ソッカイサーモン (ベニザケ) は湖のある川にだけ遡上する習性がある。そしてその湖に流れ込む支流で産卵する。孵化した仔魚は湖である程度大きくなってから海に下る。また、そのうち全く海に下らず湖を海代わりにするようになった、いわゆる陸封されたものがコカニー (ヒメマス) だ。

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BC州ハリソンリバーで死んでいたソッカイサーモン。目の周りのくぼみが sockeye の名の由来だと思う。


私はコカニーは釣ったことがあるが、ソッカイサーモンは釣ったことがない。理由があって、それはソッカイは釣るのが困難至極だからだ。一般にソッカイの産卵場所は河口からとても遠い上流にあり、1000 キロ以上というものもある。それを飲まず食わずで遡るのだ。そのためソッカイは体にたくさんの脂肪を蓄えてエネルギー源とし、遡上中はいっさい餌を摂らない。これだけなら他のサケと変わりないのだが、ソッカイの特異な点はルアーやフライその他に一切反応せず、とにかく口を使ってくれないのである。これでは釣り人としてはお手上げで、ずっとソッカイを川で釣ることは不可能だとされていた。

ところが悪知恵が働く人がいるもので、いつからか、魚がハリにバイトしないのなら、こちらからハリを口に送り込めばいい、これならすれすれではあるが合法的にソッカイを釣り上げることができると考えた人が現れた。

方法はこうである。いわゆるぶっ込み仕掛けのリーダーを3メートル程度と異常に長くとり、その先にフックを結ぶ。さすがに空バリでは違法になるので申し訳程度にウールやエッグヤーンなどを結ぶ。またこれによりフックが底から浮き上がるので都合がいい。そして上流にキャストし、オモリが底を転がるように流れに任せる。長いリーダーは底近くで水平に伸びながら下流へ流れ、そこへ大口を開けながら遡って来たソッカイと交叉し、スルスルとリーダーが口の中を通って最後にはフックが口に掛かるというわけだ。これはフロッシングまたはライニングと呼ばれており、瞬く間に他の釣り人にも広がった。

私はこのフロッシングを試したことがないし、試そうとも思わない。食べるのが目的の釣り人にとってはいいのかもしれないが、釣りにゲーム性を求めている私にとってはこれは釣りではなく漁だからだ。釣りは狩猟や漁とは違い、魚にも釣られない自由があって初めてゲーム性が成り立つと思う。

そんな訳でソッカイは私のライフリストには載らずに万年ウイッシュリストメンバーの魚のひとつだ。でもいつかはソッカイに口を使わせる方法を考えつきたいと思っている。

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BC州コーカワレイクでSSサイズのグラスミノーで釣ったコカニー、36 センチ。このサイズになると小さなソッカイサーモンといった感じだ。