『スサノオと瀬織津姫を巡る旅』。
1話目，『歴史の闇に葬られた女神』
2話目，『新たなる伝説の始まり』
3話目，『瀬織津姫が封印された時』
4話目，『瀬織津姫が愛した神』
5話目，『ニギハヤヒとは何者か？』
6話目，『瀬織津姫…が…現れた…？』
7話目，『瀬織津姫信仰の始まり』
8話目，『イワナガ姫の登場と新たなる謎』
9話目，『神話の裏側を見るということ』
10話目，『再開の音色が響く時』
11話目，『なぜ瀬織津姫を巡るのか？』
12話目，『バカなりに頑張るの巻』
13話目，『封印されし強すぎた神、再び』
14話目，『吉野の地に吹く風』
15話目, 『史上最悪の女帝』
16話目, 『天照という名のニギハヤヒ』
17話目, 『女神アマテラスと男神アマテル』
18話目, 『アメノウズメさん？が登場！』
19話目, 『感じる力を養う』
20話目, 『この世の始まりを告げる神』
21話目, 『君の名は』と瀬織津姫
22話目, 『辿り着けたニギハヤヒの正体』
23話目, 『オオクニヌシとニギハヤヒ』
24話目, 『ニギハヤヒ、現る』
25話目, 『旅の終わりに向かって』
26話目, 『約束を守り続ける鬼の夫婦』
27話目, 『伝説の呪術師 役行者』
28話目, 『伝説が生きた時代』
29話目, 『時空を越えた女神』
※イラスト from 瑠璃の星☆ミさん
『伝説の呪術師』役行者が、
生きた時代を生きる。
僕は目を覚ました。
あ「どうも。
僕どのぐらい寝ていたんですか？」
役行者「時間にするとわずか…。
数分の話じゃ…。
本来この世には時間という概念も無ければ、
過去、現在、未来という境目も無い。
お主たちが望むのであれば、
どの時代にでも、意識を飛ばして行ける」
あ「…何だかすごい…、
歴史の裏側を見た気がします…」
役行者「儂（ワシ）が見せた世界も、
あくまで世界の一つの側面…。
それを見て何を感じ、
今後にどう活かすか、
それはお主次第じゃ…」
あ「どうする、とは？」
ス「この旅の『これから』や。
役行者が、
瀬織津姫が封印された時代の世界を見せてくれたことによって、
ある意味これでお前が求めていた、
『瀬織津姫がなぜここまで、時代を越えて愛される神になったのか』、
ということの答えも分かったやろう。
これで一応ニギハヤヒと瀬織津姫、
双方の謎が解けた。
もう会いに行こうと思えば、
瀬織津姫も姿を現すと思うけどな…」
あ「………」
ス「なにブルドックみたいな顔して、
黙ってんねん…」
あ「誰がブルドックや。
いや、違うんです…。
何かすごい今、『違和感』があって…」
あ「それは『美輪さん』や。
違和感や」
あ「…ここまで至れたのって、
役行者さんに教えてもらったからであって、
僕はほぼ、なにもしていません。
役行者さんに見せてもらった世界を受けて、
僕自身の力で、
何かをしないといけない気がして…」
ス「…まぁ、そうかもな…」
あ「そう考えると、
確かに当初僕が求めていた、
瀬織津姫さんとニギハヤヒさんという、
神さまについての謎は、
これまでの過程である程度、
解けたように思います。
でも何なんでしょう？
このまま僕が瀬織津姫に会いに行ったとしても、
何かを置き去りにしてしまっているような気がして…」
あんたは置き去りにしても、
すぐに帰ってくるやろ。
って、マジか。
役行者さんも乗らんでええねん」
ス「（笑）
何を置き去りにしてるねん？」
あ「恐らく…持統天皇…。
このままこの旅を終えてしまうと…、
持統天皇の魂が浮かばれないように思えるんです…」
あ「確かに僕は役行者さんたち、
『山の民』の生きた時代を生きることで、
その時代の過酷さ、
そして国家というものが成立する過程の、
裏側を見た気がします…。
でも…、それでもどうしても、僕はやっぱり…、
持統天皇を責める気にはなれないんです…」
役行者「…聞こう…」
あ「役行者さんと同時に、
持統天皇の生きた時代を生きたからこそ、
感じたことだったんですが…。
あの時代に流れていた空気は、
『苦しみ』でした…。
ただ、ただ、『苦しみ』でした…
先代の天皇であり夫、
天武天皇の志半ばで散った夢を受け継ごうとする、
『苦しみ』。
日本に初めての国家というものを作ろうとした、
産みの『苦しみ』。
この途方もない事業を、
持統天皇は女性という立場で１人立ち向かい、
そして…成し遂げたわけ…ですよね…」
役行者「…左様…」
あ「…そう考えると、やはり尚更責めることは出来ません。
確かに神さまを封印したり、
祭神を変更したりなども含め、
やり方がベストな形ではなかったのかもしれません」
最近出番が少ないから、
ちょっと出しゃばりすぎやぞ」
ス「ハイ、スイマセン」
あ「…それでも持統天皇の積み重ねた足跡があったからこそ、
今この僕らが生きる、
日本という国の礎が出来たという事実に、
変わりはないと思うんです。
それをたった１人の女性で全ての責任を背負い、
時に多くの人の憎悪の対象となりながら…。
そして今この現代でも時に持統天皇が、
『悪の権化』として伝えられていることを思うと…、
持統天皇の魂をこのままにしておくことは、
心が痛みます…」
役行者「………。
…お主の言う通りじゃ…」
あ「え？」
役行者「…儂（ワシ）ら『山の民』もな、
鵜野（うのの ※持統の別名）の気持ちは、
分かってはいたのじゃよ…。
…そう、奴は奴なりに…、
必死に闘っていたのじゃ…。
夫 天武の遺志を継ぐことが、
この国の民のためになると信じて、な…」
あ「…そう思います…」
役行者「…ただいつの時代も、
人は完璧ではないではないか…。
それは怒りの余り、
ヤマト政権と戦い、
多くの犠牲者を出してしまった儂（ワシ）も然り。
そしてこの日本に存在する八百万の神々も然り…。
未熟で不完全でありながら、
それでも必死にそれを乗り越えて、
神々もまた成長をしていく…」
鵜野讃良（うののさらら）という存在に対して、
心の陰りは一切持っておらん。
ただ本人が自分のことをまだ、
許せていないのかもしれんがな…」
あ「本人がまだ、
自分のことを許せていない…？」
役行者「…左様。
鵜野もただ自分が権力を欲しくて、
瀬織津姫始め、
土着の神々を封印したわけでも、
自分達の祖先に最高神を据えたわけでもないのじゃよ…。
…ただ壬申の乱という史上最大の内乱を越えて、
『反逆者』という立場から王になった者が、
この国の民を率いていくために、
自分たちが『最高神の子孫である』という権威を持つ、
必要があったからこそ…、
心を鬼にしてやらなければいけぬことだったのじゃよ…。
…それを儂（ワシ）らはもう理解しておる…。
…だからこそ…、
鵜野や儂（ワシ）の生きた時代を垣間見た者として…、
…せめてお主だけは、
鵜野の気持ちを理解してやってほしい…」
あ「…は、はい…」
…。
……。
………。
…………。
『スサノオと瀬織津姫を巡る旅』は、
恐らくこの１週間のうちに、
クライマックスを迎えることになる。
…しかし、
この旅の目的は、
誰かを悪者にすることではなく、
僕自身が、
『あるべきものを、あるべき形で知り、伝える旅』。
それは瀬織津姫然り、
ニギハヤヒ然り、
持統天皇も、然り。
そのためには、
『瀬織津姫』という、
この旅の最後の神へと向かうその前に、
混沌とした時代の中で、
愛する夫のために、
『鬼』とならざるを得なかった、
１人の女性、
『鵜野讃良（うののさらら）』という、
歴史の激流に置き去りにされた魂を、
鎮める旅に出る必要がある。
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(担当:山本時嗣)