つづきです
あれから1週間。
毎朝、決まった時間に智を起こすのは
かなり大変な作業だった。
身体をゆすっても、耳元で大音量の音楽を流してもダメ。
ほんと、今までどうやって起きてたんだろ。
それなのに最終手段のちゅーは、効果てきめんとか。もう何なのよ///
頬とか、おでことか。
キスの場所も色々試してみたんだけど、やっぱり唇じゃなきゃ起きないということが、智の観察記録で分かった。
いや、でも。
まさかファーストキスが オレだとか無いよね?
智、結構カッコいいしさ。優しいし。
女の子と付き合ったことくらいあるだろう。
キスなんて…
……帰ったら、聞いてみようかな。
仕事を終え、そんなことを考えながらアパートに戻ってきたオレ。
部屋に明かりがついていることを確認して、いつものようにインターフォンを鳴らした。
「おかえり」
「うん。…ただいま」
首元のヨレた部屋着に着替え
床の上にペタリと座ると
オレと智、同じタイミングで口を開いた。
「なぁ」「ねぇ」
ふたり、顔を見合わせる。
互いにどうぞどうぞと譲り合っていると、じゃあ…と智が話し始めた。
「なぁ、和也の会社って…」
何を言い出すのかと思ったら「社畜じゃ無いの?」って不思議顔。
いやいや、何でそんなこと思ったのよ。
理由を聞けば、公園でのオレの様子があまりにも疲れていたからだと言う。
「仕事がめちゃくちゃ忙しくて、朝から晩まで働き詰めでさ。上司とかにも怒られて、それで…毎日公園で息抜きしてるのかと」
「いや、基本土日は休みだし、残業もあるけど毎日ってほどでも無い。まぁ、繁忙期は遅くなることもあるけどね」
「毎日、終電で帰ってくるとかそういうのかと思ってたら8時前には帰ってくるし。なんか普通だなって」
「うん。至って普通の会社だと思う」
「なんだ〜良かった」
ふにゃっとした笑顔。
ぅわ、可愛い///
時々、智はすごく大人びた表情をする時があるから。こういうギャップにドキッとしてしまう。
「心配してくれてたの?ありがとう」
「で、和也の話って?」
「あー…うん、何でもない」
今は彼女いないの?
でも、過去にはいたよね。
キスは?エッチは?どこまで済んだ?
…なんて、さ。
智の顔を見たら、そういうの…
彼の口からは聞きたくなくなってしまって。
「何だよ、気になるじゃん」
怪訝そうな顔の智を他所に
オレは、バスルームへと逃げ込んだ。
つづく
miu