ちょっとできすぎの感もあるが、記念すべき100 種目を飾ったのは、ブリティッシュコロンビア州の淡水魚の代表であるのみならず、カナダで最も大きな淡水魚でもあるホワイトスタージョン (シロチョウザメ) だった。別に狙ったわけではなかった。オカッパリでも釣ることは不可能ではない魚なので、わざわざガイド付きのボートをチャーターするのを後回しにしてきた結果、最後になったというわけだ。

2008 年の8月に釣友のケンがブリティッシュコロンビア州を再び訪れることになった。そして彼の発案により、フレイザーリバーでガイドのジェットボートをチャーターしてホワイトスタージョンを狙うことになった。

費用は一人当たり税込み 260 カナダドル弱 (当時のレートで約 27000 円) で、6時間コースだった。ガイド会社はブルーウォーター・ロッキーズ・スポーツフィッシュ・ガイディング・カンパニー (Bluewater Rockies SportFish Guiding Company) だった。タックルやエサはガイドが用意してくれるが、昼食や飲み物サービスはなし。ガイドがエサ付け、キャスト、それに取り込みをしてくれて、私たちはアワセとファイトをするだけの大名フィッシングだった。

8月中旬、フレイザーリバーのアイランド 22 のボートローンチでガイドと合流し、彼のジェットボートに乗り込んだ。ガイドはサーシャと言って、名前からおそらくロシア系だろう。ボートは上流に進み、あるスルー (細入り江) の出口でアンカーを打っていよいよ釣りの開始となった。

私たちが使ったのは、ロッドはシマノテクニウム、ベイトリールはペンのインターナショナル、ラインはタフライン 150 ポンド。仕掛けはスナップスイベルを介した遊動式平板型オモリ、ビーズ3個、大型スイベル、ブレイデッドリーダー (ダクロン) 約 60 センチ、ビッグゲームフックで、エサはフレイザーリバー支流のひとつハリソンリバーで調達した死んだソッカイサーモンのフィレーを使った。

そこではアタリはあったもののフッキングせず、アタリも遠のいたので別のスルー出口に移動した。そしてケンが5フィートのホワイトスタージョンを釣り上げたので、自分の番になった。だが、2回フッキングに成功したものの、すぐにバレてしまった。その後ボートローンチの下流にあるバックエディに移動し、3度目のフッキングはしっかりとしたものだった。いよいよ大魚との格闘が始まった。

ケンが釣ったスタージョンとは違い、私の魚は容易には御せなかった。ファイトは非常につらく、腕は限界、右親指には肉刺ができ、のどはカラカラで、できることなら誰かに代わってもらいたいくらいだった。

そうこうしているうちに、魚はバックエディから本流へ移動し、流れに乗ってしまったので、ボートで追いかけることになった。ところがアンカーが底に引っかかっていて上がらないと言う。しかたなくサーシャはアンカーラインを全て出してボートをアンカーから離した。

アンカーフリーになったボート上では、容易にラインを巻き取ることができた。そして間合いを詰めての再びの格闘の末、ようやく水面まで上げて来ることができた、だが、アンカーがないので取り込みのためにボートを留められず、流されながらの取り込みとなった。

サーシャは自身の怪我防止のためにまず平板型オモリを外した後、スタージョンの口に両手を突っ込んだ。バーブレスフックだからここで魚が暴れたらバレる可能性が高い。彼の腕力にすべてを託した。サーシャは渾身の力を込め、魚に暴れる隙を与える前に一気にボートに引っ張り上げた。魚はボートに橋渡しされたビニール製のクレイドルと呼ばれる担架のようなものの中にすっぽりと収まった。

それはカナダ百目がついに達成された瞬間だった!

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クレイドルの中のホワイトスタージョン。水が入れられ、撮影までの弱りを防いでいた。


その後対岸のビーチまで行き、シヌックサーモン釣りをしていた人に写真を撮ってもらった。この際、魚を持ち上げるのがまた難儀で、しかも暴れ出した時にはものすごい力だった。 胸びれの下に手を入れるように言われたが、足で支えなければ保持していられない重さだった。 型が大きいので、体側の蝶型の鱗は尖っておらず、その点は安全だった。撮影後、規則によりリリースした。

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初めて釣ったホワイトスタージョン、182 センチ


チョウザメ目チョウザメ科チョウザメ属。最大全長 6.1 メートル。カナダではブリティッシュコロンビア州のフレイザーリバー水系とコロンビアリバー水系に生息する。海と川の間を行き来するが、産卵は淡水で行われ、また場所によっては陸封された個体群もある。産卵を終えて死んだサーモンやスメルトの肉、魚卵、小魚、底性動物などをバキュームポンプのような口で底をあさって食べる。フレイザーリバーでは、かつて乱獲により数を減らしたが、キャッチ&リリースの徹底と増殖事業により数が回復している。


ホワイトスタージョンのハビタット


カナダでホワイトスタージョンを釣ることができるのは、フレイザーリバーのホープから下流のみ。またミッションから下流は海水域とみなされるので、この区域で釣る場合は海水域用の釣りライセンスが必要になる。さらにホワイトスタージョン・コンサーベーション・ライセンスというものも持っている必要がある。