解糖系とミトコンドリア系
私たちの体は、食べ物の栄養素や呼吸から得た酸素を細胞まで運び、活動エネルギーに変えることで生き続けています。人が呼吸し、食事をするのは、全身の60兆もの細胞にエネルギーの原料を送りこむためであり、こうした燃料をもとにした細胞内のエネルギー産生が生命活動の基礎になっているのです。
そして、前回も述べましたように、エネルギーの産生システムは、「解糖系」と「ミトコンドリア系」という2つのプロセスに分けることができます。
解りやすく言いますと、人間には細胞内に、性質の異なる2つのエネルギー工場があるのです。
まず、解糖系についてですが、これは食べ物から得られる栄養素をエネルギーに変換するシステムです。
原料になるのは主にブドウ糖(糖質)です。ただ、即効性がある分、一度に作り出せる量は決して多くありません。
これに対してミトコンドリア系は、解糖系で分解された栄養素の加え、呼吸によって得られた酸素など、ほかの多くの要素も関わっています。
細胞内のミトコンドリアという器官で栄養素を取り出し、酸素と結びつけ、水を作り出す過程で、解糖系とは比較にならない多量のエネルギーを生み出すことができます。
生物はこうしたミトコンドリア系の膨大なエネルギーを獲得することで進化の切符を手に入れたわけですが、工程がとても複雑なため、瞬時にエネルギーが必要なときには、シンプルな解糖系が必要になります。
解糖系=無酸素運動・ミトコンドリア系=有酸素運動
解糖系とミトコンドリア系のエネルギー産生は、専門的には、嫌気性(酸素を嫌う)と好気性(酸素を好む)と呼ばれています。
私たちの体は細胞内の2つのシステムを使い分けることで、外界の様々な環境に適応して生きているのです。
たとえば、瞬時にエネルギーが生み出せる解糖系=無酸素運動は、短距離走のように素早い動作を行うときに必要になります。実際に試してみるとわかりますが、人は全速力で走るとき、息を止めて無酸素状態になっています。
そうでなけれは全力疾走はできません。素早い動作というのは、すべてが嫌気性の無酸素運動なのです。もちろん、無酸素の世界は長続きできるものではありません。
全速力で走るとすぐに疲れ、動きが止まってしまいますが、それはブドウ糖が分解される過程で疲労物質である乳酸などが作られるからです。そのため持続力が必要になるときには、解糖系からミトコンドリア系のエネルギーに切り替わります。
マラソン選手のように長時間にわたって運動が持続できる人は、ミトコンドリア系をうまく活用しているのです。
細胞内のエネルギーシステムは、年齢により変化します
このように、解糖系とミトコンドリア系のエネルギーを必要に応じて使い分けていますが、年齢によっても変化します。
・20歳位までは、解糖系が優位
・20~50歳代:解糖系とミトコンドリア系の比率が1対1
(年代により、多少の比率は変わります)
・40~50歳代:解糖系からミトコンドリ系への移行が強くなります。
・60歳代以降:ミトコンドリア系が主体
年齢とともに、無理が利かなくなったと感じるのは、ミトコンドリア系への移行が進んでいるからともいえます。ですから、年齢=体のエネルギーシステムにあった生活の仕方(無理をしないなど)も必要になってきます。
50歳すぎてもいっぱい糖質とってたら危険です
ミトコンドリアがはたらく原料は『酸素』。多くの酸素を取り込んでいます。
ところが、50歳過ぎても糖質が多いと『解糖系』が働いてしまいますので、ミトコンドリアのお仕事を妨害してしまうことになります!
妨害するだけでなく、ミトコンドリアが取り込んだいっぱいの酸素が、体に悪い『活性酸素』に変わってしまいます!
活性酸素は、酸化力が強くさまざまな細胞を酸化させてしまう、悪いやつ。老化やがんにつながるものです。
このようなことが無いように、50代以降の人は『ミトコンドリア系エンジン』を活性化させてあげるような、生活態度をしてゆかなくてはなりません。
一番簡単なのは、炭水化物を控えることです。
このように、ヒトは解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー生成系があります。
子供時代は解糖系が優位ですが、大人になると、1対1になり、60代以降、解糖系が縮小し、最期を迎えます。
このように、エネルギー産生のしくみには、解糖系とミトコンドリア系の2つのがあります。この両者の調和がとれてこそ、健康が保てるのです。
解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー産生のバランスがとれた生き方を心がける必要があります。
片頭痛とは慢性的な「乳酸アシドーシス」
解糖系が働きやすい環境は、低体温、低酸素、高血糖の3条件です。
主として解糖系でエネルギーを得ている「低体温」「低酸素」「高血糖」の状態が、エネルギーの低下した状態なのです。
解糖系でATPを作るには、大量の糖質が必要になり、大量の乳酸を排出して身体を酸性に傾けます。糖質の過剰摂取は糖尿病だけではなく、人類の万病のもとです。
消費されなかった余分な糖は、コラーゲンなどのタンパク質と結びつきAGE(終末糖化産物)という物質に変質してしまいます。このAGEの有害な毒物の蓄積が、ミトコンドリアの機能を悪くする原因になっています。このためエネルギー産生が、さらに、解糖系に傾くことになります。
ストレスによって交感神経の緊張が持続すると、血管が収縮して低体温になり、高血糖になって、解糖系のエネルギ―が主体となってきます。低体温、低酸素、高血糖の状態です。
また、ストレスはマグネシウムを枯渇させることになります。
マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込んだカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ出ていけません。このために、カルシウムはミトコンドリア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンドリア内カルシウムイオンの増加が起こります。このようにして、ミトコンドリア内カルシウムイオン濃度を薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎますと、ミトコンドリアの調整機能は破壊されてしまいます。
その結果、調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。
ミトコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が強く関係していて、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症にも非常に大きな原因となります。
このようにして、ミトコンドリア系のエネルギー産生能力が低下します。
結果的に、エネルギー産生系統は解糖系が主体となってきます。
解糖系のエネルギー産生が高まると、炭水化物(ブドウ糖)からエネルギーをつくり、その際に副産物として乳酸が産生されます。ミトコンドリア系が十分に働いている場合は、副産物の乳酸も栄養としてエネルギー産生に使われます。しかし、ミトコンドリア系のエネルギー産生能力が低下しておれば、乳酸がエネルギー産生のためにミトコンドリアで利用されないため、細胞内で乳酸が余った状態になります。
酸性である乳酸が細胞内で余っていくと、慢性的な乳酸アシドーシス(pHが本来の状態よりも酸性側に傾く)状態になります。乳酸アシドーシスは、乳酸の過剰産生、代謝低下により起こります。このようにして、乳酸アシドーシスの状態になると、ミトコンドリア系はますます働きが悪くなります。
ミトコンドリアの機能が低下するのは、「低体温」「低酸素」「血液の酸性側への傾き」(健康な状態では弱アルカリ性のpH7.35〜7.45ですが、7.35未満になる)の状態です。
このような状況になると、ミトコンドリアの機能低下によって十分なエネルギー(ATP)が得られないため、解糖系のエネルギー産生が盛んになります。
このようにして、ミトコンドリア系はますます働きが悪くなります。
ミトコンドリア機能が悪くなれば、解糖系が作ったピルビン酸・乳酸を代謝(還元)できませんので、必ず乳酸が溜まることになります。
後天性ミトコンドリア病(ミトコンドリア系の働きが悪くなれば・・片頭痛)になれば、乳酸アシドーシスになるのは、そのためです。
片頭痛では、エネルギー産生は解糖系に傾くことになります。
片頭痛を治すには、高体温、高酸素、低血糖の状態にして、ミトコンドリア系にシフトしていく必要があります。
したがって、片頭痛改善のためには、ミトコンドリアの機能を本来の姿に戻せばいいだけです。
子供の片頭痛を理解するために・・
これまで述べましたように、人は一生かけて解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー生成系をシフトさせていきます。子供時代は解糖系が優位ですが、大人になるにつれ、1対1に調和していきます。60代から70代になると、解糖系が縮小しミトコンドリア系が拡大し、最期を迎えます。とくに、10歳以下では、これが顕著になっています。
子供は解糖系ですので、瞬発力できびきび遊びますが、乳酸が溜まり易くすぐ疲れます。 エネルギー効率が悪いので、10時や3時のおやつも含めて沢山食べる必要があります。
成長とはまさに全身で活発に細胞分裂が起こっていることです。こういう子供特有の性質は大体18歳から20歳で終わり、成長が止まります。
私達は心配事が続いたり忙しすぎて寝不足が続いたりすると、低体温や低酸素になります。このようにして、エネルギー産生系は解糖系になってしまいます。
子供の片頭痛の特徴として、特に10歳以下の子どもに、急性的な頭痛が起こることがあります。つい先程まで元気に遊んでいたと思ったら、急に顔面蒼白となって元気がなくなり、しばらくすると何事もなかったかのように再び遊び出したりします。
片頭痛の発作が生じると眠くなり、また睡眠によって痛みが治まることがあります。
朝ごはんを食べないことが、片頭痛の発作に引き金になるとされています。
これまで述べましたように、10歳以下の子供では、エネルギー産生系は解糖系が主体になっていることから、つい先程まで元気に遊んでいても、すぐにエネルギー切れになります。片頭痛の子供では、生まれつきミトコンドリアの働きの悪さを母親から受け継いでいるため益々、エネルギー産生系は解糖系が主体となるため、運動中に、容易に、活性酸素が生み出されることによって、片頭痛発作を誘発してきます。
ここに、朝ご飯を抜けば、エネルギー源となるブドウ糖が足りなければ、体操の授業後には、まさにガス欠になってしまい、発作を誘発させてきます。
一眠りした後に頭痛が軽快することはよく経験されます。これは、寝ている間に、活性酸素等で傷ついたミトコンドリアが修復されることによって、頭痛が軽快したものと思われます。
富永病院・頭痛センターの竹島多賀夫先生によれば、大人の片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪するとされます。
先述のように、20~50歳代では、解糖系とミトコンドリア系の比率が1対1(年代により、多少の比率は変わります)、60歳代以降ではミトコンドリア系が主体となります。
このように、60歳以降では、解糖系がほとんど機能しなくなるため、本来であれば(トリプタン製剤が片頭痛治療の世界に導入される以前の時代では)、片頭痛は自然に消滅していましたが、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤が導入されて、これを発作の都度頻繁に服用することによって、ミトコンドリアの機能を悪化させることによって、なお解糖系のエネルギーシステムが残存することによって、片頭痛が継続してきます。なかには70歳過ぎても発作に苦しめられる場合もあります。
このようにトリプタン製剤が導入されて以降様相が変化してきています。
20~50歳代では、解糖系とミトコンドリア系の比率が1対1(年代により、多少の比率は変わります)であることから、解糖系が同比率で働いていることによって、この年代では片頭痛発作を繰り返すことになります。
抗酸化物質の問題
私達の体には活性酸素を取り除く手段として、抗酸化物質が備わっています。
このなかで、スーパー・オキサイド・ディスムターゼ SODの産出能力は25歳から下降しはじめ、40歳を過ぎて急速に低下することがわかってきました。
コエンザイムQも同様に40歳を境に減少してきます。
この生体に備わった抗酸化物質を補う目的で抗酸化食品を意識して摂取しなくてはなりません。抗酸化食品は活性酸素を除去します。こうしたことから、抗酸化物質の摂取不足はミトコンドリアの働きを悪化させることになります。
日常的にストレスが持続すれば・・
日常的にストレスの多い忙しい生き方が続いていると、交感神経刺激により血管は収縮し血流障害(低酸素)と低体温、高血糖を招きます。
ですから、ストレスを少なくして(ストレスにうまく対処して)、副交感神経優位の状態に戻していかなくてはなりません。
さらに、ストレスはマグネシウムを枯渇させてくることになります。
マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込んだカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ出ていけません。このために、カルシウムはミトコンドリア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンドリア内カルシウムイオンの増加が起こります。このようにして、ミトコンドリア内カルシウムイオン濃度を薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎますと、ミトコンドリアの調整機能は破壊されてしまいます。その結果、調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。
片頭痛では、ミトコンドリア機能低下が生まれつき存在するために、ミトコンドリアはマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。
インスリンの作用を応援する必須主要ミネラル「マグネシウムMg」
マグネシウムMgは、体中のインスリンの作用を応援する役割を持っています。
つまりインスリンの感受性を正常に保つように働きます。
人が食物を摂取すると腸からエネルギー源であるブドウ糖が吸収され、ブドウ糖は血液中に入ります。インスリンが細胞に働きかけてブドウ糖が細胞に取り込まれると、血液中のブドウ糖濃度が低くなります。
マグネシウムMgは、細胞がブドウ糖を取り込む際の酵素チロシンキナーゼの働きをよくします。インスリンが細胞に働きかけ、ブドウ糖が細胞に入りやすくなります。その結果、血糖値が下がります。
このため、日常的にマグネシウムの摂取量が不足すると脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンの分泌量が低下します。
アディポネクチンの不足は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満)を招きます。
また、インスリンの機能が低下し、糖質と脂質の代謝が悪くなるため血糖値が上昇し、「高血糖」を引き起こすことになります。
また、細胞は常にカリウムやカルシウム、ナトリウムを出し入れしていますが、マグネシウムMgは、出し入れするポンプの働きをなめらかにする作用があります。このポンプが活発になるとエネルギーが消費されるので、ブドウ糖の消費にもつながります。
マグネシウムMgは細胞レベルの運動を活発にしてくれるのです。
マグネシウムMgは血管の働きにも作用しています。
マグネシウムMgが不足すると血管が収縮してしまい(低体温、低酸素を招来します)、血圧が上がるのです。マグネシウムMg不足は交感神経の緊張状態を作るので、神経という面からも高血圧につながってしまいます。
私達の生活環境は、マグネシウムが不足しやすい状況にあります。
日本人には慢性的にマグネシウムが不足しています。その原因は、昔と比べ欧米化した食生活にあります。
厚生労働省「平成21年国民健康・栄養調査」によると、マグネシウムの平均摂取量は20歳以上の男性では264mg、20歳以上女性では234mgです。
食品からの摂取量だけで男性では100mg前後、女性では50mg前後のマグネシウムが毎日不足していると推定されます。
日本人のマグネシウム不足の原因として「食生活の“欧米化”」と「精製塩の過剰摂取」を挙げられています。粗塩にはマグネシウムをはじめとするミネラルが多く含まれます。
また、塩分の過剰摂取により、体内からのマグネシウムの排泄が増えると、マグネシウムは不足気味になります。その他、マグネシウムはストレスが加わると尿中にたくさん排泄され、さらに不足傾向になります。ストレスにさらされる現代人は、マグネシウムが不足しやすい生活になっているのです。
以上のようにして、解糖系が働きやすい環境である、「低体温、低酸素、高血糖」の3条件が引き起こされてきます。
このように、エネルギー産生のしくみには、解糖系とミトコンドリア系の2つのがあります。この、両者の調和がとれてこそ、健康が保てるのです。
解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー産生のバランスがとれた生き方を心がける必要があります。
このようにして、20~50歳代では、エネルギー産生のしくみの解糖系とミトコンドリア系のバランスがとれなくなり、解糖系に傾くことによって、いつまでも片頭痛発作を繰り返すことになります。
解糖系が働きやすい環境は、低体温、低酸素、高血糖の3条件です。
主として解糖系でエネルギーを得ている「低体温」「低酸素」「高血糖」の状態が、エネルギーの低下した状態なのです。
このため、片頭痛改善のためには、解糖系が働きやすい環境である、低体温、低酸素、高血糖の3条件を改善・是正することに尽きます。
主として解糖系でエネルギーを得ている「低体温」「低酸素」「高血糖」の状態が、エネルギーの低下した状態なのです。この「低体温」「低酸素」「高血糖」を改善することなしには、治療効果が上がりにくいし、治療効果も長続きしにくいのです。
治療効果を上げ、治療効果を長続きさせていくには、体温を上げ、酸素を多く取り込み、血糖を下げる必要があります。このような状態になると、解糖系と比べて効率の良いミトコンドリア系のエネルギー産生が上がって、エネルギーが高まっていきます。
このエネルギーが高まった状態(病気になる以前の状態)になると、治療効果は上がりますし、治療効果が長続きするようになります。また、治療をしなくても、体が勝手に治していくという本来の状態に戻っていくわけです。自然治癒力が働く状態です。
エネルギー効率を上げる方法
体温を上げるには、体を冷やさないことです。冷蔵庫から出してすぐの食べ物や飲み物を避ける、体を冷やす服装をしないことです。また、湯たんぽやカイロや入浴で体を温める、適度な運動を心がけるといったことを行ってください。
酸素を十分に取り入れるには、深呼吸です。深呼吸は酸素を十分に取り入れるだけでなく、横隔膜を大きく動かすので、静脈血やリンパ液の流れをよくします。また、姿勢に注意してください。猫背や前屈みの姿勢ですと、胸郭を大きく開いての深呼吸ができなくなります。
さらに、食事に気をつけてください。エネルギー源になるのは、糖質(炭水化物)と脂肪です。解糖系でもミトコンドリア系でも、糖質が胃や腸で分解されたブドウ糖をエネルギー源としています。消費エネルギーのうち、およそ60%は糖質が望ましいといわれています。現代の食生活は、主食である「糖質(炭水化物)」が少ない状態になっています。
睡眠も、エネルギーと大きなかかわりがあります。脳の重さはおよそ体重の2%ほどですが、消費するエネルギーは、目覚めているときで、体全体の20%ほどだといわれています。起きている間は、エネルギーをつくり出して心身を活動させているわけですが、睡眠中はその作用を抑えてエネルギー源を保存しています。深いノンレム睡眠では、エネルギーの消費量は、目覚めているときの40%程度に下がっているそうです。したがって、睡眠時間が短いと、エネルギーを消費しやすくなります。
また、前向きな「プラス思考」も、行動を促し、結果として体温を上げていきます。うつ状態で低体温の方でも、プラス思考ができるようになって、行動を起こすことができたら、体温が上がってうつの状態から抜け出すことができます。
もっとも、「低体温」「低酸素」「高血糖」はバラバラで現れているわけではありません。 体温が上がってくれば、低酸素の状態から抜け出し、血糖値も下がります。酸素を取り入れる呼吸をすることで、体温も上がり、血糖値も下がります。
ミトコンドリアが喜ぶ生活
ミトコンドリアがつくるエネルギーで人間の生命は維持されている
我々の体は、嫌気性(酸素が嫌い)代謝の生命体と、好気性(酸素が好き)代謝の生命体が融合してできているといわれています。
20億年ほど前までは、地球上に酸素はほとんどなかったそうです。しかし、光合成を行うシアノバクテリアの出現により、酸素が増えてきました。私たちの祖先であった嫌気性の生命体は、酸素が増えてきた地球環境を生き延びるために、好気性の生命体を合体させることに成功したということです。
生物の細胞の中には、必ずミトコンドリアが共生しています。このミトコンドリアこそ、私たちの祖先が取り込んだ好気性の生命体なのです。
人間は60兆個の細胞からなるといわれていますが、1つの細胞に、複数個のミトコンドリアが存在しています。
細胞分裂がさかんな細胞にはミトコンドリアが少なく、細胞分裂をしない、あるいは細胞分裂が少ない細胞にはミトコンドリアが多く存在しています。ミトコンドリアが少ない細胞の代表が精子です。ミトコンドリアの多い細胞の代表が卵子、心筋、脳などです。
解糖系とミトコンドリア系のところで、これまでも述べていますが、エネルギー(ATP)を得るには、解糖系とミトコンドリア系の2つの働きがあります。酸素を必要とせず、糖分(ブドウ糖)からエネルギーをつくるのが解糖系です。ミトコンドリア系は、糖分や脂肪などを原料にして解糖系の19倍の効率でエネルギーをつくりだします。このときに、酸素が必要となります。
生物は、食べて消化・分解した栄養(ブドウ糖など)と酸素を、血液中の赤血球に乗せて、60兆個の細胞に運んでいるといわれます。しかし実態は、細胞に共生しているミトコンドリアにブドウ糖と酸素を運んでいるわけです。この栄養と酸素から、ミトコンドリアがエネルギーをつくりだすわけです。
エネルギー(ATP)がなければ、生物は活動できません。ATPをいかにつくりだすか、しかも効率のよいミトコンドリア系からつくりだすかが、病気を防ぎ、若さを保つ秘訣になります。そのためには、ミトコンドリアが喜ぶ状態に体を保つ必要があります。
ミトコンドリアを喜ばせる6条件
ミトコンドリアが喜ぶ状態は、以下になります。
酸素が多いこと
体温が高いこと
腹八分目
軽い運動
日光を浴びること
野菜に含まれる微量放射線(カリウム40)があること
反対に、ミトコンドリアが嫌う状態は、以下になります。
酸素不足
低体温
満腹
運動不足
日光を浴びない
野菜不足
つまり、深呼吸によって酸素を取り入れ、体温を高く保ち、腹八分目にし、軽い運動を行い、日光を浴び、カリウム40が多く含まれるキャベツなどの野菜をたっぷりとることです。
ミトコンドリア系が十分に働いていない病気の代表がガン、糖尿病、片頭痛です。これらの病気を改善、あるいは予防するためには、「自分が喜ぶ生活習慣ではなく、ミトコンドリアが喜ぶ生活習慣」を意識してください。
ミトコンドリアが喜ぶ生活は、病気の改善や予防だけでなく、若さを保ち長生きする秘訣でもあります。