【ネタバレなし】アニメ映画『BLUE GIANT』感想&レビュー<良作!> | とかげ日記

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●ぶつけ合う音のかたまり

石塚真一の同名の漫画を立川譲(たちかわゆずる)監督がアニメ映画化。サックスプレーヤーの頂点を目指す主人公と、彼の熱意に触発されながら努力を続ける仲間が繰り広げる素敵なストーリーと音楽に心の中でスタンディングオベーションを送りたい。立川譲さんはスピッツが主題歌で今年公開のアニメ映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の監督も務めているが、この『BLUE GIANT』の良作ぶりを見るとそちらも期待できそうだ。

僕も昔は下手くそなベーシストだったし、ベースを辞めて以来は音楽ブロガーを長年やっているが、ロック畑なのでジャズには疎い。しかし、丁々発止で音をぶつけ合うジャズならではのダイナミズムに魅力を感じる映画だった。菊地成孔・大谷能生による『東京大学のアルバート・アイラー』(知的スリルあふれる評論の傑作)を十何年か前に読んでジャズに熱くなっていた時が僕にもあったけど、それ以来久しぶりに熱くなれそう。

いい音楽を演奏するか、それとも勝ちに行く演奏(次のステージにステップアップするための演奏)をするか。上手くないメンバーを外すか、それともこのメンバーだからこそやる意味があるのか。(僕もバンドでフロントマンからリストラされたことがある泣)。そういった命題はジャズだけではなくロックや他のジャンルの音楽やカルチャーでもあるだろう。

考え方の違いで衝突したり、壁にぶち当たってそれを乗り越えようともがく主人公達トリオを観て自然と心の中で拍手を送っていた。声優陣の好演が光り、ドラマに人間味を与えている。特に、主人公役の山田裕貴の声質や演技は応援したいと思える純朴さがあって素晴らしい。

ピアノや作曲は上原ひろみが担当。他の楽器もプロが演奏している。どの楽器の演奏も(特にソロ)心をさらけ出し、感情の高鳴りがそのまま音になったようで絶妙だった。ロック畑の映画『BECK』では、肝心のコユキの歌が歌われずにサウンドや映像で歌が表現されていたのが残念だったが、『BLUE GIANT』は同じ轍を踏まない。すべての音楽を実際のプレーヤーが演奏し、さらに動きのある映像が演奏を引き立てている。

ところで、夜空の星は赤い星よりも青い星の方が温度が高いという。そして、青い星は温度が1万度くらいあり、何でも溶かす勢いの熱さだそうだ。そんなエネルギーあふれる青い(BLUE)巨星(GIANT)のような、心を揺さぶられ溶かされるような衝撃を受けた名作だった。


👆音が聴こえてきそうな迫真のイラスト❣️🎶

Score 8.0/10.0

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