2017年 おしまい | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

2017年も本日でおしまいです。
皆様にとって、2017年はどんな年だったでしょうか?
自分にとっての2017年は、仕事が忙しい年だったという印象です。
とくに今年の後半は、少し前の記事にも書いたことですが、お休みの日に本を読む時間もあまりとれず、仕事に時間を取られるという状態でした。
この傾向は来年も続くかもしれず、大変だなと思っているところです。

今年も世の中ではいろんなことが起こりましたが、振り返ってみるとやはり昨年(2016年)が衝撃の年、アメリカ大統領選挙でのトランプの勝利、相模原の殺傷事件、今上天皇の退位宣言と、自分のような歴史に関心のある人間にとって節目のような年であったように思います。
2017年は2016年の延長上にあり、2016年の変化に対してそのまま物事が転がっていく、今年はそんな年だったのではないかと思います。

世界はトランプ大統領に振り回された年になりました。
昨年の時点では、「トランプの選挙戦での発言は滅茶苦茶だが、それは選挙戦のための手段であり、大統領就任後は意外と現実主義者として行動するのではないか」という意見もありましたが、いざ就任してみると全くそんなことはなく、本当に滅茶苦茶をやっているだけに見えます。
しかしトランプの固定支持率は安定しており、支持率は高くないながらも一部の人は継続して支持しているという状況で、国民的支持は意外と盤石。
大統領の暴走に対し、現在は周辺の人物たちが何とか軌道修正しようとしているように見えますが、このトランプ・ショックに対し、今後アメリカがどうなっていくのか、3年後の選挙では同じ過ちを繰り返さないように軌道修正できるのか、それまでに大惨事が起こらなければいいな、などなど、今後も動きが気になります。

国内政治では、盤石に見える現政権の土台が揺らぎ始めた年であったと言えるかもしれません。
現政権は成立以来、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪など、運用次第では危険極まる法律を次々と通し、そのために内閣法制局、NHK、最高裁判所裁判官などの人事に介入するという、なりふり構わぬ強権的政治を行ってきました。
今年になってからも官邸の好き勝手ぶりは極まっており、自衛隊日報問題、森友・加計をはじめ、生前退位を巡る皇室・宮内庁への対応、トランプへのすり寄りぶり、生活保護などの社会福祉をカットし米国から兵器を購入する政策など、問題が大きい政策・行動が目立っており、官邸はいくらなんてもやりすぎだということもあってか、ここへきて特捜検察が動き出しています。
特捜検察は昔から田中角栄、金丸信、鈴木宗男、小沢一郎など、必ずしも親米一筋ではないオルタナティブな政治家を微罪で検挙し、親米という「国体」を維持することに努めてきたという印象がありますが、昨今のリニア入札問題を巡るJR東海への捜査、スパコン補助金を巡る開発企業への捜査など、親米政権側である首相官邸に近い筋が捜査対象になっており、これは割と異例のことなのではないかと思います。
検事総長や検事長は、法律上は天皇陛下による直接の任官という立て付けです。
故に、昨今の特捜の動きは、天皇のお気持ちを蔑ろにする現政権へのカウンターなのではないか。
この予想(妄想?)が仮に正しいとするなら、こんなところで権力のチェックアンドバランスが働いているのなら、日本にとって近代天皇制はやはり重要。
自分は近代天皇制などないに越したことはない、共和制が理想だと考えるタイプの人間ですが(皇室におかれては、畿内に戻って来て頂き、歴史的な神道の長として祭祀を執り行う存在になって頂くのが理想的)、基本的人権を多分に制約されておられる皇室の方々には申し訳ありませんが、まだまだ日本にとって近代天皇制は必要なのかもしれません。

などという妄想的・陰謀論的推察(笑)はこのあたりにして、当ブログの今年の個人的まとめです。
各分野ごとにコメントを残しておきます。


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○美術館・展覧会

今年は全部で17の展示・企画を鑑賞し、うち14件を記事化しています。
とくに良かった展示として
 ・クラーナハ展 500年後の誘惑 (国立国際美術館) → 
 ・海北友松 (京都国立博物館) → 
をあげておきたいと思います。
どちらの作家さんとも、必ずしも美術史の傍流ではありませんが、本流からは少しだけ脇に逸れる位置付けの作家であり、この位置づけを再考する企画として、非常に良かった展示であったように思います。
クラーナハは個人的に好きな画家であり、海北友松もその面白さを再確認することができました。

上記のクラーナハ展の他に、「ブリューゲル「バベルの塔」展」、「ベルギー奇想の系譜展」など、今年は北方ルネサンス系の展示が充実していた年だったように思います。

今年は現代美術の鑑賞が少なかったです。
展覧会で感想を書いたのは、ライアン・ガンダーの展示のみ。
現代美術支持者としてはこれではいかん、来年は現代美術ももっと鑑賞したいですね。

今年は近畿圏外の美術館を訪れることはありませんでした。
その代わりに、芦屋市立美術博物館、そしてつい先日訪れた、神戸市立小磯記念美術館、神戸ゆかりの美術館、神戸ファッション美術館と、近畿圏内で訪れたことのないいくつかの美術館を訪れてみました。
来年も今年と同様、近畿圏内の見直しをしたいなと思っています。


○音楽・演奏会

今年は13の演奏会を鑑賞、うち10件を記事化しました。
とくに印象に残っているのが、
 ・交響曲6番/マーラー  サロネン&フィルハーモニア管弦楽団 → 
 ・交響曲4番/マーラー  ガッティ&ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団 → 
の2件。
マーラーファンとしてはどちらも素敵な演奏でした。
フィルハーモニア管の方はサロネンのコントロールとかっこよさ、コンセルトヘボウの方はオケの音に感激しました。

昨年はオペラを鑑賞しませんでしたので、その反動で?今年はオペラを4件鑑賞。
その反面、独奏ピアノを1件も鑑賞しませんでしたので、来年は独奏ピアノの演奏会に行きたいです。


○本

こちらは3回前の記事でまとめた通りなので、省略。


○映画

映画も本と同じく、別に1本の記事にしようと思っていましたが、時間がなくてまとめられませんでした。
少し長めですが、本記事に割り込ませて覚書を残しておきます。

今年は映画作品を比較的たくさん鑑賞し、うち7件を記事化しました。
今年と言っても今年の公開の映画を映画館に見に行ったわけではなく、昔の映画を自宅で鑑賞した、ということです。
余談ですが自分は映画館は苦手、理由は映像で目が回るから(笑)です。
自分は美術館での小規模な映像作品でもよく映像酔いを起こします。
それでも昔はお友達とよく映画に行きましたが、昨今は完全に自宅派です。
あと、自分は割と冷えやすいので、2時間越えの作品ともなると、後半は尿意との戦いになりがちです(笑)。
自宅なら一時停止できますので、この心配はありません。

自分は過去5年くらい映画をほとんど見ていなかったので、お気に入りの映画監督の最近の作品を鑑賞するとともに、今年は古い映画をいくつか鑑賞しました。
(自分は文芸作品は割と古い作品を読むことが多いですが、映画はその逆で、主として90年代以降の作品を中心に鑑賞することが多いのです。)
 

今年鑑賞した古めの作品でとくに印象に残っているのは、
 ・ナッシュビル/ロバート・アルトマン → 
 ・秋刀魚の味/小津安二郎 → 
の2本です。
「ナッシュビル」の面白さは記事に書いた通りです。
今年は「秋刀魚の味」の衝撃が大きいです。
こんな実験的・前衛的な試みが、商業映画でなされていたとはびっくり。
小津安二郎恐るべし、といった感じです。
その後「東京物語」も鑑賞、「秋刀魚の味」の記事では物語より映像が面白いと書きましたが、「東京物語」はベタではありますが物語も印象的で、戦後復興期の地方と東京、老いと壮年、家族の在り様を味わうことができます。
「東京物語」も映像が楽しい作品ですが、映像の面白さは「秋刀魚の味」の方が徹底しているように思います。
「東京物語」の方はまだ動きのある映像がありますが、「秋刀魚の味」のパーフェクトな固定的絵作りはやはり目を見張るものがあります。
あと、「東京物語」はモノクロなので、カラーリングが素晴らしい「秋刀魚の味」の方が、やはり個人的に好みです。

自分は欧州の映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア)の受賞作品を割とよく見ます。(理由:面白さにおいて外れることがまずないからです。)
記事化した以外の作品では、ミヒャエル・ハネケの「白いリボン」などが、とくに印象的でした。
これはベル・エポック最末期のドイツ農村の、嫌な嫌な感じをよく描いている作品で、日本の農村のドロドロとはまた一味違う、キリスト教的道徳と家父長的ヒエラルキーの鬱屈の矛先が、女性・子供・障害者に向けられる、嫌な嫌な感じを見事に映像化している作品です。
欧州で嫌な感じの映画(笑)を作らせれば、ハネケはベストいくつかに入るのでは、という気がします。

アメリカ映画での嫌な映画と言えば、クリストファー・ノーランの「メメント」を鑑賞し、これもまた見終わった後で本当に嫌になるような(笑)、人間不信になるような映画でした。
嫌な感じに加え、この映画は時間の扱い方が非常に面白いです。
時系列の入れ替え・細工により、世界の在り様を説得的に描いた作品としては、クエンティン・タランティーノの「パルプ・フィクション」、A・G・イニャリトゥの「21グラム」、トム・ティクヴァの「ラン・ローラ・ラン」、フランソワ・オゾンの「ふたりの5つの分かれ路」などを自分は思い出しますが、「メメント」は上記映画たちよりももっと徹底して時間を形式的・規則的に並べ替え、徐々に真相が明らかになっていく構造を持った映画です。
時間操作により世界の在り様を納得させるというより、「メメント」の場合はもう少しトリック的な要素が強いですが、見せ方は非常に面白いなと思います。
低予算(おそらく)でこんな面白い映画を作る監督。
ノーラン作品も実は初めて見たのですが、来年は他作品もチェックしてみようと思います。

その他、タランティーノ監督の鑑賞していなかった映画をいくつか鑑賞しました。
記事化した「イングロリアス・バスターズ」以外に、「デス・プルーフ」と「ジャンゴ 繋がれざる者」を鑑賞。
ハリウッド映画的痛快さは、いわゆる「悪者」を徹底的にやっつけるところにありますが、タランティーノのこれらの作品は、ポリティカル・コレクトネス時代における悪者とは何かという視点が含まれているのが面白いです。
「イングロリアス・バスターズ」は、第2次世界大戦下にてナチスがユダヤ人にボコボコにされる映画、「デス・プルーフ」は、変態男が女の子たちにボコボコにされる映画、「ジャンゴ 繋がれざる者」は、南北戦争直前の奴隷制度下のアメリカ南部にて、白人が黒人奴隷にボコボコにされる映画です。
描かれるボコボコ具合はえげつない(笑)ですが、PC的に正しい悪役(反ユダヤ、反女性、反黒人)が設定されることにより、映画的痛快さが保たれている点で、興味深いなと思います。
「ジャンゴ」では、「イングロリアス・バスターズ」で悪者ナチス幹部を演じたクリストフ・ヴァルツが、今度は親黒人の白人移民を演じており、黒人奴隷を痛めつけるレオナルド・ディカプリオとの鬼気迫る対決が見もの。
余談ですが、「デス・プルーフ」で登場する90年代型の赤のシビックは、自分が初めて中古で買った車と同じ型、色も全く同じで、違いは右ハンドルと左ハンドルの違いのみです。
個人的に何とも懐かしい車が登場しており、何やら感慨深い。
(この記事で盗難にあった車です。 →
映画でも最終的にこの車は大破しますが、赤のシビックはこのような不幸ごとに遭う運命にある車なのでしょうか(笑)。


○旅

今年はゴールンウィークに紀伊半島をぐるりと一周したのと、あと秋には金沢に旅行に行きました。
その他、今年は畿内再発見ということで、宇治、芦屋、斑鳩の町を、時間をかけて歩いてみました。
来年も時間的制約から、あまり遠くへはそんなに旅行に行けないかもしれませんので、畿内をあれこれ再発見することを続けてみようかなと検討中です。

西国三十三所は、今年は行くのが面倒くさいところを中心に回りました。
青岸渡寺は辿り着くまでが非常に遠く、上醍醐と長命寺は山登りで疲労し、播州清水寺も面倒なところですので車で訪れました。
寺社の歴史と景観を楽しむという面では、やはり那智の滝のある青岸渡寺が素晴らしかったですが、今年最後に訪れた壷阪寺のワンダーランドぶりも面白く、これまた非常に印象に残るお寺でした。

西国三十三所は残り5か所、来年中には回ろうと思っています。

(やや面倒なところがあと2か所ほど残っています・・・。)


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ということで、今年もあとわずかでおしまいです。
来年2018年は、なんと、恐るべきことに、自分は40歳になってしまいます。
ついに四十路になります。あな恐ろしや。
34のときに始めたブログ、まさか40になるとは、という感じです。

読者登録させて頂いている皆様の記事もずっと楽しみにしており、最近はコメントを書くことも少なくなりましたが、本年も継続的に読ませて頂いております。
商業ベースではない個人の記録は非常に面白いです。
最近はだいたい就寝前、夜11時くらいに記事を読むのが日課になっております。
当ブログにコメントを頂いている方も含め、来年も引き続きお付き合いのほど、よろしくお願い致します。

皆様にとって来年が良い年でありますように。
幸せを明日に・・・。
良いお年を!