マーラーの4番 ガッティ&ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団 | れぽれろのブログ

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11月18日の土曜日、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団の演奏会を鑑賞しに、京都コンサートホールに行ってきました。
曲目はマーラーの交響曲4番、指揮はダニエレ・ガッティ。
晩秋の寒波到来、開演時間は午後18時と比較的遅い時間、冬物のコートを着込んで出発し、冷え込む夜の北山に向かいました。

自分はコンセルトヘボウの鑑賞は3度目。
過去2度はどちらもヤンソンスとの来日でしたが、今回の指揮者はガッティ。
ガッティは初めての鑑賞です。
マーラーの交響曲4番の鑑賞は3度目、調べてみると9年ぶりで、ずいぶん久しぶりです。

自分はマーラーの交響曲はすべて好きなのですが、実は4番はその中でもかなり好きな曲だったりします。
マーラーと言えばまずはなんといっても9番、そして個人的に6番が好きなことは当ブログを継続してお読みの方はご存知かと思います。
番号の若い交響曲の中からさらにもう1作選ぶなら、自分の場合4番ということになります。


ということでいつものように、楽曲に対する能書き(笑)から。
交響曲4番はいわゆる角笛三部作の3作目。
前2作(交響曲2番&3番)が巨大な楽曲であったのに対し、交響曲4番は全4楽章制で演奏時間は60分と短め、標準的な長さの楽曲です。
交響曲3番で元々終楽章(7楽章)になる予定だったものを独立させ、新たに1~3楽章を付け足したのが交響曲4番の構成及び経緯。
このため3番の5楽章と一部の主題が共通になっています。

4番は標準的な4楽章制で時間も長くはなく、他の作品に比べると聴きやすいと言われますが、実は古典的なソナタ形式-4楽章制の皮を被りながら、そこから意図的に逸脱するという楽しい構成になっています。
ソナタ形式-スケルツォ楽章-緩徐楽章-ロンド形式というよくある楽章構成。
古典交響曲の場合通常は緩徐楽章の調性が異なりますが、本作の場合はスケルツォ楽章だけがハ短調で他がト長調という異質な構成。
全楽章のクライマックスが3楽章にあり、4楽章はあっさりと進み静かに終わる、1楽章はソナタ形式ですが再現部の入り方がトリッキー、2楽章に変な調律のヴァイオリンが登場し「ヴァイオリンからヴァイオリンへの持ち替え」というコンマスによる奇妙な持ち替えが発生、3楽章は8分から10分近くもあるやたらと長い主題による変奏曲、4楽章は合唱付きでいよいよ盛り上がる・・・訳ではなく、独唱歌手がサラッと歌っておしまい。
という感じの構成が面白く、楽しい肩透かし交響曲といった感じがするのが、4番の魅力です。

全編に渡って美しさと可愛げに溢れるのもこの曲の特徴。
マーラにしては小さい編成で、トロンボーンとチューバは登場なし。
鈴・トライアングル・グロッケンシュピールによるユーゲントシュティール風のキラキラした響き。
弦はゆったりと美しい音楽を奏で、独奏木管楽器が織りなす可愛いメロディの応酬も魅力的。
1楽章第2主題、2楽章の2番目の主題、3楽章(とくに第1変奏の前半部)は美しく、1楽章の展開部、3楽章の第2変奏の前半部、4楽章の加速部は、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさと可愛げに溢れる、非常に楽しい交響曲です。
マーラーは好きではないが4番なら聴ける、という人もいますが、これもこの曲の美しさ&可愛げ故なのだと感じます。


この日は本当に素晴らしい演奏でした。
マーラーの楽曲云々を越えて、何よりコンセルトヘボウの演奏が素敵すぎました。
ここ数年、実演でオケを聴いてきた中で、最も感激した演奏と言っても良いかもしれません。

前半はハイドンのチェロ協奏曲1番。
古典派の小ぶりな協奏曲で、自分はたぶん初めて聴く音楽です。
弦がやたらと綺麗で、ピシッとした古典派楽曲の響き&コンセルトヘボウの実力を堪能。
過去に鑑賞したコンセルトヘボウの演奏はロマン派以降の楽曲のみでしたが、古典派もよいですね。
独奏チェロはタチアナ・ヴァシリエヴァという方で、綺麗かつ端正に演奏されていました。
メインのマーラー4番の前にハイドンを持ってくるのは、古典構成を壊すトリック交響曲であるマーラー4番への布石か、などと考えながら楽しく鑑賞しました。

後半はメインのマーラー4番。
とにかく美しく綺麗な演奏でした。
ガッティはテンポや強弱に変化を付けたり、あれこれとやりたいことがありそうでしたが、オケの音を聴く楽しみがそれを上回ります。
そして独奏の部分、とくに木管楽器が素敵です。
クラリネットとトランペットが心地よくアクセントを付け、ファゴットとホルンが美音で応える。
うっとりと聞き惚れてしまいます。

1楽章の展開部、各楽器が独奏風に連続する部分が楽しい。
コーダはppからffへ、弦の弱音の美しさにうっとり。
2楽章の2つ目の主題、ガッティはかなりテンポを落として美しく歌っていましたが、この部分でまたしてもうっとり。
調律変更独奏ヴァイオリンとホルンの掛け合いも素敵です。
3楽章も提示主題の弦が陶酔的、後半の大クライマックスの後の弱音から4楽章に入る部分もやたらと美しい。
4楽章、ソリスト(独唱歌手)は予定してた人と違う人だったとのこと。
ソリストは指揮者横が定位置だと思いますが、この日は舞台後方、パーカッションの横で歌っておられました。
1楽章冒頭が再現される鈴付きの部分でやたらと加速したり、ガッティの解釈も面白いですが、何よりもオケが素敵で、ソリストよりも何よりも、ずっとオケを聴いていたい気分になります。
最後は音が収束し、弱音の世界で〆。


ということで、非常に楽しい演奏会でした。
今年の個人的No.1はサロネン&フィルハーモニア管弦楽団のマーラー6番かなと思っていましたが、今回のコンセルトヘボウの4番を聴いて気持ちが揺らいできました。
オケの音でこれだけ感激するのは久しぶり。
ピアノ独奏とオペラを除けば、ここ数年でベストの演奏会だったように思います。
やはりコンセルトヘボウ、超有名オケだけのことはありますね。