とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
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【2010年代ベスト】
2010年代ベストアルバム(邦楽)30位→21位
2010年代ベストアルバム(邦楽)20位→11位
2010年代ベストアルバム(邦楽)10位→1位

それでは、一緒に音楽の旅へ!


●若手ではイチ推し

23才にして人の心の機微や宇宙の核心の真実をすべて知ってしまっているような早熟のシンガーソングライター"崎山蒼志"のメジャー4thアルバム『good life, good people』のレビュー。

【収録曲】
01 悪魔 
02 人生ゲーム album remix (prod. 原口沙輔)
03 ending routine feat. 原口沙輔
04 ダイアリー
05 eden feat. かもめ児童合唱団
06 ghost feat. 諭吉佳作/men
07 eden inter
08 SOS
09 買ったばかりのものは
10 泡沫
11 人生ゲーム


👆アルバム全曲クロスフェード

僕が彼の音楽を知ることになったのは、2018年のこと。彼の弾き語り動画がバズっていて聴いてみたら、あふれ出る魅力と実力に驚いた。大森靖子や笹口騒音のような、むき出しの魂を歌う弾き語リスト。空間を支配する力が大森靖子さんと匹敵するレベルだったし、笹口騒音さん(うみのてetc)とも並ぶリリカルなオリジナリティがあった。

そのあともちょくちょく彼の活動を追っていて、いずれするとは思っていたけどメジャーデビューは嬉しかった。そして、彼の音楽の名刺代わりである「燈」('23←通常は"ともしび"と読む漢字だが、この曲の場合は"あかり"と読む)と「嘘じゃない」('21)は掛け値なしの名曲。両者共にアニメタイアップだが、それが彼の大衆性を引き出した。どんな人の心にも届く切実さは間口が広いし、それゆえにたくさんの人に刺さる求心力がある。メジャーのフィールドでも十二分に戦えると思った。


👆「嘘じゃない」

個人的に好きなのは「In Your Eyes」('23)という曲だ。穏やかなダウナーの直球が心地よい。間口は狭く、人を選ぶ曲だ。あるいは、曲が人を選んでいるのか。どんな人でもみんな、何かしら選ばれている曲がある。僕もこの曲に選ばれて光栄だ。

彼の音楽を耳をすまして聴いてみる。ファルセットが孕(はら)んでいる素敵な謎を、語尾がカスれる歌声に歌唱への真摯さを、それらの尊さを噛み締めているだけで高揚してくる。

日本のR&B界で宇多田ヒカルの後に藤井風が出てきたように、日本のインディーロック界でくるりの後に崎山蒼志が出てきたといったら言い過ぎだろうか。歌ものでありつつ、幅広い射程の音楽性という点ではくるりに次ぐ存在だと思う。

インディー志向の凡百のアーティストはダイナミズムを忘れがちだ。また、メジャー志向の凡百のアーティストは細部への美意識を忘れがちだ。その中でも崎山さんの音楽はどちらも忘れていない。先ほど述べたように、くるりと共通する魅力を感じる。

神聖かまってちゃんの"の子"が歌ったように、「最近の曲なんかもうクソみたいな曲だらけさ!」。今の音楽シーン(いつの時代でも?)は、死んだ音楽、死んだ表現の墓場に思える。その中にあって崎山さんの音楽はカタルシス半端ない王道も鳴らしつつ、トんじゃうくらいヤバいブツ的な実験的冒険曲を鳴らしている。面白いリズムアプローチを取り入れるなど、音楽を創作する姿勢は貪欲だ。

二者のどちらが価値が高いかというものではないが、スポーツ的(身体性)な美しさと精神性の美しさの両極の発露について言えば、精神性の美しさに比重が大きいだろう。そのあたりも、僕が彼の音楽を好きな理由だ。簡単には言い表せない思想が音楽として鳴っている。


さて、本作『good life, good people』の収録曲を見て(聴いて)いこう。

#1「悪魔」。冒頭を聴いて素朴なフォークだと思いきや(背後のチカチカいうSEが不穏だが)、曲名は「悪魔」。自分の心の中にいる悪魔を認めることは、自分の心をありのままに認めることだ。その認めぶりが崎山さんらしく優しくて泣きそうになる。本作のジャケットのイラストも悪魔を可愛らしく書いたものだと思う。

#2「人生ゲーム album remix (prod. 原口沙輔)」
リード曲で先行して聴けた「人生ゲーム」を大胆にリミックス。(原曲はアルバム最後に収録されている。)凝ったブレイクビーツ的な、レベルが高い解体と再構成がなされており、かなり匠(巧み)で玄人な作り。

#3「ending routine feat. 原口沙輔」


若き22才の俊英"原口沙輔"によるビートがビビッド。ブレイクビーツ風な数学的グルーヴが底流にある良曲だ。(崎山と原口の邂逅。天才は天才を引き寄せるのだろうか。)ルーティンから逃げ出すために、彼(ら)には音楽と芸術がある。

‪歌詞はこの2人が大好きなYMOの「Perspective」からインスピレーションを得ているという。歌詞だけではなく、音楽性も影響を感じ取れる。ヒット曲に象徴されるきらびやかな側面のYMOというより、メンバーである3人の天才が思い思いに演奏したディープでドープな側面のYMOの音楽性を引き継いでいると思う。‬

#4「ダイアリー」


カフェミュージックのような落ち着きで始まったり、途中でジャングルっぽい高速ビートになったり、若干アッパーで清新なサビの盛り上がりだったり、展開もディテールも音楽性的にとても凝っている。ニセ崎山さんがたくさんでてくるMVも必見!

#5「eden feat. かもめ児童合唱団」
「かもめ児童合唱団」と聞いて、はてどこかで聞き覚えのある名前だなと思っていたら、坂本慎太郎(ex.ゆらゆら帝国)とのコラボシングル「あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団」で知ったのだった。他にもZAZEN BOYSと関わりがあったり、何かと邦楽シーンと関わりのある児童合唱団のようだ。

なお、この曲では崎山さんは歌っていない。手練れの児童合唱団の歌声が無垢に響き、崎山さんの音楽に対する真摯な姿勢と共鳴する良曲となっている。

#6「ghost feat. 諭吉佳作/men」
2019年に彼が発表した「むげん・ (with 諭吉佳作/men)」以来となる諭吉佳作/menとのタッグ曲。諭吉佳作/menというアーティスト名からは性別が分からないが、22歳の女性のシンガーソングライターで中学の頃から崎山と交友関係があるという。先ほども同じことを書いたが、天才は天才を引き寄せる梁山泊的な何かだろうか。少年が漫画家になるまでとなった後を描いた名作漫画『バクマン。』に迫るクリエイティブの邂逅に心が熱くなる。

箸休めにするほどヤワな表現ではない29秒の小品の#7「eden inter」を挟んで次の曲へ。不安じみた実験的な曲風にムンクの叫びを観たときと同じ感覚を覚える。

👆「よーよーの叫び」

#8「SOS」
テレビをつければ、またはXを開けば、戦争の話題にあふれている最近。その世相を捉えた反戦歌のように僕は聴こえる。戦争のむごさを直接に描写するのではなく、緊張関係が雪解けになったときの平和の柔らかい魅力を描くことで戦争に抗おうとする、ささやかでありつつ渾身の曲だ。光よ、我が地に、彼の地に。

#9「買ったばかりのものは」
内省の曲。アコギによる室内楽のような味わいで痛切。大昔、第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスは、苦しい状況においても「善き人」として生きる精神的実践として『自省録』を書いたがそれを思い起こした。

#10「泡沫」


この歌には平穏の日々の尊さを感じるのだ。平穏だけど、静かにドラマチック。36.5℃の体温を感じ取れる。体温があるということは、この曲には心臓(ハート)があるのだ。伊藤ハルトシさんによる落ち着いて美しいチェロが、尊さの感覚をマシマシにしている。よーよーオススメ曲。

#11「人生ゲーム」


#2でアレンジされた原曲。Mega Shinnosuke、紫 今と組んで作られた、最先端のグッドミュージック。洗練の一方でリアリティの生々しさの一端を感じられる。冒頭のアコギの切れ味よ! アコギがリズム楽器でもあることを再確認させる。曲名由来と思われる背後でピコピコいっているチップチューン的要素も自然に曲に溶け込んで素晴らしい。


以上、全曲を見て(聴いて)きたが、アルバムタイトルであるgood lifeでgood peopleな「良き(善き)生活、良き(善き)人々」のバイブスだけではなく、それとは相容れない、欲望に素直で邪悪な悪魔も受け入れようとする懐の深い全11曲。この屈託が表現に深みを与えている。

ただ、本音を言えば、「燈」や「嘘じゃない」級にパンチが効いていてキャッチーな間口が広い曲をもう1, 2曲欲しかった。何回か繰り返し聴いたが、一番僕の心に響くのは#10「泡沫」かな。

でも、彼の個性は本物だと思う。順調にキャリアを積んでいってほしい。蒼い志の向かうまま、音楽を自由に紡いでいてくれたら嬉しい。そして、「In Your Eyes」のような、ある一人(この場合は僕)に特別に刺さり、心の対話が始まるような無二の曲をこれからも作ってほしい。

Score 8.8/10.0

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●産まれたての清新な声と音楽が聴こえる

説明はもはや不要、人気四人組ベテランロックバンド「Mr.Children(略称:ミスチル)」の新譜のレビュー。前作『miss you』('23)に引き続き、セルフプロデュース作品だ。

【収録内容】
01. キングスネークの憂鬱

02. Again (TBS系 日曜劇場「リブート」主題歌)

03. Saturday

04. ウスバカゲロウ

05. Glastonbury

06. 禁断の実

07. 平熱

08. 空也上人

09. Stupid hero

10. Nowhere Man ~喝采が聞こえる

11. 産声

12. Umbrella

13. 家族

さて、本作のレビューをする前に、直近3作を手短かにレビューしていこう。僕の問題意識を手っ取り早く伝えるにはこれがよい。

🎵ミスチル『重力と呼吸』('18)

熟達して精緻でありつつ、瑞々しい演奏。重力を受け止めつつ、生々しい自然体の呼吸から生まれる佳曲ばかり。一曲一曲大切に作られている印象から、"量産"という言葉は似つかわしくないが、良い歌を安定してたくさん作っている爛熟期のミスチル。


🎵ミスチル『SOUND TRACKS』('20)

ソングライティングも音も完成度が高く、何回聴いても消費されない力強さをもったアルバム。ロンドンとLAでレコーディングを行なっている意欲作だけあって、音のテクスチャーも響きも上質な作りだ。表現的には前作『重力と呼吸』よりも幅が広いように感じる。この暗さは僕の心の形に上手い具合にフィットする。

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🎵ミスチル『miss you』('23)

近作の中では異色作とされる本作。ジャケに一人でたたずむ桜井和寿さんの葛藤とその熱量に過不足なく寄り添う楽器隊の演奏が、生々しくダークな響きをもって伝わってくる。エゴを過激にえぐり出した#6「アート=神の見えざる手」等、表現の振り幅も広い。

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『深海』に収録されていてもおかしくない内向的な楽曲が並ぶ前作『miss you』。本作『産声』はそこからどのように舵を切ったのだろうか、そこか僕の最大の関心ごとだった。

どんなディスコグラフィーの物語をたどるのか。尖っていくのか、ポップな歌ものでいくのか、外向的で行くのか、内向的に行くのか、様式美で行くのか、混沌としているのか、あるいはこれらの要素を全てはらむハイブリッドな音楽性で行くのか。

アルバムタイトルのリード曲#11「産声」を聴いたときに自然に笑顔になった。ホーンも含めて底抜けに明るく開放的サウンド。過去の名曲「蘇生」のような、願いをもった前向きな世界観に胸がすく思いがした。



ミュージシャンはよく前作への反動という動機を持って新譜を製作している。本アルバム『産声』も、前作『miss you』の『深海』チックな暗い海底の胎内から、外の世界に飛び出したときの産声のような響きをもって迫ってくる。

本アルバム『産声』について、すでに紹介した#11「産声」を除いて一曲目から見て(聴いて)いこう。

#1「キングスネークの憂鬱」。サビ前までは彼らの過去の名曲「フェイク」を彷彿とさせる露悪的なサウンドと歌詞と歌いぶり。このバースの怪しい雰囲気と、それを振り払うようなサビの清新な高揚感が、サウナと冷水浴のように交互にきて気持ち良い僕好みの曲だ。

#2「Again」を聴いたとき、その曲名もあって中期以降の彼らの代表曲である「HANABI」 を思い起こした。「HANABI」よりも陰影と屈託があるが、「HANABI」の「もう一回、もう一回」という願いと意思の力が、「Again」にもみなぎっていた(やるせなさと共に)。



#3「Saturday」では初期のアルバムで聴けたオシャレなメロディセンスとサウンドを感じ取れた。でも、オシャレにとどまらない実存も力強く鳴っていて今のミスチルになっている。



#4「ウスバカゲロウ」。"五人目のビートルズ"にならっていえば、ピアノは五人目のミスチルとも呼ばれる小林武史によるもの。このアルバムではプロデューサーではなくプレーヤーに専念している彼によるピアノが麗しい。

#5「Glastonbury」。曲名はイギリスの大型音楽フェスのグラストンベリー・フェスティバルから取られている。冒頭に出てくる"クリス"とは2002年のこのフェスのヘッドライナーだったColdplayのフロントマンのクリス・マーティンだろう。クリスへの憧れを歌っているが、桜井さんもクリスに負けないくらい程よくカリスマ的だと思う。

#6「禁断の実」のサックスは桜井和寿さんが吹いているという。繊細なニュアンスが豊かに表現されていて、プロのサックスプレーヤー顔負けの演奏だ。

曲名の割にはスケールが大きく、大人のバラードの#7「平熱」。平熱でもエモーショナルな音楽性にこのバンドならではの熱さをそこに見る。

#8「空也上人」はミスチル的な本音吐露の歌唱が考えさせられる。曲終わりで「ジョン・レノンでも聴こうか」と歌うのが、楽観的に理想へ向かっていく感じがして好き。

#9「Stupid hero」。ブラスロックの鷹揚とした姿勢と気ままなアレンジにヒロイックな自由を感じ取れる一曲。

#10「Nowhere Man ~喝采が聞こえる」。そこにスポッとハマるようなメロディの美しさは本作随一ではないか。メロディが喝采を呼んでくる。

#12「Umbrella」。曲名のとおり、雨が降っているような湿り気のあるメロディ。雨が上がった後を見すえる主人公の視線が頼もしい。

掉尾を飾る #13「家族」。曲調やアコースティックなサウンドがフォークロックを思わせる。このフォークの情緒は、エンディングを飾るのにぴったり。

以上、完成度の高い13曲。ただ、近作でいえば『SOUND TRACKS』のような伸びやかで切実なメロディが聴こえない。『産声』収録曲のメロディメイクは天性の閃きというよりも、力技で作られているように思えるのだ。そう思うのは僕だけだろうか。
(ミスチルファンの方には、よーよーよりも自分の感性を信頼してほしい。)

しかし、「熱」はある。

本作最後の曲「家族」の歌詞。

情熱はその行き場をなくし
だけど尚、沸々と僕を駆り立てる


この歌詞に安心する。情熱がある限り、彼らは曲を作ることをやめないだろう。惓(う)んでも膿(う)んでもいない、産まれたての音楽がどこまでもいつまでも鳴らされていく予感がする。天から降りたメロディが彼らの航海の旅路を照らし、あるべき行き場に導いてくれることを祈っている。

Score 8.0/10.0

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🐼おまけ🐼


ダニーバグ「雨の日の少年」
👆ミスチル(というよりもピロウズ?)の王道ぶりと匹敵する王道ぶり。


うみのて「砂漠です」
👆実はミスチルファンの笹口騒音さん。彼がフロントマンを務めるバンド「うみのて」の曲。曲中にミスチル「ニシエヒガシエ」へのオマージュが!?

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●魔法に魅せられて

2014年メジャーデビューのシンガーソングライター"吉澤嘉代子"の6枚目のニューアルバム『幽霊家族』のレビュー。

収録内容
【CD】

01. Into the dream

02. あの家はもうない

03. おとうと

04. わたしの犬

05. ピーマン

06. 幽霊

07. うさぎのひかり

08. ほおづき

09. たそかれ

10. 時の子

11. メモリー

12. Out of the dream

吉澤嘉代子さんのお名前はおそらく、Xで相互フォローしているふじもとさんという方の文章で初めて知ったのだと思う。

今回、吉澤さんが新譜を出すと聞いて興味を持ち、彼女の過去の代表曲を聴いてみた。そしたらね、すごく良かったのです、はいー。(©️やす子)

まず、「月曜日戦争」('17)から。


月と戦いというと、「セーラームーン」を思い出す。吉澤さんの代表曲であり、現代の魔女(セーラームーン)が奏でる魔法の歌。どことなくレトロな空気が漂っている。流れるようにキャッチーだが、「うた」としての一本の太く強い軸がある。

次に、「残ってる」('17)。


性愛のあり方が素敵に描写されている。サザン桑田佳祐もラジオでほめていたのは、彼がこの曲の乙女なエロスに反応しただけではなく、歌謡曲的なメロディの重みを、ポップなバラードの軽みの中で鳴らしているところに共感したからではないか。

そうやって見ていくと、ふじもとさんがイチオシのサザンと吉澤嘉代子に共通するところが見えてくる。

そして、「泣き虫ジュゴン」('13)


心を丸ごと持っていかれるような痛切なバラード。くるり「ハローグッバイ」のように着水して音楽の深くまで潜水していくようなイントロ。深海(≒濃密な音楽)を泳ぐジュゴンが目の前に見えるようなこのイメージの喚起力は凄まじい。

上記の3曲のような超名曲もあるホームランヒッターだが、その他の曲も良い歌だらけで、アベレージヒッターとしても充分。
(アベレージヒッターとは、野球でコンスタントに平均以上の高い打率を記録する打者(巧打者)のこと by Google調べ。)

小文字のインディー的な繊細さとサウンドの実験性(というよりは遊び心?)と大文字のポップ的な大胆さと明るさ、彼女の音楽が孕(はら)むどの音楽性も大好物だ。

彼女の曲には、シリアスさよりは"やわらかさ"を感じる。曲名にも、やわらかな平仮名が多用されているし、松本隆から"カネコアヤノ" まで、やわらかな日本語歌詞のロック/ポップスの系譜を感じるのだ。

『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』のようなジブリ映画に通じる、ほんのりとして可愛らしい霊性が漂い、自在に歌と音楽を操る姿はまるで愛らしい魔法使いだ。声の表情やたたずまいなど、いちいちキュート。笹口騒音オーケストラの西山小雨さんのような可憐な可愛らしさに満ちていて、可燃な僕は恋に燃えてしまう。

👆西山小雨さん。(問題がありましたら削除しますので、関係者の方はご連絡をお願いします。)

ポップの中に情感がこもっている聴きごたえは、あいみょんと共振するものを感じる。温かいハグのように確かに温度がある。「うた」と「音楽」がさりげなくエモく響く音楽性は、ふくろうずにも通じるはずだ。


さて、本作『幽霊家族』について見て(聴いて)いこう。

まずアルバムタイトル。ありふれているが温度のある言葉である「家族」に「幽霊」という言葉を組み合わせるところが、少し不思議な個性の吉澤さんらしい。

一曲目がプロローグ的な#1 「Into the dream」で、最後の曲がエピローグ的な#12「Out of the dream」。これはつまり、このアルバムに収録されている曲の舞台は夢の中ということ。魔法的な夢の中で心地よく過ごせます。アルバムがこのようにコンセプチュアルであるところも好きだ。

#2「あの家はもうない」。記憶をたどり、レトロスペクティブなエモーションあふれる、よーよーオススメ曲。吉澤さんのフィクションなのかノンフィクションなのか、どちらでも良いのだが、歌詞も情感もディテールをもって迫ってくる。そして、僕らリスナーは眠りの世界(フィクションとノンフィクションの交差点)へとすべり落ちていく。(©️スピッツ)



#3「おとうと」。ディストーション気味のベースの荒ぶるアタック音がモラトリアムの焦燥を呼び込み、力強く励ますサビの歌唱がおおらかに胸を打つ。

#4「わたしの犬」。クラシカルなピアノがユーモラスで親しみやすい小品の絶品。本作『幽霊家族』は「家族」と「記憶」をテーマとしているが、ペットも家族だよね。(僕も愛犬が旅立ったときは悲しくて寂しかった。)

#5「ピーマン」。ピーマンといえば、子供の嫌いな食べ物の代表格的な存在。ピーマンを含めた(ボスはグリーンピース)嫌いな食べ物を羅列して歌う終わり方が、土臭い生活の皮膚感覚を面白おかしく刺激する、一息つける曲。

#6「幽霊」では、エフェクトを効かせたギターが納涼的に涼やかでまぶしい。子どもの頃に友達だったのは、実は自分にしか見えない「幽霊」だった。ちょい怖な話だけど、幽霊への温かな優しさに胸キュンする。

#7「うさぎのひかり」は、中盤以降にホーンセクションの荘厳さによってスケールが大きくなっていくのが特徴的だ。それと共に開けていくサウンドスケープが絶景の美しさで堪能できる。よーよーイチオシのアーティスト"ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)"も編曲に関わっているだけあって、音楽的に非常に洗練されている。この曲には、直に触れられるような肉体性がある。それと同時に、知性を含めた精神性も感じ取れる。宇宙の裏側で飛び跳ねるうさぎのまばゆさ(≒ひかり)のように人知れず、しかし命が脈づく確かさで音楽が鳴らされている。



#8「ほおづき」は安っぽい野暮な打ち込みとは違う、人の血が通っていてアーティスティックな打ち込みが鳴っている。



#9「たそかれ」の勇壮なストリングスを聴いているだけで気持ちが1センチ前向きなる。

#10「時の子」は、切実なピアノバラード。柔らかい手つきでリスナーを刺してくる、歌にもピアノにも説得力がある。

#11「メモリー」。メロディも音楽の作り込みも完成度が高い。前景でむせびなくホーンセクションも、背景の分厚いストリングスも音楽的で感激する大団円。エピローグの#12「Out of the dream」へ続いていく。

本作はまさに夢の中で出会うアソート。切実だったり、ユーモラスだったり、シュールだったり、ちょい怖だったり、勇壮だったり、いろいろなチョコレートの詰め合わせ的アルバム。

個人的にサイエンス・フィクションのバンドといえば、"うみのて"だが、本作を聴了した後、ファンタジーなシンガーソングライターといえば"吉澤嘉代子"になった。もっと彼女のぬくもった魔法に触れていたい。歌声の残り香とメロディの湿り気の魔力が、知らない場所へ自分を連れていく。

Score 9.4/ 10.0

🐼オマケ🐼


笹口騒音オーケストラ「TOMMOROWLAND」

👆文中に出てきた西山小雨さんがアコーディオンをつとめる笹口騒音オーケストラの曲。2017年のライブ映像だけど、僕がすごく好きな動画。素敵が詰まっている。


ダニーバグ「退屈ハイウェイ」

👆こんなに良い曲を書くのに売れないのが信じられない。ザ・ロックンロールキラーチューン!

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