緋和子(ひわこ) は夢の中のヒトです。

現実には存在しません。

 

彼女は私のパートナーです。

 

そして私は、

誰かの夢の中に 引っ張られました。

 

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『私は 嘘つき なんです』

 

そのヒトは重苦しく言った。

 

 

 

(・・・・・ ?)

 

 

 

目の前にいる彼は

丸イスの上で肩を落とし、うなだれている。

 

まさに、”落ち込んでいます”ポーズだ。

 

 

周囲は暗く、私たちの所だけ スポットライトが当たっていて

見えるのは 彼の姿だけだった。

 

 

ここが夢の中で、

彼が人間ではないことは確かだ。

 

 

なにせ、彼は 特殊な姿をしている。

 

体の部分は きちっとした男性のビジネススーツ姿なのに

頭のところに なぜか オウムの被り物が・・

・・オウム?

 

見た目は ふざけているようにしか見えない。

しかし 彼の声は落ち着いていた。

 

表情は全く わからないのに、

オウム頭から 悲しげな雰囲気を かもしだしている。

 

 

その彼が、繰り返す。

 

『私は、嘘つき なんです』

 

(・・・そーですか。)

 

 

 

 

 

 

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『おかしなことに、なったわね』

 

緋和子が 遠くから話しかけてくる。

 

彼女とは頭の中を つないでいるので、

こちらの状況は伝わっているのだろう。

 

(どーしよう・・・。どうする?)

 

アドバイスを求めた。

 

 

正直、この不幸そうな オウム頭を無視して

自分の部屋に戻りたい。

しかし、帰り方がわからない。

 

『・・・後ろ。 音叉(おんさ) が 何か、言ってるわ』

 

(んん?)

 

振り向くと、すぐ そばの机に音叉チューナーがあった。

緋和子からプレゼント を参照)

 

 

・・・なるほど、

確かに ざわついている。

 

 

 

"--------  --------  -------"

 

 

何を言っているのか、全然わからない。

けど、ワクワクして騒いでいるみたいだ。

 

”行こう。行こう。 早く。早く。” みたいな感じ。

 

 

たぶん、このオウム頭にチューナーを使え

と いうことなんだろう。

 

うーん。

 

 

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とりあえず、彼に声を掛けてみた。

 

「どうしました?」

 

 

オウム頭が、ガバっと振り仰ぎ、

勢いよく話しだす。

 

『私、私は、嘘つき なんです!

 

いえ、むしろ私は自分のことを正直者だと思っていました。

 

”自分にウソがつけない人間だ” とね。

 

そして、周囲の人々を非難していました。

どいつも、こいつも嘘つきだ!と思っていました。

 

実際、人間って嘘つきなんです。

自分がウソをついていることすら、嘘でごまかす。

 

なんて、卑劣な。

私は、そういう人たちを嫌っていました。

 

ですが、違いました。

私も、嘘つきなんです。』

 

 

「・・どうして そう思うんですか?」

 

 

『実はわたし、ある失敗をして

 友達に迷惑をかけました。

 

 私は、自分が情けなくて、、、苦しくて

 失敗の原因となった別の人物を

 心の中で責めました。

 

 ”信じていたのに、

   どうして私を こんな目に遭わせたのか!?”

 ”嘘つきめ”

 ”失敗するなら、最初から やめておけば いいのに”

 

 しかし、ある日 気がついたのです。

 

 私は、私を弁護するために

 自分を正当化するために、

 過剰に 彼を 責めているのです。

 

 彼に悪気があったのか どうか

 実際の所は わかりません。

 

 しかし、私は、彼が悪人であることを

 無意識に期待しています。

 

 私は、自分が被害者でいるために

 真実にフタをしようと しています。

 

 私は、卑劣な人間なんです。』

 

 

 オウム頭が、あたまを抱えた。

 

 ・・・沈黙。

 

 しばらくして、落ち着いたのか 続きを話す。

 

 

 『それ以来、私の頭の中で

  私を非難する声が 聞こえます。

 

 ”嘘つきめ” ”オマエも、嘘つきだ”

 

  ・・・苦しい。

  私も、彼らと同じだったんです。

 

  どうしましょう?

  私は、どうすればいいですか?』

 

 

彼が、こちらを見た。

返答を求めている。

 

 

 (さて、どーしよう・・・・)

 

 

 

(続く)

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8  緋和子からプレゼント ---- 音叉チューナーをゲット

7  地の果てまで エスケープ

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5  名前ができあがるまで、待ってる _ 後日談

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