とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
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👇一押し記事👇
【2010年代ベスト】
2010年代ベストアルバム(邦楽)30位→21位
2010年代ベストアルバム(邦楽)20位→11位
2010年代ベストアルバム(邦楽)10位→1位

それでは、一緒に音楽の旅へ!
神聖かまってちゃんとドレスコーズの対バン!


両者ともに好きなので観に行った。周囲の異動で仕事が忙しい時期だったが、見逃すまいと。数年前に"リーガルリリー"✖️"うみのて"の2マンを生で見逃した経験が未だに尾を引いているのもある。

かまってちゃんとドレスコーズには共通する要素がある。アートが先行しているアーティストとは違い、即効性の快楽とディープな芸術性が両輪となって音楽を駆動するという点だ。僕はアートの要素がない音楽は聴かないし、キャッチーさの微塵もない音楽は聴かないので、こういったハイブリッドで屈託のある音楽が好きなのである。

その即効性の理由の一つが親しみやすい歌メロだ。の子も志磨遼平もメロディ・メイカーとして底知れない才能がある。そして、彼ら2人の強烈なカリスマ性は、音楽の届きやすさを倍速で加速させる。

この2組だからか、観客の服装もバンドTシャツのバンドファン(orバンギャル)風、ゴスロリ風、ヤンデレ風、ヤンキー風、ストリート風、ふつうの私服風など、老若男女様々の服装の方がいた。はっきり言って会社帰りであるスーツの僕(会社員風)は浮いていたが、そんなことは気にならない自由闊達なバイブスに満ちていた。

演奏前には、SEでめっちゃ陽気でニューウェーブな曲がかかっていたが、僕のShazam君は知らない音楽だった。(街中で知らない音楽がかかっていたら、無料アプリのシャザムで曲名/アーティスト名を簡単に知れますよ。)


★先攻 神聖かまってちゃん


(👆最近、ファーストテイクでロク鳴りを演奏して話題に。今日も演奏したよっ!)

「ぺんてる」でスタート。やがて閉店する「ぺんてる」(の子が子供の頃に通っていた文房具屋。4月12日に閉店予定)への哀傷に浸りながら、エモーショナルな演奏の展開に否が応でも観客のテンションが上がっていく!

の子はライブでは、いつも「精神解放しろ!」と叫ぶけれども、今日の演奏でも僕は精神解放できた。ライブ終盤には、スーツを脱いでYシャツ姿になってしまったし。

演者と観客のコールアンドレスポンスは真剣勝負。アジテーションするの子に観客の皆がのまれていく。観客の意思の熱度は、個体から液体へ、液体から気体へ。ステージ上ではスモークがたかれていたが、熱気による蒸気と見紛うほどだった。

他の楽器隊も"の子"の熱意に応える。他の3人はあまり目立ったパフォーマンスは無かったのだが、熱い(篤い)職人のように演奏を支え、形作っていた。僕はmono君、みさこさん、ゆうのすけ君の未来と幸運も祈っている。

「天文学的なその数から」も良かったな。今日出演の二組の曲の中でトップを争うポップなメロディの歌。CDの音源だと"ちばぎん"が歌っていたメロディを今日は"ゆうのすけ"が歌っていた。ああ、ベースメンバーは変わったんだなと、今まで頭では分かっていたものの、そのとき、遅まきながら臓腑に沁みた。

その後、「花ちゃんはリスかっ!」で終了。最初から最後まで才気煥発で一触即発のパフォーマンスが最強でした。腕振りすぎて明日以降筋肉痛になりそう笑

↓マス かき姉さん(@masukakiTV )のポストより(いつもお世話になっています!)
ドレスコーズ+神聖かまってちゃん 対バンライブ 恵比寿LIQUIDROOM
神聖かまってちゃん セトリ
1.ぺんてる
2.ズッ友
3.天文学的なその数から
4.きっと良くなるさ
5.あるてぃめっとレイザー!
6.ロックンロールは鳴り止まないっ
7.いかれたNEET
8.フロントメモリー
9.花ちゃんはリスかっ!

★後攻 ドレスコーズ(志磨遼平)


(👆今日も演奏。「やりすぎた天使」という曲名のとおり、今日のドレスコーズも神聖かまってちゃんもやりすぎなくらいの熱量だし、会場内はやりすぎなくらいの熱で充溢していた。)

先攻のかまってちゃんで客席が温まっていたからか、志磨さんが登場するとひときわ大きな拍手。

毛皮のマリーズを含めた今までのキャリアの曲を時期満遍なく演奏した。ひらがな多めで噛んで含めるような優しい(易しい)最近の曲も、ザ・初期衝動的な曲も、観客を鼓舞するような勇気の歌も歌っていた。

勢いだけではなく音楽の豊かさも感じるアクトだった。志磨さんのジェスチャーも豊かだった。見られ方を研究しているだろうし、一つ一つのジェスチャーから、彼の愛(真心)が伝わってきた。

2010年代に現れたandymori の小山田壮平さん、毛皮のマリーズ(現ドレスコーズ)の志磨遼平さん、神聖かまってちゃんの"の子"。彼らはスタイルだけではなく、意味性でもロック(既成文化へのカウンター&アンチテーゼ)していた、僕にとってのロックヒーローだ。かまってちゃんはメンバー(ベース)の脱退&加入があったが今も活動を継続、他の2人は元のバンドは無くなってしまったが、今も形を変えながら音楽活動を続けていて本当に嬉しい。

今日演奏していたかまってちゃんとドレスコーズはどちらも己が信じる"びゅーてぃふる"を演奏で貫いていた。その知性と美性に魂は宿る。

余談だが…。今日、ドレスコーズのサポートでベースを演奏していた有島コレスケさん。彼は「0.8秒と衝撃。」というバンドのサポートでドラムをやっていた。ハチゲキは一度も生で見たことはないが、音源が出るたびに買っていた。尖ったロックバンドとしてのハチゲキの姿勢が好きだったので、ハチゲキのフロントマンの塔山さんがよくツイートして話題にしていた(この時代は「ポスト」ではなく「ツイート」ですよ)、有島さんの姿を見られたのが嬉しかった。
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サカナクションに「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」という曲がある。大箱、小箱などキャパごとにそれぞれの良さがあるが、今回の2マンライブも中規模のリキッドルームでしか鳴らせない空気感にあふれていた。手を伸ばせば届きそうな、届かなさそうな、そんな絶妙の距離感。

両者のバンド演奏と歌唱にソウル・ミュージック(ジャンルとしてではなく、一般的な形容としてのソウル<魂>。e.g.ソウル・フード)を聴いた気がした。魂と魂が弾け合い、溶け合い、そのあわいに空間が生まれる。

対バン(胎盤)のあわいで生まれた(産まれた)熱は、観客(少なくとも僕)がこれから「今」を生き続ける上での糧になるだろう。ちょっと大げさだが、の子の言うように「人生最高の日」になった。人生最高を更新していく日々が我が人生です。



🐼オマケ🐼
#よーよーのラーメン道⑦

(①〜⑥をご覧になりたい方は、「#よーよーのラーメン道」をXで検索してね!🍜

つじ田@恵比寿
濃厚特製つけ麺 1,360円!



僕が絶賛する『マンモス』のように濃厚なスープとコシのある麺がよく絡む逸品。スープ割りもイケてる!

ただ、チャーシューだけ残念。僕の舌は幼稚なので、脂っこくて甘みや旨みも分かりやすいチャーシューが好きなのだ🥩

7.8/10.0






今日はザ・フウテンズ(The Whotens)の企画イベント「今夜、君たちと」に行ってきました。




演奏したのは4バンド。出演順に感想を書いていきますね。事実やMCの内容などに誤りがあればご指摘ください。なんせ、僕もポンコツなので…。
YouTubeの動画も載せますが、バンド名で検索してトップに出る動画を載せているので、本日やった曲とは限りません。

Too Leap Bunny 18時〜


男性4人組ロックバンド。

一曲目からフウテンズ「ネガティブシャドウ」のカバー。カバーはフウテンズへの愛の気持ち。愛がなければカバーはできないし、愛のあるカバーだった。

その後のオリジナル曲も良かった。エルレガーデンのみずみずしい勢いの青春性、ワールドワイドになる前のワンオクロックのロックバンドとしての真っ当なエモーショナル性、ランクヘッドのロックなうたごころなどを感じ取れ、王道ギターロックをひた走っていた。(ドラムの方はlocofrankのバンドTシャツを着ていた。)

ドラムの四つ打ちやスネアもスカっとしたアタックで音が抜けていく気持ちよさがあるし、音程のあまり動かないベースも、ルート弾きだけでグルーヴィーだった。その上に乗るギターとギターボーカルの演奏は、まだ若くしてロックソングとしての模範だった。

終盤のバラードもカッコ良かった! 歌声がリスナーの心を動かす、力強い歌だった。アッパーな路線の曲にも、バラードの歌声や演奏にも熱を感じるアクトだった。


Mr.マングース 18時45分〜


男性4人組ロックバンド。

まず、演奏が上手い。休符を活かしたフレーズを弾くベース。休符とは呼吸でありエネルギーであることを感受できる。ドラムはスティックの振り方からしてしなやかで、こなれている感じだった。

ウワモノの2人も良かった。エフェクターを活用したギターも気持ち良かったし(水しぶきみたいな高音が涼やかだった)、ギターボーカルにも周りを牽引するフロントマンとしてのミュージシャンシップがあった。

ギターボーカル、ギター、ベースの3人が前に立って歌うときには、全員野球感があった。演奏が達者で器用なバンドにも、サンボマスターみたいなエモーショナルで全員野球感あるバンドにもなれるポテンシャルを感じる。ワンマンも行ったことがあるから、客層のボリュームはありそうだが、はたして今後はどうなるか。期待のバンドです。

MCでは、ギタリストが開口一番、ライブの打ち上げでフウテンズのTOMOTAKEさんが自分を追いかけてきて、その場所で居合わせていた人全員で鬼ごっこが始まったという話が。客席は大ウケ。TOMOTAKEさんネタはフウテンズのライブでは鉄板かもしれない。


とけた電球 19時30分〜


4人組ロックバンド。

演奏がすげぇ。プロと比べても遜色ない。音楽として垢抜けている。このバンドを13年やっていると言っていたけど、やはり続くバンドは技術もあるし、ソングライティングの力もある。

フロントマンのギターボーカルは、観客をノせるのが上手い! これはノらずには、アガラずにはいられないノせ方。エンターテイメントだねぇ。

キーボードがあったからか、今日出ていた4バンドのうち、もっともJ-POP的な自由さと豊かさを感じたバンドだった。シティポップやR&B味のある曲も、感傷的な〆のバラードも楽しかった。良いショウを観た思いになれた。

リズム隊のベースとドラムの織りなすグルーヴが気持ち良かった。ベースとバスドラのアタックがシンクロするだけで、心臓が鼓動し、音楽の血液が脈々と流れ出す!


The Whotens 20時15分〜


待ってました、フウテンズ! 
バンド名にかけてか、フウテンの寅さんのBGMで登場。

説明しよう! フウテンズとは、以下の4人の男性による王道に"ポップ"でしっかり"ロック"な最強若手バンドである!
吉田やもり(ボーカル)
TOMOTAKE(ギター)
ボーリングイソタケ(ベース)
かんざわりあむ(ドラム)


印象深くフックとなる演奏を繰り出す楽器隊。その楽器隊の音に埋没しそうにない鋭い(だけど懐深い優しさも感じ取れる)ボーカル。咀嚼しやすいけれども、かみごたえのあるソングライティング。どれらも素晴らしい!

歌うように叩かれる、かんざわさんのパワフルなドラムに舌鼓(耳鼓)。イソタケさんのベースと併せて強靭なグルーヴを醸す。なにより、ギターボーカルの吉田君の歌声のグルーヴが半端ない。狙った的の音程をピッチのずれなく出せ、高音も自由自在でリズムも完璧な吉田君のボーカルは、個人的に中村一義に近い力があると思う。(ハイテンポの中村一義曲のボーカルを聴くと分かりやすい。)ギターのTOMOTAKEさんは、今日出ていたバンドマンの中で一、二を争うテクニシャンのギタリストであり、パッションを持った人。

最近の彼らの曲は、音楽性の幅が広がってきている。「カッコいい歌」だけではなく、「カッコいい音楽」にもリーチしている、まさに僕にとって理想に近いバンドだ。

ソングライターが複数いるのも特徴的だ。作曲したメロディに合わせて誠実に心象風景を描くかんざわさんの歌詞。固有名詞を散りばめることで情景を浮かび上がらせる詩的な吉田君の歌詞。TOMOTAKEさん作詞作曲の「No.340」は、フウテンズの他の曲と比べて異色。ボーカルの掛け合いが最高潮に最高! まるで、「ボヘミアン・ラプソディ」(©️クイーン)のように情景がドラマチックに切り替わる名曲だ。

アンコール前に演奏された「夜、君と」は感涙モノ。最後に歌われる「朝焼け」という歌詞のロングトーンで本当に景色が変わる思いをしたんだ。夜が明けて朝になっても、君たちとこうしていたいというフウテンズの意思を感得した。

MCのとき、扱いに困るひどい野次を受けても、吉田君はなんとかさばいていた。お笑いへのリスペクトのある吉田君(今日も「たちあがれ!カーボーイ」という、爆笑問題を始めとしたお笑いをリスペクトする歌を歌っていた。)は、彼自身もとても面白い人なのだ。バンドのグッズで売っているライターを200円と言って、他のメンバーから300円だと訂正されたり、彼らとファンが言うところの「ポンコツ」な要素もあるのだが、それも含めての愛されキャラなのである。

楽しいライブだった。吉田君も他のフウテンズメンバーたちも天性の才能と誠実な努力の跡が垣間見える。ギターボーカルの吉田君は25歳。まだ、未来で分岐するいくつもの豊かな可能性がある。レコード会社や音楽事務所のスタッフのみなさん、青田買いするなら今ですよ。簡単には消費され尽くされない切実さが彼らの楽曲にはあるのです。






🐼オマケ🐼
#よーよーのラーメン道
麺屋はやぶさ@下北沢





フウテンズのライブ前に食べに行きました。以前に来て美味しかったので再訪です。

濃厚オマール海老ラーメン980円❣️
海老風味のスープがとにかく濃厚で美味い。海老酢やパルメザンチーズ、追いタレなどトッピングも豊富😋

👇3時のヒロインの色紙も!


👇フォロワーの方に教えていただいたのだけど、チュートリアルの徳井さんのようだ。


●安心(だけどいつまでも新鮮)サザン印

サザン、10年ぶり16作目のフルアルバム! 待たせただけあって、10年前の前作『葡萄』('15)のような充実作に仕上がっています。

前々作『キラーストリート』('05)はビートルズ『アビーロード』に範を取ってストイックに音楽を追求した作品だったが、本作は『キラーストリート』と言うよりも『葡萄』寄りであり、融通無碍でポップな"うた"が並んでいる。(『キラーストリート』は好きなアルバムなんだけど、少しかたくなで硬い感触がする。まあ、そこがロックでカッコ良いのだけど。)

フロントマンの桑田佳祐さんはアルバム名の由来について以下のように語っている。

「これまではずっと面白いことを言おうとしてきたけど、今回一番シンプルに伝えたいことを考えてみたら、『心より感謝申し上げます』ということだった。(中略)我々はどうしても誰かの力を借りないとやってこられなかったから。サポートミュージシャンやオペレーター、エンジニア、スタッフたちが必ずレコーディングにもライブにもいてくれて、バンドをアシストしてくれる。おかげで自分はある程度自由と余地を持ってやれている。だから今伝えたいのはキャッチコピー的な気の利いた言葉ではなく、シンプルなメッセージでした」
(参照:「桑田佳祐がApple Musicラジオ番組で音楽談義、サザンオールスターズ10年ぶりの新作アルバム発売日に」『ナタリー』2025.3.18. https://natalie.mu/music/news/616086 )

改めてバンドについて説明すると、サザンオールスターズ(Southern All Stars)は、1977年結成、日本の5人組ロックバンド。バンド編成としてはパーカッションのパートのメンバーがいる(野沢秀行さん。愛称は「毛ガニ」)ことが特徴的か。他にギタリストの大森隆志も結成時から在籍していたが、2001年に脱退。

[収録曲]
1. 恋のブギウギナイト (フジテレビ系ドラマ「新宿野戦病院」主題歌/ユニクロ「年末祭・新年祭」TV CMソング)
2. ジャンヌ・ダルクによろしく (TBS系スポーツ2024テーマ曲)
3. 桜、ひらり
4. 暮れゆく街のふたり
5. 盆ギリ恋歌 (DAM「Singing」2023 Special Project CMソング)
6. ごめんね母さん
7. 風のタイムマシンにのって
8. 史上最恐のモンスター
9. 夢の宇宙旅行
10. 歌えニッポンの空
11. 悲しみはブギの彼方に
12. ミツコとカンジ
13. 神様からの贈り物
14. Relay〜杜の詩 (ユニクロ「ヒートテック」TVCMソング)

サザンオールスターズといえば、キャッチー(王道J-POP)の泰斗、遊び心(ナイスでお茶目な実験性)あるバンドの筆頭、そして日本の心のふるさと(老若男女の心のオアシス)。70年代から現在まで、各々の年代で活躍し、ヒットを飛ばしているから、彼らが世代という方は幅広くいそうである。

J-POPに邪(よこしま)でスケベなフィーリングを持ち込んだ人気バンド。でも、本人たちは全く悪い人ではなくて、特にメンバーの桑田佳祐さんと原由子さん夫婦には過去にゴシップや醜聞がなく、彼らが夫婦でい続けるのは、一途な純愛の過程と結果だとすら思う。不倫を思わせる歌(「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」)はあるけれども、曲上だけの不倫であって桑田さんと原さんの絆は深いと思わせられる。そんな彼らの関係性が好きだ。



そして、邪で露悪的な曲も多いからこそ、歌で訴えかける純で尊い心情が映える。詐欺師が人をだます時に嘘だけではなく本当のことも話に混ぜてだましやすくするのと同じパターンで、サザンも邪な曲や歌詞が多いからこそ、尊い人間性や「本当」のメッセージが伝わってくるのだと思う。

歌詞もそうだが、音楽を歌声で軽快にサーフし、むずむずするように楽しく愉快なサザンの音楽に軽薄性を感じる方もいるかもしれない。そう、彼らの音楽と姿勢には、上質なチャラさがある。だが、そのチャラさゆえに、奥にある人間的で誠実な視点をより感じ取れるのだ。「胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ」なんて曲名の歌も過去にあるが、普段ふざけた曲も多くやっているからこそ説得力を持つのだ(ワイルドで不埒な男が時に見せる優しさのような)。

歌と音楽への熱く鷹揚でまっすぐな想いがどの作品にもパッケージされている。名曲「真夏の果実」には、それらを特に感じる。サザンは他者や時代を茶化しているだけではないのだ。そこには、熱量がある。



今回、新譜が出るとのことで、サザンのオリジナルアルバムをひと通り聴いてみた(多作なので大変だった)。

過去の曲も音色は古く感じる面もあるが(シンセや打ち込みドラムは特に)、その古さも新鮮だし、今聴いても音楽的な豊かさを確かに感じ取れる。有頂天なブギー、甘じょっぱいバラード、ほろ苦いブルース、あるいはワールドミュージックに接近したり、手を変え品を変え鳴らされる音楽は、どれを取っても一級品だ。

そして、チョコレートのアソートのように、アルバム収録のそれぞれの曲に個性的な音楽性(フレーバー)がある。温泉ではなく音泉に入っているような心地よさがあるが、その音泉も硫酸塩泉、炭酸風呂、ひのき風呂、ジャグジーなど様々な種類を楽しめるのだ。桑田さんがフジテレビの番組『音楽寅さん』で多様な音楽を取り上げていたことからも分かるが、桑田さんの音楽のルーツと引き出しの幅広さは唯一無二である。

歌詞の内容もラブソング(純愛ソングもあれば下ネタソングも数多い)から社会風刺まで幅広い。僕の中では、社会風刺ソングの二代巨頭は、桑田さんと笹口騒音さん(うみのてetc.)のお二人である。両者共に鋭利かつユーモアのある風刺をしている。歌を通して社会を良くしていきたいという、世直しへの気概すら感じる。

初期のアルバムでは、『人気者で行こう』('84)『KAMAKURA』('85)が抜群に面白い。特に『KAMAKURA』は、日本の大衆音楽が歌謡曲からJ-POPに移り変わる過渡期に生まれた、早すぎるJ-POP版『Kid A』(Radiohead)だとすら思える。それほどサウンドの創意工夫が達人級なのだ。

サザンは松任谷(荒井)由実と並んで「歌謡曲」から「J-POP」へ橋渡ししたアーティストの代表格だ(特に荒井由実の音楽は「ニューミュージック」と呼ばれた)。彼らの洒脱なアイデアと垢抜けた演奏が日本の音楽をモダン化した。歌謡曲の情念的なエモさと、J-POPのかぶくような自由さ、どちらが良いかは別だが、サザンや松任谷さんが日本の大衆音楽にもたらした影響力は特筆すべきものだ。なお、サザンについてJ-POP的なムズムズするような愉悦は『Young Love』('96)以降に感受できやすい。

全てのアルバムについて述べるのは文章量がかさんでしまうので、僕が一番好きなアルバム『さくら』('98)(前述『Young Love』の次のアルバム)について述べる。

音楽性の幅広いカラフルなアレンジが桑田の歌を引き立たせ傑作だ。感覚的でイメージに富んだ歌詞、桑田節のメロディ、シンコペーションを多用した流れるようなリズム、日本語を英語っぽく歌う歌唱。桑田さんの個性と革新性はいつでもスゴい。

この『さくら』、音楽的にめちゃ楽しいし面白いのだ。音楽を楽しみたいというリスナーの本能をくすぐり、刺激する。「マイ フェラ レディ」はシモの方向にえげつない曲だけど、芳醇な響きのホーンがふくよかに匂い立つ美味な音楽。フォークともブルースともつかぬ「私の世紀末カルテ」は夜に酒を飲んで落ち込みながら聴くと気持ち良く堕ちていける。アルバムのトリを飾る「素敵な夢を叶えましょう」の圧倒的名曲感のスローバラード。そして、なんといっても「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」。耳当たりが良くて頭の中でトロけるような極上メロディに酔う。こんなに優しい不倫ソングは他にないだろ…。


そして、今作である。

リード曲の#3「桜、ひらり」からして良かったね。サウンドの質感や歌メロが安心サザン印で心地よく聴ける。

コブクロ「桜」の「桜の花びら散るたびに」や、森山直太朗の「さくら(独唱)」の「さくら さくら ただ舞い落ちる」の歌詞など、桜が散る光景に自分の想いを重ねるのは日本的な感性だと思う。あの世に行った人を偲びつつ、次代に意思を伝えようとする、植物のサイクルのような良曲。



次代に伝えるといえば、アルバムラストを飾る「Relay〜杜の詩」もまさにその曲想を用いている。Relayとはリレー。僕らはバトン(杜=森=神宮外苑=自然豊かな社会)を未来の世代に繋ぐのだ。



他にも、#10「歌えニッポンの空」では、「やがて生まれ来る君へ/素晴らしい明日/夢見て欲しい」という歌詞もあるし、次の時代へ「伝える、残す」は本作に通底するものなのかもしれない。もう、僕も41歳で人生折り返し地点なので、彼らのメッセージに寂寞とした親近感を覚える。



また、#13「神様からの贈り物」は、歌詞にもあるように極上のメロディ・ラインの曲だが、先人のスターやミュージシャンへの尊敬の念を歌っている。自身も才能(ギフテッド=神様からの贈り物)豊かなサザンは、才能あふれた先人からの音楽のバトンを確かに受け取った。そして、サザンからのバトンは、どこかにいる人気者や日陰者が意識的もしくは無意識的に受け取っているだろうと思うのだ。

他の曲も駆け足で見て(聴いて)いこう。
ディスコチックなサウンドに桑田さんの歌唱がエロく絡まる幕開けの #1「恋のブギウギナイト」
#2「ジャンヌ・ダルクによろしく」は、アメリカンロックの往年の名曲のような鷹揚としていて視界の開けたロックンロールソング。
#4「暮れゆく街のふたり」はしっぽり湿る名バラード。サウンドのウェルメイドな質感が尊い。
#5「盆ギリ恋歌」。日本の古典的な音楽もモチーフにしているのにディスコチックなところが斬新だ。
#6「ごめんね母さん」。サザン的露悪ユーモアが哀しく光る曲。
#7「風のタイムマシンにのって」。まさに「風」のように爽快に駆け抜ける原由子ボーカルの良曲。
#8「史上最恐のモンスター」。音数の抑えられた不思議な感触の一曲。深刻に歌っているような、ナンセンスなことを歌っているような、歌詞のとらえどころのなさが面白い。
#9「夢の宇宙旅行」。ポジティブで温かく、華やかに開けた響きの音楽に胸がすく。


#11「悲しみはブギの彼方に」。ブギの彼方に悲しみがあるところがサザンならではだよね。
#12「ミツコとカンジ」はトレンディ・ドラマのような恋愛模様にやきもきする、歌謡色が強い曲。

親しみやすく強固な歌メロが情景を描き、曲をドライブさせていく感覚をどの曲にも抱く。サザンも桑田さんも全然おとろえてもないし、枯れてもいない。彼らの音楽家としての矜持をみた思いだ。素敵でフレッシュな曲を届け続けてくれるサザンにひとりのリスナーとして、「サンキューソーマッチ!」(よーよーが一番伝えたいシンプルなメッセージ)したい。

Score 8.9/10.0

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①本文中にも出てきた「うみのて」。狂気に堕ちて凶器の言葉を使う者を、風のように刺した(風刺した)名曲。



②王道邦楽ロックといえば、「ダニーバグ」のこちらの曲をどうぞ。



③2020年代で一、二を争う傑作のロックソングといえば、「夜に駆ける」(流行したあの曲ではなくバンド名)のこちらをどうぞ。



🐼オマケその2「テーマ別音楽セレクト🐼
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