とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
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【2010年代ベスト】
2010年代ベストアルバム(邦楽)30位→21位
2010年代ベストアルバム(邦楽)20位→11位
2010年代ベストアルバム(邦楽)10位→1位

それでは、一緒に音楽の旅へ!


●魔法に魅せられて

2014年メジャーデビューのシンガーソングライター"吉澤嘉代子"の6枚目のニューアルバム『幽霊家族』のレビュー。

収録内容
【CD】

01. Into the dream

02. あの家はもうない

03. おとうと

04. わたしの犬

05. ピーマン

06. 幽霊

07. うさぎのひかり

08. ほおづき

09. たそかれ

10. 時の子

11. メモリー

12. Out of the dream

吉澤嘉代子さんのお名前はおそらく、Xで相互フォローしているふじもとさんという方の文章で初めて知ったのだと思う。

今回、吉澤さんが新譜を出すと聞いて興味を持ち、彼女の過去の代表曲を聴いてみた。そしたらね、すごく良かったのです、はいー。(©️やす子)

まず、「月曜日戦争」('17)から。


月と戦いというと、「セーラームーン」を思い出す。吉澤さんの代表曲であり、現代の魔女(セーラームーン)が奏でる魔法の歌。どことなくレトロな空気が漂っている。流れるようにキャッチーだが、「うた」としての一本の太く強い軸がある。

次に、「残ってる」('17)。


性愛のあり方が素敵に描写されている。サザン桑田佳祐もラジオでほめていたのは、彼がこの曲の乙女なエロスに反応しただけではなく、歌謡曲的なメロディの重みを、ポップなバラードの軽みの中で鳴らしているところに共感したからではないか。

そうやって見ていくと、ふじもとさんがイチオシのサザンと吉澤嘉代子に共通するところが見えてくる。

そして、「泣き虫ジュゴン」('13)


心を丸ごと持っていかれるような痛切なバラード。くるり「ハローグッバイ」のように着水して音楽の深くまで潜水していくようなイントロ。深海(≒濃密な音楽)を泳ぐジュゴンが目の前に見えるようなこのイメージの喚起力は凄まじい。

上記の3曲のような超名曲もあるホームランヒッターだが、その他の曲も良い歌だらけで、アベレージヒッターとしても充分。
(アベレージヒッターとは、野球でコンスタントに平均以上の高い打率を記録する打者(巧打者)のこと by Google調べ。)

小文字のインディー的な繊細さとサウンドの実験性(というよりは遊び心?)と大文字のポップ的な大胆さと明るさ、彼女の音楽が孕(はら)むどの音楽性も大好物だ。

彼女の曲には、シリアスさよりは"やわらかさ"を感じる。曲名にも、やわらかな平仮名が多用されているし、松本隆から"カネコアヤノ" まで、やわらかな日本語歌詞のロック/ポップスの系譜を感じるのだ。

『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』のようなジブリ映画に通じる、ほんのりとして可愛らしい霊性が漂い、自在に歌と音楽を操る姿はまるで愛らしい魔法使いだ。声の表情やたたずまいなど、いちいちキュート。笹口騒音オーケストラの西山小雨さんのような可憐な可愛らしさに満ちていて、可燃な僕は恋に燃えてしまう。

👆西山小雨さん。(問題がありましたら削除しますので、関係者の方はご連絡をお願いします。)

ポップの中に情感がこもっている聴きごたえは、あいみょんと共振するものを感じる。温かいハグのように確かに温度がある。「うた」と「音楽」がさりげなくエモく響く音楽性は、ふくろうずにも通じるはずだ。


さて、本作『幽霊家族』について見て(聴いて)いこう。

まずアルバムタイトル。ありふれているが温度のある言葉である「家族」に「幽霊」という言葉を組み合わせるところが、少し不思議な個性の吉澤さんらしい。

一曲目がプロローグ的な#1 「Into the dream」で、最後の曲がエピローグ的な#12「Out of the dream」。これはつまり、このアルバムに収録されている曲の舞台は夢の中ということ。魔法的な夢の中で心地よく過ごせます。アルバムがこのようにコンセプチュアルであるところも好きだ。

#2「あの家はもうない」。記憶をたどり、レトロスペクティブなエモーションあふれる、よーよーオススメ曲。吉澤さんのフィクションなのかノンフィクションなのか、どちらでも良いのだが、歌詞も情感もディテールをもって迫ってくる。そして、僕らリスナーは眠りの世界(フィクションとノンフィクションの交差点)へとすべり落ちていく。(©️スピッツ)



#3「おとうと」。ディストーション気味のベースの荒ぶるアタック音がモラトリアムの焦燥を呼び込み、力強く励ますサビの歌唱がおおらかに胸を打つ。

#4「わたしの犬」。クラシカルなピアノがユーモラスで親しみやすい小品の絶品。本作『幽霊家族』は「家族」と「記憶」をテーマとしているが、ペットも家族だよね。(僕も愛犬が旅立ったときは悲しくて寂しかった。)

#5「ピーマン」。ピーマンといえば、子供の嫌いな食べ物の代表格的な存在。ピーマンを含めた(ボスはグリーンピース)嫌いな食べ物を羅列して歌う終わり方が、土臭い生活の皮膚感覚を面白おかしく刺激する、一息つける曲。

#6「幽霊」では、エフェクトを効かせたギターが納涼的に涼やかでまぶしい。子どもの頃に友達だったのは、実は自分にしか見えない「幽霊」だった。ちょい怖な話だけど、幽霊への温かな優しさに胸キュンする。

#7「うさぎのひかり」は、中盤以降にホーンセクションの荘厳さによってスケールが大きくなっていくのが特徴的だ。それと共に開けていくサウンドスケープが絶景の美しさで堪能できる。よーよーイチオシのアーティスト"ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)"も編曲に関わっているだけあって、音楽的に非常に洗練されている。この曲には、直に触れられるような肉体性がある。それと同時に、知性を含めた精神性も感じ取れる。宇宙の裏側で飛び跳ねるうさぎのまばゆさ(≒ひかり)のように人知れず、しかし命が脈づく確かさで音楽が鳴らされている。



#8「ほおづき」は安っぽい野暮な打ち込みとは違う、人の血が通っていてアーティスティックな打ち込みが鳴っている。



#9「たそかれ」の勇壮なストリングスを聴いているだけで気持ちが1センチ前向きなる。

#10「時の子」は、切実なピアノバラード。柔らかい手つきでリスナーを刺してくる、歌にもピアノにも説得力がある。

#11「メモリー」。メロディも音楽の作り込みも完成度が高い。前景でむせびなくホーンセクションも、背景の分厚いストリングスも音楽的で感激する大団円。エピローグの#12「Out of the dream」へ続いていく。

本作はまさに夢の中で出会うアソート。切実だったり、ユーモラスだったり、シュールだったり、ちょい怖だったり、勇壮だったり、いろいろなチョコレートの詰め合わせ的アルバム。

個人的にサイエンス・フィクションのバンドといえば、"うみのて"だが、本作を聴了した後、ファンタジーなシンガーソングライターといえば"吉澤嘉代子"になった。もっと彼女のぬくもった魔法に触れていたい。歌声の残り香とメロディの湿り気の魔力が、知らない場所へ自分を連れていく。

Score 9.4/ 10.0

🐼オマケ🐼


笹口騒音オーケストラ「TOMMOROWLAND」

👆文中に出てきた西山小雨さんがアコーディオンをつとめる笹口騒音オーケストラの曲。2017年のライブ映像だけど、僕がすごく好きな動画。素敵が詰まっている。


ダニーバグ「退屈ハイウェイ」

👆こんなに良い曲を書くのに売れないのが信じられない。ザ・ロックンロールキラーチューン!

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● SI・GE・KI 的

椎名林檎のニューアルバム『禁じ手』のレビュー。他アーティスト作品への客演/他プロデューサーとの共作のみを収録し、自作曲封印という "禁じ手" の縛りのもとで産み出されたアルバムだ。コンセプト的には2013年発表『浮き名』(コラボレーションベストアルバム)の続編である。

[収録曲]
01. 「至宝」 三宅純と椎名林檎
02. 「苦渋」 伊秩弘将と椎名林檎
03. 「芒に月」 伊澤一葉と椎名林檎
04. 「覚め醒め」 BIGYUKIと椎名林檎
05. 「W●RK」 ꉈꀧ꒒꒒ꁄꍈꍈꀧ꒦ꉈ ꉣꅔꎡꅔꁕꁄと椎名林檎
06. 「SI・GE・KI」 向井秀徳と椎名林檎
07. 「2○45」 ꉈꀧ꒒꒒ꁄꍈꍈꀧ꒦ꉈ ꉣꅔꎡꅔꁕꁄと椎名林檎
08. 「秘め初め」 BIGYUKIと椎名林檎
09. 「松に鶴」 伊澤一葉と椎名林檎
10. 「愛楽」 加藤ミリヤと椎名林檎
11. 「憂世」 三宅純と椎名林檎
※注:ꉈꀧ꒒꒒ꁄꍈꍈꀧ꒦ꉈ ꉣꅔꎡꅔꁕꁄ(millennium parade)

まず、椎名林檎のこれまでの作品を簡単に振り返ろう。

総括すると、鍵盤やストリングスも入ったジャジーでオシャレな音楽性だが、(初期は特に)オシャレさは背景に退きがちで、性的も含めた実存が鳴っている。オルタナティブなロックサウンドの焦燥と葛藤の中、今、一瞬だけ抱き合うような刹那の甘やかさ。その甘やかさを求めるようにして、僕は何度も彼女の曲を聴いてしまう。

J-POPや邦ロックとして聴いても、「邦」が外れたロックとして聴いても聴きごたえがある。充実したソングライティングも尖った姿勢も芸術家(「アーティスト」とは彼女のことだ)のそれであり、簡単に消費されない表現の強度がある。ソロも東京事変時代も手練れの楽器隊が彼女を支え、ハイクオリティな作品を生み出している。

また、音楽性はキャッチーなだけではない。一枚のアルバムの中の多様性はもちろん、実験的な楽曲が多いアルバム(最近のバンドでいうとKing Gnu 常田大希が主宰するミレニアムパレードばりの実験性。ミレパとは本作『禁じ手』でもコラボしている。ちなみに、常田さんと椎名さんには交流があり、エイトジャムでお二人仲良さそうに出演していて微笑ましかった)から、聴きやすい王道の楽曲の多いアルバムまで、ディスコグラフィーがバラエティに富んでいる。また、作を重ねるごとに、よりアッパーで絢爛な作品になっていくことも特徴だろうか。

僕は初期の椎名林檎さんを推している。『無罪モラトリアム』('99)と『勝訴ストリップ』('00)。僕にとってこの二つのアルバムが質的に二強だ。決して懐古主義なわけではない。でも、この二枚の良さは突出していると思う。オルタナティブでありつつ、J-POP的な「うた」としてのポップの美しさと求心力/推進力がある。


👆代表曲のひとつ「丸の内サディスティック」。この曲のコード進行から「丸サ進行」という言葉が生まれたほど、J-POPや後のシティ・ポップへの影響力の大きい曲。(世界的にはGrover Washington, Jr.の曲から「Just The Two of Us進行」と呼ばれる。)

2014年発表『日出処』の日本愛な意匠には本当に驚いた。収録曲「NIPPON」も含めて、その日本推しが左派やリベラルからは批判されているが、よーよー個人的にはそこまで咎められるべきには思えない。左派も右派も自分たちの思うように表現したらええ。表現の自由とは、自分の好まない表現にも寛容になることなのだから。



さて、冒頭で述べたように、本作『禁じ手』は自作曲を収録することを禁じ手としてやっておらず、外部のアーティストが作った曲を歌い、全編コラボレーション曲で成り立つアルバムとなっている。まさにジャズというジャンルが、過去から現在まで様々なミュージジシャンを客演に迎えて鳴らされている音楽であるように、このアルバムで椎名さんは様々なミュージシャンの接結点であるかのように音楽を鳴らしている。

これまでの彼女のキャリアで数多あるコラボ曲の中で印象に残っているのは、スピッツファンの僕的には草野マサムネとのデュエット曲「灰色の瞳」。ザクザクとした攻撃的でオルタナティブなギターサウンドの上で、ソリッドな林檎さんの歌声と、柔らかな草野さんの歌声が生き生きと脈打っている。



あと、コラボ曲ではなくカバーだが、「yer blues」のカバーにおける椎名さんの歌唱もパンチが効いていてシビれる。ビートルズの原曲は露骨で切迫した生々しさがあってあまり聴かないが、椎名版「yer blues」はソリッドな心地よさがあってずっと聴いていられる。



この二曲が収録されている『唄ひ手冥利』は、まさに唄ひ手である椎名さんの歌唱の極みが味わえる。歌で曲を乗りこなす、その様はロボットアニメの主人公パイロットがロボットを乗りこなすように自在であり、自由に満ちている。

本作『禁じ手』について見ていこう。

アルバム構成は曲順で真ん中の曲#06「SI・GE・KI」(向井秀徳と椎名林檎)をセンターにして、コラボ相手が線対称のように並んでいる。これと関連するのか、ジャケットのイラストも線対称だ。こんなところからも美意識を感じ取れる。(例外的に前から二番目の伊秩弘将と、後ろから二番目の加藤ミリヤが違ったりするのも揺らぎがあって面白い。)

曲単位でいうと、向井秀徳とのコラボ曲#6「SI・GE・KI」が目(耳)を引く。この音楽と言葉のスリルよ! いつもの独特のザ・向井秀徳の曲なのだが、椎名さんの歌唱もその世界観に寄せてフィットしている。本作は英詞やフランス語歌詞、スペイン語歌詞の曲も収録しているが、外国語だからかするりと耳から耳へ抜けていってしまう。そのぶん、このコラボ曲は日本語、それもザ・向井節の日本語がフックになっている。(#1「至宝」のフランス語歌詞、#9 「松に鶴」のスペイン語歌詞は椎名さんが自分で書いたという。椎名さん、語学もできるんだ、すごい…)



加藤ミリヤとのコラボ曲である#10「愛楽」も良かった。椎名さんとミリヤさんの歌声の重なる様が美しくて、他に何もいらないという気にさせる。ミリヤさんというと清水翔太とコラボしたり、J-POP畑な方である印象があるからコラボは意外だった。だけど、確かな実力者だから起用したのだろう。



どの曲も音がモダン。ロックやジャズはもちろん、ヒップホップや電子音楽の最先端の音が鳴っている。サブカル的で親しみやすい出自とは対照的にハイカルチャー的な美意識が横溢する、曲の世界観とサウンドに舌鼓(耳鼓)する。この音の中でさまよって漂っているだけで気持ちよい。客演や共作だからこそ際立つ唄い手としての力量と、モダンで刺激的な玄人のサウンド、両面から楽しめる一枚です。



Score 7.9/10.0

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●仮想空間とリンクする生身の人間と生身の涙

僕がもっとも信頼している作家の一人である高橋源一郎さんが『サンデー毎日』の連載で本作を推していた。ネットで話題になっているし面白いに違いないと、いつものミーハー根性丸出しで観にいった。

途中まで観た後には、これはFilmarksの5点満点でいうと、4.0点くらいの佳作で終わりそうと偉そうにもそう思っていた。だが、最後の20分くらいで心揺さぶられ、5点満点をつけたくなっている自分がいる。この感動のほとぼりが冷めて冷静になったとしても、4.5点は堅い。観て良かった。

一番泣いたのは、エンドロールでBUMP OF CHICKEN「ray」のこの映画バージョンが流れたとき。リリースされた10年前から良い歌だと思っていたが、これほど深く高らかに響いたのは今日が初めてだ。泣かないと思っていたのに号泣。周りに聴こえないように音を出さないように泣くことに必死だった。

その「ray」もボカロソングだが、本作はボカロも含めたVtuber文化が取り上げられている。仮想世界も主舞台であるアニメ映画は、細田守監督『竜とそばかすの姫』を思い起こした。あと、主人公とかぐや姫が紆余曲折を経ながらも二人で人気Vtuber1位を目指すくだりでは、『ルックバック』のようなひたむきな努力が胸を打った。あと、こんなに歌が全面に出るアニメ映画といえば、Adoが歌唱パートを担当する2022年公開の映画『ONE PIECE FILM RED』を連想した。

Vtuberが歌うボカロソングも良かった。ボカロといえば、もう何年も前に音楽雑誌『MUSICA』でボカロが特集されたこともあり、その特集を見ながら聴いてみたりはしたものの、特別に刺さるということはなかった。しかし、この映画でのボカロソングは一際魅力的なキラキラした輝きに満ちていた。


さて、そういったVtuber関連も含め、本作は本当に今風のアニメ映画だという感じがした。作中にちょいちょい出てくる小物も、あのエナジードリンクを思わせるブツだったり、主要キャラクターの一人がめちゃギャルだったり、「秒で終わった」など若者が使うスラングが多用されていたり、キャラクターのデフォルメの表情もそうだ。しかし、舞台となる場所の一つである、昭和平成から続く団地的な部屋の一室には、今風ではなく昔からの「生活」の匂いがするところも好きだった。

ただ、そういったディテールきめ細かな描写の表層の淵源には、日本に古くから伝わる「竹取物語」の骨太な物語がある。地球へやってきたかぐや姫は、月に帰らねばならないというアレである。この物語が生まれた古くから日本人の涙腺を刺激してきた悲しい物語だ。

かぐや姫といえば、2013年公開の高畑勲監督の遺作『かぐや姫の物語』を想起する。そこでは、想い想われることに対する切実な感傷が描かれていた。本作『超かぐや姫!』でもそれを感じた。かぐや姫というモチーフは、そういったフィーリングを伝える上でこの上なく効果があったのだと思う。そして、『超かぐや姫!』は「超」と名がつくように、古典のかぐや姫のストーリーの想像力を超えようとする意識が感じられ、嬉しくなった。60年代、フォークの世界観を超えていこうとしたロックの想像力のような話だ。何はともあれ、スタンダードなアニメ古典にもなりうる『かぐや姫の物語』と本作『超かぐや姫!』はたくさんの方に観てほしいですし、ボブディランはみんなに聴いてほしいという話です。(自分はディランはあまり聴かないビートルズファンだけど。)

そういった表層のポップさと、深層の文学的物語の求心力、双方の魅力を共に感受できる映画だった。今作が初めての長編アニメーション映画監督だったという山下清悟さんは注目すべき監督です! 自宅への帰り道は藤原基央さんボーカルの方のBUMP OF CHICKEN「ray」を聴いて帰ります。いやぁ、素晴らしい歌だ。ボカロの血は僕に流れているのかは分からないが、バンプの血は確かに僕に流れている。



Score 9.4/10.0


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