小物釣りのエサと言えば、私は赤虫が一番だと思う。ところがカナダではまず釣具店では売られていない。理由は簡単、需要がないからだ。赤虫でなければ釣れないような小物釣りの習慣がそもそもない。どうしても赤虫を使いたい時は、熱帯魚屋さんで餌用の冷凍赤虫を買うしかないだろう。だが冷凍赤虫は細いし、すでに赤い色が退色している上に張りもない。赤虫を模したフライの方がよっぽど効果がありそうだ。

では赤虫の次に小さいエサは何かというと、マゴットだろう。マゴットはサシのことで、アイスフィッシング (氷穴釣り) シーズンのクラッピーブルーギルを釣るのには欠かせないので、一部の釣具店では冬季限定で売られている。紅ザシもある。

その上のサイズが、ワックスワームだろう。これはワクシーとも呼ばれ、メイガという蛾の幼虫である。サイズは 2.5 センチくらいで蜂の幼虫のような体型をしている。パンフィッシュやトラウト類に使われる。

またサケやスチールヘッドもサイズ的には小さいが、これらは普通はいくつかまとめてエッグバッグの形で使われる。

ワックスワームより大きなエサとしては、一気に大きくなってデューワームまたはナイトクローラーと呼ばれるワームサイズのドバミミズになる。キヂは売られていない。キヂサイズのミミズが必要な時は、ガーデンワームと呼ばれるミミズを河原で採集して調達していた。特別に腐食質の土地でなくとも適度な湿気を含む場所ならば、石をどければたくさん採れた。その中でも一段と小さくて細いものを、タナゴバリでしか狙えないようなデースやスティックルバックに使用した。体液は黄色ではないのでキヂではないが、ほとんどどんな魚にも効果抜群だった。

では、それ以外の売られているエサにどんなものがあるかというと、虫系では、リーチがいる。リーチとは淡水リボンヒルのことで、このヒルは吸血するヒルではなく、無脊椎動物や腐肉を食べている水生ヒルである。ウォールアイバス、トラウト類の釣りに使われる。

卵系では、いわゆる保存済みイクラの他に、卵巣のまま売られているものもあり、スキーン (skein) と呼ばれている。卵同士がくっついているので塊としてハリにつけられる。

生魚系では、各州により使用が許可されている魚種が売られている。オンタリオの場合は、小さいサイズの方から、ノーザンレッドベリーデースエメラルドシャイナーコモンシャイナーゴールデンシャイナークリークチャブホワイトサッカーなどが売られている。

ブリティッシュコロンビア州では、ホワイトスタージョンの釣り用に、ウェスタンブルックランプリーというヤツメウナギが売られていると聞くが、実物はまだ見たことがない。

州によっては生魚の使用が禁止されていて、その場合は冷凍または塩漬けの魚が使われ、レインボースメルトがアルバータ州ではよく使われる。 また上記のホワイトスタージョン用にユーラカンというスメルトの一種が冷凍か塩漬けで使われるが、ユーラカンはフレイザーリバーでは禁漁中なので、アメリカまで行って入手していると聞く。

その他、ノーザンレパードフロッグというトノサマガエルサイズのカエルがベイトショップで売られていると聞いたが、実際に売られているのは見たことがなかった。パイク釣りに使われるらしい。

植物性のエサとしては、コイ釣りに使われるボイリーがあるが、カナダではボイリーよりもコーンが使われる方が多いと思う。これはスーパーで売られている食用の缶入りのゆでたコーンである。

人工エサとしては、バークレーからいろいろな製品が販売されている。ドウと呼ばれるトラウト用のダンゴエサから、かなりの精度の虫系エサのイミテーションまであるが、さすがに赤虫のイミテーションはカナダでは売られていないので、日本から取り寄せたことがある。まだ使っていないが、本物と遜色なければ小物釣りの大きな武器になるだろう。