つづきです








はぁ…


オレ、何やってるんだろ。



一番近いコンビニ。

ここは智のアパートからあの公園を通り過ぎ、駅とは反対方向に少し進んだところにある。

オレは季節外れのサンダルをペタペタと響かせながら、買い物かごにパンツを入れた。


そうだ、智は欲しいものあるかなあ?

何か買うものがあるか聞こうとポケットに手を突っ込み…

スマホを持ってこなかったことに気づいた。

そっか。慌てて…サイフしか持たずに出てきちゃったんだ。

店内を見渡し、智が食べそうなスイーツを適当にカゴに入れた。



「…あ、」



見慣れたビールのラベルに、ゴクリと喉が鳴る。

まぁ、なんなら途中の公園で飲んじゃえば良いか?

買い物カゴにビールを追加し、レジを済ませると

オレはコンビニを後にした。



いつもの公園に立ち寄り、ベンチに腰掛ける。



「そういえば、夜は初めてだなぁ」



ここは、昼間もあまり人を見かけなくて。

それは子供向けの遊具が置かれていないからなのかもしれない。

休むためのベンチと、植えられた樹々。ゴミ箱。

この公園には、それしか無かった。


人気のない夜の公園は、少し…落ち着かない。


それでも誘惑に負け 買ってしまったビールを智のアパートに持ち込むことは躊躇われて、この場で飲んでしまおうとビニール袋から取り出した。


プルタブに指をかけると、プシュッと軽い音が響く。


口をつけ、グッ…と流し込むと

ほろ苦い味とピリッとした炭酸が、久しぶりに喉を潤した。



ザワザワ…


吹いてきた風が枝を揺らし、不快な音を立てている。


髪を乾かす暇も無く出てきてしまった所為か、生乾きの頭がうすら寒い。

先ほど飲んだビールで、体の芯も冷えてしまったようだ。



「…寒っ」



上着を持ってくればよかったなぁ。

ビールはまだ半分以上残っていて、缶を握る指先から体温を奪っていく。

捨てるのはもったいないのだが、寒くて全部は飲めなかった。


仕方ない。

残りはアパートで飲むかな…


立ち上がろうとした瞬間、大きな影がオレの上に落ちた。

後ろから口を塞がれ、声が出ない。

手から離れたビールの缶が鈍い音を立てて転がり、地面に大きな滲みを作っていた。


酔っ払い…なのか?


落ち着け。

持ってきたサイフは、幸いにも小銭入れだ。

取られたところで諦めはつく。



フーッ、ハァ…ハァ


耳元で響く荒い息遣いに、ゾクリ…と鳥肌が立つ。


何とか手を外そうと 力を込めるのだが…

元々筋力のないオレはどうにも無力で。口を塞いでいた手はビクリとも動かなかった。




つづく






にのちゃんピーンチ!!( ・∇・)



miu