六甲アイランド 3つの美術館 | れぽれろのブログ

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近畿再発見シリーズ、美術館編。
12月23日の土曜日、神戸市東灘区の海沿いにある人工島、六甲アイランドに行ってきました。

自分は六甲アイランドは初めて訪れます。
六甲アイランドには3つの美術館があるのですが、美術ファンの割に(?)、意外どの美術館も訪れたことがありません。
六甲アイランドにある美術館は、
 神戸市立小磯記念美術館
 神戸ゆかりの美術館
 神戸ファッション美術館
の3つ。
この3館を1日で回ってみようというのが今回の目的です。

神戸市の人工島と言えばポートアイランドが有名ですが、六甲アイランドはそのさらに東側にある人工島です。
場所はその名の通り六甲山の南側。
70年代に着工、80年代から人が住み始め、企業や商業施設が誘致され、教育施設も幼稚園から大学まで一通りそろっている島です。
現在は2万人弱ほどの人が暮らしているようです。
六甲ライナーと呼ばれる鉄道が走っており、この鉄道が陸と島を結んでいます。

自分は阪神電車を利用し、阪神魚崎駅で六甲ライナーに乗り換え、六甲アイランドに向かいました。
魚崎駅を出発し、南魚崎駅を越え、列車は海を渡ります。
かなり高いところに設置された鉄橋を渡りますので、海の景色が良いです。
魚崎駅から2駅、アイランド北口駅を降り、西に少し歩くと、今回の1つ目の目的地、神戸市立小磯記念美術館です。


◎神戸市立小磯記念美術館

神戸市立小磯記念美術館はその名の通り、洋画家である小磯良平を記念して建てられた美術館です。
小磯良平は好きな画家で、兵庫県立美術館では何度も作品を鑑賞していますが、こちらの美術館は初めてです。

外観はこんな感じ。



 

この日はカメラを持ってくるのを忘れてしまいました。
自分はいつもコンデジを持ち歩いていますが、この日はないので仕方なくスマホで撮影。

余談ですが、自分はコンデジが好きです。
軽くて持ち運びやすく、ポケットからサッと出してパッと撮影できる手軽さがお気に入り。
チャチャッとピントを合わし、ササッとズームして、パッと撮影、そしてすぐにポケットにしまう、この動作が簡単で、愛用しているのです。
スマホはシャッターを押すのがやや面倒ですし、指2本でズームするのがやたらと面倒で、どうも写真を撮影している気がしません。
なので、この日の写真撮影は、なんとなく気合が入っていません(笑)。

縦横の比率が4対3ではなく16対9になるのも気に入らない、と思っていましたが、その後確認するとアプリの設定で4対3に変更できることが分かりました。
今度から4対3モードで撮影しよう・・・。


少し離れたところから。(木が邪魔で見にくい・・・。)


この日の特集は「生誕150周年 藤島武二展」と題された展覧会でした。
藤島武二は小磯良平の師匠筋に当たる画家で、そのためもあってこの美術館での特集ということのようです。

藤島武二といえば、多くの美術ファンが真っ先に思い出すのは「蝶」だと思いますが、この日は「蝶」の展示はありませんでした、残念。
全体を通して、藤島武二はかなり画風の幅の広い画家であることがよく分かる展示になっていました。
特徴が幅広いということではなく、その時代時代のモードに画風を合わせているような印象、個性が強いタイプの画家ではなく、時代の変化に合わせて画風を模索する画家と言った感じ。
画家としての特徴がやや強い小磯良平とは対照的です。
藤島武二は1867年生まれ、小磯良平は1903年生まれ、藤島が日本の洋画の模索期に活躍した画家であるのに対し、小磯は日本の洋画の確立期以降に活躍した画家ですので、このあたりの差異もあるのかもしれません。

初期作品は明治期の洋画家である山本芳翠や黒田清輝の影響が見られます。
その後、世紀末期前後(ベル・エポック期)になると象徴主義的・ロマン主義的な作品が多くなります。
有名な「蝶」もこの時期の作品。
「婦人と朝顔」など、個人的に藤島武二といえばこの時期の作品の印象が強いです。
この時期はアール・ヌーヴォー風の本の装丁なども手掛けており、これもなかなかに素敵です。
着物を着た和風の人物が描かれていますが、それでいて雰囲気がミュシャ風なのが楽しい。

その後、フランス・イタリアの留学を経て、10年代にはフォービスムや前衛の雰囲気が漂い始めます。
帰国後もこの画風は続きますが、やがてアジア回帰し、日本・台湾・朝鮮などのアジアの題材を洋画で描く、このあたりも同時代の藤田嗣治や岸田劉生の動きに似ています。
ルネサンス風の横顔(プロフィール)を描いたり、古典回帰の一面も。
30年代以降、晩年になると日本の海の風景を中心に描くようになり、かなり大胆な色彩でありつつ、日本の空気感を洋画で再現することを試みています。
このあたりも梅原龍三郎や安井曾太郎の試みに近い感じがします。
この時期の代表作が「耕至天」のようですが、自分はどちらかといえば海を描いたの作品の方が気に入りました。

最後のブースは師弟比較、藤島武二・小磯良平の2者がテーマごとに並ぶ構成になっていました。
こうやってみると、個人的な好みもありますが、やはり小磯良平は素敵です。
とくに人物画が良い感じ。
人物のポージングと画面配置、おそらく非常にうまい絵であり、同時に絵を鑑賞することの心地よさをも強く感じることができます。
戦前の「~主義」の時代変遷を追う藤島に対し、戦後の前衛期を尻目に安定した画風を構築した小磯、といった感じ。
お2人の時代差を感じることのできる、非常に面白い展示でした。

神戸市立小磯記念美術館は小磯良平をたくさん所蔵しているようですので、
また訪れたいと思います。


◎六甲アイランドの雰囲気

小磯記念美術館を後にし、残り2つの美術館に向かうため、南に歩きます。
神戸ゆかりの美術館と神戸ファッション美術館は、六甲ライナーで1駅南のアイランドセンター駅の近くにあります。
1駅分歩くことにします。

高層マンションがたくさん。

カラフルなマンションが可愛らしく、お洒落な感じがします。

途中の公園。


商業施設が入っている建物。


コスプレイヤーが嬉々として写真を撮っていました。

お洒落な街、さすが神戸やなという感じがします。
同じ近畿でも、古都の雰囲気漂う京都・奈良や、俗悪さ漂う(笑)大阪とは一味違います。

しばらく歩くと、2つの美術館の建物が見えてきました。

 

何やら奇抜な建物。


この建物の中に神戸ゆかりの美術館・神戸ファッション美術館があります。



◎神戸ゆかりの美術館

建物の入口を入って左側が、神戸ゆかりの美術館です。
まずはこちらから鑑賞。

この日は「神戸港コレクション ~よみがえった戦後風景~」と題された展示でした。
全体は3部構成。
第1部は神戸港を描いた画家たちの作品。
第2部が今回のメイン、川西英の「新神戸百景」と題された100枚余りの絵の展示。
第3部が戦前戦後の神戸の写真の展示となっていました。

第2部は、戦後神戸の名所を描き続けた川西英の作品がずらりと並ぶ展示で、名所江戸百景の神戸版と言った雰囲気の作品、戦後昭和期の神戸に詳しい人なら楽しめる作品と思われます。
90年代の神戸サンテレビのクロージング(お分かりでしょうか 笑)をどことなく思い出してしまうような、カラフルな作品が並んでいます。
自分も少なからず分かる風景もありましたので、雰囲気を楽しく鑑賞しました。

第3部の写真が面白いです。
明治後期の写真から昭和後期の写真まで、幅広い時代を捉えた写真たち。
1938年の阪神大水害の写真や、戦中の写真などがとくに印象的。
時代の変遷を感じながら楽しく鑑賞しました。


◎神戸ファッション美術館

最後は建物の向かって右側、神戸ファッション美術館の展示を鑑賞しました。
神戸ファッション美術館はその名の通り、ファッションをテーマにした美術館とのこと、お洒落な神戸らしい美術館ですね。

この日は「ファウンデーション ~ドレスの内側~」と題された展示。

18世紀から20世紀にかけての、女性のドレスを中心とした300年の服飾の歴史が、実物の服と共に展示されていました。

まずはドレスとは関係なく、ナポレオンの戴冠式の衣装がどどんと展示。
ダヴィッドやアングルの絵で有名な、赤の生地の周辺に白のモフモフが付いた、あの服です。
実物が再現されており何やら感激。
この白のモフモフは、大量のオコジョの毛皮からできているのだそうです。

そしてドレス&女性の服飾の歴史。
時代によってスカートの下のコルセットのサイズが変わるのが面白いです。
18世紀アンシャン・レジーム期は、横幅の広いコルセットと巨大なカツラが特徴的な、ロココ・スタイル。
フランス革命を経て、ルソーの自然回帰の思想の影響もあり、コルセットが簡素なエンパイア・スタイルに変遷。
19世紀半ばになると再びコルセットが巨大化するクリノリン・スタイルに。
19世紀後半は今度は縦に長いコルセットが流行するバスル・スタイル。
そして第1次世界大戦以降はコルセットがなくなり、機能的な服飾に変化しますが、これは戦争により金属の調達が困難になったことが原因のようです。

戦争がコルセット消失の直接の理由。
社会が文化を規定する、興味深い例です。

美術ファンとしては、美術作品で描かれた女性の服装を思い出させます。
おそらく、ダヴィッドの「レカミエ夫人」はエンパイア・スタイル、アングルの「ド・ブロイ公爵夫人」はクリノリン・スタイル、スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の右端の女性はバスル・スタイルです。
美術作品を思い出しつつ、楽しく鑑賞しました。

神戸ファッション美術館の3Fには図書ゾーンもあり、
ファッションやデザインに関する書籍や雑誌、その他芸術関連の書籍が多数所蔵されていました。
展示鑑賞後は図書ゾーンでゆったり。
夕方までのんびりと過ごしました。



ということで、今年最後のお出かけ、六甲アイランドの3つの美術館でした。
近畿圏でもまだまだ訪れていない地域・美術館はたくさんあります。
来年もあちこち訪れようと計画中です。
次回はカメラを忘れないようにしないといけませんね。