
●仮想空間とリンクする生身の人間と生身の涙
僕がもっとも信頼している作家の一人である高橋源一郎さんが『サンデー毎日』の連載で本作を推していた。ネットで話題になっているし面白いに違いないと、いつものミーハー根性丸出しで観にいった。
途中まで観た後には、これはFilmarksの5点満点でいうと、4.0点くらいの佳作で終わりそうと偉そうにもそう思っていた。だが、最後の20分くらいで心揺さぶられ、5点満点をつけたくなっている自分がいる。この感動のほとぼりが冷めて冷静になったとしても、4.5点は堅い。観て良かった。
一番泣いたのは、エンドロールでBUMP OF CHICKEN「ray」のこの映画バージョンが流れたとき。リリースされた10年前から良い歌だと思っていたが、これほど深く高らかに響いたのは今日が初めてだ。泣かないと思っていたのに号泣。周りに聴こえないように音を出さないように泣くことに必死だった。
その「ray」もボカロソングだが、本作はボカロも含めたVtuber文化が取り上げられている。仮想世界も主舞台であるアニメ映画は、細田守監督『竜とそばかすの姫』を思い起こした。あと、主人公とかぐや姫が紆余曲折を経ながらも二人で人気Vtuber1位を目指すくだりでは、『ルックバック』のようなひたむきな努力が胸を打った。あと、こんなに歌が全面に出るアニメ映画といえば、Adoが歌唱パートを担当する2022年公開の映画『ONE PIECE FILM RED』を連想した。
Vtuberが歌うボカロソングも良かった。ボカロといえば、もう何年も前に音楽雑誌『MUSICA』でボカロが特集されたこともあり、その特集を見ながら聴いてみたりはしたものの、特別に刺さるということはなかった。しかし、この映画でのボカロソングは一際魅力的なキラキラした輝きに満ちていた。
さて、そういったVtuber関連も含め、本作は本当に今風のアニメ映画だという感じがした。作中にちょいちょい出てくる小物も、あのエナジードリンクを思わせるブツだったり、主要キャラクターの一人がめちゃギャルだったり、「秒で終わった」など若者が使うスラングが多用されていたり、キャラクターのデフォルメの表情もそうだ。しかし、舞台となる場所の一つである、昭和平成から続く団地的な部屋の一室には、今風ではなく昔からの「生活」の匂いがするところも好きだった。
ただ、そういったディテールきめ細かな描写の表層の淵源には、日本に古くから伝わる「竹取物語」の骨太な物語がある。地球へやってきたかぐや姫は、月に帰らねばならないというアレである。この物語が生まれた古くから日本人の涙腺を刺激してきた悲しい物語だ。
かぐや姫といえば、2013年公開の高畑勲監督の遺作『かぐや姫の物語』を想起する。そこでは、想い想われることに対する切実な感傷が描かれていた。本作『超かぐや姫!』でもそれを感じた。かぐや姫というモチーフは、そういったフィーリングを伝える上でこの上なく効果があったのだと思う。そして、『超かぐや姫!』は「超」と名がつくように、古典のかぐや姫のストーリーの想像力を超えようとする意識が感じられ、嬉しくなった。60年代、フォークの世界観を超えていこうとしたロックの想像力のような話だ。何はともあれ、スタンダードなアニメ古典にもなりうる『かぐや姫の物語』と本作『超かぐや姫!』はたくさんの方に観てほしいですし、ボブディランはみんなに聴いてほしいという話です。(自分はディランはあまり聴かないビートルズファンだけど。)
そういった表層のポップさと、深層の文学的物語の求心力、双方の魅力を共に感受できる映画だった。今作が初めての長編アニメーション映画監督だったという山下清悟さんは注目すべき監督です! 自宅への帰り道は藤原基央さんボーカルの方のBUMP OF CHICKEN「ray」を聴いて帰ります。いやぁ、素晴らしい歌だ。ボカロの血は僕に流れているのかは分からないが、バンプの血は確かに僕に流れている。
Score 9.4/10.0
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