く、より長く患者の中に定着させるために。
そして、患者の自己治癒力を「日常の中で再起動させる」ために。
私たち自身が、伝える力・支える力をさらに磨いていくことが、これからの臨床において大きな意味を持つでしょう。
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今後のメールマガジンでは、実際の説明の工夫や、患者教育に役立つコミュニケーションの実例もご紹介していく予定です。ぜひご期待ください。

【患者教育の実践②】――治療効果を高める「食事・運動・セルフケア」の科学的根拠
鍼灸治療の効果を最大化・長期化するためには、施術そのものだけでなく、患者の日常生活への介入が欠かせません。
前回のメルマガでは「睡眠・労働時間」といった生活リズムの重要性について取り上げました。
今回は、「食事」「運動」「セルフケア」の3つに焦点を当て、科学的根拠に基づいた患者教育のポイントをお伝えします。
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■ 食事:腸内環境と炎症を制御する
食事の質は、全身の炎症状態や自律神経機能に密接に関係します。
特に近年注目されているのが腸内細菌叢(マイクロバイオーム)と健康の関連です。
•    **地中海式食事(Mediterranean diet)**は、炎症マーカー(CRP、IL-6)の低下や認知機能維持に有効であることが報告されています(Romagnolo et al., 2017)。
•    加工食品や高糖質・高脂肪の食事は、慢性炎症やメンタル不調との関連が示唆されています(Jacka et al., 2010)。
患者には以下のようなアドバイスが実践的です:
•    野菜・魚・発酵食品を意識した食事を心がける
•    食事の時間を一定にし、過食・夜食を避ける
•    食事中はスマホを見ず、リラックスした状態でよく噛む
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■ 運動:自律神経と炎症に作用する
適度な運動は、単なる体力維持にとどまらず、自律神経系やホルモンバランス、免疫機能の調整にも関与します。
•    週150分程度の有酸素運動(例:速歩)は、交感神経の過緊張を緩和し、副交感神経の活性化に寄与します(Buchheit et al., 2010)。
•    軽度〜中等度の運動習慣は、慢性疼痛患者において痛覚過敏の抑制作用があることも分かっています(Geneen et al., 2017)。
臨床での具体的な提案例:
•    「朝の15分ウォーキング」や「1日3回の軽いストレッチ」
•    呼吸法と組み合わせた軽い体操(特に慢性ストレスのある患者に有効)
•    スマートウォッチ等で活動量を可視化することもモチベーション維持に有効
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■ セルフケア:神経可塑性を促す継続的な刺激
治療と治療の間の“時間”にこそ、患者の身体は変化します。
この時間を活かすセルフケアは、神経可塑性や自己効力感(self-efficacy)を高める手段として重要です。
🔸お灸(灸刺激):
•    ツボへの温熱刺激は副交感神経を優位にし、HPA軸の過活動を抑える可能性が報告されています(Lee et al., 2009)。
•    灸による疼痛緩和・免疫調整作用は慢性疾患患者において補助療法として注目されています。
🔸温熱療法:
•    温熱刺激(足湯・カイロ等)は局所血流を改善し、筋緊張の緩和や睡眠の質向上に寄与(Furlan et al., 2012)。
🔸呼吸法・マインドフルネス:
•    簡易的な呼吸法(4-7-8呼吸、腹式呼吸)は心拍変動(HRV)を高め、ストレス応答を低下させる(Zaccaro et al., 2018)。
セルフケアの継続率を高めるためには、「習慣化しやすいこと」「心地よいこと」が重要です。
難しい指導よりも、毎日3分から始められることを提案しましょう。
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■ まとめ
鍼灸治療の効果は、患者の日常生活の質によって大きく左右されます。
「食事」「運動」「セルフケア」は、その効果を支える3本柱です。
科学的エビデンスをふまえた指導を行うことで、患者の理解と納得感も高まり、治療への信頼や継続率も向上します。
臨床現場においては、知識と実践を結びつける“橋渡し役”としての鍼灸師の姿勢が、これからますます求められていくでしょう。
次回のメルマガでは、患者とのコミュニケーション技術や説明の工夫について取り上げる予定です。どうぞお楽しみに。
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*五枢会治療セミナー
再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。
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