『スサノオと瀬織津姫を巡る旅』。
1話目，『歴史の闇に葬られた女神』
2話目，『新たなる伝説の始まり』
3話目，『瀬織津姫が封印された時』
4話目，『瀬織津姫が愛した神』
5話目，『ニギハヤヒとは何者か？』
6話目，『瀬織津姫…が…現れた…？』
7話目，『瀬織津姫信仰の始まり』
8話目，『イワナガ姫の登場と新たなる謎』
9話目，『神話の裏側を見るということ』
10話目，『再開の音色が響く時』
11話目，『なぜ瀬織津姫を巡るのか？』
12話目，『バカなりに頑張るの巻』
13話目，『封印されし強すぎた神、再び』
14話目，『吉野の地に吹く風』
15話目, 『史上最悪の女帝』
16話目, 『天照という名のニギハヤヒ』
17話目, 『女神アマテラスと男神アマテル』
18話目, 『アメノウズメさん？が登場！』
19話目, 『感じる力を養う』
20話目, 『この世の始まりを告げる神』
21話目, 『君の名は』と瀬織津姫
※イラスト from 瑠璃の星☆ミさん
あ「ニ、ニ、ニ、
ニギハヤヒさんの、正体が分かってしまった…」
『実は瀬織津姫の物語ではないか』と一部で言われている、
映画『君の名は』を観ていた時に、
突如として降りてきた、
知識と感覚が結びついた瞬間。
瀬織津姫の夫神であり、
謎多き『ニギハヤヒ』という神の真実。
僕らはある場所へと向かった。
その場所は…？
先日の磐船神社と同じく、
大阪は交野市にある、
『星田妙見宮』。
拝殿を目指しながら歩く中、
スサノオさんと僕の会話が始まる。
あ「…これです」
いよいよお前、
怪しい商売始めんの？
きっしょ」
あ「やめろ（笑）
これは隕石で作られたお守りです」
ス「ふむ。隕石」
あ「ここ星田妙見宮の地は、
それこそ『君の名は』の、
モデルとなった地と言われており、
古代この地に７つの隕石（北斗七星）が落下して、
この辺り一帯が吹き飛ばされて、
地形までも変えてしまったという伝承があるそうです」
あ「元々僕は大阪出身なので、
ここ星田妙見宮の伝承を聞いたことはあったのですが、
『君の名は』の中に出てくる、
隕石落下のシーンを見た時に、
知識と感覚が結びついたんです。
それは…」
ス「………」
あ「ニギハヤヒと瀬織津姫を封印したという、
天武天皇、持統天皇の時代に起きた、
数々の祟りのうちの一つに、
『７つの星が落下し、
その２日後に雨のように、
隕石が地上に落下した』という、
伝説が日本書紀に記載されています」
ス「ふむふむ」
あ「星田妙見宮の伝承と日本書記の伝説は、
多少時代と場所が違うと言えど、
同じ『隕石』という言葉に着目して、
物事を照らし合わせた時…」
ス「………」
あ「ニギハヤヒさんは天孫降臨の際に、
『天の磐船』と呼ばれる、
巨大な岩に乗って降りてきたという伝説が、
磐船神社や様々な神話に残されています」
『隕石の落下』と考えることは出来ないでしょうか？」
ス「………」
あ「…さらに、
もう一つの大きな謎であった、
ニギハヤヒさんの名称の一つである、
『天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊（あまてるくに てるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと）』。
この『女神 天照（アマテラス）』と、
『男神 天照（アマテル）』という、
二柱の『天照』が存在することについて」
もう一つの『天を照らしながら、降臨する』存在として、
『男神 天照＝ニギハヤヒ』は隕石の神だと、
考えることは出来ないでしょうか？」
ス「…続けろ…」
あ「そして何より、
古事記では、『邇藝速日命』。
日本書紀では、『饒速日命』。
先代旧事本記では、先程の『天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊』と。
どの神話でも一定しない、
ニギハヤヒさんの名称ですが、
唯一共通している漢字があります。
それは…」
ス「………」
あ「『速日』という文字。
これは『速い日（火）』。
古代の人々が神名の中に刻んだ、
『隕石の証』とも、
読み取ることが出来ます」
ス「………」
あ「…そしてこれが最後になりますが、
タカクラジさんが僕に言った、
『この世の始まりを告げる神』という、
ニギハヤヒさんについて語った言葉」
ス「………」
あ「突然ぶっ飛んだ話になって恐縮ですが、
この地球が始まったのは、４６億年も昔。
その時、
この星は摂氏４４００度という、
太陽と変わらない高温の星だったと言います」
なぜ今のような生命溢れる、
『水の惑星』に変わったのか？
それに対する様々な説がある中で、
最も有力な説が、
『隕石の衝突』だったと言われています」
ス「………」
あ「無数の隕石の衝突により、
その隕石に含まれている水蒸気が、
地球に衝突したことにより、
水が発生したと言われています。
その水の中に微生物が発生して、
初めての生命が育まれ、
その進化の過程で植物が生まれ、
動物が生まれ、人間が生まれた。
これを…」
あ「ニギハヤヒという『隕石の神』の出現によって、
地球に瀬織津姫という『水の女神』が現れて、
この二柱の神の手によって、
『この世の始まりが告げられた』と、
読み解くことは出来ないでしょうか」
ス「………」
あ「…そして古代の人々は、
この偉大なる二柱の『始まりの神々』を尊敬し、
愛してやまなかった。
しかし、その偉大過ぎる力と、
民衆からの愛が故に、
天武天皇と持統天皇の、
『人』の時代と、
時の権力の流れの中で、
封印されざるを得なかった…。
…これが…僕が…、
今まで得てきた知識と、
これまでの感覚を照らし合わせることによって出した、
『ニギハヤヒ』という、
謎多き神さまに対する答えです」
ス「…そうか…。
そこまで…よく…頑張ったな…」
…その会話が終わると共に、
拝殿に向かう階段も、
終わりを迎えた。
その脇に祀られている、
ニギハヤヒさんの鎮まる社へと足を向ける。
…果たして、
自分自身の得た答えが、
正しいものなのか。
いや、いつも言っているように、
それぞれが映し出す神の世界が、
無限にある中で、
『正しい、正しくない』という概念はないとしても、
スサノオさんがいつも言うように、
僕が歩んでいる道は、
神の道、人の道に即したことであるのだろうか…。
言い方を変えるなら、
『破壊と創造の隕石の神』という、
親しみやすさとは程遠い、
途方も知れない、
畏怖の念すら感じさせる、
『ニギハヤヒ』という神を前にして、
僕の心臓の鼓動は、
爆発的な高鳴りを見せるばかりだった。
…そして…。
自分自身の『知識と感覚』を信じて、
心静かに、
『ニギハヤヒ』という神に参拝する。
…。
……。
………。
…………。
あ「………。
…現れてくれません…か…」
…その言葉を言い終えるかいなかの、
その時…。
真っ暗闇に包まれたような錯覚と共に、
脳に直接響くように、
重厚で、しかし決して不快ではない、
若く勇ましい男の声が聴こえてきた。
…。
……。
………。
…………。
？「…我が名は、ニギハヤヒ…」
…その言葉に、
今日に至るまでの、
自分自身の知識と感覚が、
間違っていなかったことへの
安堵感が心に広がり、
同時に一瞬の目眩が襲ってきた。
…が、
すぐに気持ちを立て直さなければならなかった。
…これから僕は、
あの『ニギハヤヒ』という伝説の神に、
向き合うのだから。
しかし…、
この旅を始める前は、
全く想像もしていなかった、
『この世の始まりを告げる、破壊と創造の神』という、
ある種の恐怖すら感じる神に、
僕は一体どう向き合えばいいのか…。
ニギハヤヒ「…その行程のすべてを…見ていた…。
我が存在に迫る、これまでの道のりも然り…。
…よく…ここまで辿り着いた…」
あ「あ、ありがとうございます…」
ニギハヤヒ「…今この身を、
お主の前に現したい気もあるのだが…。
…まだ足りぬことがある…」
あ「…まだ…足りないところ…ですか…？」
ニギハヤヒ「世に言う封印というものに、
絡め取られた、
私のもう一つの姿を…探るがいい…。
その答えに至りし時、
私はお主の前に、
この身を現そう…。
…ここまで至った人間だからこそ…、
期待をしているぞ…」
…その言葉と共に、
暗闇に包まれていたような錯覚が解け、
同時にその場から、
ニギハヤヒさんの気配も、
消えていったのがわかった。
疑問だけが浮かび上がる。
あ「…封印というものに絡め取られた…もう一つの…姿…？」
ス「………。
…あぁ、ニギハヤヒの言う通り、
ここまで至ったお前やから、
もうある程度言ってもええやろ。
この旅はある意味、
ニギハヤヒと瀬織津姫という、
謎に包まれた神に対して、
お前自身が、
『正しき理解』をするためにある。
『隕石の神』という、
ニギハヤヒの根源の理解に至った
お前だからこそ、
あいつ（ニギハヤヒ）に残された、
『封印』という、
人の歴史との関わりの中に隠された、
最後の顔を、
知らなければいけない。
それがニギハヤヒという神に対する、
『正しき理解』のための、
最後のパズルのピースなんやろう。
ただ、もうほとんどゴールは見えている。
残りの一歩を最後まで、
しっかり歩き切ってやってくれ。
それが必ず瀬織津姫にも繋がる、
大きな手掛かりとなるから」
…。
……。
………。
…………。
長きに渡る、
時の積み重ねの中で、
ようやく僕は、
謎多き神『ニギハヤヒ』という存在の、
核心に至ることが出来た。
しかし同時に与えられた、
『封印に絡め取られた、もう一つの姿』という、
ニギハヤヒさんに関する最後のその謎に対しては、
頭を抱える気持ちにはならず、
むしろどこか心が高揚してくる、
自分がいた。
『神の道、人の道に即していれば、自ずと道は拓かれる』。
この旅の最中に、
スサノオさんが常々僕に言ってくれた言葉と、
神々からの期待を背に、
ニギハヤヒという神へと向かう、
最後の一歩を踏みしめる。
ニギハヤヒさんとスサノオさん、
一緒に祀られてますやん」
ス「せやで」
あ「『せやで』ちゃうわ！
元々ご近所さんやったら、
こんな遠回りさせんと、最初からご紹介せぃや！！」
ス「お前神に対して、何ちゅう口の利き方じゃ！！
そもそも『ご近所さんでご紹介』とか、
俺は近所のお節介焼きのおばちゃんか！！
お前なんかのためにするか！ドアホハゲッ！！」
