『チャップマン篇ホーマーとの出会い』

黄金のメロディーを発信する、多くの世界を渡り歩きながら、俺は様々な至高のコミュニティーに直に触れた…ミューズに忠誠を誓い、ソング・ライターたちを真剣に見守る、極西の小さな王国にも訪れた。
永遠に連なる広大な地平線…ディープな思考を持て余すMr.ホーマーが、彼のルールで治める領域。そんな噂は聞いてたけど、その純粋な息づかいには全く気づいてなかった…ジョージ・チャップマンが高らかに歌いあげるのを聞くまではね。
その時に受けた衝撃、ソレは宇宙に想いを馳せる夢想家が、その視界に新星の揺らめきを捕らえた瞬間に似ているかも…それともエルナン・コルテスみたいな冷たく燃えるイーグルの瞳で、太平洋を見下ろす瞬間とか。全ての兵士たちが、荒々しいオペレーションの中、お互いに見交わす3秒間を、聳え立つダリエンの絶壁で黙って見据えながらね。
『フロム・ポエティカル・スケッチ』ミューズへの手紙

アナタがグラスゴーの深い木陰に隠れてるとして…

古いROCKがもう聞こえない極東の国にある太陽の街の一室に住んでるとして…

ワンダーな天国をブラブラ散策するにしても…

緑の惑星の街角や、メロディアスな風が吹く青い空を飛んでいくにしても…

果てしない海の一番深い場所でクリスタルの絶壁を踏み潰しながら、珊瑚の森を進んでいくにしても…

たぶん世界はROCKを見捨てたんだ!

どうして過去のソング・ジャイアントたちがアナタたちに捧げた、あの黄金の歌を捨てたんだ!緩んでチューニングも狂ったリッケンバッカーの弦は、もはや震える気配さえない!その旋律はぎこちなく、ソコに歌はない。
『フロム・ポエティカル・スケッチ』マイ・ソング(7)

夜明けの世界が、ダークカラーのマウンテンパーカーを羽織ってベッドから抜け出す頃、僕は愛しのブラックバードに会いに走る。夕暮れの世界が、薄暗いボロアパートに寝転んだまま、何も言わずにホッと溜め息を漏らす頃、工場のサイレンが鳴って僕は歩み去る。街並みは悲しみに陶酔する僕のメロディーで肌寒くなる。

あの魅惑の楽園へ…麗しのブラックバードが沈黙の影で涙の滴を落とした楽園を、たぶん僕は目指しているんだ。悲しみに暮れながら、僕は僕の中のデビルを毒づいて、恋の悲しみの柔らかさを歓迎してる。

7月の熱気が木立の合間で眠りを貪り、僅かな囁きを弱々しい西風に溢す頃、ようやく僕は歩き出す。もしも知らない奴が、彼女の隣で喜びとプライドを一杯にしていたら、僕は苦々しい悲しみと嘆きのギターで運命を呪うしかない…愛する人をこんなにも引き上げ、僕をこんなにも引きずり落とした運命を。

彼女の本質を受け止めたから、彼の魂は引きちぎってしまおう…あらゆる憐れみのメロディーは、すべて大気の中で焼き尽くしてしまおう。交じり合う運命の中で輝きを増す幸運を呪う…もう安らかに死んで、すべての人から忘れられてしまいたいんだ。
『フロム・ポエティカル・スケッチ』マイ・ソング(6)

今まさに、麗しの花園から飛び出した、新たなるゴールデン・エイジの夜明けは、僕の頭上で爽やかに微笑みながら、真っ赤に燃えるミニクーパーのアクセルを踏み込む。

僕の未熟な脳ミソを、フレッドペリーのキャスケットがベッタリ取り巻いてる…まるでギリシャ神話のアポロンみたいに、輝く栄光が一杯に降り注いだ。

僕のブーツには羽根がある。そして麗しの花園の奥で、一人の少女に出会った…起き抜けの脱力感のまま。祝福してくれ、天使みたいな彼女の清らかな足首を。祝福してくれ、天国からのハイビームに照らされて、輝きを隠せないシルエットを。
イノセンスと神聖な欲望が交じり合う時代は、星空に煌めく天国の住人たちに似ていた。なんとなく満たされたソング・ライターたちは、偉大な歌の数々を歌うのを止める…ただ天使の舌から漏れ出る音楽に聞き入るだろう。

きっと彼女が口を開けば、ソコに僕は天国の意思を感じる…そして僕らの靴音は不純なるメロディーを寄せ付けない。世界はそれぞれが楽園へと昇華して、平和なセカンド・ハウスになるだろう…たぶん、それぞれの街が神聖な音楽の行き交う交差点になる。

でもその街は、黒髪のスリーピング・ビューティーが、夜の王の比護の元に眠る場所でもある。きっとソコは、一人の人間が抱く情熱以上の激しさを、ソングライターの魂の奥で燃え上がらせる…そして僕のメロディーを踊らせてくれる。
『フロム・ポエティカル・スケッチ』マッド・ソング

野生の風が鳴り、底冷えする夜の戸張。眠りの悪魔が帰ってきてくれればいいのに…どうか俺の中の悲しみの源泉を優しく包んでほしい。でも見てくれ!極東のビックベンの向こう側から、朝日がやって来る。夜明けのカワセミたちがブルブル震えながら、惑星に唾を吐いた。

見てくれ!俺の轟音ギターがメランコリーに唸りながら運ばれていく…御影石を敷き詰めた天国の彼方まで。そのフィードバックは夜の王の両耳を撃ち抜いて、昼の女王の両目を焼き尽くす。轟音ギターは荒れ狂う風を加速させて、延々と嵐とジャムってる。俺は夜の王の足跡を辿り、夜と寝食を共にする…ラピュタに潜むゴブリンみたいに、荒れ狂う悲しみを抱いたまま。俺は朝日に背中を向ける…ソコから憐れみの感情が押し寄せてくるから。そして光のメロディーが、俺の魂を狂ったような痛みで支配しようとしてるんだ。
『フロム・ポエティカル・スケッチ』マイ・ソング(5)

古き良き思い出、ココに帰ってきてくれ…そして至高のメロディーを鳴らしてくれ。その個性的なリリックが、冷たい北風に巻かれて頼りなく漂ってる内に、僕は恋人たちの悲しみの潮流を垣間見ていた…イメージが水鏡の底を潜り抜ける瞬間、そのイメージを世界に釘付けてしまおう。

混じりけのない流れの中に水を汲んだら、古いラヴソングのレコードを回そう。その辺に寝転んで、日が暮れるまで夢見てた楽園で過ごすんだ。たぶん夜になれば行かなきゃならない…この悲しみに相応しい場所へ。出来るだけ暗い道を選ぼう…沈黙のメランコリーと一緒にね。
『フロム・ポエティカル・スケッチ』マイ・ソング(4)

僕はハッピーな音楽を愛してる…柔らかに息づくメロディーを。ソコではイノセントな部分が一際キラキラしてて、家出少女たちの舌ったらずなガールズトークで溢れてる。

僕はウィットに富んだリリックを愛してる…未来に反響していくセンテンスを。ソコでは喜びのメロディーが途切れることはなく、若者たちは誰の目も気にすることなく、遠慮なく笑い合う。

僕はジョークの混じったコーラスを愛してる…とても古くて純粋なコーラスも。ソコでは僕の分の朝食を取っておいてくれるし、ちゃんとスイーツも付いてるんだ。

僕はカビ臭い木製のロッキン・チェアーを愛してる…古いオークの樹の下に打ち捨てられたガラクタを。その場所にはソング・ジャイアントたちが集い、僕たちのバンドを見て優しく微笑む。

僕はこの世界を愛してる…でも何よりも、ハニー、君を愛してる。いつだって僕は世界を愛してる…でも君こそが僕のすべて。
『フロム・ポエティカル・スケッチ』マイ・ソング(3)

ラヴとピースは結合して、僕ら二人の魂の周りで交じり合う。君のメロディーが僕のメロディーと絡まって、いつしか二人のハーモニーは融合する。

淡い欲望は僕らのアンサンブルの上に小さな城を建てた…そして高らかに轟音ギターを鳴らしながら、ひたすら美しく歌う。ソコでイノセンスと美徳は巡りあったんだ…二人の足元を濡らす、穏やかな白浪みたいにね。

君が黄金のメロディーを産み出すと、いつも僕は綺麗なローズガーデンをイメージする。君のスイートな歌声は空気に生命を与え、キジバトたちはソコに故郷を想うだろう。

キジバトたちは、ソコで彼らの雛を育てる…僕は彼らのメランコリックな歌声に陶酔してしまう。可愛い葉隠れベイビーがチラチラ見える…僕には彼らの声が聞こえたんだよ。

ソコには彼らの素敵な生活があり、ソコで彼らは朝までグッスリ眠る。ソコで彼らは日が暮れるまでふざけあって、僕たち二人のメロディーの合間で歌う。
『フロム・ポエティカル・スケッチ』マイ・ソング(2)

僕のポールスミスやフレッドペリー、そしてスマイルやメランコリーは、小さな恋のメロディーにかかれば一瞬で吹き飛ばされる。悲しみに泣き疲れた絶望感は、墓標を飾るメロディーをくれる。真実の恋人たちの結末はこんな感じ。

早春の柔らかな風に、桜の蕾が起こされた頃、彼女の笑顔は信じられないほど美しくなる。どうして彼女にソレが与えられたんだろうか…彼女の心は12月の吹雪みたいに冷たいのにね。彼女の存在はあらゆる感情を捉える恋の墓標だ…ソコにはあらゆる恋の巡礼が辿り着くだろう。

スコップとショベルカーを持ってきて、アディダスのトラックジャケットも持ってくる。僕が自分自身の墓穴を掘る日には、嵐が渦巻いてくれてた方がイイ。僕は躊躇なく冷たい土みたいに横になる…真実の愛はそんな感じに過ぎ去ってくいくのさ!
『フロム・ポエティカル・スケッチ』マイ・ソング(1)

あの頃は最高にハッピーな気分で、ライブハウスをどさ回りしながら真夏の夜の夢を満喫していた。そして僕は愛しのミューズを見つけたんだ。彼女は目映いレーザービームの中を滑るように駆け抜けていく。

彼女は僕のメロディーに百合の囁きを…僕のリズムに薔薇の香りを振りかけてくれる。彼女は僕を遥かな楽園へと導いた。その場所には、ありとあらゆる喜びが満ち溢れているんだ。

甘ったるい春の霧雨で僕の大事にしてるフライングVはグッショリ濡れて、原始の太陽は魂に激しく光を灯す…彼女はシルクの投網で僕を捕まえて、迅速に黄金のベッドルームに閉じ込めた。

彼女はくつろぎながら僕の歌を聞く時間を気に入ってるらしい…そして甲高い笑い声をあげながら、僕とダーツをする。最後にはフライングVをメチャメチャにして、僕の自由の喪失を嘲笑うんだよ。