つづきです








慌てて駆け込んだバスルーム。


その鏡の中には、どこか見覚えのある

困惑した表情が映り込んでいた。



「だってさ…

こういうの、面白半分に聞くことじゃないし。

ってか、ほら、デリカシーっての?

これだからおじさんは、なんて言われちゃう。

それに、智が誰かと付き合ってたとか…そんなのオレには関係ないもん」



誰も何も聞いていないのに

鏡の前でひとり言い訳をしている自分の姿が

まるで恋する女子みたいで



「だから、年下は好みじゃないっての!!」



モヤモヤする気持ちを誤魔化すように

熱いシャワーを頭から浴びた。




風呂から上がり、タオルを手に取って気付いた。


……あ、着替え…


逃げるようにしてバスルームに来てしまったから、着替えを持ってくるのを忘れてしまった。

キレイなパンツは部屋の中。

自分ひとりならそのまま出るところだが、いくら男同士とは言え、素っ裸には抵抗がある。


じっ…と、床の上に脱ぎ散らかしたパンツを見つめた。


これをもう一度穿く?

いや、ダメでしょ。


さすがに使用済みパンツを穿く気にならなくて…



「とりあえず…仕方ないよな」



オレは仕方なくスウェットのズボンを腰まで上げ、ぶらぶらしたものを隠してバスルームを出た。





「和也」


「ひゃっ!!」



後ろから突然声をかけられ、びっくりして振り返った。

手に着替えのパンツを握ったまま固まる。


さっき脱いだパンツは、既にコインランドリーに持っていく袋へと突っ込んであった。

オレが今手にしているのは、先ほど風呂場に持って行くのを忘れた着替え用のもの。

トイレでこっそり穿こうと思っていたのだが…



「え、な…何?」


「もう、遠慮すんなって言ってんだろ?

わざわざコインランドリーまで行かなくても、パンツくらい一緒に洗濯してやっから」



そう言うと、智はオレの手からパンツを奪い

洗濯機の中へと放り込んだ。



「…あ、オレのパンツ…」



奪い返そうとしたが、時既に遅し。


ザー…

洗濯機は、既に水が入り始めた音がしていた。




「え?もしかして普通に洗っちゃダメなやつ?おしゃれ着洗いモードとか?」


「…いや、それは大丈夫だけど」



実は…明日、溜まった洗濯物を持ってコインランドリーに行くつもりだった。


家から持ってきた着替えは、金曜日までの分。

そして今日は金曜日。


つまり…さっき洗濯機に放り込まれたのがラストパンツだと言うことだ。



「えっと…

そうだ、コンビニに行ってこようかな」



オレは、サイフを手に取ると


若干スースーする下半身を気にしながら

玄関のドアを開けた。





つづく





miu