ローリング・ストーンズはチケットが高いので有名だが、今回は特に高かった。
S席¥35,000 A席¥28,000 B席¥18,000 ゴールデンサークル席¥65,000
マジかよ? ……という感じ。
事前にバンド仲間でUSツアーまで追いかけてるギタリストに電話して、相談すると、彼はS席で見ると言う。
「まあ、一生の思い出におまえはゴールデンサークルで見たらいいよ」
「それってどういう席?」
「ようするに、前のほうだろ」
悩んで、「ローリング・キッズ」で対談を頼んだこともある弟の山川哲に聞いてみると、さいたま市在住の彼は驚いた。
「ストーンズがさいたまアリーナに来るのか? 知らなかったぜ。それは貴重な情報をありがとう!」
ってことで、彼もS席で見ると言う。で、ぼくもS席にした。
ところが当日になって、いっしょに行く予定だった人が行けなくなり、35,000円を無駄にするのはもったいないので急遽別の友達に連絡。
ストーンズの来日は、このチケット問題がたいへんなんだよね。
名古屋も、4枚とって1枚空きがあり、ようやく今日になっていっしょに行く友達が決まったとこだしな。
まあ、そんなことはともかく、さいたまアリーナのぼくの席はアリーナのC-2というブロックである。ようするに、アリーナの後ろのほうだ。しかも、周囲にはけっこう空席がある。およそ満員とは言い難い状況で、ぼくは1978年から国内・海外両方でけっこうな数のストーンズコンサートを見ているが、こんなことは初めてである。だいたい、ぼくの前のほうの席がかなり空いているのを見ると、なんで前のほうから売らないんだよ! と思う。35,000円あれば、iPod ミニが買えるんだぜ!
だんだん腹が立ってくる。札幌では直前にS席を直前にタダで配ったという話だし、JECインターナショナルの仕切りは悪すぎる。
そんなわけで、はっきり言ってさいたまアリーナには開演前からそんな「ふざけんじゃねえ!」的な不穏な空気が感じられた。日本公演は4回めだし、高めのチケット代金を払ってもどうしてもアリーナでストーンズを見たいというコアでワイルドなファンが多かったせいだろう。
そういう理由からか、べろTシャツ姿の人のパーセンテージも高く、全体的に東京ドームよりロック度というかストーンド度の高い客層であったように思う。
前座が終わり、ぼくはあることに気がついた。C-2というブロックは、なんと、Bステージ正面なのである。ぼくの席はかなり後方なのだが、ずっと先にはBステージがある。
観察してみると、警備員の数は東京ドームよりずっと少ない。こりゃ、ゆるそうだな、と思う。
客電が落ち、アリーナが歓声につつまれたその瞬間、ぼくは通路に出た。どうせ5列ぐらい前までがらがらなのだから、前の席に移ろうと思ったのだ。
だが通路は、まっすぐにBステージ正面へとつづいている。
反射的に、ぼくは最前列にダッシュした。
えっ、そんなのアリかよという顔をした数十人が、ぼくにつられてBステージ正面に殺到。
もちろん警備員に叱られ、自分の席に戻る人もいたが、ぼくは知らん顔を決め込む。「ふざけんじゃねえ!」的な気分が、ぼくの中にもたまっていたからね。
Jumping Jack Flashがスタートし、みなが拳を突き上げはじめると、警備員も黙った。まあ、たいへんなバイトだよなあ。ごめんね。
この夜のパフォーマンスは、WOWOWのカメラが入ってたせいか、渾身の出来映えである。素晴らしいとしか言いようがない。
キースのHappyがはじまると、みんな次のMiss YouでバンドがBステージに移動するのを知っているので、ざわざわしはじめる。
ここでもぼくが最初に鉄柵前にダッシュ。警備員がさすがに怒鳴りまくっていたが、ぼくの隣りの人がこう言い返している。
「押されて死にそうなんだよ! どうしてくれるんだよ! 前ががらがらに空いてんじゃねーか、柵をどかせよ!」
そしてMiss Youをプレイしながら、ストーンズが目の前にやって来た。
ミックがまいたミネラルウォーターがかかる。その距離、2メートルか3メートルしかない。客は飛び跳ね押し合いながら、叫びまくってる。もう騒乱状態。ぼくも死ぬかと思った。
こいつら最高の連中だな、とぼくは思った。あんた達とストーンズ見られて最高だよ。
ロニーが何度もこちらを指差しながら、口にチャックをするジェスチャーをした。あ、とぼくは気がついた。客があんまりうるさいものだから、モニターが聞こえていないのだ。とくにStart Me Upの時は、ミックも困っているようだった。
まあ、許してくれよ! みんなロックしたいんだよ。
そしてHonky Tonk Womenをプレイしながら去っていくストーンズを、その場の全員で絶叫しながら見送ったのだった。
この夜のパフォーマンスは素晴らしく、チケット代金は高かったし、空席だらけだったが、ぼくは最高のライヴを堪能したのであった。
やっぱり、客層ってのも大事だよね。この夜のコアなファンはYou Can't Always Get What You Wantもちゃんといっしょに歌えて、ミックもやりやすそうだったしね。
5月にWOWOWでこの夜のコンサートがオンエアされるので、行けなかった人も行った人も、チェックしてね。
あとは最後の名古屋だ。
もちろん、ぼくも行く。えーと、席はどこだったかな。
とにかく、ミックやキースに、ファーイースとにもロックしてる連中がいるんだってことを、思い知らせてやろう。
Jumping Jack Flash
It's Only Rock'n Roll
Let's Spend The Night Together
Oh No Not You Again
Sway
Wild Horses
Rain Fall Down
Midnight Rambler
Tumbling Dice
--- Introductions
This Place Is Empty (Keith)
Happy (Keith)
B Stage
Miss You
Rough Justice
Start Me Up
Honky Tonk Women
Sympathy For The Devil
Paint It Black
Brown Sugar
(アンコール)
You Can't Always Get What You Want
Satisfaction