Sleepless Beauty 〜眠れぬ森の〜 23《大宮》
つづきです帰り道。オレは少し遠回りして、普段は使わないドラッグストアに立ち寄った。不審者よろしくキョロキョロと辺りを見渡す。…良かった。セルフレジだ。カゴに放り込んだコンドームと潤滑剤を精算し、袋へと詰め込んだ。秋から冬へと変わりつつある季節。時折吹く刺すような冷たい風に、オレは背中を丸めた。もう少しすればクリスマスになりすぐに年が明け…そして、智は受験だ。あの部屋に置いてあった資料を思い出す。きっと、彼は県外の大学を受験するのだろう。もう過去の恋愛は吹っ切れた。それでも…再びの遠距離恋愛は、自分には無理だろう。おそらく向いていないのだ。それに大学生になれば、彼には同世代の友人がたくさんできる。その中にはもちろん…可愛い女の子だって。そうすれば自然と、その輪の中に戻っていくだろう。 …元いた場所へ。智が新生活を始めるまで。それまでの関係だと、割り切ってしまえばいい。チクっと胸の奥が痛んだが…その痛みに気づかないふりをして、いつもの公園を通り過ぎていった。ポケットに手を突っ込むと、中で鍵がチャリっと音を立てた。いつもなら、合鍵を使わずチャイムを鳴らすところなのだが少し悩んで…オレはその指先を引っ込めた。ふぅ、と深呼吸をし緊張する手でドアに差し込み、回す。玄関に智の靴はない。まだ、主の戻っていない部屋はシン…と静まり返っていた。ハンガーに掛けられた制服開いたままの、読みかけの雑誌あちこちに智の気配が残る部屋はエアコンがついている訳でもないのにどことなく暖かい。自分の部屋から持ってきた、少しばかりの荷物を部屋の隅に置くと、オレはその中から湿布を取り出した。昨夜は年甲斐もなく致してしまったせいか、未だ腰が鈍い痛みを放っている。まぁ気休め程度ではあるが、とりあえず貼っておいた方が良さそうだ。今ここには、幸い誰もいない。胸までシャツを捲り上げ、裾を口で咥えた。ベルトを外し、ジーンズと下着をギリギリまでずり下げ湿布を当てたのだが、上手く貼れずに失敗してしまった。一度剥がしてその形を整え、再度貼るもヨレてしまって。どう考えても自分のせいなのに「あぁ、もう!!」と、若干キレ気味で丸めた湿布をゴミ箱に投げ入れようとした所で…必死に笑いを堪えていた智と目が合ってしまった。つづくmiu