息子を水難事故で失った家族の話。カウンセラーとして働く彼の淡々とした静かな生活のなかに、息子をなくした哀切や後悔の念が深く忍び入り、妻や娘との穏和な関係にも少しずつゆがみが入り込む。そうした生活のつづくなかで、ある日息子へのラブレターが届く。夏のキャンプで出会ったという差し出し人の女の子は息子の死をまだ知らない。
ラストシーンのさりげなさが素晴らしい。ラブレターを書いた女の子の訪問をきっかけとして、残された家族の三人がある“踏み越え”を行う。それはどこまでも精神的なもので、映像にはそこで行われていることの激しさが表現されることはまったくない。その踏み越えは言葉はもとより、表情にすらほとんど反映されることなく、ただ心の奥底で進行し、遂行される。ラストのさりげなさが、そのことのすべてを表している。
静かな傑作。語られることなく派手な演出もなしに達成されたほんものの表現の、核のようなものがそこにある。
いい音を使ってるなと思い確認したら、音楽にブライアン・イーノが参加していた。久々にまとめて聴きたくなった。
“息子の部屋 ”("La Stanza Del Figlio") by Nanni Moretti / Nanni Moretti, Laura Morante, Jasmine Trinca, Giuseppe Sanfelice / Brian Eno [Music] / 99 min / Italy / 2001 2001年カンヌ国際映画祭パルムドール ☆☆☆☆☆