実写映画『はたらく細胞』ネタバレなし感想&レビュー【細胞の宿命】 | とかげ日記

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●細胞の宿命

なんでも擬人化する日本さん、今度は体内の細胞を擬人化!? 世界の中の一つの世界を開けると、その中にまた世界がある入れ子構造を活かした良作です。

この映画から切り取られたヴィジュアルや、世間の評判、順調な興行収入のニュース。それらに触れると、最近の映画の中で屈指にポップであり、シリアスとコメディのバランスのとれたウェルメイドな映画であるという予感を覚えた。他の方もそうかもしれないが、僕のこういう予感は当たることが多い。適度に売れ線だけど、適度にこだわりを感じる映画は大好物だ。これは自分でも観ておきたいと思って劇場に向かった。

あと、セカオワのファンなので、Fukaseさんの演技を観るのも楽しみだった。実際に観た感想を言ってしまうと、存在感を確かに感じられる演技だったと思う。

ところで、指摘している人を見たことがないけど、大ヒット漫画『暗殺教室』の赤羽カルマと、セカオワのFukaseさんは似ていると思う。赤く染めた髪の毛だったり、性格だったり、雰囲気だったり、抱えている世界観だったり…。『はたらく細胞』でもその危うくクレバーな個性が活きていたように思う。




また、アクションシーンをFukaseさんと交わした佐藤健さんが素晴らしかった。セリフの声音も堂々たる迫力があるし、イケメン俳優という枠に収まらない演技派な個性の強さを感じ取れた。

全体の感想は……、音楽やカメラワークなど泣かせ演出が少しうるさく感じる点もあったが、思っていたとおりのウェルメイドな良作だった。調べてみると、監督の武内英樹さんは『翔んで埼玉』や『テルマエ・ロマエ』の映画化を手がけた方なのか。道理でポップな映画の作り方が分かっている訳だ。トリッキーな題材を真っ当に美味しく料理する、実写化映画のマエストロだ。

この映画は、セカオワの曲でいうと、それぞれに正義がある白と黒が休戦する「ドラゴンナイト」の(百万年に一度の奇跡のような)甘い世界観ではなく、白は白でしか生きられないし、黒は黒でしか生きられない、世知辛い現実を描けていたと思う。本作は組織論を説いた物語とも捉えることができるが、たやすく切り捨てたり、過酷な運命が待っていたり、組織は残酷なのだ。

「白は白でしか生きられないし、黒は黒でしか生きられない」。本作の主題歌を手がけるヒゲダンには「宿命」という曲名の歌があるが、それはまさに宿命だ。細胞たちも、僕ら人間も、なんらかの宿命を背負って生きている。ヒゲダン「宿命」のラストを飾る「ただ宿命ってやつをかざして/立ち向かうだけなんだ」というラインの精神を、佐藤健演じる白血球は肉体的にも精神的にも体現している。

だが、その中で滅私と利他の姿勢が人々の感動を呼ぶことは、どんな物語構造でも変わらない。主演の赤血球である永野芽郁さんや、人間役の芦田愛菜さんと阿部サダヲさんの演技に素直に泣けたのは、その姿勢が如実に演技されていたからだ。綺麗事に見えなくするまでの詳細への熱意が演技には必要だ。役者だけではなく、舞台道具や小道具も丁寧な作り込みを感じた。相当の予算がかけられているのだろうが、世界を構成する細部に対する熱量を思わずにはいられない。

他の役者の方も好演している。強い女性が好きなので仲里依紗の役どころも良かった(←なんの好みの暴露ww)。題材的にはトリッキーだが、表現やテーマの中身(想いは伝わる)は奇をてらうことなく王道であり、実直にコメディもドラマも作り込んだ良作です。永野芽郁さんには、綾瀬はるかさんのような名コメディエンヌの才能を感じます。未見の方は、まだ上映している映画館や、これから配信されるだろうサブスクで、ぜひお楽しみくださいね。

Score 8.0/10.0

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