Wed, June 15, 2005

信仰と剣 【ミッション】 R.ジョフィ [UK'86]

テーマ:映画 〔欧州:イギリス〕

 無名の神父が木の十字架に磔にされて河に流され、そのままイグアスの瀑布に呑み込まれていくシーンから始まるこの作品は、18世紀半ばの南米奥地、パラナ川上流域(現ブラジル-アルゼンチン国境域)を舞台とする。大航海時代のさなかにあってそこではスペインとポルトガルが奴隷貿易の利権を競い、イエズス会が布教の根を張っている。
 映画前半では対立する主人公の二人、誠実に布教を行う神父ガブリエル(ジェレミー・アイアンズ)と冷酷に原住民を刈る奴隷商人メンドーサ(ロバート・デ・ニーロ)は、後半になると教会と政府の意向に抗い手を結ぶ。この作品において語り部となるイエズス会本部から派遣されてきた枢機卿(レイ・マカナリー)は、政治的な決定においては本国の事情を優先して原住民の幸福と平安を切る形をとったが、原住民に寄り添おうとする主人公たちを心情的には理解する。

 この作品の公開年にあたる86年といえばようやくポスト・コロニアル思想が広く喧伝され始めた頃ゆえに仕方ないとも言えるのだろうが、植民地政治や奴隷制度への義憤は描かれても、イエズス会の布教行為そのものに対してはまるで無批判な点はどうにも不自然に映る。ともあれ改宗し定住した部族により築かれた社会が一時的にとはいえ共産制に行き着いたとして描かれる点や、宣教師の存在が結局は原住民の破滅を防げなかったとするプロットにより、ぎりぎりのラインでPC的な誹りを逃れているとは言えるのかも。デ・ニーロ扮するメンドーサが一度捨てた武器を手にとる決意ののち祝福を請うシーンでの、J・アイアンズ演じる神父ガブリエルによるセリフ「私が祝福を施さずとも、あなたの行ないが正しいなら神が祝福するだろう。また行ないが過ちなら、私が祝福しても無意味である。ただ私はおもう。もし力が正しいなら、この世に愛は要らなくなる」 は印象に深く残る。

 出演者では他に、いまやすかっりハリウッド・スターの仲間入りを果たしたリーアム・ニーソンが若い神父役で登場している。監督のローランド・ジョフィは他に“キリング・フィールド”(1984)や“シティ・オブ・ジョイ”(1992)、“スカーレット・レター”(1995)など。近現代史物に強いらしい。脚本のロバート・ボルトは“アラビアのロレンス”でも脚本を担当、確かに原住民の扱いには通底する部分も感じる。エンニオ・モリコーネによる音楽もいい。
 念のため付記するが、"mission"の語には「使命,任務」の他に「宣教,伝道」の意味がある。日本を含む非欧米諸国のカトリック教会では "missionaries church" という英語表記をよく目にする。つまり宣教会。


"The Mission" by Roland Joffe / Robert Bolt [scr] / David Puttnam [pro] / Robert De Niro, Jeremy Irons, Ray McAnally, Liam Neeson, Aidan Quinn / Ennio Morricone [music] / 125min / UK / 1986
1986年カンヌ国際映画祭パルムドール ☆☆☆
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Fri, June 10, 2005

音像楽映 【28日後...】 ダニー・ボイル [UK'02]

テーマ:映画 〔欧州:イギリス〕

 “トレイン・スポッティング”[1996],“ザ・ビーチ”[1999]のダニー・ボイル監督作ゆえ、他の要素はともかく映像と音楽のスピード感だけは期待できると思って観たのだけれど、期待以上に楽しめた。というか、どんどん巧くなっている。“ザ・ビーチ”はやや落ちたけど、“28 Days Later”を込みで考えれば一発屋的な評価は彼の場合には当たらない。

 この一点を外して観てしまうと、この映画のストーリー設定は基本的にはロメロ&アルジェントの古典的傑作“ゾンビ(Dawn of the Dead)”[1978]やカプコンの同名ゲームが原作の“バイオハザード(Resident Evil)”[2002]のコピーで、ゾンビの巣食う都心エリアでのサバイバル&脱出劇が映画の全編を占めるから、背景設定の詰めの甘さとか、後半になってアクションシーンだけが前景化してくることの凡庸さとかがネガティヴポイントに映ってしまうことになる。だがむしろ、賢しげにそんなものをこの監督に求めることの方が的外れなものにも思える。100分間たるむことのないMTVみたいなグルーヴのあるこうした作品をこれからも撮り続けてくれるなら、猫的にはこのうえない。

 作品後半で異様なオーラをまとって登場するウェスト少佐の以下のセリフには、クライマックスで主演のキリアン・マーフィが見せる怪演の印象とも相俟って、現実認識と表象を巡るダニー・ボイルのディレクティングに特有の志向性がコンパクトに言語化されている観がある。
 “……This is what I've seen in the four weeks since Infection. People killing people. Which is what I saw in the four weeks before Infection, the four weeks before that...before that... As far back as I care to remember, people killing people. Which to my mind puts us in a state of normality right now.”
 ちなみに撮影監督はアンソニー・ドッド・マントル。この作品と“ドッグヴィル”[2003]とでヨーロッパ映画賞撮影賞を獲得。脚本は“ザ・ビーチ”の原作者で売れ線小説家のアレックス・ガーランド。どうりで歯切れが良いわけだ。


"28 Days Later" by Danny Boyle / Cillian Murphy, Naomie Harris, Brendan Gleeson, Megan Burns, Christopher Eccleston / Alex Garland [scr] / Anthony Dod Mantle [Cinematographer] / 112min / UK, US, Holland 2002 ☆☆☆
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