78才女性。
身長157cm、体重70㎏
BMIは28.4、肥満1度である。
主訴 腰痛、股関節痛

社交的なタイプ。
訴える症状が多い。
本人曰く、「私は肝っ玉母さんに見られるけど、実は繊細なのです。」とのこと。
身体も敏感で、井穴への刺鍼をすると「とげが刺さったように痛むので止めて下さい。」と言われました。
腰腿点へ02番で刺鍼しても痛いので中止となりました。

効果的な部位への刺鍼が出来ないため治療効果が出ないことを危惧していましたが、鍼灸への反応は大変良く、効果が劇的に出ました。
したがって一般の患者さんに対する治療より簡単な治療で効果が出ることが判明しました。
この様に体格が良い方は軽微な刺激で症状が改善しにくい場合が多いのですが、意外な症例でした。
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*五枢会治療セミナー
再現性の高い治療・有効率の高い治療をマニュアル化し、治療セミナーを行なっています。
興味がある先生・学生の方は下のホームページをご覧になって下さい。
http://5su.muto-shinkyu.com/
 

60代女性、13年前にパーキンソン病を発症し、1年半前から通院中です。
主訴は腰痛で、著明な側弯があります。
前傾姿勢が強く、杖歩行にて来院しています。
ピサ兆候(上半身が斜めに傾斜すること)も見られます。
パーキンソン病発症前は非常に元気で、スポーツクラブに行って活発に動いていたとのことです。

ある時電話がかかってきて、「自転車に乗って転倒したので今日は治療をお休みにして下さい。」という事でした。
パーキンソン病の本を読んでいた時に、「パーキンソン病の患者さんは意外と自転車に乗れる」と書いてあったことを思い出しました。
まさか自転車に乗っていたとは思いもよりませんでした。
自転車に乗らないように指導しましたが、この患者さんは3回程自転車で転倒し、乗るのを止めたそうです。

その後パーキンソン病の患者さんに自転車に乗っているのかどうかを確認することにしたところ、何人も乗っていることが判明しました。
身体の傾斜が強い方や著明なフローズンゲイト(すくみ足)がある方には乗らないように言っています。
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39才の女性が「歩行困難があり、走れない。」という事で来院しました。
他に胸背部痛、ふらつき、下肢のしびれの症状もありました。
腱反射亢進、病的反射(-)、ロンベルグ徴候(+)、下肢の振動覚低下。
筋力テストを行うと上肢・下肢とも全体的に筋力低下がみとめられました

走れないほどの筋力低下や身体所見の異常は何らかの疾患が根底にあると考え、整形外科と神経内科を受診していただきました。
MRIによる診断は「手拳大の神経鞘腫(胸椎7-8レベル)による脊髄の圧迫」でした。
すぐに手術をして回復したとのことです。

気をつけなくてはいけないのは、鍼灸で胸背部痛・ふらつき・筋力低下がある程度改善したことです。
そうすると鍼灸の適応疾患と考えがちですが、疾患を改善するには至らないレベルでした。
治療直後には症状が改善するものの、経過を見ていくと増悪していくという状況でした。
また、下肢のしびれは全く改善しませんでした。

この患者さんは最初鍼灸で完全に良くなると思って来院したそうです。
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以前通院していた方で、背部の兪穴ラインに7-8個くらい大きな水疱・痂皮が形成されている方がいらっしゃいました。
自宅でお灸をすえてもらっていたそうです。
その方は「お灸をする人が下手なのでしょうがない。」と言っていました。

しかし、結局その痂皮形成は「天疱瘡」由来であることが後に判明しました。

天疱瘡は自己免疫疾患で、皮膚をこするだけで水泡やびらんが出来ます。
したがって鍼灸治療を行うことにより、皮膚症状が出現する可能性があります。
今まで天疱瘡は2例見ています。
遭遇する可能性があると思いますのでお伝えしました。
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今回取り上げる注意を要する患者さんは糖尿病の方です。
糖尿病の方は皮膚が化膿し易いため、直接灸は避けた方が良いと思います。
私は灸点紙で施灸を行っています。

血糖降下剤(インスリンを含む)が処方されている場合は、低血糖に気をつける必要もあります。
実際鍼灸治療中に低血糖発作を起こしたケースを聞いています。

更に3大合併症である網膜症・腎症・神経障害のチェックをしているのかの確認も重要です。

高齢の糖尿病の方は食後の血糖が高くなる傾向があります。
そして低血糖になっても、発汗、動悸、手のふるえなどの症状が出現しにくくなり、糖分をとるなどの対応をしないうちに重症の低血糖になることがあります。
重症の低血糖は転倒・骨折や、認知症、心血管疾患の発症につながるといわれています。
高齢の糖尿病の患者さんは要注意です。
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患者さんによって健康に対する意識はかなり異なります。
定期的に人間ドックや健康診断を受けている方がいらっしゃる一方、今まで1度も健康診断を受けていないという人もいます。
その中には高血圧を放置している人も含まれます。

先日、一度も血圧をチェックしたことのない中年のガッチリした男性が来院したので血圧をチェックしたところ、収縮期圧が180㎜Hgでした。
鍼灸治療をせずに内科を受診していただき、降圧剤が処方されました。
血圧が落ち着いたところ(収縮期圧150-160㎜Hg)で治療を開始しました。

血圧がかなり高い場合、鍼灸治療で血圧が下がる場合もあります。
しかし場合によっては血圧が上昇し、脳卒中を起こすリスクもあります。
血圧はストレスで上昇すると言われ、待たされたり、恐怖心(鍼に対する)があったりすると上昇する可能性があります。
ストレスで多少血圧が上がっても問題ないレベルまで血圧を下げて鍼灸治療を行うことをお勧めします。

鍼灸治療をしていると、注意をしないと大変なことになる患者さんがいらっしゃいます。

今回の症例は81才の女性です。
訴える症状が非常に多く、心気症の傾向が強い方です。
したがって精神的なところから症状が出ているととらえがちです。

実際は2回癌(腎臓と肺)で手術をしています。
とても体のことを気にする方なので、自分で病院を受診して癌が見つかっています。

足のしびれを訴えていますが、腰部脊柱管狭窄症が原因と診断を受けています。

強く訴えていることの多くは特に問題がないのですが、あまり本人が気にしていないことに問題がありました。
不眠症のために睡眠導入剤を常用していました。
「最近物忘れが強い。」ということを言われて確認したことで判明しました。

この症例を通して以下の事の重要性を改めて認識しました。
1)    精神的要素が強い場合も器質的疾患がある事を念頭に置く。
2)    多くの症状を強く訴えている場合、患者さんの訴えの強さと症状の重要度は相関しないことに気をつける。

訴える症状が非常に多い方を治療されている先生に参考になれば幸いです。
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一般的に鍼灸治療を行う際にはどの経穴が効果的かを第1に考えると思います。
もちろんとても重要です。
しかし、それと同じくらい重要なこととして、治療効果が出ているのかどうかを知るためのテストを行うことも挙げられます。
鍼灸の治療効果を客観的にとらえることによって、症例の蓄積・患者さんへの説明力アップなどが可能となります。

患者さんの中には感覚が鋭く、鍼灸治療による変化を即座に感じ取る人がいる一方、非常に良く改善しているのにもかかわらず全く変化を感じない人もいます。

整形外科疾患で変化をとらえるためには理学テスト・可動域測定が有効です。
内科疾患で変化をとらえるためには脈診・腹診・背甲診が指標となります。

したがって鍼灸治療前に体の状態を良く見ておく必要があります。
また、1施術ごとに効果を確かめることでその治療穴の効果がはっきり分かります。
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ギックリ腰の鍼灸治療では、結果を出すことが重要なことは言うまでもありませんが、次に挙げる失敗をしないことも重要です。
1)    腰を暖める
腰部を暖めることはとても気持ちが良いのですが、炎症部位を暖めると症状が悪化する可能性がありますので要注意です。

2)    腰を揉み込む
腰をゴリゴリと揉むことは炎症を悪化させる可能性があります。

3)    何度も姿勢を変える
治療で仰臥位、側臥位、伏臥位など何度も患者さんを動かすと、悪化する恐れがあります。

4)    痛みを出す姿勢を続ける
例えば伏臥位で腰痛が増悪する場合、その姿勢を続けて鍼灸治療しても改善しないどころか悪化することもあります。
伏臥位であれば腰の下に枕やタオルを入れるなどの工夫が必要です。
 

ギックリ腰―急性腰痛の中でも重症タイプの治療は結構難しいと思います。
難しい理由として以下のことが挙げられます。
1)    患者さんの期待値が高い
患者さんは1-2回で治ると思って来院することが多いです。
2)    痛みのために動作が制限されており、理学テストなどが行いにくい。
そのため病態が把握しにくい。
3) 急性腰痛では複数の病態が存在するため、病態にあった鍼灸治療を行う必要がある。

すなわちギックリ腰では制限のある状況で最大限の効果を出さなければならないという事になります。

複数の病態としては筋・筋膜性腰痛、椎間関節型腰痛、腰椎椎間板ヘルニアが挙げられます。
したがってギックリ腰の原因が上記の中のどの病態なのか、合併しているのか把握して治療する必要があります。