とかげ日記

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【2010年代ベスト】
2010年代ベストアルバム(邦楽)30位→21位
2010年代ベストアルバム(邦楽)20位→11位
2010年代ベストアルバム(邦楽)10位→1位

それでは、一緒に音楽の旅へ!
X上で連載していた「#くるり各盤から各1曲」のポストをまとめ、加筆を加えた上で今回ひとつの記事にします。

タイトルに「黄金期」と書きましたが、いまでも黄金期だろ!という声が聞こえてきそう。そしてその通りです。遠くないいつか、2008年以降のアルバムについても連載し、そちらは「爛熟期」としてまとめたいと構想しています。

それでは、彼らの記念すべきメジャーデビューアルバムから見ていきましょう! よろしくお付き合いください。
(なお、ALとは「アルバム」の略称です。)


#くるり各盤から各1曲🌀
「東京」
↑ 1stAL『さよならストレンジャー』('99)





このアルバムジャケの3人のもっさり具合や垢抜けなさ具合がこのアルバムを象徴している。突き抜けられないことを突き抜けたようなアルバムだ。その後はどんどんオシャレになっていくくるり。もっさりしたアルバムが聴きたいのなら、この1stアルバムをお勧めします。

"各一曲"は、傑作「東京」一択で。フォーキーな肌合いと、ロックのエモーショナル。初期くるりのイメージを決定づけた一曲。今や数多の"東京ソング"があるが、他のアーティストではYUI「TOKYO」と銀杏BOYZ「東京」を僕は推す。


#くるり各盤から各1曲🌀
「街」
↑ 2ndAL『図鑑』('00)




ジム・オルークも5曲で関わった革命的アルバム。日本のみならず世界の叙情的ギターロックの一つの到達点だと思う。ギターロックにエクスペリメンタルな要素を持ち込んだ過激なアルバム。注ぎ込まれる感情も禍々しいまでに過剰だ。くるりを穏やかな曲を作るバンドと思っている方は度肝を抜かれると思う。

狂うくらい攻撃的で濃厚な味付けがされた異色のアルバムの中でも激烈にエモい本曲を。スピッツ草野正宗も本曲を聴いて、「行く(ブレイクする)かもしれない」と思ったという。


#くるり各盤から各1曲🌀
「ばらの花」
↑ 3rdAL『TEAM ROCK』('01)




僕は本作で「ばらの花」を一番に推す。ミニマルさが孤独を呼び、緩やかに琴線を揺らす名曲だ🌹

本ALは新たな試みでテクノ影響下の曲が数曲ある。その中でも4つ打ちで即効性最強の「ワンダーフォーゲル」は激アゲ。でも、岸田さんによる平熱のテンションのボーカルとのギャップが面白い。

しかし、無限のまどろみを感じさせる究極チル曲「永遠」もあったりして、振り幅が非常に広いアルバムになっている。

以前、このアルバムについてネットを見ていたら、以下の一文を発見した。
>1stに映っていたメンバー3人は帯の、騎士、砂糖、森のイメージへと変化した。

左の帯にそんな意味があったんだ…!💡
目から鱗です🐟
騎士→岸田(ギタボ)
砂糖→佐藤(ベース)
森→森(ドラム)


#くるり各盤から各1曲🌀
「WORLD'S END SUPERNOVA」
↑ 4thAL『THE WORLD IS MINE 』('02)




フォーキーな名曲「男の子と女の子」と迷うが、抑制の中に華と美があり、闇の向こう側に光がある本曲をセレクト。くるり流ダンスミュージックであり、くるり史上最も売れたシングルだ。

ジャケットの淡い水色とまばらな小物が象徴するように、表現の圧がこれまでよりもグッと下がったAL。しかし、曲調は多彩で、サウンドは濃やかであり、飽きさせない。Radioheadと相並ぶ打ち込みの自在な使いこなし方は、邦洋随一だと思う。

#1「GUILTY」を聴き、描かれた虚無が昇華していく演奏の昂ぶりに震えてほしい。「ばらの花」(前AL『TEAM ROCK』収録)の歌詞「暗がりを走る 君が見てるから/でもいない君も僕も」に象徴される虚無との向き合い方は彼らの一つのテーマだ。

本作からギタリスト大村達身が加入。2006年末の脱退までバンドサウンドを支えている。


#くるり各盤から各1曲🌀
「ロックンロール」
↑ 5th『アンテナ 』('04)




末広がりの多幸感「グッドモーニング」や人気もある「HOW TO GO」と迷うが、この曲を。天国のドアを叩くような、優しくて前向きな死別の歌。

"あなたを思う本当の心があれば
僕はすべてを失えるんだ"

02年7月にDr.森信行が脱退し、クリストファー・マグワイアが03年11月にDr.で正式加入。前ニ作の打ち込み/電子音楽の音楽性からは離れ、生演奏の旨みが光る一枚。特にDr.にクリスが参加している7曲では、才気煥発のアンサンブルを聴くことができる。


#くるり各盤から各1曲🌀
「BIRTHDAY」
↑ 6th 『NIKKI』('05)





清冽でしがらみのない自由なギターサウンド、ブリティッシュで真摯なビート、そしてキャッチーでフックと求心力のあるソングライティングの名曲ぞろいの本作。

くるりでブリティッシュなポップロックの名盤といえば、このAL。ギターの響きからしてポップな美しさがあるし、岸田の歌には類稀な歌心がある。

迷ってしまうが、この曲「BIRTHDAY」をセレクト。イントロから終わりまで音程がキャッチーに動き、明るい音色が次の季節を呼びこむBa.佐藤征史の名演。歌メロには一種の神々しさを感じるほどの晴れやかな切実さがある。こんなふうに見守られる"あなた"は幸せ者だ。

ラスト曲「(It's only)R'n R workshop!」を始めとした曲におけるウォール・オブ・サウンド的な音の分厚さに、彼らが音楽に込める愛情の濃やかさを感じる。


#くるり各盤から各1曲🌀
「ジュビリー」
↑ 7th 『ワルツを踊れ』('07)




音楽の核心に迫る名曲「ジュビリー」。往年のスタンダード曲「ムーン・リバー」を彷彿とさせる。くるりの曲は、他にも「春風」(はっぴいえんど「風をあつめて」)や「カレーの歌」(「カントリーロード」)など、スタンダードな名曲に寄せている曲がある。パクリではない絶妙なバランス感があるのは、古今東西の音楽への愛情を持つ彼らがゆえの借景だからだ。「尊い」という感覚を呼び起こす曲として唯一無二の曲だ。

このアルバムはカッコいいとか、カッコ悪いとかの次元じゃない。深い…そして豊かだ。録音もクラシックの都"ウィーン"で行っているが、クラシックに接近したロックミュージックの中で一番の名盤だとさえ思う。(次点は毛皮のマリーズ『ティン・パン・アレイ』。)「うた」も「音楽」も聴こえてくる本作は、傑作ばかりのゼロ年代くるりの中でも一、二を争う作品だ。

なお、本作製作時のメンバーは、ギターボーカル岸田繁とベース佐藤征史の2人。メンバーが少ない分、客演に様々なミュージシャンを招きやすかったし、音楽的な想像力が自由に働きやすかったのではないかと推測する。


#くるり各盤から各1曲🌀
「ハイウェイ」
↑ 劇伴 『ジョゼと虎と魚たち』('03)




「ハイウェイ」は一曲通して良い感じに力が抜けたドライブソングの名曲。旅に出る理由が100個くらいあったり、実は3つだけだったり、本当は無かったり。理由がないからこそ、あるいは理由を手放していけるからこそ、僕らは気ままに旅をしていけるのだ。

くるりは何件か劇伴を担当しているが、映画の現場で本当に流れているかのように、映像と音楽が自然にフィットする。このアルバムも劇伴だからインスト曲が多勢だが、どの曲も聴かせる。音の響かせ方がクラシック奏者かと思えるぐらい匠の技。


#くるり各盤から各1曲🌀
「モノノケ姫」
↑インディーズ2ndアルバム『ファンデリア』('98)




くるり最初期の王道な名曲「坂道」と迷ったのだけど、若さゆえのエネルギーで無軌道に爆走するこの曲を。くるりの"ヤバさ"が詰まっている。この時点で既にくるりは音楽的に自由だった。

禍々しいロックンロール、フォークな歌もの、実験的なテキスチャーの曲、ミニマルでダークなヒップホップ。この最初期の盤に彼らの音楽性の幅広さ(可能性)の発端が見てとれる。ちなみにindies1stAL『もしもし』は現在入手困難でサブスク未配信。


#くるり各盤から各1曲🌀
「ハローグッバイ」
↑BestAL『ベスト オブ くるり』('06)




溺れゆく自分を流水音のSEに幻視する「ハローグッバイ」。息を吸えないため苦しいはずなのに心地よいのは、胸奥の本音を吐露できる懐深さがあるからだ。打ち込みのソリッドなスネアがモラトリアム終了へのカウントダウンのよう。

くるりのベスト盤やオムニバス盤の中で一番好き。青春時代によく聴いていたので思い入れマシマシ。バラエティに富んでいて流れで聴いても楽しいし、まさに"隠れた名曲"の「ハローグッバイ」や、ALでは本作にしか収録されていない「ナイトライダー」にも魅了される。

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いかがでしたか?

くるりを過大評価だと言う方もいると思いますが、僕の感覚からしたら過小評価です。王道でもオルタナティブでもあって、「音楽」でも「歌もの」でもあって、そして表現が切実だったりウィットに富んでいたり。そんな他にない存在がくるりです。特に今回の記事「黄金期篇」で挙げた時期のくるりは、音楽無双だったと思います。

さて、そんなくるりのニューアルバム『儚くも美しき12の変奏』が今月2月11日にリリース予定です。このブログ『とかげ日記』でもレビューしますのでお楽しみにー!


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●青を刻め!

現在、ギターボーカル小出祐介、ベース関根史織、ドラム堀之内大介からなる3人組ロックバンド「ベースボールベアー(Base Ball Bear)」(愛称:ベボべ, BBB)による、ミニアルバム『Lyrical Tattoo』のレビュー。

ベースの関根史織さんは、このブログ『とかげ日記』では、内田万里さん(ex.ふくろうず)のバンド「内田万里+CRAZY PIG」のメンバーとしてもお馴染みですね。

<CD収録曲>
1.Lyrical Tattoo 
2.caramel dog
3.TIME SHIFT GIRL
4.Remains
5.夏の細部
6.BLUE、たる
7.(The rise of) Offline Souls

今まで、僕は彼らの曲をそこまで聴いてこなかった。でも、2006年にリリースされた「Electric Summer」をリアルタイムで初めて聴いたとき、良いバンドが出てきたと思ったものだ。中年男性が若い頃にローリング・ストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」出だしのギターの一発でヤられたように、ベボべの「Electric Summer」の出だしのギターでビリッと電流が頭を駆けめぐったのだ。



パーフェクトなブルーに少しでも近づこうとするような清新さ。最初期のこの曲はその曇り一点もないブルー(青空や青春)を完全に近い感じで提示していた。アーバンでソリッドなギターロックの完成形がすでに鳴っていた。自分が彼らをあまり聴いてこなかったのはこのあたりにも理由がありそうだ。だって、彼らの音楽はもう完成しているじゃん、と。

しかし今回、新譜をリリースするにあたって過去の作品を掘っていたら、素晴らしいねこれは。ニューウェーブで新鮮な、一陣の爽風のような真っ当な音楽性は佐野元春にも通じる。

四季でたとえるのなら、後腐れない「夏」のようなハツラツとした曲。僕らはただ風に吹かれればいい。リテラシーなどいらない。アーバンな青空と青春(アオハル)のバイブスが鳴っている。何も考えずにこの青に身と心を委ねればいい。

ヒップホップを取り入れるなど、音楽性を拡大してきた彼ら。そういった新機軸の曲も面白いし、以前からの延長線上にある疾走する爽やかなギターロックも鉄板で素晴らしい。

そして、本作『Lyrical Tattoo』 。

一曲目のタイトル曲#1「Lyrical Tattoo」から初期スーパーカーのような淡いブルーが加速していく。7曲入りの本作は、成熟と青春を感じさせる7種7様の歌を聴かせてくれる。



#2「caramel dog」は彼らの持ち味の軽快さが抑えられた重心低く腰を据えたミッドチューンでギターがガツンとくる。
シャッフルビートの#3「TIME SHIFT GIRL」は聴いているだけで明るくなれるキャッチーなキラーチューン。
女性ボーカル(おそらく関根さん)の曲#4「Remains」も良いアクセントになっている。
#5「夏の細部」は夏の生温かな気だるさをまさに細部まで描けている。
ヘヴィでラウドでまさにブルータル(brutal ≒けだもののように野蛮)な#6「BLUE、たる」も面白い。
#7「(The rise of) Offline Souls」は、アルバムの締めくくりにふさわしい残り香(エモ)がする曲。

アルバム一枚通して聴くと、消えない旋律と縫い留めた言葉のように僕の核心に刻まれるタトゥーのような投げかけのある作品だった。意味性も身体性も備えたギターロックの未来は彼らと共にある。

Score 8.1/10.0

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●気を抜けさせない時代のチル&エモ

坂本慎太郎(ex.ゆらゆら帝国)の新譜のレビュー。

【収録内容】
01. おじいさんへ (Dear Grandpa)

02. あなたの場所はありますか? (Is There A Place For You There?)

03. 正義 (Justice)

04. 脳をまもろう (Protect Your Brain)

05. 時の向こうで (On The Other Side Of Time)

06. 時計が動きだした (The Clock Began To Move)

07. 麻痺 (Numb)

08. なぜわざわざ (Why Do This?)

09. ゴーストタウン (Ghost Town)

10. ヤッホー (Yoo-hoo)

今の若い世代はどうか分からないが、音楽好きの間では、ゆらゆら帝国やそのフロントマンである坂本慎太郎の名を出せば、日本の音楽を深くディグっている人なのねと思われるほど、音楽論壇では評価の高いアーティストだ。

ゆら帝や坂本慎太郎さんは、『ミュージック・マガジン』の常連だ。邦楽アーティストでは、"くるり"と並んでミューマガから評価されている印象を僕は持っている。スノビッシュな雑誌に思われる方もいるだろうが、僕にとって音楽的な気づきが一番多い雑誌でもある。廃刊したが『スヌーザー』も音楽的学びがある雑誌だった。

ゆらゆら帝国は、アンダーグラウンドの邦楽ロックの名代とされているバンドだが、魅力やフックは分かりやすい音楽だと思う。そういった点では、音楽性は全く違うが、ドアーズの音楽に通じるものがある。アンダーグラウンドなのだが、多くの人をうならせる求心力に満ちているのだ。

ゆら帝を聴いて愛嬌もないし、分かりやすくもないバンドだと疎んじている方もいるかもしれない。だけど、僕は日本のアングラミュージックの聖地『東高円寺二万電圧』でベーシストとしてライブを複数回行い、観客としてもいくつかライブを観たが、そのライブハウスに出ているバンドなんか、愛嬌も分かりやすさもカケラもないバンドばかりだった。

そのライブハウスに出演していた中である程度人気があったアーティストを挙げると、「左右」、「逃亡くそ夕わけ」、「ヴァーレルセル」、「死神紫郎」、「巨乳まんだら王国。」etc… なるほど売れないわけだ。しかし、彼らは無名の登山家のように見返りも求めず未踏の地を開拓していく尊い表現者なのだ。フロアにいる4, 5人の観客が見つめるステージ。そのステージ上で薄明るい照明のもとマッシブ・アタック『メザニーン』を突き詰めたような音楽の演奏をしていた無名の2人組(僕も名前を覚えていない)のことが忘れられない。


左右「河童」
↑壊れたおもちゃ箱みたいな音楽❣️
チャンネル登録者数が3000人に迫るのは、この界隈のアーティストでは稀な多さ。

そして、同じく高円寺界隈にあり、二万電圧よりもアングラなライブハウス「無力無善寺」には、もっとたくさんのさらにアングラなアーティストがひしめいている。大森靖子さんはこのライブハウスからメジャーシーンに旅立ったが、これはごく一部の例外。

僕も無力無善寺にバンドとして出演したことも観客として行ったこともあるが、演者たちの先鋭的でドラスティック(≒徹底的、抜本的)な表現の数々に驚かされた。また、出演料が魅力的なのだ。バンドの場合1人1000円、ソロの場合2000円という破格の安さ。敷居が低いから、本当に多種多様なアーティストが集まる。二万電圧と無力無善寺がある高円寺で活躍する一派は、日本のアンダーグラウンド音楽のエコール・ド・高円寺(パリ)なのだ。


脱線したが本題に戻ろう。音楽の力でリスナーをねじ伏せるゆら帝。でも、それだけではなく独特な愛嬌とユーモアはある気がする。表現として特異なのだが、他者とコミュニケートする意思は感じ取れる。

初期の人気曲「ゆらゆら帝国で考え中」を始めとしたガレージロックの楽曲は、ミッシェル・ガン・エレファントをローファイでフリーキーにした感触だ。ゆら帝初期もミッシェルもパブロックのカテゴリーに入るだろうが、まさに酒で酩酊して奏でるようなロックンロール。また、初期にガレージロックと共に彼らの二枚看板だったサイケデリックな曲も、そのイビツさが心地よい。

でも、その後、彼らは最後のアルバム『空洞です』に向けて音数の少なくミニマルな音楽性にシフトしていく。細部まで美意識が張りめぐされ、研ぎ澄まされた引き算の空洞の美しさがそこにあった。二万電圧や無力無善寺に出演したバンドが、自意識を煮詰め、音楽の根源をえぐり出してそのまま提供するような音楽をしているのと対照的なのだ。


そして、ソロでの活動に移ってからも、はや15年経った。ソロでも充実した作品を次々に発表した坂本さん。

今作『ヤッホー』も素晴らしい。(なんと気の抜けたタイトル!)様々な音楽的要素がひとつの鍋の中で溶け合い、混ざり合う。できあがったのは、滋味深く、静かな怒りや穏やかな喜びにあふれている逸品。

「気の抜けたタイトル!」と書いたが、幕開けの#1「おじいさんへ」からしてすっとぼけている。丁寧で易しい言葉を用いて重みと含蓄のある表現になっていることに、名作RPG『MOTHER』シリーズ味を感じるのだ。



#2「あなたの場所はありますか? 」の動画のコメント欄で、「演歌っぽいロックやな」みたいなコメントがあった。え?演歌?と僕は一瞬思ったが、当たらずも遠からずだ。このムード歌謡っぽいメロディとサウンドは演歌と地続きにあるかもしれない。そして、ムード歌謡的なこのムードがこの上なくリラックスできる音楽の源泉となっているのだ。他の曲でも、#4「脳をまもろう 」とか、サイケデリックなギターとムーディーな情緒のシナジー(相乗効果)が極まりない。



#7「麻痺」も面白い。ミニマルなフレーズの反復がトーキング・ヘッズのようだし、密林のように音が絡みあうグルーヴが!!!(チック・チック・チック)を彷彿させる。

そして、屈指にチルな二曲を経て、最後の曲#10「ヤッホー」でゆったりとゆっくりとまどろみの音の中でアルバムが締めくくられるのも良い。深夜のラジオで流れていたら気持ちの良いやつだ、これ。

アルバム全体において、サポートミュージシャンの果たしている役割も大きい。西内徹による存在感のあるサックス&フルートは洒脱な情緒にあふれており、大きな効果をあげている。シックな響きのスネアが魅力的なドラムの菅沼雄太と、たおやかで休符を活かしたベースプレイが光るベース&コーラスのAYAによるリズム隊も平熱のメロウを演出していて素晴らしい。

だが、なんといっても坂本さんのチルでエモなギター、ボーカル、ソングライティングが神がかっている。気を抜けさせない時代に対峙する、気の抜けた音楽。すべてを見通す神のようなインスピレーションに満ちており、聴いていると天国にいるみたいに全ての悩みがどうでも良くなる。読者のあなたにも、その創造性あふれたインスピレーションの発露をぜひ聴いてみてほしい。

Score 8.0/10.0

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↑前作のレビュー。スピッツの草野さんがカラオケで歌うのは、ゆらゆら帝国のあの曲!

🎭素顔と仮面とパラレルワールド (神聖かまってちゃん×相対性理論)
↑ゆらゆら帝国の名前も登場!

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