うみのての歴史と音楽を名曲8曲で振り返る【初めて/入門者の方もぜひ!】 | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。

みなさんは笹口騒音さんというミュージシャンをご存じでしょうか?

元きのこ帝国の佐藤千亜妃さんやリーガルリリーが笹口さんの「WORDS KILL PEOPLE」をライブでカバーしているなど、ミュージシャンズミュージシャンのイメージもある彼ですが、もちろん一般リスナーにも刺さる曲を書いています。

このブログ(『とかげ日記』)を読んでくださっている方なら、何度か目にしたことがあるでしょう。

笹口さんは現在、4つのバンドのフロントマンを務めています。

🔥太平洋不知火楽団(男性スリーピースロックバンド)
→途中で解散するも再結成。結成時のオリジナルメンバーで「ロック」を追求するザ・ロックバンド

🌊うみのて(<現在>男女混成6人組ロックバンド)
→歌ものとしての完成度、ロック的な鋭さ、未来を先取りするSF的な発想力で魅せるロックバンド

🎺笹口騒音オーケストラ(<現在>男女混成6人組ポップバンド)
→日本のBeirutであり、Arcade Fire。二人のホーン隊とアコーディオンも所属するミニ・オーケストラバンド。

🥇NEX OLYMPIX 2(<現在>笹口騒音+ほしのみお(ドラマー)の2ピースオルタナバンド)
→様々な経緯を経て2人組に。これを聴かずして日本のオルタナロックは語れない。
【🌍2023.5.13.追記。現在はL(ittle)B(ig)P(lanet)Sというバンド名に変更されています。リトルビッグプラネットと読み、リトビとかL.B.P.Sと呼んでくださいとのこと。】

今回の記事では、この4バンドのうち、人気No.1の"うみのて"を取り上げます。
僕(遊道よーよー)のツイッターアカウントで4つのバンドのうちどれが好きかアンケートを取ったところ、うみのてが首位でした。後に行われた笹口騒音さん本人のアンケートでも同様でした。


では、うみのての歴史を8つの名作MVと共に振り返ってみましょう。

【2010年結成 うみのて第一期】
バンド名の由来は「山手線があるのに海手線は無いのかな」というリーダー笹口騒音の思いつき(wikiより)。

当時の第一期メンバーのうち、のちの第二期ではメンバーに加わらなかった以下の二人を紹介します。

Gt.高野京介(別名で高野P介、高野メルドーとも。SuiseiNoboAzのギタリストとしても知られる。ゲームとゲームミュージックをこよなく愛するミュージシャン)
Ba. 早瀬雅之(結成時はベース初心者。硬質で中毒性のあるベース。その後ライブハウス"新宿Motion"の店長をしていたことも)

【2012年 初シングルリリース】
竹内道宏監督(たけうちんぐとして神聖かまってちゃんにも深く関わっている)「新しい戦争を始めよう」に出演&楽曲提供。この作品のサウンドトラックが、ディスクユニオンインディーズチャート一位を記録。12月タワーレコード限定シングル「もはや平和ではない」をリリース。(この項、wikiから引用&追記)


👇①うみのてMV「もはや平和ではない」


無差別殺人かのように世相をザクザク斬るこの曲とMVでプチブレイク。再生回数は現在11万回を超えており、この曲がきっかけで うみのて を知った方も多いのではないでしょうか。僕はタワレコ試聴機でビビっときたのがハマったきっかけです。(当時デビューした うみのて とceroが並んでタワレコメンに取り上げてられていたのが思い出されます。)

【2013年3月 1stフルアルバム「IN RAINBOW TOKYO」をリリース】

鬼才・笹口騒音のソングライティングが冴え渡る一枚。そして、バンドメンバーの想像力がそれを形にする。うみのては虹色の想像力で愛と狂気を描き、新しい戦争を始めた。オルタナティブな音像は、天国のように美しく、地獄のように温かい。

先述の「もはや平和ではない」を始めとして、「SAYONARA BABY BLUE」「WORDS KILL PEOPLE (COTODAMA THE KILLER)」「東京駅」など名曲ぞろいのこのアルバム。音楽ファン御用達のブログ『音楽だいすきクラブ』において、投票企画「ネットの音楽オタクが選んだ2013年の日本のアルバム」の54位をマーク。

👇②うみのてMV「SAYONARA BABY BLUE」


上述したアルバムからは、キャリアの中で一番人気のこの曲を。うみのて第1期の名曲&代表曲。2010年代のインディーズシーンの代表曲の一つといって良いと思う。「さよなら」は美しい日本語とよく言われるが、その言葉をタイトルに冠したこの曲もまた美しい。青い海をバックにして一人たたずむような、抒情的な孤独と切実な光景が脳裏に広がっていく。

👇③うみのてMV「WORDS KILL PEOPLE (COTODAMA THE KILLER)」


今、この曲を聴くと、亡くなった木村花さんのことを思い出す。光のように笑う自由さでもって言葉の暴力のしがらみを根絶したい。

【2013年11月 1stミニアルバム「UNKNOWN FUTURES (& FIREWORKS)」リリース】


上記のミニアルバムからはリード曲のこの曲を。
👇④うみのてMV「UNKNOWN IDIOT」


2ch(匿名掲示板, 現5ch)において、匿名(UNKOWN)で他者を傷つけようとするバカ者(IDIOT)に向けた曲。言葉もサウンドもダーク方向に色彩が豊かだ。辛辣な敵意をここまで腹に落ちるように表現できるのは、笹口騒音とうみのてならでは。

【2015年5月 2nd フルアルバム「21st CENTURY SOUNDTRACK」をリリース】


👇⑤うみのてMV「恋に至る病」


冒頭の「恋に至る病」のギターの音響の連なりに、第1期うみのての最後の叫びがこだまする。現在、うみのては第2期として復活しているが、高野京介と笹口騒音の二人のギタリストが個性をぶつけ合う名演を聴けるのは本作で最後だ。

この2ndフルアルバムには、「UMINOTE LAST TRAIN」「(this is)the END」「たとえば僕が売れなかったら」という、アウトロが叙情的で素晴らしい名曲が3曲もある。完結(≒解散)し、ラストアルバムになるであろうこの作品に込める思いを言葉だけではなく音で伝えようとする意気込みを感じる。

【2015年活動を"完結"】
"ラスト"ライブ、渋谷WWWに観に行ったなぁ。よーよー的2010年代のベストアクトの一つ。


【2019年再始動】
再始動については、笹口さんブログのこの記事に詳しいです。
「太平洋不知火楽団復活、第2期うみのて始動について。」2018.12.20.https://lineblog.me/sasablog/archives/1497377.html

うみのて第二期(2019年〜現在)が始まった! 最初は笹口さん以外はサポートという位置付けだったが、のちの3rdアルバムリリースにともない、正規メンバーとなる。笹口さんは髪型も大胆に変わり、ちょんまげ風に。

<第二期メンバー>

笹口騒音(ボーカル、ギター、ピアノ)【邦楽インディー界隈のダヴィンチ】
村井隆文(ギター)※第二期から参加【弓ギターなど創意工夫のギタリスト】
マイワタナベ(ギター)※第二期から参加【手堅く熱い音を奏でるギタリスト】
あきもと (ベース)※第二期から参加【動くベースがクセになる】
キクイマホ(ドラム)【確かで温かなグルーヴはうみのての体幹】
円庭鈴子(キーボード、コーラス、鉄琴)【僕がうみのてに感じる"光"は彼女の音由来】

【2021年3月 3rdフルアルバム「奇数たちよ!」リリース】


👇⑥うみのてMV「MUTEKIの歌 feat.呂布カルマ」


最新作が最高傑作のバンドは活きが良いのが相場だが、本作も現在進行形でアクチュアルなバンド史上最高傑作だ。ACのCMでも知られ、元よりラップシーンでは有名な呂布カルマをゲストに迎えた一曲目「MUTEKIの歌」はロックのずるさを撃つダークで批評性の高い神曲。二曲目以降は不思議とポップで光沢のある曲が続く。

👇⑦うみのてMV「砂漠です」


SAYONARA BABY BLUE級のド名曲。こんなに副交感神経がゆったりしてリラックスできる曲が他にあるだろうか…。エロ気持ちE傑作です。シティを砂漠に見立てる発想が新鮮なシティポップの名曲がここに爆誕。シティでもポップでもない他のバンドのシティポップと比べると、「砂漠です」には都市的な洗練された感性とポップネスがあり、真性のシティポップと呼ぶのにふさわしい。

【そして現在】
うみのて は現在も旺盛に活動されています!
それでは、最新のMVをご紹介。

👇⑧うみのてMV「テトリ(キッ)ス feat.内田万里」


うみのてと内田さん(ex.ふくろうず)という僕の大好きなアーティスト2者がタッグを組むなんて奇跡と呼ばずになんと呼ぼう。演奏が素晴らしいのはもちろん、古典的なポップス(≠Jpop)じみた元からそこにあったような神メロディに感涙。ゲストの内田万里さんの七変化する表情に胸がトキめく。天才的な発想だけど、説得力があり、エロ(Feel)から戦争反対(Think)へと地平が繋がっていく無二の曲。
<このMVはデュエットですが、サブスクではデュエットVer.も笹口さんだけボーカルVer.も聴けます>

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こうして うみのての歴史をたどると、風刺も舌鋒するどく、サウンドもシリアスなものが多い。だが、笹口さん本人のユーモラスな芸風はコミックリリーフ(深刻な物語の中に、緊張を和らげるために現れる、滑稽な登場人物・場面・掛け合いのこと<wikiより>)としての機能があり、音源でもライブでも楽しく聴ける。

あと、レディオヘッドからの影響を笹口さんはよく語っているが、美しいファルセットやサウンドへのこだわりはもちろん、表現する内容の豊かさや多彩性も影響を受けていると思う。両者ともに音楽だけではなく表現やアートまで射程が広く、ただただリスナーに同調するだけの音楽とは違う。

また、笹口さんの他のバンドでもいえるけど、ポップでするっと聴けるが、Aメロ→Bメロ→サビを繰り返すような典型的J-POPの構成ではない。そこにも、邦楽やロックに対する批評性を感じる。

複雑な僕ら人間の心と社会と未来は、混沌の中でこそ描けるのではないか。うみのて の音楽を聴いているとそう思う。彼らの美しい混沌の音楽は、人類が遺す永久のレコードに刻まれるだろう。

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