以下、筆者個人の考えです。
2018年11月30日に発行された、『小説 ティガ・ダイナ&ウルトラマンガイア 〜超時空のアドベンチャー〜』
1999年に上映された『ティガ・ダイナ&ウルトラマンガイア 〜超時空の大決戦〜』の脚本を担当された長谷川圭一氏が執筆された、正式な続編となります。
映画の出来事から20年の歳月が流れた世界が舞台で、新星勉少年とその関係者各位も立派に成長した姿で登場します。
本当に、素晴らしい作品でした。
映画に対する一種の答え合わせ、補完的な内容でありながら、20年経過して、大人になって”あの頃”を忘れかけてしまった大人に対する、解答でもありました。
※以下、ネタバレあり
映画冒頭のように、滅びゆく世界。しかしこれはビジョンではなく、現実の世界。そこに現れたのは、『ウルトラマンティガ』に登場した怪獣バイヤー、チャリジャ。滅びゆく世界にて怪獣を回収した彼が目にしたものとは……あの、あらゆる願いを叶える”赤い玉”(何故2個あるのか、本編を読もう)。これを追って、チャリジャは無数の平行世界を駆け巡ります。
同じ頃、勉は三十路も近くなり、仕事に精を出しています。交番の巡査となっていました。子供の頃から大好きで、あの時出会った”ウルトラマン”を目標に。
しかし、彼もその年令から、自分の思いと世界との軋轢に苦しみます。
「大人はもうウルトラマンを卒業するべき」
そういった考えを幾度もぶつけられます。
そんな中、この世界において吉岡毅志(『ウルトラマンガイア』にて高山我夢を演じられた俳優)と出会い、自身の”あの時”の体験、如何にウルトラマンを好きで目標にしたかを伝えます。
しかし彼からは相手にされず、逆に上記の発言をぶつけられてしまう始末。
思いを踏み躙られ、自身の思いに猜疑心を抱いてしまう勉。
紆余曲折あり出現した怪獣、カイザーギラレス13世の進撃を前に、赤い玉を持ちながらも「大人だからウルトラマンは呼べない、もうどうしようもない」と諦めを吐露してしまいます……。
この言葉が引き起こしたある悲劇に打ちひしがれる勉でしたが、旧友たちと協力し……次元を超えて、もう一度我夢に会いに行く決意をします。
そして……彼の行動がティガとダイナをも呼び寄せ――。
詳しい話は、是非とも小説を手に取り、呼んでみてください。
本作は、ウルトラファンは思わず唸るような事項が散りばめられています。
赤い玉を追うチャリジャは、様々な平行世界を訪れ、その先で怪獣を確保します。
月と太陽の力を持ち、怪獣保護も視野に入れるウルトラマン……ウルトラマンコスモス。
防衛隊に所属しない一般人が変身し、傷だらけで戦い、怪獣認定もされるウルトラマン……ウルトラマンネクサス。
根源的破滅招来体の侵略に晒され、互いの正義故にぶつかる赤と青のウルトラマン……ウルトラマンガイアとウルトラマンアグル。
そして……レイキュバスと戦うウルトラマンダイナ。カミーラと決着をつけんとするウルトラマンティガ。
世界を股にかけるチャリジャだからこそ回れる、TDG三部作以外の世界。
そして、回収されたガルラ、ネオジオモス、サイコメザード、カオスジラーク、ノスフェル(またお前か)。
豪華過ぎて言葉もありません。
(ネクサスに対して)「子供には人気が出なさそうだから、怪獣以外に苦戦しなければいいけど」、(ガイアに対して)「シンプルな正義の味方のウルトラマンが懐かしい」などのメタ発言も満載で、くすりとなる場面も多々あります。
そして、勉はかつて我夢がそうしたように時空を超え、ティガとダイナの世界を訪れて彼らと邂逅します。
二人の巨人も、ガイアという響きに思うところがあるようで……?
そして、とある事情から呼び出されたキングオブモンス。カイザーギラレス13世との死闘を演じます。
以前悪役だった怪獣が味方となって戦うシーン。熱いですね。大怪獣バトル勃発です。
劇中世界の吉岡毅志氏も、紆余曲折あって、忘れかけていた心の輝きを取り戻し、世界を救うべく力を欲します。そして、彼の前に現れたのは……勉と約束をした我夢、ウルトラマンガイア。20年前の撮影の時と同じように、我夢が量子加速実験中に地球の光と出会ったあの時のように。
アグルの襲撃を受けて、自分の守るべきもの(エリアルベースと仲間たち)を守るべく残った我夢の意識が時空を超え、吉岡毅志氏と同調。吉岡毅志氏は玩具のエスプレンダーに光を集め、遂にウルトラマンガイアへと変身。カイザーギラレス13世へと立ち向かいます。
カイザーギラレス13世を倒したガイアを襲う、五大怪獣。”ウルトラマンを呼び出さない”祈りを聞き届けた赤い玉によって、”あの時”のようにティガとガイアを呼ぶことができない。
しかし、TVシリーズを知っている勉たちは、ある方法を願います。
――直後、ワームホールから出現するアートデッセイ号とクラーコフNF-3000……GUTSとスーパーGUTSの揃い踏みです。
そこにいるのは、ウルトラマンの力を持つ、マドカ・ダイゴとアスカ・シン。
大人の事情で顔を出せない長野博氏……ですが、紙の世界にて、マドカ・ダイゴとして出ることはできるんです。
思わず目頭が熱くなりましたね。
両特捜チームは奇怪な状況に戸惑いながらも、即座に意気投合して華麗な連携プレーを披露します。そして、”超ファインプレー”を見せたアスカと、墜落癖のあるダイゴが被弾。二人は即座にダイナとティガに変身します。
再び並び立つ、3大ウルトラマン。
空飛ぶサイコメザード(丁度この記事を書いている時、円谷プロダクションの公式YouTubeチャンネルにて、サイコメザードが登場した『マリオネットの夜』が配信中でした。アグルのスタンスの表明といい、ここでも次元のリンクが起きていますね)に対し、スカイタイプで空中戦を挑み叩き落とすティガ。カオスジラークの攻撃を物ともせず突っ込み、強引に投げ飛ばすダイナ・ストロングタイプ。衝突した前者2体の怪獣にランバルト光弾とガルネイトボンバーを撃ち込み撃破する、『光の星の戦士たち』を彷彿とさせる抜群のコンビネーションを見せます。
ネオジオモスを倒したガイア。勝利した3大ウルトラマンの前に現れたチャリジャ。魔術を使って5体の怪獣の怨念とカイザーギラレス13世の死体を融合させ、デーモンギラレス14世として蘇らせます。
パワータイプのデラシウム光流も、ミラクルタイプのレボリウムウェーブも、スプリームバージョンのフォトンストリームも通用しない、悪魔のような敵に撃ち込まれるアートデッセイ号とクラーコフの主砲。畳み掛けるように放たれるゼペリオン光線、ソルジェント光線、フォトンストリーム、ガッツウイングとガッツイーグルの光線……特捜チームとウルトラマン、そして彼らの勝利を信じる人々の声援が組み合わさり、無限の力を発揮した瞬間でした。
”あの時”のように、夕陽に立つ3大ウルトラマン。そして、吉岡毅志氏、我夢、勉の相互意思疎通。ダイゴとアスカの邂逅……。本来なら決してありえない、過去と未来、次元を超越した邂逅劇が幕を下ろします――。
私も、一般的には大人と言われる年齢です。劇中の彼らのようにテレビを、映画を見てウルトラマンを応援し、ソフビを買って彼らに思いを馳せることが今でも続いています。
ですが同時に、”作り物”、”存在しないもの”であることもわかってしまっています。親友と話す時も、”ウルトラマンという存在”ではなく、”作品としてのウルトラマン”を語ってしまいます。
この作品は、忘れかけた子供の頃の思い出、記憶に再び潤いを与え、それがいつまでも好きでも構わないということを教えてくれました。
子供の頃と同じ感情を持つことは難しいです。ですが、あの時の、”ウルトラマン”を信じた純粋な心を思い出して、この先も生きていきたいと思います。