とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。少数派のための、あるいは、少数派への優しさを持った多数派のための音楽。

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【2010年代ベスト】
2010年代ベストアルバム(邦楽)30位→21位
2010年代ベストアルバム(邦楽)20位→11位
2010年代ベストアルバム(邦楽)10位→1位

それでは、一緒に音楽の旅へ!


●ハードなギターに活かされる

Weezer(ウィーザー) の通算15作目となる最新スタジオアルバム。ソリッドなギターサウンドが炸裂し、ダイナミックなアレンジの"The End of the Game"で本作は幕を開ける。アルバム全体に渡ってハードロック・メタル的な意匠が貫かれている。

ハードロック&メタルといえば、Weezerのメンバーの若い頃、リヴァース・クオモ(Gt.Vo.)はKISSの大ファンだったらしい。ブライアン・ベル(Gt.)はブラック・サバスの大ファン、パトリック・ウィルソン(Dr.)はヴァン・ヘイレンとラッシュの大ファン、スコット・シュライナー(Ba.)はスレイヤーとメタリカの大ファン。

Van Weezerというアルバム名は、ドラムのパトリックが好きなヴァン・ヘイレンから取っているのだろうか。チープなデザインのジャケットもいかにもハードロックでヴァン・ヘイレンだし。


👆ヴァン・ヘイレンのベスト盤のジャケ

"The End of the Game"では、自身の人気曲"Island in the Sun"にかけて、"I'm on an island with no sun"と歌うリヴァース。アルバム一枚を通して軽快なハードロック曲が続くが、「太陽のない島にいる」というこの歌詞のような重みもちゃんとある。そして、この軽さと重みこそ、僕が音楽に求めるものだ。

YouTubeにアップされている#3"Hero"のオフィシャルMVの概要欄には、"for the stay at home dreamers,the zoom graduators,the sourdough bakers,and the essential workers"(家にいながら夢見るおれたち、Zoomで卒業式をした人々、サワードウでパンを焼く人々、そしてエッセンシャルワーカーのための曲だよ)と書かれていて、熱いメッセージに胸が熱くなる。また、このメッセージが思想の核心にある本作『Van Weezer』一枚を通して、僕はコロナ禍を生きる者として勇気づけられる気がしてくる。エレキギターのダイナミクスが生きる力を運んでくる。

曲ごとに様々な表情を持っている彼らの楽曲。#2"All The Good Ones"は、彼らの人気曲"Beverly Hills"のような開放感のあるギターフレーズを聴かせてくれる。#4"I Need Some of That"はキラーフレーズのサビメロが光るキャッチーなオススメ曲だ。最後の曲#10"Precious Metal Girl"は彼らの曲"Butterfly"のようなアコギ弾き語りの素敵な小品で癒される。

英語のリスニング能力がないため、歌詞の英語は聴き取れないのに、ナイーブな声質のボーカルやキャッチーな歌メロに愛嬌を感じる。「泣き虫ロック」と過去に評された弱気な歌詞("女々しい"という言葉はジェンダー平等の時代にそぐわないので"弱気"と表現しているのだけど、伝わるかな?)や、フロントマンのリバース・クオモのキャラクターも愛嬌を感じるポイントだ。

愛嬌やチャーミングの要素は、僕にとって音楽で大切な要素だ。amazarashiのように終始シリアスな音楽もたまには聴きたくなるけれども、愛嬌のある音楽は僕の日常の生活に溶け込んでいく。

そして、Weezerは愛嬌とシリアスのバランスが素晴らしいと思うのだ。僕の好きな神聖かまってちゃん、うみのて、ビートルズも、愛嬌もシリアスもあるバンドだ。

また、今作"Van Weezer"には愛嬌だけではなく、頼もしさも感じる。コロナ禍の現在において、この頼もしさはリスナーに安心感を与えるだろう。20年代もこの調子で駆け抜けていってほしい。

Score 8.3

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●発想に富んだ演奏、段違いの描写力、若干のミステリアス感

13枚目となる"くるり"のオリジナルアルバム。本作をもってトランペット奏者のファンファンが脱退する。

本作は歌ものとしても、音楽実験ものとしても楽しめる内容となっている。

ツイッター上で、ある相互フォロワーの方が「大衆性がなければポップではない」とツイートしていた。

なるほど、そうなのかもしれない。だが、くるりの今作は大衆に媚びない凛としたポップのあり方を追求したものになっていると思う。

そして、「大衆性がなければポップではない」というならば、「冒険がなければロックではない」ともいえるのではないか。音楽的な冒険があった方がロックとして面白いものになるだろう。そして、今作は音楽的な冒険の満ち満ちたアルバムになっており、刺激的だ。


さて、このアルバムはくるりの3人が天才に扮し(もう既に天才だと思うけど)、様々な愛を歌うアルバムになっています。「天才」と聞いて、読者の皆さんはどのようなことをイメージしますか?

僕は音楽的には、演奏の一音一音が発想に富んでいて知的なことが「天才」だと思う。

今作のインスト曲やインストに近い曲である「大阪万博」(ジャジーでファンクなインスト曲)、「watituti」(ブルージーな土の匂いのする曲)、「less than love」(トランペットの音が芳しく匂い立つインスト曲)の三連発を聴いてみてください。天才的で丁々発止な音楽的やり取りが楽器奏者の間で行われている。


また、くるりは歌詞と併せた描写力の天才でもある。情景を運んでくる岸田繁さんのボーカル、楽曲に落ち着きを与える佐藤征史さんの自然体なベース、そしてファンファンのトランペットは風のように自由だ。

「野球」は「かっとばせ」という応援のコールを音楽的にしたためたもので、自分が球場にいるような臨場感がある。野球界のレジェンド達の名前が次々に歌われ、オールスターな華々しさが楽しい。

「益荒男さん」では奇想天外な和風エスニックの音楽が奏でられる。ユーモラスな方向に振り切れたトリッキーな楽曲だ。

「潮風のアリア」「渚」では、海辺の爽やかな風が吹き抜けていくような軽やかさと、波が永遠に打ち寄せては引いていくことの重たさを感じる。

「ことことことでん」は「ことでん」の愛称で呼ばれる香川県の高松琴平電気鉄道をモチーフにして作った歌だ。素敵で可愛らしい電車の光景が見えてくる。フィーチャリングにはHomecomingsよりボーカルの畳野彩加さんが参加し、岸田繁さんと寄り添いあうような優しい歌声のハーモニーを聴かせてくれる。この曲の岸田さんのボーカルは本当に優しくて、くるり史上でも無二だと思えるくらいだ。


そして、最後に「天才」という言葉に、僕は若干のミステリアス感を覚える。天才という、常人の理解が及ばない域にいることに、俗世から離れているような神秘性を感じるからだ。

「I Love You」「ナイロン」は抑制の効いたミステリアスな楽曲だ。モーツァルトの音楽のように、聴いているだけで頭が良くなる(天才になる)と錯覚しそうになる、知性に富んだ楽曲だ。これこそ、天才の才能の発露。ああ、自分はこういう風な曲も気持ち良いのだなと、見知らぬドアを開けたような新鮮な気付きがある。


しかし、天才であることで人を寄せ付けないという訳ではない。ラストの曲「ぷしゅ」では親しみやすさを感じる日英バイリンガルソングを聴かせてくれる。この曲では、枝豆や日々に飲む冷えたビールのことを描写するなど、日常に対する岸田さんの愛と愛着を感じさせられる。(「ぷしゅ」という曲名は、缶ビールの栓を開けた時の音ではないだろうか。)

僕には、今作が国民的なヒットアルバムになるとは思えないが、聴くことで音楽的に啓発されるという点では、随一のアルバムだと思う。気になった方はぜひ聴いてみてくださいね!

Score 8.2/10.0

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なぜ、評論家やブロガーには男性の方が多いのだろう? 男性の方がオタク気質だからかな。ジェンダーレスの時代といえど、持って生まれた気質は変わらない気がするね。粉川しの、岡村詩野、有泉智子の御三方は僕も応援する女性の音楽評論家です。

以上のツイートをしたところ、「男性が目立っているだけ」というご指摘をフォロワーからいただいた。

確かにそうなのかもしれない。しかし、性差による気質の違いは確実にあるというのが僕の立場だ。

産業医の先生に面白い話を聞いた。家庭内での力関係は結婚当初は夫優位だが、時間が経つにつれて妻優位になる傾向がある。これは、経年による夫の男性ホルモン低下と、妻の女性ホルモン低下が関係している。男性ホルモンが多いと攻撃性を増すし、女性ホルモンが多いと穏やかな性格になるのだ。

体内の男性ホルモンと女性ホルモンの比率は、その人のセクシャリティーにも密接に結びついているのではないかと僕は思う。その振れ幅で個々人のジェンダーのグラデーションが出来上がっているのではないか。

僕はジェンダーレス社会は支持しない。性差は科学的にも認められており、性差による違いを無くしていこうとするのは、動物的本能に反する行いだと思う。ジェンダーレスではなく、ジェンダーフリー社会を僕は支持する。どんなジェンダーの性自認や性的志向も認めるべきという立場だ。

僕の性自認は男でも女でもないXジェンダーだ。そして、恋愛志向は女性が好きだ。Xジェンダーやノンバイナリーという概念は性差の文化があって初めて成り立つ。性差を無いものとするジェンダーレス社会では、それらの概念は成り立たない。

「人種のるつぼ」や「人種のサラダボウル」という言葉がある。個々人のジェンダーを統一しようとして「ジェンダーのるつぼ」社会にするよりも、個々人がその人のジェンダーのままで輝ける「ジェンダーのサラダボウル」社会になってほしい。

僕は自分がXジェンダーであることにも、統合失調症であることにも、アイデンティティを持っている。"普通"の人と違うからこそ見えてくる視点にアイデンティティを感じているのだ。"普通"と違うことで悩んでいる人達が少しでも減るように祈っています。

今回のとかげ日記では、ジェンダーフリーを推し進めるような歌をご紹介します。


①Blur -Girls And Boys



ジェンダーフリー(≠ジェンダーレス)な歌詞【下記拾い画像参照】も時代に先駆けているブラーの曲。

オルタナ期以降のブラーを聴いてポップじゃないと思って聴くのを止めた方には、ブリットポップ期の彼らを聴いてほしい。頭がむず痒くなりそうなくらいポップ!



②カルチャークラブ - Karma Chameleon (カーマは気まぐれ)



ゲイであり、言わずと知れたクィーンのボーカルであるフレディ・マーキュリー。バイセクシャルであり、ブリットポップ先駆者であるスウェードのフロントマンであるブレット・アンダーソン。トランスジェンダーである女性歌手アノーニ。そして、モダンで切実なポップスを歌うゲイのサム・スミスなど、LGBT当事者のアーティストは書ききれないくらい数多くいる。

今回の記事では、カルチャークラブを紹介したい。日本のヴィジュアル系にも影響を与えたボーカルのボーイ・ジョージ(ゲイ)の妖艶なビジュアル。そして、飛びっきりキャッチーな歌。既に聴いたことがある方が多勢な気もするが、未聴の方はぜひ!

③中村中 - 友達の詩



美川憲一はどうなのだろうとか、昭和歌謡の歴史を知らないので疑問もあるが、この曲は日本のMTFトランスジェンダー【♂→♀】当事者で唯一のスマッシュヒット曲といえるのではないか。(ちなみに、FTMトランスジェンダー【♀→♂】ではKAB.がいる。)

カミングアウトする前の中村中をCDショップで聴いたことがある。その時は椎名林檎のフォロワーといった感じの売り出し方をしていたように記憶しています。

「友達の詩」は曲も良いけど、歌詞がとっても切ないのですよ。

手を繋ぐくらいでいい
並んで歩くくらいでいい
それすら危ういから
大切な人は友達くらいでいい
友達くらいが丁度 いい


④神聖かまってちゃん - ズッ友



神聖かまってちゃんでは「自分らしく」にするか、この曲にするのか迷ったのだけど、この曲で。(男らしくでも女らしくでもなく、自分らしくと歌う「自分らしく」はLGBTQソングの名曲なので、機会があれば聴いてみてください。)

「ズッ友」のMV、素敵で素晴らしいので是非見てください。これほどジェンダーフリーを切実に訴えるMVは他に無いと思うくらい、強くしなやかなメッセージが込められています。LGBTでラベリングすることができないくらい、愛は自由なのです。

以上、いかがでしたか?
気になる曲があれば、聴いてみてくださいね!

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