服が軽くなって心も軽くなったような気がしますね。行政書士の露木幸彦と申します。
突然ですが、質問です。「離婚しやすい職業は何だと思いますか？」
私は過去10年間で1万件以上の離婚相談を受け持ってきましたが、そんなふうに質問されたら迷わず「医者」だと答えます。医者は約31万人、歯科医師は約10万人しかおらず（平成26年、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」より）普通の会社員より圧倒的に少ないのに、お医者さんの離婚話を耳にはさんだことがあるのでは？
ところで医者と他の職業の違いは何でしょうか？例えば、勤務医は社会的地位の高さにものを言わせて病院の事務員や看護師、看護助手を手当り次第、口説いたり、不倫のデート代に使いたいから、大学病院（主たる勤務先）とは別に、複数の病院を掛け持ちしているのに、他の病院からのアルバイト代をひた隠しにしたり、妻に渡す生活費をケチりたいから、そして開業医はクリニックからの役員報酬を意図的に減らしたり、「学会だから」と嘘をついて不倫の旅行を仕事の出張にすり替えたり…
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このように他の職業では起こり得ない特殊な事情が存在するので、特に解決の難易度が高いのですが、それなのに医者特有の離婚ノウハウは世に出回っていないのが現状。結局、配偶者が何の理論武装もせず、海千山千の医者に食ってかかっても、返り討ちにされるのがオチ。
そこで今回は私のところの「医者の離婚」の相談実例をもとに医者特有の性格の難しさや考え方の偏屈さ、そして収入の複雑さを踏まえた上で、相手が医者だということを逆手にとって解決したケースを紹介しましょう。
きっかけは中学校の授業参観でした。小谷翔太さん（42歳）と楓さん（40歳）の間には14歳の息子さんがおり、翔太さんは勤務先に有給を申請し、当日は妻と一緒に中学校へ出かけたのです。
翔太さん夫婦は息子さんの教育に力を入れており、息子さんが5歳のとき、大学付属の私立小学校を受験させ、無事に合格し、現在は同じ付属の中学校に通っています。
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授業参観には五十嵐裕子（39歳）さんも姿を見せていました。裕子さんの娘さん（14歳）は翔太さんの息子さんと同級生で今は同じクラス。裕子さんの娘さんは同じ付属の幼稚園から小学校、中学校と進学しており、翔太さん夫婦とは小学校のときから8年来の付き合いでした。
しかし、せっかくの我が子の晴れ舞台なのに裕子さんは上の空。顔は青白く、ため息まじりで明らかに様子がおかしかったそうです。翔太さんは授業参観が終わると「どうかしましたか？僕で良ければ相談に乗りますよ。何でも話してください」とお茶に誘い、翔太さんは妻と一緒に裕子さんの話を聞いてあげたそうです。
裕子さんの夫は開業医。市内で クリニックを経営しており、一見、何不自由ない生活を送っているように見えたのですが、裕子さんは「実は…」と前置きした上で、苦しい胸のうちを打ち明けたのです。
＜登場人物（仮名）年齢は相談当時＞
小谷翔太さん（42歳。会社員）⇒相談者
小谷楓さん（40歳。会社員）
小谷旬君（14歳。中学生。綾香ちゃんと同級生）
五十嵐裕子さん（39歳。医療事務）
五十嵐博正さん（46歳。開業医）
五十嵐綾香ちゃん（14歳。中学生。旬君と同級生）
「さすがに多すぎるでしょ！本当に仕事なの？」
そんなふうに裕子さんが夫を問い詰めたのが諸悪の原因でした。もともと夫は出張で国内、海外に出かけることが多いのですが、最近は毎週のように泊まりの出張が続いていたので、裕子さんも思わず口を出してしまったそう。
しかし、「学会だから仕方ないじゃないか！何も知らないくせに口を出すな！！」と夫に一喝されてしまったのです。
同じ学会に参加した医師によると、夫はそこで知り合った女医と懇ろになり、行く先々で密会を重ねているようなのです。裕子さんは出張先のホテルを把握しているので、興信所に依頼して証拠を掴もうと思ったのですが・・・
「興信所に依頼しようとしたのですが、断られてしまい、困ってしまいました」
もし相手も同じホテルに泊まっていたら、夫と女が一緒にフロントを通ってホテルに入っても、その後、夫は夫の部屋、女は女の部屋という感じで、別の部屋（自分の部屋）に入るかもしれません。
そうすると2人がホテルに入るところの写真を撮っても、本当に肉体関係があったかどうか不確かです。とはいえフロントから部屋まで気付かれずに尾行するのはさすがに難しいのでしょう。そんな感じで不倫疑惑の白黒をつけられないまま、事態はさらに悪化していきます。
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裕子さんは結婚からずっと夫のクリニックをカルテの記入やレセプトの作成、受付や会計などの事務仕事を手伝ってきたそうで、家事や育児だけでなく、仕事の面でも影ながら夫を支えてきたのです。
それなのに夫が突然、「もう手伝うな！」と言い出し、翌週には別の人を雇って、裕子さんの代わりに据えたようなのですが、何か「やましいこと」があるのでしょうか？夫は「こっちに来るな！」と言い放ち、裕子さんをクリニックから追い出し、そして立ち入り禁止にしてしまったのです。
今まで裕子さんは散々、夫のために貢献してきたのに今回、不義理の形で厄介払いされたのだから、さすがに堪忍袋の緒が切れるのも無理はありません。裕子さんは娘さんを連れて家を出たのです。「この人とはやっていけない！」と。
ところで裕子さんが家を出る直前、夫から渡されていたのは毎月30万円。クリニックは途中から医療法人化し、裕子さんも役員の名前を連ねており、決算書には裕子さんも役員報酬として毎月30万円を受け取っていると明記されていますが、あくまで名前を貸しているだけ。
30万円のなかに裕子さんが夫のクリニックで働いた分が含まれておらず、すべて純粋な生活費だと思い込んでいました。
だから別居後も同然のように30万円を払って欲しいと頼んだのですが、夫は裕子さんを無理やりクリニックから追い出しておきながら、「お前はうちで働いていないんだから払う金はない！」と言い放ち、生活費を一銭も払おうとしなかったのです。
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