つづきです








夜。

冷蔵庫に詰められていた料理をふたりで食べ、風呂を貸してもらった。



「風呂、ありがとう」



風呂上がり。着替えたヨレヨレの部屋着を見て「おれのジャージの方がマシじゃん」と智が笑っている。

ふん。部屋着なんてなんでも良いんだよ。

笑っている智の横を通り過ぎ、冷蔵庫に入れた水を取り出すと、喉を潤した。



「んじゃ、おれも入ってくるわ」



入れ替わるようにして、智がバスルームへと向かう。


置かれていたドライヤーに手を伸ばし

髪を乾かしながら…

改めてこの部屋を見渡した。


そんなに狭くはないが

ワンルームで、ベッドはひとつ。


布団、敷けるかな。

って…そもそも、布団あるのか?


そんなことを考えていると、早々と智が風呂から上がってきた。



「早いな」


「おれ、長風呂しないんだよ」


「ふーん。

あ、ドライヤー借りた。ありがと」



ドライヤーを手渡すと「ん」と短く返事をして受け取った。

温かい風が、智の髪を揺らす。

なんとなくその様子を見ていたら、顔を上げた智と目が合った。



「やっぱ、良いよ。前髪。和也の顔がよく見える」


「////// 別に、智に言われたからじゃないから」


「そうなの?残念」



んふふ、と 智は楽しそうに笑っている。


大人を揶揄うんじゃないよ。


熱を持った耳が恥ずかしくて…

手で隠していると、その手をそっと外された。



「え、なに?」


「人の話を聞けよ。笑

ベッド、和也が使って良いからな」


「いや、そんなの悪いよ」



見れば、既に真新しいシーツや枕カバーに変えられていたようで、智は床の上の取り替えたシーツを手に取ると、洗面所に置かれている洗濯機へ放り込んだ。


部屋に戻った智は、何かを取り出して床に広げる。



「それって…え?寝袋?」


「うん。おれはコレで大丈夫」


「いや、布団とか無いの?」


「無い」


「じゃ、オレが寝袋で寝る」


「和也がベッド使えよ」


「やだ」



言い争いをしても決着がつかなくて。


だったら、一緒にベッドで寝る?なんて…

うっかり言ってしまった。


しまった…と思った時には、もう遅くて。


智はポリポリと頭をかきながらも、素直にベッドに潜り込んでいた。



…落ち着け。

相手は高校生。


オレは年下は好みじゃないし、智だってまさか男相手にそういう感情は持たないだろう。

友達のノリだよね。うん。


自分自身にそう言い聞かせ、深呼吸する。


目覚まし代わりのアラームをセットしたスマホを握りしめて、智の隣に潜り込んだ。



「おやすみ」



耳元で囁かれた声が、甘く…響き

布団の中で指先が触れた。



「…おやすみ///」



あぁ。…オレ、眠れないかも。

やっぱりビール買ってくれば良かったかなぁ。


そう思っていたのに


不思議だな…


触れた場所から智の温もりが伝わり

すごく…落ち着いて、心が穏やかになっていく。


次第に遠のいていく意識に

オレは自分が眠りに落ちていることを理解していた。




つづく





miu