頭痛 あれこれ -10ページ目

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

イントロダクシヨン・・はじめに


 先日、外来に興味ある方が受診されました。
 この方は20歳過ぎの方で、高校卒業された頃からうつ病として、約4年間某心療内科で加療中でしたが、本年になって3回激しい頭痛発作があり、いずれも2,3日間で軽快されていたそうです。初めて起きた本年の3月には、余りの激しさのため救急で総合病院に受診された程でした。この時には頭部CT検査も受け何も異常なしと言われ、原因は不明と言われたということでした。
 今回も、当院受診前の2日前から同様の激しい頭痛が起きたために当医院を受診されました。
 ご家族のお母さんとお婆さんが片頭痛を持っておられるとのことでした。


 このように片頭痛とうつ病、うつ状態、パニック障害が合併することはよく経験されます。多くの場合は、片頭痛が先に発症し、発症後しばらく、多くの場合、発症5年以上経過し、アロデイニアの症状が出現する頃から、うつ状態、パニック障害を伴ってくることが多いように思っておりました。
 ところが、この方はうつ病が先に発症し、その後から片頭痛が出現してきている点が、これまでの症例とは異なる点でした。


 この点に関しては、頭痛の専門家は、以下のように考えておられます。


 脳の検査で異常がないと、脳に異常がないとされるだけでなく、精神的なものと考えられやすく、実際に精神科や心療内科を受診して、パニック障害、うつ病、適応障害などの診断を受け、その治療を受けることもあります。片頭痛の診断と治療にたどり着くのに遠回りする人が少なくないのが現状です。


(前略)最後の第三部は、慢性疲労症候群と診断された話です。
 第一部の病院に見放され、第二部の病院を逃げ出したあとも、患者さんはずっと頭痛と精神的な落ち込みや疲労感に悩んでいました。あるとき、あまりに疲労感がひどいので隣の県の大学病院の内科に行ってみました。このときは頭痛期ではなく、予兆期または回復期だったと思われます。
 その病院で、疲労感、抑うつ感、頭痛の痛みなど今までの経過を全て話したところ、「慢性疲労症候群」と診断され漢方薬を処方されました。頭痛もストレスや疲労からきている、と判断されたようです。
 1年ほどその病院で薬をもらっていましたが、疲労感は抜けず、また頭痛も相変わらずひどいため、はじめて当医院へ来院されました。


 患者さんの話を聞いた私の診断は、典型的な片頭痛です。抑うつ感や疲労感なども片頭痛に伴う予兆期、回復期の症状だと考えました。しかし患者さんは大学病院の診断を大切にし、慢性疲労症候群の薬を飲みます、というので、その漢方薬を続けてもらいながら、片頭痛の治療を行なうことにしました。
 この患者さんの場合、頭痛が起きる頻度が高かったので、鼻から吸入する薬を使ったり、時には救急で飛び込んできて皮下注射を打ったりして痛みをとり、また薬の種類や量を変えたりした結果、最近では頭痛はほとんど起きなくなり、頓服も必要ないほどになりました。


 患者さんの最近の話では、頭痛が消えると同時に、ずっと続いていた慢性疲労症候群の症状もすっかりなくなったので、大学病院に行くのはやめました、ということでした。
  このケースの場合、患者さんは頭痛と慢性疲労症候群という別々の2つの病気、と思っていたようですが、これはあくまでも片頭痛の経過の流れだと思われます。片頭痛がなくなれば、それに付随する予兆期、回復期の疲労感、抑うつなどの症状も消えるのは当然と言えます。
 このように片頭痛は痛み以外にもいろいろな症状があり、また一連の経過があります。
 私は片頭痛というものは、1つの大きな交響曲やピアノ協奏曲のようなものだと考えています。


 頭痛の専門家は口を揃えて、片頭痛の治療は、発作のメカニズムを治療することが可能になりましたと申されます。セロトニンのレセプターを活性化するトリプタン系の薬剤が使われます。病気としての片頭痛のメカニズムが徐々に解明され、また病気の火元を治療することが可能となってきたのです。


 そして、専門家は片頭痛発作のメカニズムを以下のように説明してきました。


 トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用しているためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。ストレスなど何らかの理由でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
 血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
 さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
 この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
 このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
 さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
 このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
  基本的に、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップ(補填)しています。


 こういったことから、片頭痛の”適切な治療”とはトリプタン製剤を服用することであるとされています。このため、このように適切に治療しておりさえすれば、片頭痛が治ると同時にうつ病、うつ状態、パニック障害までが改善できるとされています。
 ところが、頭痛の専門家がされる片頭痛の”適切な治療”とはトリプタン製剤を服用することだけです。このようなことで、うつ病、うつ状態、パニック障害が治るのでしょうか。片頭痛発作時に、このような”雀の涙”ほどの量のトリプタン製剤を服用したからといって、脳内セロトニンの低下は十分に補填できるものなのでしょうか?


 片頭痛はミトコンドリアの機能が低下することによって起きる頭痛です。ミトコンドリアの機能が低下すれば、当然、セロトニン神経系の機能の低下が起きてきます。
 ここに生活習慣の問題点が加わることによって、脳内セロトニンが低下してきます。
 ということは、脳内セロトニンが低下している状態は、片頭痛患者さんには潜在的に存在し、片頭痛発作時に極端に低下してきて、発作に繋がってくることになります。
 このような潜在的に存在する脳内セロトニンの低下状態を、片頭痛発作時に、このような雀の涙ほどの量のトリプタン製剤を服用したからといって、脳内セロトニンの低下は十分に補填できるはずはないことは、馬鹿でも理解されるはずです。


 このような潜在的に存在する脳内セロトニンの低下状態を改善させるためには、「脳内セロトニンを増やす工夫」・・「セロトニン生活」を根気強く行っていく必要があり最低でも、3カ月は必要とされます。
 ところが、頭痛の専門家は、こういった「脳内セロトニンを増やす工夫」を勧めることは、これまで一切ありませんでした。
 ということは、専門家が薦められているように、片頭痛発作時に毎回、トリプタン製剤を服用することによって、うつ病、うつ状態、パニック障害が改善された方々はおられるのでしょうか? 


 前回、精神科・心療内科の専門家の方々ですら、最近、抗うつ薬がいろいろ開発されてきたにも関わらず、うつ病の治療の難しさは変わりはなく、風邪を治すようには簡単ではなく、長期間に渡る根気強い治療の積み重ねが必要であり、簡単ではないとされていることを、私達は、決して忘れてはなりません。


 そして、心療内科および精神科の先生方は、うつ病、うつ状態と片頭痛の関係は以下のように述べておられます。

 
 うつ病の症状のひとつに「痛み」があります。約6割のうつ病患者さんが何らかの痛みを併発しており、痛みはうつ病に多い症状なのです。そして痛みの中で最も多いのが「頭痛」です。
 内科や整形外科で調べても原因が分からない頭痛は、うつ病などの精神疾患が原因の可能性があります。

 とくに仮面うつ病の際の身体症状として片頭痛があるとされています。
 こういったことから、こうした先生方は、うつ病・うつ状態・パニック障害の治療を優先して行い、これらを改善させることによって、頭痛も治すべきであるとされます。こうした治療のなかでは、抗うつ薬が中心的な役割を果たしているとされます。
 ということは、頭痛治療(頭痛の専門家のいうトリプタン製剤の服用)をしなくても、抗うつ薬を服用さえすれば、すべてが改善されるとされています。


 このように、片頭痛に伴ったうつ病、うつ状態、パニック障害に対する治療上の考え方は、頭痛の専門家と心療内科および精神科の専門家の先生方とでは、まったく正反対で異なっていることを知っておく必要があります。
 頭痛の専門家は、トリプタン製剤で片頭痛を適切に治療しさえすれば、片頭痛もうつ病、うつ状態、パニック障害もすべて治ってしまうとされます。このようなことを言われれば、頭痛の専門家は、トリプタン製剤の製薬メーカーの回し者ではないか、と疑ってしまいます。
 これが現実に正しいものなのかどうかは、実際の患者さんで、どのようになっているのかを明確にする必要があります。
 ところが、それぞれの専門家はすべてが治ってしまうと申され、私達にはその真偽を明らかにされることは、これまで一度もありませんでした。
 こうしたことから、私達は現状をはっきりと示しておく必要があります。


 今回、冒頭で紹介しました、当医院を受診された方に対して、頭痛の専門家が申されるように、片頭痛発作時に毎回、トリプタン製剤を服用して頂くことによって、これまでの「うつ病」までが改善できるものなのかを、検証していく必要があります。
 あくまでも、本人の了承を得た上で行うことが条件にはなりますが、患者さんには、頭痛の専門家は、世界で最も権威ある国際頭痛学会が作成した「国際頭痛分類 第3版β版」に基づいて治療方針を作成しており、これに基づいた考え方であると説明すれば、本人は理解されるはずです。

 この症例をもとにして、果たして片頭痛に合併したうつ病・うつ状態・パニック障害がトリプタン製剤を片頭痛発作時に毎回服用することによって、片頭痛とうつ病・うつ状態・パニック障害が同時に治ってしまうものなのかを検証していく必要があります。
 これまで頭痛の専門家の申されることには、余りにも詭弁が多すぎるため、これらをひとつづつ検証し、真偽を確認していくのも一般開業医の責務と思っております。


 私の基本的な考え方は、片頭痛はミトコンドリアの機能が低下することによって起きる頭痛です。


         慢性頭痛治療のてびき 
          
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12707523368.html


 今回、当医院を受診された方は、お母さん・お婆さんが片頭痛を持っておられることから、生まれつきミトコンドリアの働きの悪さというミトコンドリアDNAを持っています。
 このため、ミトコンドリアの働きが悪ければ、当然、セロトニン神経の機能が低下しています。ここに生活習慣の問題点が加われば、脳内セロトニンは低下してきます。
 このため、うつ病が先に発症しても不思議でも何でもないことになります。
 申し遅れましたが、この方は頸椎X線検査では、典型的な「体の歪み(ストレートネック)」を呈しておりました。このため、片頭痛も発症してきてもなにもおかしくはないと思っております。
 このため、この方の適切な治療とは、トリプタン製剤を服用することではなく、ミトコンドリアの機能を悪くする要因をなくし、ミトコンドリアの機能を改善させることが第一です。その上で、「脳内セロトニンを増やす」ことを根気強くしてもらうことです。
 さらに、この上で「体の歪み(ストレートネック)」を改善・是正させることです。
 このように、これだけのことを根気強く行っていかない限りは、片頭痛もうつ病も改善されることはないと考えております。

 いずれにしても、抗うつ薬、トリプタン製剤といった薬物だけでは到底改善など望めるはずはないと考えております。


片頭痛の共存症として,うつ病,パニック障害,不安障害


 これまで、片頭痛の共存症として,うつ病,躁病,パニック障害,不安障害などの精神科・心療内科領域の疾患が挙げられておりました。


 精神科・心療内科医は、片頭痛とうつ病の合併を考える場合、以下の点を挙げています。


(1) 頭痛を持っていた人が、たまたまうつ病などの精神疾患にかかった場合
(2) 頭痛に悩んでいるために、二次的な症状として抑うつや不安状態に陥った場合
(3) うつ病やパニック障害などの精神疾患の身体的な症状として頭痛が認められる場合
(4) セロトニンを中心とした共通の生物学的な要因を背景として、頭痛とうつ病が共存している場合


  治療上、うつ病が見落とされる可能性が高く、問題となるケースが多いのが(1)や(3)のパターンです。
(1)のパターンでは、頭痛が続いて気分がなんとなく落ち込みがちでも、「頭痛だから仕方ない」と片付けられたり、また(3)のパターンでは、頭痛が続いていても市販の頭痛薬で抑えようとします。しかし、うつ病の身体症状として頭痛が起こっている場合は、頭痛薬でよくなることはほとんどなく、うつ病自体の治療をしなければ頭痛は改善しません。実際、 頭痛は不眠や食欲低下、倦怠感と同様にうつ病で高頻度にみられる身体症状の1つです。


「朝の頭痛はうつのサイン!」


 イギリス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペインの5カ国で、朝起きたときの頭痛の有無や頻度について、専門家による電話聞き取り調査が行われました。
 その結果、調査対象となった約1万9千人のうち7.6%が朝の頭痛に悩んでいました(1 3人に1人の割合)。また、朝に頭痛がある人のうち30%(4人に1人)は、うつ状態でした。
 もし、あなたが今、朝起きたときの頭痛に悩んでいるようであれば、一度医療機関を受診してみましょう。


 では、なぜうつ病などのこころの病気によって頭痛が発症するのでしょうか?


 その理由の1つとして、人は精神的に不安定になると、通常よりも痛みに対して敏感になるということが挙げられます。そのため、これまでなら痛いと感じていなかったことに対しても、痛みを感じるようになるのです。また、うつ病によって頭痛が起こる以外に、頭痛が先行してうつを引き起こす場合でも、同様に痛みへの過敏反応は生じます。具体的に説明すると、頭痛が続き、不快な状態が続いていると、それがストレスとなり精神的に不安定になります。そのために、通常よりも痛みを強く感じ、ますます頭痛がひどくなります。さらに、頭痛をはじめとして痛みという感覚は種々の不安を起こしやすく、頭痛を訴える患者さんには、自分の病気は脳出血、脳梗塞、脳腫瘍ではないかという不安があり、その不安が頭痛を悪化させることが多いと言われています。
 頭痛を主症状としていても、頭痛が引き金となりうつ病を併発し、これによって頭痛が悪化している場合や、うつ病の症状そのものとして頭痛が発症しているような場合は、抗うつ薬などによるうつ病の治療が必要になります。そのため、単なる頭痛とすませずに、頭痛に悩んでいる場合は、少しでも早く医師に相談することが大切です。
 また、片頭痛や緊張型頭痛で薬を飲んでいるのに一向に症状が改善されない場合も、背景に抑うつ状態を伴っている可能性もあるため、一度、専門医を受診することをお勧めします。


<頭痛の背景に抑うつ状態が隠れていたサラリーマンA氏の例>


 A氏は35歳の会社員。これまで大きな病気をすることはありませんでした。性格的には几帳面でまじめであり、仕事に対する責任感も強い方でした。仕事で新しいプロジェクトが始まり、チームリーダーとなったA氏は、これまで以上に仕事に打ち込みました。お昼を食べ損ねることや残業が度重なり、多少からだに負担はかかっていたものの、チームリーダーという立場から弱音をはくわけにもいかず、がんばり続けました。
 その頃から朝、目が覚めると頭が重くなったり、締め付けられるような頭痛に見舞われるようになりました。A氏は疲れがたまっているのだろうと思い、市販の鎮痛薬を飲んで痛みをやり過ごしていましたが、頭痛はだんだんひどくなり、仕事に集中できないことも増えてきました。また、頭の重みのために、からだを思うように動かせず、会社に行くのがつらく感じるようになっていきました。
 このような状態が数週間も続き、このままではチームに迷惑をかけると思い、近くの病院を受診したところ、手足のしびれ感や吐き気なども見られないため、ストレスによる緊張型頭痛の疑いと診断されました。鎮痛薬を処方され、2ヶ月間服用しましたが、症状はあまり改善されませんでした。
 A氏の表情はだんだん暗くなり口数も少なくなってきたことから、ただの頭痛ではないと思った担当の医師が精神面の検査を実施したところ、抑うつ傾向が認められました。そのため、抗うつ薬による「うつ状態」の治療が開始され、1週間くらいたった頃、朝、目覚めたときの頭の重さがとれたとのことです。


セロトニンとの関連から


 片頭痛は、うつ病の症状としてもよく現れます。


 うつ病の症状はさまざまで、食欲不振、不眠、気分の落ち込み、疲労感などがありますが、これらと同じくらい片頭痛という症状でも現れます。


  うつ病に伴う片頭痛の原因としては、脳内神経伝達物質セロトニンが減少することによって引き起こされると考えられています。

  うつ病に伴う片頭痛は、通常の片頭痛と比較して特徴があります。

  通常、片頭痛は突然発生し吐き気などを伴いますが、うつ病に伴う片頭痛は、朝起きた時からすでに頭痛が起きており、それが持続するという点が特徴的です。

 うつ病に伴う片頭痛の場合、うつ病の治療を行うことが片頭痛の治療にもつながります。 なお、片頭痛によりさらに気分が落ち込むようだと、さらに片頭痛がひどくなるといった悪循環に陥りますので、早期のうつ病治療が重要になります。


 現在、治療中で、経過が思わしくない場合


 以上のように、精神科・心療内科医は考えて、片頭痛に合併する「うつ病」を治療されて来られました。ところが、このようにして、抗うつ薬を長年服用するにも関わらず、一向に「片頭痛もうつ病」も軽快されない方々が多く見受けられます。
 このような方々の中に、東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、「頚性神経筋症候群」の病態として「頚性新型うつ」が存在することを明らかにし、これらは「頚部の筋肉疲労」をとる治療法で、片頭痛もうつ病も完治すると述べています。


 もし、皆さんの中で、片頭痛にうつ病を合併されておられる方で、精神科・心療内科で抗うつ薬の投与を長年受けているにも関わらず、一向に良くならない方は、一度は、この「頚性新型うつ」の可能性を疑ってみて下さい。

 これを疑う方法は極めて簡単にできます。以下の問診表の中で何項目、あなたは該当するでしょうか? まず、試してみて下さい。


問診表(松井孝嘉による)


 以下の項目について、あれば番号の箇所に丸印をつけて下さい。


 1.頭が痛い、重い
 2.首が痛い、首が張る
 3.肩がこる
 4.風邪をひきやすい、いつも風邪気味
 5.ふらっとする。めまいがする。
 6.歩いたり、立っているとき、なんとなく不安定
 7.吐き気がする
 8.夜、寝つきが悪い。目覚めることが多い
 9.血圧が不安定である。
 10.暖かいところに長時間いられない
 11.汗が出やすい
 12.静かにしているのに心臓がどきどきする
 13.目が見えにくい。像がぼやける
 14.目が疲れやすい。または痛い
 15.まぶしい。または目を開けていられない
 16.目が乾燥する。または涙が出すぎる
 17.口内が乾く、つばが出ない。または、つばが多い
 18.微熱が出る(37度台、原因不明)
 19.胃腸症状(下痢、便秘、嘔気、食思不振、腹痛)
 20.すぐに横になりたい
 21.疲れやすい
 22.何もする気が起きない。意欲がない
 23.天気の悪い日か、その前日に調子が悪い
 24.気分が落ち込む。気が滅入る。
 25.集中力が低下して、ひとつのことに集中できない
 26.わけもなく不安だ
 27.イライラして焦燥感がある
 28.根気がなく。仕事や勉強を続けられない
 29.頭がのぼせる。手足が冷たい、しびれる
 30.胸部が痛い。胸部圧迫感がある。胸がしびれる 


 この、質問項目のうち5項目以上、あてはまるものがあれば、まず「頚性新型うつ」が疑われます。この場合は、頸椎レントゲン検査を受け、「ストレートネック」の有無を確認してもらって下さい。もし、ストレートネックがあれば、現在の主治医である「頭痛専門医」に相談して下さい。しかし、必ずしも、このような考えをされる先生とは限りません。このような場合は、自分で治すしかありません。

 

分野によって考えの異なるうつ治療


 頭痛の専門家の間では・・


 現在の片頭痛治療の世界では、トリプタン製剤が片頭痛治療の世界に導入され、寝込む程の辛い頭痛が緩和されたことから、片頭痛は「病気」 と考えられるようになりました。
 このようにして、「片頭痛は病気です。病気ですから、医療機関を受診して、片頭痛を治療して、治しましょう」と言って片頭痛患者さんを医療機関への受診を勧め、生活の質QOLを高めて、健康寿命を長くさせましようと、しきりに洗脳し、さらに患者団体まで巻き込んで「なお、片頭痛の恩恵に浴していない片頭痛患者さんが多くいる」といって啓蒙活動を勧めてきました。
 それがいつしか、片頭痛発作時に毎回トリプタン製剤を服用しておれば、”片頭痛が治ってしまう”とか、片頭痛の”適切な治療”とはトリプタン製剤を服用することであるとか、さらに、片頭痛患者さんによくみられる、パニック障害やうつ状態、冷え性までが改善され、将来的には、脳梗塞が予防されるし、さらに頑固な耳鳴り・めまい・性格異常までが予防されるとまで、デタラメをいう専門家も出てくるようになりました。
 さらに、生理時にみられる頭痛は片頭痛であり、この段階からトリプタン製剤を服用しましょうとしきりに勧められてきました。
 このように、片頭痛の治療の世界にトリプタン製剤が導入されてからは、まさに異常としか言えないことが専門家から述べられていたことを忘れてはなりません。


  このように、頭痛の専門家にとっては、トリプタン製剤さえあれば、うつ病、パニック障害などは何も恐れることはないと申されます。
 
 
 これに対して、精神科・心療内科の専門家の間では・・


 うつ病の治療において、もっとも重要なのは休養です。ただし、ゆっくり体を休めるだけでも数日~1週間ほどで回復が期待できる風邪などとは違って、うつ病は治療に時間がかかる病気で、少しよくなったと思っても再発しやすいのが特徴です。薬で治療することに抵抗のある方もいらっしゃいますが、うつ病は脳の病気ですから、糖尿病や高血圧などの病気と同じように適切な薬物治療を行う必要があります。

 うつ病治療の基本となるのが抗うつ薬です。脳の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の減少をうつ病の原因と考えるモノアミン仮説に基づいて開発されました。ただ、この仮説だけでは説明のつかないこともあり、うつ病のメカニズムはまだ明らかになっていませんが、抗うつ薬には一定の効果が認められています(詳しくは「うつ病が起きるメカニズム」をご参照ください)。
 現在、日本で広く用いられている代表的な抗うつ薬はSSRI、SNRI、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)の3種類で新規抗うつ薬と呼ばれ、古くからうつ病治療に用いられてきた三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬よりも副作用が少ないのが特徴です。


 ただ、専門家の間では、酸化ストレス・炎症体質の観点、 病気の原因の90%が活性酸素といった観点から考えないのが特徴のようです。


 全世界の医療界では、殆どの疾患が活性酸素が関与しているとされながら、学会を主導される方々は一切、活性酸素の関与から考えようとはされません。
 これまでも述べて来ましたように、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛であるという考え方があります。そして、活性酸素は、ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に必然的に作られてくるもののはずです。
 片頭痛の場合、生まれつきミトコンドリアの機能が悪ければ、当然のこととして同時にセロトニン神経系の機能低下が存在することになります。ここに生活習慣の問題点が関与することによって、脳内セロトニンが低下することになり、このようにして片頭痛発作が起きてきているはずです。そしてトリプタン製剤が効いてくることになります。
 このように、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である、と考えさえすれば、すべての疑問が解決され、全世界の医療界と足並みを揃えることが可能なはずです。
 しかし、学会を主導される方々は、活性酸素の関与から考えようとはされません。
 そして、トリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者の作成される「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および頭痛研究の絶対的な基準とされ、片頭痛患者さんにひたすらトリプタン製剤の処方を強要され、片頭痛以外の慢性頭痛は取るに足らない頭痛として全く無視され、慢性頭痛の病態を解明することを困難とさせています。

 

 うつ病、パニック障害も、片頭痛と同様に考えれば治療もより簡単であり、ダイレクトになってきます。最近では、こうした治療法が、要点さえ押さえておきさえすれば取り付きやすいものとされています。そして、治癒率も高いようです。


     なぜ、”ミトコンドリア”は禁句なの?
      
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12638906556.html


 ここで示されるように・・


 現在では、ミトコンドリアを治すものが”病気を制する!”とされています。
  この事実は、医学界では何十年もタブーとされてきました。
  オットー・ウォーバーグが”ワールブルグ効果”を発表した時には、この事実がわかったのですが、製薬会社や医者の利益を守る為に封印されてきました。
  医学界が、この封印を解いて、この事実を公表する可能性は極めて低いものと思われます。
  これからも色々な病名をデッチ上げて、病気の根本原因をわかりにくくさせるものと思われます。


 このように、病気をミトコンドリアの働きの面から論ずることは禁句とされています。
 その理由は、製薬会社や医者の利益を守る為に封印されてきたからです。

 
 その結果として・・


       「疾病ビジネス」を禁止しよう
          
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12644766071.html


 これだけのことです。


 単純に言えば、製薬メーカーに踊らされたカリスマ医師を、ネット上から消去しない限りは、いつまでも現状は変わりはありません。

ミトコンドリアの視点から・・

 

 ミトコンドリアとは、私達のからだの組織・臓器を構成する個々の細胞のなかにある小器官で、私達が生きるためのエネルギーを作っており、生命活動に直結する役割を果たしています。

 ミトコンドリアは、通常では長さが1~4ミクロン、大きさが0.5ミクロンで、バクテリアとほぼ同じ大きさです。
 このように、ミトコンドリア自体の大きさは、バクテリアと同じ大きさですが、体全体からみれば、全体重の10 %を占めています。
 ミトコンドリアが最も多く存在するのが「腸」です。つまり、腸内環境を整えておくと、「ミトコンドリア・エンジン」も効率よく働きます。


ミトコンドリアは細胞核にあるDNAとは違う、独自のDNAを持っています。


 遺伝にDNAが関係することは誰もが知っていることですが、細胞内のDNAとは別に、先述のように、ミトコンドリアは独自のDNAを持っており、この”ミトコンドリアDNA”が片頭痛の遺伝に関係しています。

 ヒトの精子には16個程度のミトコンドリアが存在します。一方の卵子は10万個と言われています。そして、精子に含まれるミトコンドリアは受精後にすべて死滅してしまいます。父性よりも母性のほうが強いということです。

 ということは、ミトコンドリアのDNAに関していえば、卵子に含まれるものだけが子供へと受け継がれます。つまり100%の母性遺伝です。
 男性のミトコンドリア活性がその子に引き継がれていくことはありません。
 もし母親のミトコンドリアの代謝活性(元気さ)が低ければ、その影響を当然受けやすくなります。

 ミトコンドリアの活性が低くなると、細胞が活動するために必要なエネルギー発生量も少なくなります。その結果、器官や組織を構成する個々の細胞のエネルギーの不足が直接的に器官の機能低下を引き起こすことになります。
 すなわち、ミトコンドリアの機能が低下すれば、当然、同時にセロトニン神経系の機能は低下してきます。
 それは、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってくることになります。
  
 男性に比べて女性のほうが脳内セロトニンの合成量がもともと少なく、女性ホルモンであるエストロゲンが生理時に低下することによって、さらに「脳内セロトニン」が低下することによって、片頭痛の症状が発生しやすくなります。こうしたことから、母から娘へと片頭痛が遺伝しやすいのには、こういう理由があったのです。
  

 そして、このように先祖代々引き継がれたミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。・・ミトコンドリアDNAは傷つきやすい


 細胞は増える時に、自らの遺伝子をコピーします。このコピーですが、時々間違ってコピーされることがあります。この間違いを塩基置換と言います。

 また、コピー時だけでなく、何らかの刺激などで、DNAの配列が変わってしまう塩基置換もあります。塩基置換は致命的なときもありますが、なにも影響がなかったり、少し影響したりする場合があります。
 塩基置換は生物が環境に適応するのに、とても大切なことです。
 もし遺伝子が完璧にコピーばかりされていたら、環境が変化した時、その生物はそれに適応できずに絶滅してしまいます。
 このように生活環境によってミトコンドリアDNAは変化してきます。


 ミトコンドリアは酸素を使ってATPを産生します。この際、体内に取り込まれた酸素の数%反応性の高い活性酸素やフリーラジカルになります。すなわち、ミトコンドリアは生体内における主要な活性酸素の産生部位でもあります。
 正常な状態でも活性酸素は産生されていますが、電子伝達系や呼吸酵素系の活性が低下すると、電子伝達系から電子が漏れて活性酸素が生じやすくなります。
 ミトコンドリアは活性酸素を多く産生するため、ミトコンドリアDNAに突然変異が起こりやすい環境を作り出しています。
 しかも、ミトコンドリアDNAは核DNAと比べて修復能力が低いため、ミトコンドリアDNAで突然変異が起こる割合は核DNAの約10倍と考えられています。
 ミトコンドリアDNAの塩基置換は通常の核DNAと比べると、5 ~ 10 倍早いとされています。


  このように、ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。


 私達の体は約60兆個の細胞からなりますが、老化に伴いその数が減少します。
 ミトコンドリアは大量の酸素を消費しており、その過程で多くの活性酸素を発生します。 これにより細胞が酸化障害され、ミトコンドリアDNAに損傷が蓄積するとミトコンドリアの機能も障害されます。
 異常なミトコンドリアが多い細胞では必要なエネルギーが産生できなくなり、細胞の自殺(アポトーシス)を起こしやすくなります。
  特に、エネルギー代謝が盛んな骨格筋や神経細胞では、ミトコンドリアの劣化に伴うアポトーシスが原因で機能も低下します。
 お年寄りの体が小さくなったり機能が低下するのは、このようなミトコンドリアの劣化やアポトーシスが原因の1つとなっています。

  このように生後、ミトコンドリアの働きを悪化させる以下に述べるような要因が加わることによって、ミトコンドリアDNAは変化してくることになります。


 「ミトコンドリアの機能を悪化させる要因」
 

     1.生活習慣の問題
 

       睡眠不足
       運動不足
        食べ過ぎ・過食
       早食い・ドカ喰い・・インスリン過分泌
       薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬

 

  2.食事内容の問題
 

      マグネシウム不足
       必須脂肪酸の摂取のアンバランス 
       鉄不足
       食生活の欧米化・・腸内環境の悪化
         野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足

 

    3.生活環境の問題
 
      活性酸素    野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足
       有害物質
    
    4.年齢的な問題

      女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下


 いろいろな原因でミトコンドリアDNAが傷つくことによって、活性酸素で身体が”酸化”していく全身病が、「後天性ミトコンドリア病」です。
 ミトコンドリアDNAはミトコンドリアの中に存在していますが、実は1個のミトコンドリアの中に5~10個くらい入っています。そのようなミトコンドリアはひとつひとつの細胞に数十から数百個あるので、1細胞でみるとミトコンドリアDNAは数千個も存在していることになります。ですので、数千個もあるミトコンドリアDNAのほんの一部が変化しても細胞のはたらきに何も影響しないし病気にもなりません。
 ところが、ミトコンドリアDNAの変化で病気になっている人は、通常は変化したミトコンドリアDNAの割合が高いことが知られているのです。
 このようにして傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、片頭痛を発症させ、さらに「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。
 卑近な例では、水や食生活、放射能汚染や環境汚染、有害物質の蔓延などや酸素不足、薬物などを原因として、後天的に発症するミトコンドリア病です。

 私達の生活環境および生活習慣にはミトコンドリアの機能を悪化させる要因に満ち溢れています。
 このミトコンドリアの働きの悪さが、「酸化ストレス・炎症体質」を形成してきます。
 このような、「ミトコンドリアの働きを悪くさせる要因」は、生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に、食生活上の問題点、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・抗酸化食品の摂取不足・過食に、睡眠不足や運動不足や不規則な生活・食事摂取方法などの生活習慣が挙げられます。


 このような発症様式をするものは、生活習慣病そのものであることを示しています。


 病気の90%は活性酸素が関与


 現在では人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われ、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)うつ病は、活性酸素が原因と考えられています。
 ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に必然的に生み出されるのが活性酸素です。ということは、ミトコンドリアが関与しているということです。
  すなわち、「後天性ミトコンドリア病」と考えるべきです。
  「後天性ミトコンドリア病」とは、馴染みのない病名ですが、これは”ミトコンドリアの機能が低下する病気”です。
  このように、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)うつ病は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられております。


未病とは


 私達は、仕事が忙しかったり、ストレスが重なりますと日常的に「体調不良」を感じます。このような「体調不良」は、具体的には、疲れやすい、胃腸の調子がよくない、身体が冷える、身体がだるい、疲れがとれない、よくめまいを起こす、肩こりが酷い、食欲がない、よく眠れない、頭が重い・頭が痛い、足がつる、耳鳴りがする、夢をよくみる、喉のつかえ、むくみやすい、風邪をひきやすい、顔色が悪い、気分が落ち込む・優れない、活力がでない、元気がでない、何となく調子が悪い、寝起きが悪い、等々の訴えです。


 「体調不良」とは、病気とは診断されませんが、健康でもない。いわば、“半健康・半病気”の状態に身体はあるのです。半健康・半病気の状態を、東洋医学では病気になる一歩手前だとして、「未病(みびょう)」と言っています。
 絶対的な健康ではなく、私たちの身体のバランスがどこか歪んでいるのです。
 これは「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」を意味しています。


 このような”未病”とされる病態は、本来、生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから「病気」へと進展するものと東洋医学では考えられています。
 このように考えれば、”未病”の段階にある、このような「体調不良」の訴えとは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があるということです。


「健康的な生活を送る」ためには


 「健康的な生活を送る」ためには、ミトコンドリア・腸内環境・生理活性物質が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
 このなかでもミトコンドリアはその”要(かなめ)”となっています。
 ミトコンドリアの機能が低下すれば、「後天性ミトコンドリア病」である、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)、うつ病を発症してくることになります。
 このように、現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)、うつ病、体調不良を訴えた段階から「健康的な生活」を送るための正しい知識が必要とされます。
 ということは、もっと早い時期、すなわち「体調不良」を訴える”未病”の段階から、このような「健康教育」を行っていく必要があります。


  参考までに、ミトコンドリア病は大きく分けて2種類あります。


 「先天性ミトコンドリア病」と「後天性ミトコンドリア病」です。


 「先天性ミトコンドリア病」は、極めて稀な病気です。これは、生まれつきミトコンドリアの働きに不具合があります。この病気を持つ人のほとんどが、片頭痛を持病として持っています。このことが、「ミトコンドリア病」が片頭痛のモデル疾患とされる理由です。
 ところが、「後天性ミトコンドリア病」は、ほとんどの現代病に当てはまります。
 水や食生活、放射能汚染や環境汚染、有害物質の蔓延などや酸素不足などを原因として、後天的にミトコンドリアの働きを悪化させて、発症するミトコンドリア病です。
 後天性ミトコンドリア病とは、いろいろな”原因”でミトコンドリアDNAが傷つくことによって、身体が”酸化”していく全身病なのです。
 ミトコンドリア機能異常は、ガン・糖尿病・筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン病・アルツハイマー病・心臓病・腎臓病・動脈硬化・神経変性疾患・片頭痛・筋骨格系障害など、様々な病気を引き起こします。
 このように、現代病のほとんどが、「後天性ミトコンドリア病」なのです。
  薬の副作用などで二次的にミトコンドリアの働きが低下して起きる「後天性ミトコンドリア病」もあります。

 冒頭で述べましたように、全世界では病気の90 %は活性酸素が原因とされ、ほとんどの現代病は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられています。
  活性酸素はミトコンドリアがエネルギー産生を行う際に必然的に生み出されてくるものだからです。


  「健康的な生活を送る」ためには、”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
  すなわち、ミトコンドリアは、私達の体を構成する細胞の中にあり、食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出しています。エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものです。
 私達が日中活動している際に、”常時”活動している神経系が「セロトニン神経系」です。 このようにエネルギーを常時たくさん使う「セロトニン神経系」は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時に「セロトニン神経系」の働きまで悪くなってきます。


 「健康的な生活」とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。
  この生体のリズムは「ホメオスターシス」によって維持され、「体内時計」により刻まれ、「体内時計」は「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」により制御されています。
 この「ホメオスターシス」は、自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きによって、生体の恒常性機能が保たれています。
 このホメオスターシスの三角に”歪み”を起こしますと、冒頭で述べたような諸々の「体調不良」の症状が出現してくることになります。
 この「ホメオスターシス」が”健全”に機能することで、「自然治癒力」が保たれています。このことで「健康的な生活」が送れることになります。


「酸化ストレス・炎症体質」とは・・


 酸素は地球上のほとんどの動物にとっては、なくては生きていけない大切なものです。
 しかしその酸素が呼吸によって体内に取り入れられると、その一部が「活性酸素」といわれる不安定な状態になり、近くの物質と結びつこうとします。物質が酸素と結びつくことを”酸化”といいますが、鉄がさびたり、空気に触れたりんごの切り口が茶色になったり、あるいは雨ざらしのゴムホースがぼろぼろになったりするように、活性酸素が体の中でさまざまな「錆び」の状態を作るのです。
  活性酸素が過剰になると、物質が酸化によってぼろぼろに壊れてしまうのと同じ現象が、人体の中でも起こってきます。その結果、片頭痛、がん、動脈硬化、脳梗塞、心疾患、糖尿病、白内障などの生活習慣病を引き起こしてきます。
 また、活性酸素はしみやしわなどの原因になり、老化の最大の原因であることも分かってきました。
 現在の研究では、活性酸素は全疾患の90%以上に何らかの形で関っていると言われています。
 この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。
 活性酸素とはミトコンドリアがエネルギーを作り出す際に生み出されるものだからです。
  ミトコンドリアが酸素を取り込み、エネルギーを作る過程で活性酸素は必ず発生します。もちろん活性酸素が体の中で増える一方ですと、人間はたちまち死んでしまいます。
 そのため、私たちの体は活性酸素を取り除く手段を持っています。
 ただ、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、活性酸素の発生が”抗酸化作用(抗酸化力)”より常に優位な状態が、いわゆる「酸化ストレス」になります。


 「酸化ストレス・炎症体質」とは活性酸素の発生が除去しきれないほど発生してしまう状態のことで、これらが原因で細胞が傷つけられ、さまざまな病気(炎症)を引き起こしてしまう状態のことをいいます。
 「酸化ストレス・炎症体質」は、ぼろぼろに錆びた金属にたとえられる、「錆び体質」といわれるものです。ほとんどの現代人が抱える、さまざまな慢性病や生活習慣病の根底にある慢性病の源となっているものです。
 「酸化ストレス・炎症体質」は長い間の生活習慣などにより起こり、特効薬を飲んだからといって直ぐに治るようなものではありませんし、特効薬などはありません。


 先述のように、現在、人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われ、さらに、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(片頭痛、動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられています。
 ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に必然的に生み出されるのが活性酸素です。
 「後天性ミトコンドリア病」とは、馴染みのない病名ですが、これは”ミトコンドリアの機能が低下する病気”です。
 今までは、先天性の病気”遺伝的疾患”として考えられていましたが、現在は後天的な発症や、薬による副作用で発症することが証明されています。
 生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に、食生活上の問題点、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・抗酸化食品の摂取不足・過食に、睡眠不足や運動不足や不規則な生活などの生活習慣が加わって、ミトコンドリアの機能が低下してきます。
 このようにミトコンドリアの機能を悪化させる要因が多くあり、これを取り除くようにしませんと、最終的に「酸化ストレス・炎症体質」を形成してきます。


 「酸化ストレス・炎症体質」とは、体の中から活性酸素がどんどん産生され、抗酸化作用が全く追いつかない状態で、いつも“腫れたり”、”痛みがでたり”、“熱がでたり”、”発赤がでたり”さらには、高血圧になったり、心臓や脳血管で血栓を起こしたり、コレステロール値が高くなったり、アレルギーになりやすかったり、風邪や癌などにかかりやすくなったり、いろんな病気に罹りやすい体質のことです。


 参考までに、この「酸化ストレス炎症体質」に“内臓脂肪”の要因が加わると糖尿病に、生まれつき“ミトコンドリア活性が弱い”と片頭痛に、“脳内セロトニンが低下する”とうつ病やパニック障害に、“強い精神的ストレス”の状態が続くとアルツハイマー病に、癌の場合は食品や環境由来の発がん物質が・・・・となります。


 発がん物質を摂っても、「酸化ストレス炎症体質」でなければ発症することはありません。
 アルツハイマー病も「酸化ストレス・炎症体質」でなければβアミロイドは蓄積していきません。
 花粉症は「酸化ストレス・炎症体質」を改善するだけで、自動的に良くなっていきます。
 内臓脂肪が少々多くとも「酸化ストレス・炎症体質」でなければ糖尿病になることはありません。
 このように、生活習慣病や慢性病といわれている病気の根底にあるのが「酸化ストレス・炎症体質」で、多くの場合「遺伝的体質」や「原因不明」という言葉で表現されているのが現状です。


 最近では、酸化ストレスが高い状態が続くと、私たちの体を構成する全てのDNAやタンパク質、脂質、糖質が酸化されていきますが、現在ではさまざまな病気において、これらの酸化ストレスにより変化した分子が、蓄積していることが分かってきました。
  例えば糖尿病では、酸化された糖とタンパク質が結合し、異常な糖化タンパク質が増えていることが分かっています。また、動脈硬化を起こした血管では、酸化された脂質(過酸化脂質)が蓄積し、血管の内腔が狭くなり、血液が流れにくくなっています。
 さらに、アルツハイマー病やパーキンソン病など、高齢者に多い脳の病気でも、酸化したタンパク質などが蓄積していますし、酸化ストレスによって細胞が損傷を受けると、その細胞はやがてガン化します。
 このように、強い酸化ストレスにより酸化された生体内の分子は、さまざまな病気の原因となっている可能性があるのです。


 このような観点から、「現代病」を理解していかなくてはなりません。
 こうしたことから「おくすり」だけを服用していたからといって、現代病は治ることはないということです。


 西洋医学を基本とする現代医学では、治療の基本は薬物療法が基本となっています。これは、医学界全体が、製薬業界に依存する体質に根本的な原因があります。このような風潮に原因があると認識しなくてはなりません。
 こういったことから、私達は自分の身は自分で守っていくしかありません。
 このようなことから、「健康を志向される方々への一般的な指針」が必要とされ、これが一般化されなくてはなりません。

 

酸化ストレスとうつ病???
  https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12719933280.html   のなかで「血糖値が急激に上下する現象『血糖値スパイク』について、ヒトが老化し、病気になる根本原因・・「糖化」と「酸化」が一番問題になると述べました。

 

 そして、私達が生きていく上で、睡眠が如何に重要であるかについて述べました。もう一度、ご覧下さい。


         睡眠の役割
      
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12258603600.html


「健康的な生活を送る」ためには


 ホメオスターシス・恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっており、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角」と呼ばれます。
  ホメオスターシスはストレスなどに大きく影響されます。例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。


  この3つのバランスが崩れてホメオスターシス機能が保てない状態になると、先述のような、”うつ状態”が現れることになります。


  一方「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めています。

 
  ”セロトニン神経系”の機能低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
  「脳内セロトニンが低下」することによって、うつ状態・うつ病の際に現れる多彩な症状を形成してきます。例えば、痛みを感じやすいといった症状・「頭痛」です。「脳過敏」のためとされる「耳鳴り」です。


  内分泌ホルモンに相当する”生理活性物質”のひとつのエイコサノイドは、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6で作られ、この摂取バランスがよくないと、局所ホルモンのエイコサノイド・プロスタグランジンのバランスを乱すことになります。
  必須脂肪酸は生体膜(細胞膜)を構成しており、オメガ3とオメガ6の摂取バランスがよくないと、ミトコンドリアの機能・セロトニン神経系の機能にも影響を及ぼし、結果的に、細胞機能のバランスを欠くことになります。


  ”腸内環境”は、欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。
  また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。
  腸内環境が悪くなれば、セロトニンの産生が低下してきます。
  それは、脳に存在し、精神を安定させる神経伝達物質、セロトニンの95%が腸で作られることが指摘されています。
  常在細菌もトリプトファンからナイアシン(ビタミンB3)をつくってくれるからです。常在細菌がナイアシンをたくさんつくってくれれば、その分を体内でつくる必要がなくなって、脳内セロトニン用の材料となるトリプトファンを余分に確保できるのです。

 
  このように、「ホメオスターシス三角」を構成する”この3つ”は、生活習慣とくに食生活・ストレス等によって影響を受けています。


  このため、「健康的な生活を送る」ためには自然治癒力を高めることが重要で、このためには「ホメオスターシス三角」を構成する”この3つ”を「健全化」させておくことが大切になり、特に食生活に配慮する必要があります。


うつ状態とは”未病”の段階にある


 このような、うつ状態は、東洋医学では、本来、”未病”ともいうべき範疇にあるものです。
  ”未病”の段階にある、このようなうつ状態とは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があるということです。
 このため「うつ状態」を改善させるためには「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”を改善することが重要になってきます。


セロトニンとメラトニンのアンバランス


 現代社会では、睡眠障害や不眠が世代を超えて深刻な問題となっています。中でも24時間型の社会となって昼夜を問わず働く社会環境や、ゲームや携帯電話による夜更かし型の生活習慣が広く蔓延し、生体リズムが乱れることによる「概日リズム睡眠障害」と言われる症状が多く見られます。


 現代では夜中まで電気を煌煌と灯すことが出来ますし、テレビテレビやパソコンパソコンなどの光も目から取り入れています。
  この夜も光を浴びつつける生活により、「メラトニン」がキチンと分泌されないと体内リズムが狂うだけでなく、「エストロゲン」の産生が過剰になります。
  その結果として、セロトニンが不足し、アンバランスとなってきます。


 セロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンと相対する性質があります。
  セロトニンは脳の覚醒を促し、メラトニンは睡眠に作用します。
  メラトニンが分泌している間はセロトニンの分泌は少なく、逆にセロトニンが多く分泌されている間はメラトニンの分泌は少なくなります。
  太陽の光(のような非常に強い光・明かり)を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、代わりに脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発化されるのです。
  昼夜逆転の生活をしていたり、日中部屋の中にばかりいると、セロトニンとメラトニンの分泌のバランスが崩れ、不眠症になったり、片頭痛が起きやすくしてしまうのです。


ヒトの生体リズムは約25時間


 ヒトの生体リズムはおよそ25時間で刻まれており、地球の周期24時間に合わせるには朝の光が必要です。ですから、明るさの変化がない場所で寝起きしていると、生体リズムと地球の周期とはだんだんずれてしまいます。朝、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)というところで光を感じることで、25時間の生体リズムは24時間にリセットされ、地球の時間に合わせて生活することができるのです。逆に夜に浴びる光には、このズレを大きくしてしまうという困った働きがあることも知っておいてください。


 セロトニンとは、体内に存在する物質の一つです。ヒトの脳では無数の神経がネットワークを作っていますが、その中で、セロトニンは「神経伝達物質」として神経細胞の広い範囲に伸びて(セロトニン神経系と呼びます)、脳のうちの生命に最低限必要な機能を担う部分と、思考や記憶、言語など人間特有の高度な活動を司る部分をつなげる、いわば「人間らしさ」を担う大事な神経系です。
  また、食欲や睡眠、呼吸など基本的な生活に関係する神経と、安心・不安、情動と呼ばれる快感や不快感、不安、衝動を支配する神経の両方をコントロールする重要な役割もあります。特に、不安や恐怖などの情動を制御したり衝動性を自制心で抑えたりするすることに関係するので、心を穏やかに保つ働きがあるとも言われます。 セロトニン神経は、生後約5年間にいろいろな刺激により作られますが、特に「朝は明るく夜は暗く」という規則正しい刺激が大切です。


 メラトニンは細胞を守る、規則的に眠気をもたらす、性的成熟を必要な時期まで抑える、という作用がある大切なホルモンです。一生のうち、1~5歳くらいまでに最も多く分泌されるので、この時期「メラトニンシャワー」を浴びる、と表現されます。
  メラトニンは、朝起きてから14~16時間して、夜、暗くなると出てくるので、夜更かしをして夜に光を浴びる時間が増えるとメラトニンの分泌が抑えられ、メラトニンシャワーを浴び損ねることが危惧されます。


 次に、セロトニン神経が弱ってしまう要因は、ストレスです。


 私たちの体は、どうしても解決できないものごとが続いた場合、ストレス中枢が興奮するようになっています。それは、今日、視床下部・下垂体・副腎軸というストレスシステムとして知られています。これをもっと詳しく説明すると、視床下部のストレス中枢が興奮すると、副腎皮質からストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールという物質が分泌されるしくみです。興奮したストレス中枢は、脳幹にあるセロトニン神経を直接抑制することによって、脳内のセロトニン分泌を落としてしまいます。


 やがてセロトニン神経が弱っていくと、5つの脳機能


  1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する
  2.自律神経調節する
  3.筋肉へ働きかける
  4.痛みの感覚を抑制する
  5.心のバランスを保つ


 が十分に活動しなくなり、セロトニン欠乏脳という状態に陥ります。セロトニン欠乏脳とは、脳の中にセロトニンが十分に存在していない状態です。セロトニン欠乏脳になると、慢性的に寝覚めが悪い、心のバランスが不安定、自律神経失調症、あちこちに慢性的に痛みを感じる、姿勢のゆがみなど多岐にわたった症状が現れます。

 

 うつ状態の人間を車にたとえると、「ガス欠状態の車」であるといえます。車自体はどこも壊れていませんし、修理も必要ありません。必要なのはガソリンを入れてあげることです。
 「ガス欠状態の車」をイメージすると、どうしてうつ状態になったのか、どのようにすれば回復できるのかが理解しやすくなります。
 無理に無理を重ねてきて、もう余力は残っていません。
 マラソンの42.195キロを全力で走りきった後のランナーのようなものです。
 これ以上走ること、努力するエネルギーは残っていません。
 これがうつ状態、「ガス欠状態の車」です。

 日常的にストレスの多い忙しい生き方が続いていると、交感神経刺激により血管は収縮し血流障害と低体温を招きます。つまり、低酸素と低体温です。ミトコンドリアは十分機能できず、白血球の働きが低下してしまいます。感染症の病原体に敗北したりしてしまいます。本来からだを守るべき白血球が働けない、危機的状態になっているのです。
  このようにして、ミトコンドリアの機能が低下してくることになります。
  ミトコンドリアの働きが低下すれば、同時に、セロトニン神経系の働きも低下し、脳内セロトニンの低下が引き起こされてくることになります。
  結局、エネルギーを全く産生出来ない状態に陥ってしまうことになります。


うつ状態改善のための基本的な考え方


 このため、うつ状態から脱するためには、ミトコンドリアの機能を改善させると同時に、脳内セロトニンを増やすことが大切になってきます。
  脳内セロトニンを増やすためには、最低でも3カ月は必要とされます。
  さらに、ミトコンドリアの機能を改善させるためにも、気長に行うことが必要となりますが、うつ状態で特に注意すべきことは、ここまでに至った原因となったミトコンドリアの機能をさらに悪化させないことが必要になってきます。
  このため「ガス欠状態」を改善させていくためには、当初”一時的”に抗うつ薬を使いながら「長期間の十分な休養」が必要となってきます。
  こういったことから、長期間にわたって抗うつ薬だけで対処していけば、抗うつ薬によって、さらにミトコンドリアの機能をさらに悪化させることになってしまいます。
  そのため、うつ病を益々、悪化させることになってしまいます。


  こういったことから、未病の段階のうつ状態の段階から早期に対処しなくてはなりません。すべきことは、これまで述べてきましたような未病への対策と同様に考えて行っていく必要があります。この詳細は、これまでも繰り返し述べてきたことですので、ここでは述べません。

 以下で、それぞれの項目を参照して下さい。主として行うべきことは、ミトコンドリアの機能をこれ以上悪化させないことと、ミトコンドリアの機能をよくすることと同時に「脳内セロトニンを増やす」ことです。

 このためには、先程も述べましたように、最低3カ月は必要とされます。じっくり腰を据えて、気長に根気強く行っていく必要があります。

 このように、「長期間の十分な休養」をとっている間には、ただ単に、”のほほんと”無為に寝てばかりの休養をとっておればよいということではありません。
 特に、うつ病まで移行してしまっておれば、相当な覚悟をもって対処しなくてはなりません。抗うつ薬だけでは到底改善は望めないことを念頭におく必要があります。
 これまで、どれだけ多くの方々が薬漬けにされ廃人同様になってきたのかを直視する必要があります。
 こういったことから、未病の段階にある「うつ状態」で、極力早期に対処する必要があります。


 紙面の都合上、以下を引き続きご覧下さい。


  プロテインがなぜ、有用なのか?
    
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12703604597.html


  医師や薬に頼らない!すべての不調は自分で治せる 藤川徳美


    脳内セロトニンを増やす
     
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12443405075.html


    「養命先生」教えて・・「冷え性」について
      
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12710734216.html


健康であるためには・・
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12582502232.html


 病気の原因の90%が活性酸素
  
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12171631037.html


ミトコンドリアDNA
  
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12171848477.html


細胞膜は活性酸素によって酸化されます
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12171819729.html


 ミトコンドリアを活性化する9つの習慣って??
  
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12641968690.html


ミトコンドリアは「生命エネルギーの製造工場」
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12290473127.html


細胞内のエネルギー産生の仕組み
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12290495989.html

 


 

 「うつ病はこころの風邪か?」


 うつ病は普通に考えられているよりも一般的な病気であり、10人に1人が生涯の中で一度はうつ病に罹患します。そのため、うつ病は“心の風邪”といわれることがあります。 確かに多くの人がその病気にかかる可能性があるという意味ではその通りですが、うつ病の症状は風邪とは比較にならない程辛く、生活への影響は甚大です。世界保健機構らの調査において、うつ病はその罹病率の高さ、罹病期間の長さ、症状の重さなどから、生活の質を落とす原因の第1位にランクされているほどです。何といっても“風邪は万病の元”なのです。日本では年間の自殺者がここ数年連続して3万人を超えており、社会問題になっています。自殺の原因のすべてがうつ病によるものとはいえませんが、調査によると自殺者の6割以上にうつ症状があったという結果が出ています。毎年の交通事故による死亡者数が1万人前後で推移していることを考えても、うつ病はもっと注目されるべき疾患でしょう。
 うつ病の難しさは、もう一つの代表的な精神疾患である統合失調症とは異なり、その症状の“わかり易さ”にあります。うつ病の症状は“やる気が出ない”とか“食欲が落ちる”“眠れない”“体がだるい”“寝起きがすっきりしない”“頭が重い”といった、誰でも当たり前に経験するものばかりです。つまりはその症状が誰にでも体験があるために、うつ病になっているその人自身や周囲の人たちもそれが病気の症状とは思わず治療に結びつかないため、病気である期間が長くなり、結果的に多くのものが失われてしまいます。うつ病では、身体的な検査においては異状が見つからないために、“気のせいだ”“怠け病だ”といわれ、“自分さえしっかりすれば”“こんなこともできないなんて”と自分を責めることで、さらに気分を落ち込ませるという悪循環に陥っていることが少なくありません。
 しかし、うつ病は治療によって回復する病気です。うつ病には抗うつ薬というその名前の通りの特効薬があります。ここ数年の薬物療法の進歩は著しく、今では副作用の心配もほとんど無くうつ病を治療することが可能となっています。ただ残念なことに近年の調査によると、うつ病と考えられる人のうち、抗うつ薬による適切な治療を受けているのは5%に満たないという結果が示されています。繰り返しになりますが、うつ病はそれほどまでに見落とされやすい病気なのです。次回からはうつ病の具体的な症状や、治療、周囲の人が注意すべき点などについてお話ししていきます。


 「こんな症状があればうつ病に注意」


  うつ病の最古の記述は紀元前10世紀にさかのぼります。紀元前5世紀にヒポクラテスはうつ病の原因を黒胆汁(メランコリア)にあると考え、それはうつ病の名称として現在でも用いられています。特筆すべきはその時代において、既にうつ病の原因は身体にあると考えられていたということでしょう。
 うつ病の症状は“抑うつ気分”“精神運動抑制”“不安焦燥感”“身体症状”にまとめられます。“抑うつ気分”とは憂うつで悲しく、落ち込んだ気分をいいます。自信を失い、過去の過失ばかりが目に付き、自責的になります。何事にも興味がわかず、以前には楽しみであったことでも煩わしく感じるようになります。時には経済的に破綻していると信じ込んだり、回復不能な病気にかかっていると思い込み、頑固に身体症状を訴えることがあります。また、物事が上手く運ばない原因を全て自分の責任と考え、悩むこともあります。“精神運動抑制”とは思考活動が緩慢になることをいいます。何事も思い浮かばず、決断ができなくなり、集中力や判断力が低下するため、失敗が多くなり、そのことがさらに本人を苦しめます。知的活動も衰えるため、認知症(痴呆)と間違えられることすらあります。“不安焦燥感“のため落ち着きが無くなり、いらつくことも多くなります。この焦燥感は時には激しいもので、自殺念慮に結びつくこともあります。“身体症状”として、全身倦怠感、頭重感、肩こり、胸部圧迫感、手足のしびれや冷感、発汗、口渇や便秘など、多彩な自律神経の失調症状を認めます。食欲は低下し、食事が美味しいという感覚が無くなり、また性欲も低下します。不眠はほとんどの症例に認められ、寝付きが悪いだけでなく、早くから目が覚め、そのまま眠れずに朝を迎えるようになります。
 症状の軽重はありますが、以上のような症状が2週間以上続きます。このようにうつ病は大変辛いものです。たいていの場合はこれらの症状を自覚しても、身体的検査では異状が見つからないため、病気によるものとは考えず、文字どおり鬱々(うつうつ)とした日々を過ごしてしまいます。時には症状が長期に持続し、周囲の人だけでなく自分自身も「元気のないのは性格だから仕方がない」とあきらめて生活している場合が少なくありません。(こういった状態が2年以上続いた場合、“気分変調症”といいますが、本質的にうつ病と同じものです。)
 このようにうつ病は個人的にも社会的にも重大な問題です。しかしうつ病は治る病気であり、確立された治療法があります。次回はうつ病の原因と治療についてお話します。


 「抗うつ薬の効果と注意点」


  前回ヒポクラテスがうつ病の原因を身体にあると考えていたことは特筆すべきことだと述べました。さすがに原因が黒胆汁(メランコリア)ということではありませんが、うつ病は身体の臓器のひとつである脳の問題です。心の動きはとても複雑であり、脳内での化学物質の伝達や電気的興奮にて語れるものではなく、また語るべきものではありません。しかしうつ病は一つの疾患であり、現在ではその原因は脳内での神経伝達の機能異状によるものということがわかっています。
 機能異状の要因となるものがストレスと体質です。強いストレスの持続は神経を疲弊させ機能低下を引き起こします。それが短期間では回復しないレベルまで至ったものがうつ病といえます。ストレスへの耐性や、耐えられるストレスの種類、疲労からの回復のスピードには個人差があり、同じ状況でもうつ病にかかる人と健康を保つ人がいる事は、この個人差(体質)によります。
 それではうつ病を治すためは何が必要でしょう。上記によれば回復に必要なものは疲弊した神経の休息と、神経伝達の機能異状の是正という結論に達します。そのためには心身の休養と、薬物療法が必要となります。うつ病を病気と捉える事が困難であると同様に、心の病気には薬を飲んでも意味がないと考える人は多いものですが、うつ病による神経伝達の異状の是正に薬物は非常に効果が高いのです。抗うつ薬は神経伝達物質の働きを整える作用により、うつ症状を改善させ、大半のうつ病に効果を示します。以前は眠気や口渇、便秘等の副作用が問題となりましたが、ここ数年で副作用の少ない抗うつ薬がいくつも開発され、多くの方の治療に用いられています。
 薬物療法には注意点がいくつかあります。抗うつ薬は飲むとすぐに効果が現れるものではなく、効果発現までに2週間程度を必要とします。また薬によって症状が改善しても、元々の機能異状は続いている事が多いため、半年程度は内服を継続する必要があります。またうつ病は治りやすい病気ですが、再発しやすい病気でもあります。統計によると約半数に再発を認め、再発は繰り返す傾向にあります。再発を防ぐためには薬物の継続的な服用が有効です。よく「精神科の薬は一度飲むとやめられない」といわれますが、うつ病に限らず精神科領域では健康を維持するために、予防的な内服の継続が必要な場合が多いため、このような誤解が生じていると思われます。また抗うつ薬に限りませんが他の薬剤との併用に注意を要するものもあり、他の医療機関にかかる時には必ず薬剤を服用していることを伝えましょう。


「パニック障害」


 Aさんは、夜くつろいでいた時に突然、心臓がドキドキと脈打ち、思うように呼吸ができなくなりました。汗が流れ、めまいやしびれも現れ、死んでしまいそうな恐怖感に襲われました。やっとの思いで救急車を呼び、病院でいろいろと検査を終えた後、医師に呼ばれました。その頃には症状は治まっていましたが、「心臓の病気だろうか、重い病気だったらどうしよう」とAさんは不安でした。そして医師の診断が下されました。「特に異常は見つかりませんでした。帰っても良いですよ。・・・」 しかし、Aさんはその日から、軽い動悸を伴う不安の発作が毎日のように見られるようになりました。発作が心配で一人で外出も出来ず、眠れない日が続いています。この頃はだんだんと気分が憂うつになってきています。
 さてAさんに何が起きたのでしょう。このような身体的な原因がないにも拘らず動悸やめまいなど様々な自律神経の失調症状を伴う不安発作を、パニック発作と呼びます。そして繰り返されるパニック発作や発作が起きるかもしれないという不安の為に生活に支障を来している状態は、パニック障害と診断されます。この疾患は人口の2~3%に認められます。パニック発作は辛いものですが、通常は30分程度で消失し、それがどんなに激しくても、決して死んでしまったり、後遺症が残ったりする事はありません。しかしこの疾患のさらに厄介な所は、発作への不安が強く、外出ができなくなるなどで、生活から楽しみが失われることです。そのためこの疾患はしばしばうつ病を合併します。
 この病気の治療は発作を抑えて、安心して生活できるようになる事が第一であり、そのため薬物療法が行われます。以前はほとんどの症例に抗不安薬が使われていました。しかし、抗不安薬は眠気を生じ易く、依存性も比較的高いなどの問題があり、そのため最近では抗うつ薬の一種であるSSRIも用いられています。SSRIはパニック発作をおさえると同時に不安の解消も図り、気分も改善させるため、抗不安薬にとって代わろうとしています。 しかしSSRIは効果の発現に時間がかかるという欠点があり、また吐き気などの消化器系の副作用がでることがあります。そのため通常は抗不安薬とSSRIを症例に合わせて使い分けたり、組み合わせたりして、治療を行っています。薬を飲むことに抵抗のある方は多いのですが、薬物療法の効果は非常に高く、薬を継続して服用する事により発作はほとんどおさえる事が可能です。パニック発作が消失しても、外出などを尻込みしてしまう事もありますが、そんな時には精神療法や行動療法を併用して治療を行います。


「引っ込み思案は治療が必要か?」


 多くの人の前で話しをすることは誰でも緊張するものです。まして、知らない人達の中でとなればなおさらでしょう。それでも生活の中ではそのような状況が避けられない場合があります。そのような時に緊張や不安が強すぎると、動悸や呼吸困難などのパニック発作を生じたり、そうならないようにその状況を避け続けた場合、昇進の機会を逃したり、重要な人間関係にほころびを生じてしまうことが繰り返されます。このように人前で行動が出来ない為に毎日の生活習慣や職業(学業)上の機能、または社会的活動や友人関係に支障を来している状態を社会不安障害と呼びます。
 社会不安障害はいままで、「引っ込み思案」「恥ずかしがりや」などの性格の問題と捉えられ、本人がほとんど医療機関を受診する事がなく、また医療者側も個性の問題として考え治療の必要性について疑問視していたために、医療の対象として重要視されてきませんでした。しかし、社会不安障害は、有病率が3~13%と従来考えられていたよりも高いこと、10歳代半ばで発症し慢性的経過をたどるため生活に与える影響が大きいこと、うつ病やパニック症候群、またアルコール依存症などの他の精神科的問題を併発する割合が非常に高いことから、決して放置できる問題では無く、また近年になり副作用が少なく有効な治療薬が現れたことから、注目を集めています。社会不安障害の治療は本人の持つ不安を軽減し、社会的な回避行動を減らすことが目標となります。薬物療法は前回お話ししたパニック症候群と同様に、抗不安薬や抗うつ薬の一種であるSSRIを組み合わせた治療が行われます。薬物の効果発現までの期間はうつ病やパニック症候群と比較して長期間を要し、また全体の治療期間も長くなるのが普通です。そのため精神療法や行動療法が同時進行で併用されます。
 さてドクターリレーの私の番では、うつ病、パニック症候群、社会不安障害と、治療薬として抗うつ薬が用いられる病態についてお話ししてきました。これらに共通していることは、その病態が社会生活上の深刻な問題を引き起こしているにも拘らず、病気として認知されず、治療されないまま放置されている例が非常に多いことです。またこれらの病態が最近注目されているのは、副作用が少なく長期の連用が可能な薬剤が開発されたという治療的な背景もあると思われます。精神科受診への抵抗は現在でもまだまだ大きいと考えられますが、治療は日々進歩しています。一人で悩まずにまずはご相談下さい。

 

 うつ病は風邪のように"治る"ものではない
「治る」が意味する3つのかたち


 「うつは心の風邪」とも呼ばれます。これは国や製薬会社がうつ病への誤解を解くため、2000年頃から啓発キャンペーンを繰り返してきた結果です。「特殊な病気」という誤解は解けましたが、一方で「風邪のように治せる」と安易に考える人も増えてしまいました。 うつ病は本当に「治る」のか。国際医療福祉大学の原富英教授が解説します――。


「治る」の3つのモデル=3つの治るとは


うつ(病)にかかったのではないかと心配して、私のもとを訪れる患者さんは、ほとんど例外なく、こう聞いてきます。「先生、治りますか?」。二分法的思考でお答えすれば「うつ病は治りません」となります。誤解しないでください。要は「治る」の意味が、社会一般に理解されている「治る」と「うつ病が治る」では、大きく異なるからです。


そんな時私は次のように答えることにしています


「病気は数万種類もありますが、治り方は基本的に3種類しかないんです。1つ目は、風邪などのモデル。自然にもしくは基本的な治療で原状復帰できるもので、いわゆる「治る」ものです。

 2つ目は胃がんなどの摘出モデル。転移などを除けば、外科手術でとってしまえば治ります。たとえば 胃を全摘してしまえば、胃がんは絶対に再発しません。

 最後の3つ目は、糖尿病・高血圧などのお付き合いモデル。医学用語を使えば『慢性疾患』のモデルです。節制を続ければ、自覚的にも医学的予後(平均寿命と言い換えてもいいでしょう)も健康人とほぼ変わらなくやっていけます」

 こうした説明をしたうえで、「うつは、第3のモデルに近いんですね。症状が軽くなってきても、用心しないと再発しやすい。少なくとも数年は付き合っていく必要があるんですよ……」と続けます。

 ほとんどの患者さんやその家族は、第1のモデルを頭においているので、最初は困ったような表情を浮かべたり、きょとんとされたりします。

 
「寛解」と「治癒」


 医学的な言葉を用いると、うつ病は、症状がなくなり治療をする必要が無くなった状態でも「寛解」という用語が用いられます。「寛解」とは、一時的にまたは継続的に症状が軽減~消失すること、わかりやすく言えば「症状が落ち着いて安定した状態」といえます。 精神疾患や白血病などの再発の危険のある病気治療に使用される概念です。

 症状がほぼ完全に消失している状態を完全寛解、一部症状を残しているが生活(生命)などの差し障らない状態を部分(不完全)寛解と呼ぶこともあります。いずれにしろ、私は「このまま回復する可能性もあるし、再発する可能性もあるので、注意しましょう」とアドバイスします。前述の3のモデルに近い概念ですね。対比される用語に「治癒」(完全に治った状態)があります。これは1もしくは2のモデルに近いでしょう。
 

「うつ」は「心の風邪」キャンペーンの功罪

 

 厚労省は、2013年、それまでの4大疾病に「精神疾患」を加え5大疾病としました。また平成10年当時、自殺者が3万人を超え交通事故の死者数の約5倍という高水準になったことから、その原因の一つである精神疾患(主にうつ病)対策として、「うつは心の風邪」というキャンペーンを前面に押し出しました。

 このキャンペーンには評価できる点もあります。うつは「誰でもかかること」「適切な治療がなされれば、ほどなく回復すること」「気軽に医療機関を受診しやすくなったこと」などの意義のある啓蒙がなされ、それまでの偏見や恐怖心が払拭されたように思います。

 その一方で、このキャッチコピーには、重大な誤解を生じる危険があります。

 「風邪」と言われて皆さんはどうイメージされますか。

 「1年に数回はかかる」「ちょっと気を付けていれば1週間ほどで治る」「あまり重大な後遺症などはない」「自分なりの治し方がある(いい意味での民間・代価療法)」「わざわざ医者のところにいく必要などない」などなど。どうしても甘く捉えがちがちになります。

 このキャッチコピーは、「とにかく地獄だよ。地獄。風邪の比じゃない」と声を発する患者さんの苦しみや、「どんなに早くたって回復に数カ月はかかるよ」という医学的事実、治療の甲斐なく死へ向かって行った患者さんを悼む主治医らの「いたたまれなさ」などを思うと、とてもうなずける言葉ではありません。

 また、このキャンペーンの結果、「うつは治る、うつを治す」といったタイトルの本も増えました。私からみると、これはセンセーショナルなタイトルです。多くのうつは風邪のように「治癒」するものではないからです。

 実際私の臨床経験からは、かなりの数の患者さんは、1~2度は再発するようです。典型的なケースを1つだけ挙げておきます。

 58歳の男性です。高校卒業後、地元の電力会社に就職。几帳面で真面目な仕事ぶりで、3年前に中間管理職に昇進。同時に激務の苦情処理係という部署へ異動になりました。1年ほど前より次第に抑うつ気分、判断力低下・不眠などの症状が出ていたようですが、無理やり出勤を続けたところ、3カ月前の朝に全く起床できなくなり、来院。「うつ病」の診断で、1カ月の休職となりました。

 自宅療養に入ってから約1週間すると少し体調が回復したため頑張らねばと、主治医の制止を振り切って出勤。ところが出勤から5日後に再び起床できなくなってしまいます。 その結果家族や同僚は期待と裏腹の失意を倍加させてしまいました。結局このようなことを2回繰り返し、慢性化。最終的には自己退職となってしまいました。

 このように次第に軽快するにつれ、原因を探し始め、「心がけが悪かった」「気合(根性)が入っていなかった」「あの上司さえいなければ……」などのストーリーを作ってしまうのです。「今度は失敗しないぞ」と無理やり自己を鼓舞しても、再発は防げません。やっと2~3度目の再発後に、うつとはお付き合いしていくものだと身に染み、ストレス対処法や休養の取り方などに真剣に取り組む方が少なくありません。

 しかし何度再発しても、心の風邪論や気合論、環境悪論の一辺倒で解釈される方もいます。こうした患者さんには、主治医としては頭を抱えつつ、「風邪もこじらしゃ肺炎になる」と、つぶやくのです。


元に戻らず新しい自分になる


 私の尊敬する中井久夫医師(元神戸大学医学部精神科 現名誉教授)は「元に戻りますか(治りますか)?」の質問に「こんな病気になった元の自分に戻ってどうするの?」と投げかけたそうです。深い含蓄のある言葉ですね。

 そうこうしているうちに、「うつは治りますか」という質問は消え、新しい自分を見出し始めて、やっと治癒に近い「お付き合いモデル」になじんだ寛解像があらわれます。こうなると「もう大丈夫なようだね」という温かく穏やかな感覚が主治医と患者さんの間に流れ始めるのです。

 これまで説明してきたように「治る」の意味を理解し対処することが、うつ病の治療においては、とても大切なことなのです。

 

精神科のクスリは本当に「心」に効くのか
投薬の狙いは「脳の休息のため」


 うつ病は風邪のように"治る"ものではない


 はじめて精神科を受診した患者さんは、投薬の話になると一様に不安な表情を浮かべるといいます。本当に薬は必要なのでしょうか。国際医療福祉大学の原富英教授は、「脳の神経の働きの不調は、あせりという言葉で表現される」としたうえで、「とりあえずの薬物療法で、脳にゆっくり休んでもらうことが重要」と説明します――。


精神科のお薬に対する患者さんの心配


 精神科の治療は、一般に薬物療法、精神(心理)療法、環境療法の3つの柱を組み合わせつつ進められます。当然私も基本的にお薬を使います。しかし私は「心に効く薬」とか、反対に「薬に頼らずにうつを治す!」などといったタイトルの本を目にすると困った気分になります。


 診断がついて、治療に移る時、お薬のことに触れ始めると、患者さんはほぼ一様に心配気な表情をされます。「ボケないでしょうか?」、「人が変わるのではないでしょうか?」、「一度眠ると当分起きないのではないでしょうか?」などの心配が多いようです。

 私が思うに、心の問題によって生じている症状が、薬という化学物質で解決するかもしれないということに対する驚きや、人格まで変わるのではないかという警戒などがその心配の中心なのではないでしょうか。もしここがクリアできなければ、われわれは、薬物療法なしで、患者さんと回復を目指して、困難な長い旅に出ることになります。

 
お薬は体のどこに効いているか?


 さて胃の薬は胃という器官に、鎮痛剤は膝痛に対しては膝関節という器官に到達して効果を発揮します。その点ではこのような病気と薬の関係はシンプルでとても理解しやすいと言えます。では心(こころ)に効く薬はどこに(何という器官に)到達して働いているのでしょうか? 心に効くと喧伝する精神科の薬といえども化学物質ですから、身体のどこかでその効果を発揮しているはずです。

 こう問いかけるのは、われわれの体の中には、心という臓器・器官は存在しないからです。

 

「心」と「体」を巡る心脳問題


 古代ギリシャ時代より心と体(脳)問題は、哲学・文学をふくめた当代の俊秀たちを魅了し、また苦しめたテーマでした。今でもはっきりとした答えが出たとは言えないのですが、大ざっぱには「心≫脳」「心≒脳」「心<脳」と考えてもいいかもしれません。つまり、心と脳はほとんど別物である。心とは脳のことである。脳の働きの一部が心である――という考えです。ここでは心脳問題には、これ以上深入りしません。


 さて先ほどの答えは何でしょうか?

 

 答えは、――「脳」に効いている(と考える)――です。

 実際に薬物を投与する立場になると、脳の存在を無視して治療は始まりません。心というあいまいなものに効くといったスタンスでは、患者さんを混乱させ不安にさせるでしょう。この「脳」に効くお薬があなたの参った「心」を回復させるという理解しにくい関係を、何とか理解してもらうことが薬物療法の第一歩になります。

 そこで私は、「あなたはさまざまな原因で、脳の神経の働きが不調になっていると考えられます。この薬はその不調を正常化する働きがあります。とりあえず疲れた脳を回復させましょう」

という「心≒脳」立場から説明をスタートし、処方を開始します。

 この時は、「心」と言う言葉は棚上げにしておきます。

 
「とりあえずの薬物療法」を開始する


 精神科に相談にこられる患者さんの心理的・社会的問題は複雑に入りこみ過ぎており、最初から短期間で解決するのは不可能に近いことが大部分を占めます。またほとんどの患者さんは激しい「あせり」に巻き込まれています。

 そこで私は長い臨床の経験から「脳の神経の働きの不調は、あせりという言葉で表現される」と確信するに至り、何とかゆとりへととりあえずお薬をすすめるのです。これを私は自称「とりあえずの薬物療法(臨床)」と呼んでいます。


「ゆとり」を目指してはじめる


 この「とりあえずの薬物療法」は、効果がなければいつでも変更できる、そう深刻に考えなくていい、心理的に患者さんを追い詰めることが少ない、などの利点があります。また患者さんがこの説明を理解し気軽に薬になじむことができれば、お薬が少量で済む印象があります。

 私の経験からも、薬でゆっくり休んだ脳は、自身の問題点やその解決法を再発見する力を(時には目覚ましいほどに早く)回復させるようです。言い換えれば、薬は患者さんの自然治癒力を目覚めさせる・回復させる・発揮させるための道具として使用するとも言えるでしょう。

 このような「ゆとり」を目指してはじめる「とりあえずの薬物療法」は、十分に意味のある治療だと自負しています。

 

"持論"を押し付けてくる精神科医は要注意


 面談が治療の有力ツールである精神科では、患者さんと主治医の関係は他の科にもまして重要です。ただ、なかには自らの考えを患者に押し付ける「ちょっと困った精神科医」もいます。信頼できる精神科医を見分けるにはどうすればいいのでしょうか。国際医療福祉大学の原富英教授が解説します――。


■ちょっと困った精神科医たち


 どの病気でも患者さんと主治医の関係はとても重要です。とくに精神科では、面談が治療の有力ツールであるため、両者の関係はなおさら重要です。それでは信頼できる「精神科医」を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。

 精神医学の教科書には「人間を3つの要素の複合体とみよ」と書いてあります。それは以下の3つの要素の複合体としての「存在(Being)」と人間を理解せよということです。
 

■生物学的(Biological・脳を想定→主に薬物を用いて治療する)
■心理学的(Psychological・心を想定→主に言葉を用いて治療する)
■社会学的(Social・環境を想定→環境調整→休職や入院などを進言する)


 初診時は、この3つのうち、患者さんのどの要素が不調の主な原因なのかを探ることが重要になってきます。患者さんの不調の原因により、主な治療のアプローチも決まってきます。

 ここではどの要素が原因かまだ不明のうちに、そのひとつだけに拘泥してしまう「ちょっと困った精神科医」をご紹介しましょう。


タイプ1:すべて脳に問題があるとする医師。特徴は内科的で切れ味がいい。しかし、心理的・環境的要因はほとんど考慮しません。「器質論者」とも言います。治療は薬物一辺倒になりがちです。
タイプ2:すべて心に問題があるとする医師。「あなたは、こういうストレスにさらされている」と唱えるので、「心因主義者」ともいえるでしょうか。どこにストレスがあるのかを必死に探そうとしますが、人は多くのストレスにさらされており、簡単に見つけるけることはできません。しかしこのタイプの医師は「これがあなたのストレスですね」とすぐに決めつけがちです。
タイプ3:環境(社会学的要因)に問題があるという医師。家族や社会に要因があると考え、「あなたは悪くない。あなたの母親が悪い。上司が悪い」などと息巻くタイプです。
 かつてイギリスでこの立場に近い反精神医学が勃興し、従来の精神医学を否定した時期がありました。環境論者ともいえるでしょうか。たとえば頭部CTで抑うつの原因が「脳腫瘍」とわかっても、なお「社会体制が悪い」と主張する医師もいました。3つの要素の不調を診たてるバランス感覚が大切ですから、こういう医師には要注意です。

 私は精神科医はできるだけ中立的であるべきだと考えています。それは診断・治療方針に関して言えば、「1つの立場に偏らない(Flexible)」と翻訳できるでしょう。


■信頼できる精神科医の条件とは


 では、困った精神科医を避け、信頼できる精神科医を見つけるには、どうしたらいいのでしょうか。私は「信頼できる精神科医」には以下の3つの条件があてはまると考えています。


1.患者さんに対して尊厳を持つ1人の人間として接する医師。これが一番大事なことです。病気を持つ弱者にどう接するか。これはおのずと態度に現れます。


2.話をよく聴く医師。「聞く」のではありません。ところどころに質問や納得の言葉を入れつつ、興味を持って「聴く」のです。このことにより、患者さんの考える病気の原因や苦しみのお話(ストーリー)が明らかになります。


 聴くと言っても、だらだらと時間を費やす必要はありません。診察時間がやたらと長い医師は、技量が未熟だったり、すがり付く理論(診断基準や原因論)に当てはめようとしていたりするようです。ちなみに私の場合、診察にかける時間は、初診で30分~45分程度、再診で10分~15分程度です。

 患者さんの話をよく聴くことは、治療のアドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)を上ることにもなります。この過程で治療上のヒントが見つかるのもよくあることです。


3.「よくわからない」と正直(Genuine)に伝える医師。すぐに「分かった」と解釈を始める医師はちょっと考えものです。精神科には、「困ったときは正直(Genuine)に」という諺(ことわざ)があります。「そこがよくわからないのですが?」と口に出す医師は信頼できます。

 人間は、脳・心・環境という3つの要素が複雑に入り組んでいる存在です。どれかが傷み始めると、ほかの2つにも悪影響を及ぼし、相互的な悪循環を引き起こして全体が不調になると考えるのが合理的だと思います。脳・心・環境の3つに常に気を配り治療を進めていく医師がおすすめです。

 この3つの条件と「偏らなさ(Flexibility)」を満たしていれば、あとは「相性」「波長」「フィーリング」などがあえば、あなたにとって信頼できる「主治医」となるはずです。


■待合室まで患者を迎える私流


 私自身は、診療に際して以下のようなことを心がけています。参考までに挙げてみます。


1.診察室や身なりは、不快にならない程度に清潔に

 

1.応対のちょっとした工夫


・初診の場合は待合室まででかけて患者さんに自己紹介し、診察室に招き入れる(ここで得られる情報は結構多い)。
・できるだけ同伴面接を心掛ける(お互いの誤解、特に家族間の誤解が生じにくい)。
・診察の初めに必ず「よくいらっしゃいました」と話しかける(来院した勇気に敬意を払う)。


2.面接中の工夫


・できるだけ頭部CT(MRI)をすすめる(脳病変など器質的原因は時間が勝負)。
・困っていることを中心にできるだけ自分の言葉で話してもらう。
・困ったときの対処法を訪ね、うまくいっていれば讃める(強化する)。少なくともその努力を認める。


3.診察(面接)の終わりに


・現時点で考えられる今後の予測も含めた診断名を告げる。
・お薬は1~2種類を適宜使う。副作用の説明後、必ずお薬にメッセージを載せる。「薬がうまくあえば少しずつ怖い感じが消えるかもしれないよ」「久しぶりにぐっすり安心して眠れるといいね~」。
・歳時記や気候を用いて再来日を印象付ける。たとえば3月3日が再来日であれば「ひな祭りの頃にまたお会いしましょう」と一言添える(手前味噌ですが、再来日の間違いやその結果の怠薬などのうっかりミスなどが減るように感じます。こうした対応は先ほど述べた治療のアドヒアランスを上げるひと工夫です)。


 以上、35年の臨床経験から得た、わたしのやり方の一部です。これがスタンダードというわけではありませんが、信頼できる精神科医を選ぶうえでの参考になればと思います。


■主治医を変えることができるのか


1度は通院を始めたものの、「説明が不十分で納得できない」、あるいは「態度が高飛車に感じられて不満」といった時には、どうしたらよいでしょうか。


以下の2つのケースに分けて、解説します。


1)開業医(クリニックなど)の場合


開業の先生は、ほぼ1人で業務をこなしており、経営者も兼ねることが多いようです。そのためか、いわゆる一方的な父権主義(パターナリズム)になりがちです。自分の判断がつかないときに手際よく専門の医師を紹介してくれる先生、セカンドオピニオンを申し出てもいとわない先生は良医でしょう。


2)同じ科に複数の医師がいる大病院の場合


一般に、所属科には経験年数により3~5人の医師が在籍します(部長・副部長・指導医・レジデント《数年目》・研修医など)。良心的な科であれば、主に患者さんを担当する医師は、常に上級医師にアドバイスを受けています。そのようなスタッフ間の風通しの良しあしはなんとなく雰囲気で察知するしかないでしょう。医師間の関係が複雑な場合には、別の医師の診察はあきらめ、病院を変えるしかありません。
1,2どちらのケースも結局セカンドオピニオンの活用が味噌ですね。


 現代の医療では、セカンドオピニオンは当然の権利として認められています。「先生のご説明には納得いたしましたが、念には念を入れてもう1人の先生の意見も聞いてみたいのですが……」と、少しへりくだって切り出すのがいいようです。拒否する先生のところからはさっさと退散するほうがいいでしょう。


 セカンドオピニオンを聞き「こちらの先生が自分にあっている」と感じたら、「先生にお世話になりたいのですが」と意思表示すれば、きっと引き受けてくれるはずです。


 
やめていい薬とやめてはいけない薬の違い
「薬を飲んでいる限り病気」は誤解


 薬は病気だから飲むもの。では「薬を飲んでいる限り病気」なのでしょうか。それは違います。逆は必ずしも真ならず。再発防止のためにも薬を飲み続けることが大切です。国際医療福祉大学の原富英教授(精神医学)は「勝手に服薬をやめないためにも、薬に対しての意思決定は、医師と患者が双方向で進めたほうがいい」とアドバイスします――。


1年経過すると約半数は服薬をやめてしまう


 精神科では、もう少しで安全域に入ると思われるのに、薬をやめてしまう患者さんがいます。こうした事例は少なくないようです。名古屋大学病院老年科の梅崎らの報告によると、長期間服用が必要な抗認知症薬ドネペジル塩酸塩(商品名アリセプト)では、1年後は約半分以上の患者さんが薬の服用をやめていたそうです。

 
 なぜ薬をやめてしまうのか。これは「病気だから薬を飲む」行為が、いつしか「薬を飲んでいる限り、病気である」という考えに変わってしまっているからではないでしょうか。「病気だから薬を飲む」という発想が、逆転しているわけです。こうした逆命題は、高校数学で「逆は必ずしも真ならず」と教わりました。これがよく当てはまります。必ずしも「薬を飲んでいる限り病気は治っていない」というわけではないのです。

 さて、さまざまな薬は、服用期間によって、やめられる薬、当分やめないほうがいい薬、半永久的に必要な薬の3種類に大別されます。


 まず「やめられる薬」の代表例は抗生物質です。


 抗生物質は、原因(細菌など)が消失すればやめられます(医師は投薬を中止します)。またビタミン剤やホルモン剤などは、一時的な不足を補うため、数日から数週間の服用期間が標準です。


2番目の「当分やめないほうがいい薬」では、精神科や生活習慣病の薬があげられます。


 慢性化しやすく数年~数十年かけて付き合っていく病には、悪化や再発予防のための最小限の薬を服用し続けるほうがいいと考えられています。これは専門家の中ではほぼ意見が一致しています。

 うつ病のように回復に月~年単位が(回復は三寒四温だよね、と説明する精神科医もいます)必要で、この間に再発しやすい特徴を持つ病気には、減薬しつつ、数年間は当初の3分の1~4分の1程度の量で服用することを私は勧めています。

 また健康診断で「コレステロールが高いですね」と注意を受けた経験のある人がいるかもしれません。LDL(悪玉)コレステロールは、動脈硬化の危険因子のひとつとされており、年をとるにつれて分解力などが低下し増加していきます。生活習慣の見直しなどで改善がみられない場合、現在はLDLコレステロールの体内合成を阻害する薬を用います。ただし、至適な血中濃度を維持するためには、ほぼ一生、この薬を服用することが必要になります。服用をやめると、ほとんどの人が再び異常値まで血中濃度が上がってしまうからです。

 このように慢性疾患モデルの病気は、薬によって悪化・再発を防ぐことは重要な対策のひとつであり、食事療法などの生活習慣の改善により減薬はできても、薬が不要になると考えるのは危険が大きいと思います。


3番目の「半永久的に必要な薬」は、何らかの原因で自己免疫性疾患やホルモン失調症(甲状腺機能失調症など)、パーキンソン病などの神経伝達物質が不足する疾患にかかった患者さんは、自然治癒でもしない限り、半永久的に少量のステロイド剤やホルモン剤などの補充が必要です。この補充療法によりほとんど健康な人と同じように活動ができます。


 この2番目と3番目の薬の使い方は、連載第1回目の説明を引用すれば「(薬を服用しつつの)寛解をめざす」というものです。


共同意思決定のすすめ


 かつては医療者(医師や薬剤師など)が、治療方針を患者さんへ一方的に伝えるのが一般的でした。しかし、最近では「インフォームドコンセント」(Informed Concent=説明と同意)を行うことが主流です。ただし、これも流れとしては、治療者側から患者さんへの説明が多くなり、一方向であることには変わりありません。

 そこで近年は「SDM」(Shared Decision Making=共同意思決定)という取り組みに注目が集まっています。

 SDMとは、「治療者あるいは患者さんのどちらか一方が決めるのではなく、両者が話し合って治療方針をお互いの同意と納得のもと決定し、適切な治療を見つけ出すこと」です。乳がんの治療から始まった考え方で、ドイツでは約20年程前から実践されています。

 最大の特徴は双方向性です。代表的な治療法のひとつである薬物療法を進めるうえで、重要な実践だと思います。薬に関して言えば、患者さんは主作用・副作用・服薬期間などオーソドックスな質問で始めることになりますが、何より患者さん自らが治療の決定に参加しているということが大切なのです。

 私見ですが十分に説明し、お互いに話し合い納得したうえで開始した服薬は、予想以上によい効果を生み出すように感じています。実際、最近の臨床研究からもSDMの有効性が証明されつつあるようです。

なお、広く知られるようになったセカンドオピニオン(Second Opinion=第2の意見)も、広義には、SDMの類型のひとつと考えることも可能でしょう。

 
副作用についての考察


 最後に薬を服用する際に必ず生じる疑問――「副作用」について少し触れておきます。患者さんが薬の服用を中止する原因のひとつだと思われるからです。

 私は、医学生や研修医によく次の質問をします。「薬を処方するとき、副作用についてはどこまで説明する?」。彼らは困ったような表情で口ごもります。理想的には何百という副作用をすべて説明したほうがいいでしょう。しかしこのやり方は、主に以下の2つの理由から現実的ではないのです。
 

 ひとつ目は診療時間の制約です。全ての副作用を説明していると、1日数人の患者さんしか診ることができない可能性があります(日本の一般開業医の1日の平均外来患者数は40人前後です)。
 ふたつ目はすべてを説明すると、非常にまれな致死的副作用などを怖がってしまい、患者さんが服用しないのではないかと危惧するからです。


では私はどうしているか。


 薬品情報書は副作用の出現頻度を、主に4段階で表示しています。5%以上の副作用は、最低20人に1人の割合(多い副作用は、3人に1人出る印象)で生じる可能性があるということです。これは説明しなければいけないでしょう。ただし5%以上の副作用は、生じても致命的なものは少なく(そうであれば、その薬は開発段階で日の目を見ないでしょう)、薬の量を減らしたり中止したりすることで消失するものがほとんどです。


自分の薬を「自家薬篭中」の「薬」にする


 そこで私は、5%以上に生じる可能性のある副作用(精神科の薬であれば、軽い眠気・めまい・ふらつき・吐き気など)について、質問を受けつつ6~7個を説明します。加えて耐えられないような副作用(高熱や全身の薬疹など)を1~2個説明し その症状が出た場合はすぐに連絡するよう連絡先を伝えておきます。

 それから軽い副作用は少し我慢していくと耐性(慣れ)ができ、服用を継続できること、先ほど述べた2番目、3番目のタイプの薬の中には、急にやめると不愉快な退薬症状(いわゆる薬切れ)の症状が出やすいこと、眠気や注意散漫が生じる危険があるので車などの運転は避けることなどを付け加えます(これは精神科の薬に特有の注意事項でもあります)。こうした方法を採れば、患者さんは副作用が生じても慌てずに冷静に対処できるようになります。


 このように主作用・副作用も含めた薬の「飲み心地」についてやり取りをしつつ説明し、服薬の合意をとるのです。この私の実践は先ほど述べたSDMの概念に近いと自負しています。

 結局、患者さんは、副作用も含め医薬品の特性を知り、双方向(SDM)に医療者と話し合い、まさに自分の薬を「自家薬篭中」の「薬」にすることこそ、服用する薬についての大切な態度といえるでしょう。

 


 原 富英(はら・とみひで)


 国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 精神医学教授
1952年佐賀県生まれ。九大法学部を卒業後、精神科医を志し久留米大学医学部を首席で卒業。九州大学病院神経科精神科で研修後、佐賀医科大学精神科助手・講師・その後佐賀県立病院好生館精神科部長を務め、2012年4月より現職。この間佐賀大学医学部臨床教授を併任。

 

 うつ病や認知症は、実は糖質の過剰摂取が原因だった?


 今日は、一冊の本を紹介しましょう。光文社新書から出ている、清水泰行著「糖質過剰症候群~あらゆる病気に共通する原因~」です。


 現代人は、実は糖質を取り過ぎており、それゆえ肥満や糖尿病などの生活習慣病に罹りやすい体質になってしまっているのです。糖質の代表例が炭水化物ですが、ごはん、パン、麺類、果物、お菓子類、スイーツ、ジュース、スポーツドリンクなど、多くの食品に含まれています。これらを取り過ぎることで、いろいろな病気にかかってしまうようです。

 糖質を摂取すると血糖値が上昇します。このとき膵臓からインシュリンが分泌され、血糖値を下げようとします。糖質を過剰に取るとインシュリンも過剰に分泌され、血糖値は急上昇後急降下するカーブを描きます。この一連の山ができることが「酸化ストレスを増大させたり、炎症反応を増加させ、血管を傷つける。」「酸化ストレスは、体の中で発生する活性酸素が抗酸化物質等でうまく除去できる量を上回る場合に起こる。」

 更に、糖質を過剰に摂取し続けると、「インシュリン抵抗性」と呼ばれる状態になり、インシュリンが分泌されても血糖値が下がらない状態に陥ります。これがいわゆる糖尿病です。

 脳内でも同じようなことが起こります。脳の中には、インシュリンやアミロイドβを分解する酵素があるのですが、糖質過剰摂取でインシュリンの濃度が上がると、その酵素はインシュリンの分解に忙殺され、アミロイドβの分解にまで手が回らなくなってしまうようです。そのため、脳内にアミロイドβが多く残存するようになり、アルツハイマー型認知症になってしまうようです。ですので、認知症にならないためには、甘いものを食べる食習慣を改めることが必要になります。

 また、うつ病は、脳の炎症が原因と考えられ、糖質の過剰摂取で高血糖になると、うつ病を発症するリスクが一段と高まるようです。

 その他、あらゆる病気は、この糖質の過剰摂取・高血糖が原因となって発症している可能性があります。

 最後に、「糖質依存」に陥りやすいメカニズムをこの本の筆者は、こう説明しています。以下引用です。


  「糖質は、ただのエネルギー源ではない。脳に強く作用する。合法的に摂取できる麻薬と言っていいかもしれないほど依存性があると考えられている。………(中略)………   糖質を取ると脳のドーパミンが大量に分泌されて、報酬系という部分が強く活性化される。報酬系が活性化されると、また繰り返したくなる。そしてまた糖質を取ると再びドーパミンが出て、脳がまた喜ぶ。これを繰り返していると、通常の状態ではドーパミンは減少し、糖質を取るとやっと通常の状態まで上がるようになる。その先までいくと、普通に糖質を取っただけではドーパミン量は通常の状態にまで上がらず、さらに多くの糖質を取らないと、脳が喜ばなくなる。どんどん深みにはまっていくのである。麻薬と全く同じである。」と。

 

  みなさん、どうでしょうか?  ちょっと怖い感じがしませんか?

 結論から言うと、糖質の過剰摂取をしないということになりますね。

 

 

 

 今回の事件を総括するならば、精神科医・心療内科医でもない医師が、あたかも専門家であるかのごとく診療している社会のシステムに問題があります。卑近な例では、テレビに出てくる心療内科医を詐称する”輩”を野放しにしている”医師免許”制度の根底を見直す必要があります。ここを正さないことには、何も解決されることはありません。