頭痛 あれこれ -11ページ目

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 前回の、一般的にはうつ患者さんからは「上から目線の医師」として忌み嫌われる姿を掘り下げて考えてみることにします。ここを明確にしませんと、誰もから慕われ、好感を持たれる医師像が極めて曖昧になるからです。そうでなければ、現状とは何ら進展がみられないからです。


病気の原因の90%が活性酸素

 

 活性酸素に関しては今から50年以上前に米国の生化学者フリードビッヒ博士によって解明され、その後世界各国で研究が行われてきました。
 その結果、人が罹るあらゆる病気に活性酸素が関与していることが明白になりました。 今や病気の90%は活性酸素が原因だということが判明したのです。それでは残りの10%は何かといいますと、風邪やエイズ、また最近増えてきている結核などの菌が体内に入っておこる病気、すなわち感染症です。

 人は呼吸することによって空気中から酸素を取り入れています。そして細胞はその酸素を使って栄養分を分解し、生きていくためのエネルギーを作り出しているのです。ところが、この過程で吸った酸素の2~3%が体内で電子の欠けた悪い酸素になります。これが「活性酸素(フリーラジカル)」といわれている酸素なのです。

 活性酸素のイメージとしてはなにか生き生きとした元気のよい酸素と思われるでしょう。ところが大変攻撃的な性格の激しい酸素なのです。そして正常な酸素から電子を奪い取ります。するとこの奪い取られた酸素もまた活性酸素になってしまい、他の正常な酸素を攻撃し電子を奪い取りにいくのです。こうしてどんどん連鎖反応をおこして活性酸素が一気に増えていくのです。

 
私たちの体は約60兆個の細胞で出来ている


 私たちの体は約60兆個の細胞で出来ています。髪の毛も皮膚も血管もそしてあらゆる臓器が、一つ一つの細胞から成り立っているのです。ですから健康であるということは、この細胞一つ一つが元気であるということなのです。活性酸素はこの細胞に攻撃をしかけ、細胞を酸化させてしまいます。この細胞が酸化させられることによって、老化や癌、動脈硬化などの生活習慣病が引き起こされるのです。

 あらゆる臓器が細胞の集合によって構成されているのですから、もしも仮に皮膚の細胞が酸化されたとすると皮膚の病気になるということです。同じことが目、胃、腎臓、脳等におこれば各々の病気になるということです。

 酸化されるということがどういうことかといえば、例えば、りんごを半分に切ってしばらく放っておくと、切り口が赤茶色に変色します。または、鉄クギは半年、1年するとしだいに赤く錆びついてきます。こういう状態が我々の体内で起こっているということです。

 ところで、人が老いることを老化していくと一般的には捉えられていますが、年を一年一年積み重ねることが果たして老いるということでしょうか? そうではなくて実は血管が老化することなのです。この血管が老化していくことに活性酸素が深く関わっているのです。活性酸素によって血管が酸化され硬くなり、脆くなる。しかも、活性酸素によって酸化されたコレステロールや中性脂肪がたまって血管を狭くしてしまうのです。
 そこを血栓(血の塊)が詰まれば一巻の終わりです。心臓の動脈が詰まれば狭心症や心筋梗塞を引き起こします。また、脳で動脈が詰まれば脳梗塞であり、血管が破れれば脳溢血です。

 このような血管が老化するという現象は中高年に多く見うけられましたが、昨今は、若い世代でも活性酸素を体の中にたくさん作るような生活が習慣化されて、早くから血管が老化しているのです。従って、20代30代で既に40代50代の血管になっている若者が、非常に増加しているのです。まさに老化がこの世代から始まっているのです。

 このことから現在、日本は長寿社会かもしれませんが、これから先10年もすれば日本の平均寿命は70代に下がっているかもしれないと予測されるのです。


活性酸素はどのような仕組みで発生するか


 さて、いったい活性酸素とはどのような仕組みで発生するのでしょうか?
 これを説明するためには、どうしても化学構造を持ち出さねばなりません。少し学生に戻って科学の授業で習ったことを思い出してみましょう。
 酸素分子(O2)は酸素原子である(O)が2個結びついて1個の酸素分子を形成しています。

 この酸素原子(O)は、その中心に1個の原子核があって、その周りを8個の電子が回っています。酸素原子の場合は電子の軌道が2つあり、この8個の電子は内側の軌道に2個、外側の軌道に6個が回っているという構造になっています。
 普通、電子は2個がペアになって存在しており、それが最も安定的な形だとされています。ところが、酸素原子の外側の軌道を回る6個の電子のうちの2個だけはペアになる相手を持っていないのです。そこで同じようにペアとなる相手を探している他の酸素原子の外側の2個の電子とくっついて2つの酸素原子が結びつき酸素分子(O2)となって安定するのです。

ところが、なにかのはずみで、くっつくことが出来ない、ペアの組めない電子(不対電子)ができるのです。そしてなんとかペアの相手を見つけて安定しようとします。そのために、他の物質の分子から電子を掠奪しようと襲いかかります。 これが活性酸素です。
 つまり、普通の酸素がなにかのはずみで、ペアとなる電子を欠き、掠奪者となった酸素が活性酸素なのです。この掠奪者のことを”フリーラジカル”といいます。

 一方、掠奪された側も活性酸素となって他の分子を襲って電子を掠奪します。するとまた掠奪された分子が他の分子から電子を奪い取ります。こうして、次から次へと連鎖反応をおこしていくのです。この電子が奪われていくことを”酸化”と呼び、逆に電子を奪って安定することを”還元”と呼んでいます。

 つまり、このフリーラジカルが他の分子から電子を奪いとることにより、その分子は「酸化」してしまうのです。酸化するということは、金属の腐食や食べ物が腐ることと同じ意味です。そして酸化が進めば、鉄がサビつくように細胞をサビつかせるのです。

 そしてこの”活性酸素”は非常に過激で酸素力が強烈なのです。この強烈な酸化力を持って、体内の細胞を次から次へと酸化していくのです。この超酸化力によって私たちの体内にある血管や臓器がボロボロになっていくのです。


活性酸素には4つのタイプがある


 以上の仕組みで活性酸素ができて、私達の細胞を酸化させていくわけですが、じつは活性酸素には次に上げる4つのタイプがあり、それぞれ違った悪さをするのです。


・ スーパーオキサイドラジカル

 

 最も一般的な活性酸素で、体内では、酸素分子から最初に生成されます。酸素分子の一方の原子にあたる電子が一つ欠けたもので大量に発生します。活性酸素の中では代表的存在です。
 この活性酸素は体の中の細胞内でミトコンドリアが酸素からエネルギーを作るときに生成されるので、私たちが呼吸をしている限りこの活性酸素の発生を避けることは出来ません。
 放っておくと細胞を傷つけたり破壊したりして、生体に大きな損害をもたらすことになります。また、白血球が体内で侵入してきた細菌などを殺すときの武器にもなり、このとき大量発生します。

 

・ 過酸化水素

 

 酸素原子2つと水素原子1つがくっついて出来た活性酸素の仲間で、極めて不安定な性格をしており、非常に強い毒性をもっています。
  過酸化水素は「オキシドール」とも呼ばれています。「オキシブル」という商品名で売られている消毒剤をご存じでしょうか。この水溶液を怪我したときなどに、傷口にかけると白い泡ができますが、これは過酸化水素が傷口のばい菌をその毒性で酸化し、殺菌しているという証拠なのです。


・ 一重項酸素

 

 酸素分子を構成している2個の酸素原子の片方の電子がもう一方の不対電子軌道に入ってしまった結果、片方の不対電子軌道が空いてしまった状態の活性酸素。悪質な性格をしており、反応性が強いために次々と他の活性酸素に姿を変えてゆく性質をもっています。  一重項酸素は、放射性(X線)や紫外線に皮膚があたると皮下組織で大量に発生し皮膚がん等を引き起こす非常に怖い活性酸素であり、肌にとっては大敵です。


・ ハイドロキシラジカル

 

 過酸化水素水を半分にしたような化合物で、酸素分子が分裂して互いに独立したうち2個の酸素原子で、それぞれ酸素原子1つと水素原子1つがくっついた状態の活性酸素です。 この活性酸素は最も酸化力が強く、このハイドロキシラジカルが多くなると人を高い確率で死亡させるといわれています。

 
こうして活性酸素は細胞を攻撃する


 人は空気を吸って、体内に酸素を取り入れています。その酸素を使って食物を体内で代謝させることによってエネルギーをつくり出しているのです。その役割を果たしているのが細胞内のミトコンドリアです。
 ミトコンドリアが酸素の新陳代謝によりエネルギーを作り出すときに、酸素の一部が活性酸素になります。

 私達の体は60兆個の細胞から成り立っています。ですから、この一つ一つの細胞が酸素を使って栄養を代謝するたびに活性酸素を発生させているということになります。ということは、人間は生きている限り、活性酸素から逃れることはできないということです。
 では、どのようにして活性酸素は細胞を傷つけ病気を生みだしているのでしょうか?


細胞膜が活性酸素によって酸化される


 細胞は不飽和脂肪酸という脂肪の膜で覆われています。この細胞膜が活性酸素によって酸化され、有害物質である過酸化脂質にかわります。
 “酸化される”ということは、例えば、天ぷら油を使ったあとそのまま放っておくと、その油は日が経つにつれ、黄色く変色し、ボロボロになります。鉄クギを屋外へおいておくとやがて赤く錆びついてしまいます。これが過酸化脂質なのです。不飽和脂肪酸が空気中の酸素によって”酸化”して”過酸化脂質”になったというわけです。
 私達の体内においても、同じようなことが起こっています。活性酸素によって体内の細胞膜(不飽和脂肪酸)が過酸化脂質に変わると、それが血管の壁にこびりつき、やがては血管を狭くし、塞いでしまいます。私達は血液によって酸素や栄養が体の隅々まで運ばれているのです。ですから血管が塞がれてしまうと、供給不足になり、各細胞は衰えていきやがては死滅してしまいます。
 もちろん、酸化されるのは血管だけではありません。内蔵のあらゆる器官から皮膚にいたるまで活性酸素による酸化は体のすべてでおこるのです。

 

癌も活性酸素が原因で発生する


 細胞の外側を覆っている細胞膜が活性酸素によって過酸化脂質に変化することにより細胞膜自体が破壊されると、活性酸素が細胞内に侵入し核のある「DNA」に直接襲いかかります。「DNA」は人間を正常な体に構成するために一つ一つ作り上げるための、いわば遺伝子の基になるものです。この「DNA」が活性酸素によって狂わせられて、突然変異の遺伝子をつくり出してしまいます。
 この変異した細胞がガン細胞なのです。


 活性酸素がいかに私達の体を蝕んでいるかご理解頂けたかと思います。

 酸化は私達の気付かないところで常に起こっています。知らず知らずのうちに私達の体は酸化されているのです。そして、老化を促進させ、心筋梗塞、脳梗塞、癌などの生活習慣病を引き起こすのです。人間の体は60兆個の細胞で構成されています。従って胃を構成している細胞が酸化されれば胃の病気になるし、膵臓でおこれば膵臓の病気になり、皮膚でおこれば皮膚の病気になります。

 風邪のウイルスなどによる細菌感染でおこる病気以外はすべてこの活性酸素によっておこるのです。故に現代病の90%は活性酸素が原因であるということになるのです。

 

 「酸化ストレス・炎症体質」の形成過程

 

  ミトコンドリアの機能を悪化させる要因には、以下のようなものがあります。


  ミトコンドリアの機能を悪化させる要因(表1)。


 1.生活習慣の問題


   睡眠不足・・睡眠の重要性
    運動不足
    食べ過ぎ・過食
   早食い・ドカ喰い・・インスリン過分泌
   薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬


 2.食事内容の問題


   マグネシウム不足
   必須脂肪酸の摂取のアンバランス 
   鉄不足
   野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足
   食生活の欧米化・・腸内環境の悪化


 3.生活環境の問題


   活性酸素
    有害物質


 4.年齢的な問題


     女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下
  

 このような要因を改善・是正しておきませんと以下のようなことから「酸化ストレス・炎症体質」を形成し、慢性疾患の基盤となり、慢性病を引き起こす基盤になってきます。


 細胞内小器官である「ミトコンドリア」は私達に生きるエネルギーを与えてくれますが、反面、活性酸素を最も多く発生する細胞内小器官でもあります。
 ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミトコンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する機能も高まります。
 しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪循環が始まります。


身の回りの活性酸素を生み出す要因


 活性酸素は、「呼吸をする」、「食事を摂る」、「運動をする」など、ごく普通の生活をしているときにも発生します。酸素を取り込み、エネルギーを作る過程で必ず発生するからです。そのほか、白血球が細菌を殺傷するとき、生理活性物質が作られるとき、有害物質(過酸化脂質、残留農薬、食品添加物、抗ガン剤、薬物全般、アルコール、タバコ、大気汚染物質など)を解毒するとき、止まっていた血液が再び流れ出すとき(再環流)、紫外線や電磁波(レントゲンなど)を受けたとき、強い精神的ストレスを受けたときなど、さまざまな要因により発生します。


「酸化ストレス」とは
 

 先程も述べましたように、ミトコンドリアが酸素を取り込み、エネルギーを作る過程で活性酸素は必ず発生します。もちろん活性酸素が体の中で増える一方ですと、人間はたちまち死んでしまいます。
  そのため、私たちの体は活性酸素を取り除く手段を持っています。


 ただ、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、活性酸素の発生が”活性酸素を取り除く手段(抗抗酸化物質)の能力”より常に優位な状態が、いわゆる「酸化ストレス」になります。


「酸化ストレス・炎症体質」とは活性酸素の発生が除去しきれないほど発生してしまう状態のことで、これらが原因で細胞が傷つけられ、さまざまな病気(炎症)を引き起こしてしまう状態・体質のことを言います。


 たくさんのミトコンドリアが余裕を持ってエネルギーをつくる態勢だと、活性酸素はそれほど問題になりませんが、少ないミトコンドリアが必死にフル回転でエネルギーを作ろうとすると、活性酸素がたくさん排出されてしまいます。


 ミトコンドリアは細胞のなかにある小さな器官で、糖と酸素を利用してエネルギーをつくり出す、いわばエンジンのような役割を果たしています。ところが、このミトコンドリアは、エネルギーを出すとき、同時に排気ガスのような「活性酸素」を発生させます。
 自動車に例えると分かりやすいと思います。ガソリンを使ってエンジンを動かしたら、排気ガスが出ます。同じように、ミトコンドリアも、エネルギーを作り出したら、排気ガスと同じようなものが出てしまうのです。それが、活性酸素です。
 例えば、360ccの軽自動車をブンブンふかしていたのではダメで、エンジンを大きくして(=ミトコンドリアを増やして)少ないガソリンで効率よくエネルギーを出し、排気ガス(活性酸素)の少ない良質なエンジンを積んでおくことが重要になってきます。
  生活環境の影響や年齢を重ねると、このミトコンドリアの数が減少していき、さらにミトコンドリアの働きも低下していきます。
  ガソリンばかり食ってあまりエネルギーが出ないような質の悪いエンジンになってしまうわけです。


 少量の活性酸素は有効に役立てられますが、活性酸素が増えてしまうと、害を及ぼします。

 「酸化ストレス・炎症体質」は、ぼろぼろに錆びた金属に例えられる、「錆び体質」と言われるものです。ほとんどの現代人が抱える、さまざまな慢性病や生活習慣病の根底にある慢性病の源となっているものです。
  冒頭で述べたように、現在では人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われています。


 「酸化ストレス・炎症体質」は長い間の生活習慣などにより起こり、特効薬を飲んだからといって直ぐに治るようなものではありませんし、特効薬などはありません。


  以上のように「酸化ストレス・炎症体質」とは、体の中から活性酸素がどんどん産生され、抗酸化作用が全く追いつかない状態で、いつも“腫れたり”、”痛みがでたり”、“熱がでたり”、”発赤したり”さらには、高血圧になったり、心臓や脳血管で血栓を起こしたり、コレステロール値が高くなったり、アレルギーになりやすかったり、風邪や癌などに罹りやすくなったり、頭痛を起こしやすくしたり、いろんな病気に罹りやすい”体質”のことです。


 この「酸化ストレス炎症体質」を基盤として、“内臓脂肪”の要因が加わると糖尿病に、生まれつき“ミトコンドリア活性が弱い”と片頭痛に、“脳内セロトニンが低下する”とうつ病やパニック障害に、“発ガン物質を摂れば”、ガンになり、”βアミロイドが蓄積すれば”、アルツハイマー病になってきます。
 このように、生活習慣病や慢性疾患と言われている病気の根底にあるのが「酸化ストレス・炎症体質」で、多くの場合「遺伝的体質」や「原因不明」という言葉で表現されているのが現状です。


 最近では、酸化ストレスが高い状態が続くと、私たちの体を構成する全てのDNAやタンパク質、脂質、糖質が酸化されていきますが、現在ではさまざまな病気において、これらの酸化ストレスにより変化した分子が、蓄積していることが分かってきました。
  例えば糖尿病では、酸化された糖とタンパク質が結合し、異常な糖化タンパク質が増えていることが分かっています。また、動脈硬化を起こした血管では、酸化された脂質(過酸化脂質)が蓄積し、血管の内腔が狭くなり、血液が流れにくくなっています。
  さらに、アルツハイマー病やパーキンソン病など、高齢者に多い脳の病気でも、酸化したタンパク質などが蓄積していますし、酸化ストレスによって細胞が損傷を受けると、その細胞はやがてガン化します。
 このように、強い酸化ストレスにより酸化された生体内の分子は、さまざまな病気の原因となっている可能性があるのです。


「酸化ストレス・炎症体質」を改善させるためには・・


 「酸化ストレス・炎症体質」を形成させないことです。これが、最も大切な点です。
  そのためには、その根底にある次のような問題を解決する必要があります。


  1)毎日の食事とともに摂取される有害物質をとらない
   2)腸内環境を整える
    3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる
    4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスをよくする
    5)インスリン過剰分泌を起こさない

 
 当然のこととして、表1に対する対策も必要になってきます。

 

ヒトが老化し、病気になる根本原因

  …「糖化」と「酸化」を防ぐ


 長寿大国とよばれて久しい日本。しかし、認知症や寝たきり老人など長寿化に伴い様々な健康問題が顕著になっており、老後の人生に大きな不安を抱える人も少なくないでしょう。病気を予防し若々しく生きるためには、体内で起こる「酸化」と「糖化」をいかに防ぐかが重要です。


 血糖値が急激に上下する現象「血糖値スパイク」


 血糖値は食事や運動、排泄、緊張、休息、睡眠などにより、絶えず変化しています。血糖値の指標として一般的によく用いられるのは、空腹時血糖(FBS)とヘモグロビンA1c(HbA1c)です。空腹時血糖とは、早朝の食事前の血糖値です。ヘモグロビンA1cは、赤血球の色素であるヘモグロビンに糖(グルコース)が付着して起こす反応(糖化反応)のことで、ヘモグロビンの総数のうち、何パーセントが高血糖と付着したかを表わします。ただし、これは過去3ヵ月間の血糖値の平均値です。


 実は、この「平均」がくせものなのです。血糖値の高いときと低いときがあっても、平均をとればその中間になります。平均値だけでは、本当の血糖値の上がり下がりはわかりません。


 近年、血糖値には急激に上下する現象があることがわかってきました。落差が60mg/dl以上の場合、「血糖値スパイク」といいます。スパイクとは、「大きな釘」の意味で、急激に血糖値が上がり、その後、ストンと下がってしまう現象です。


 実は、こうした血糖値スパイクの方が多くいることもわかりました。問題なのは、血糖値が下がったときです。急に血糖値が下がりすぎると意識を失ったり、脳の機能が損なわれて植物状態になったり、最悪の場合には死に至ることもあります。


血糖値スパイクは「老化」や「生活習慣病」の大元


 ヒトが病気になったり老化する原因をご存知でしょうか。それは「糖化」と「酸化」の作用によるのです。


 糖化は、血糖値スパイクにより引き起こされます。糖化とは、身体を構成しているタンパク質が体温と血糖値の変化によって変性してしまうことです。いわば、身体のタンパク質が「コゲ」た状態です。


 そこに酸化が加わります。酸化とは、鼻から吸った酸素が代謝の過程で活性酸素に変わり、細胞やDNAを「サビ」させてしまう反応です。


 代謝とは生命を維持するための営みです。簡単に説明すると、私たちは呼吸によって鼻から酸素を取り入れます。肺のなかで酸素は赤血球のヘモグロビン(血色素)と結合して、全身をめぐり、各細胞に酸素を送り届けます。


 一方、口から入った食事は、消化吸収されて血液に入り、肝臓や筋肉のなかに貯め込まれます(ここでインスリンが作用します)。貯蔵された糖(グルコース)は、必要に応じて血液に入り、各細胞に届けられます。


 細胞のなかの工場であるミトコンドリアは、ブドウ糖を酸素と結合させて燃焼させ、TCAサイクル(クエン酸回路)を通して、細胞が直接使えるエネルギー源ATP(アデノシン3リン酸)をつくります。


 この代謝の副産物として活性酸素(O3)ができてしまいます(吸った酸素の5%)。この活性酸素が過剰になり、酸化を起こす要因になることを「酸化ストレス」といいます。 この酸化ストレスが細胞やDNAを「サビ」させます。

 活性酸素は身体に入ってきたウイルスや細菌を殺すといったよい働きもします。しかし、老化や生活習慣病の原因となったり、疼痛物質や疲労物質、ガン細胞のもとをつくるなどのよくない働きもいろいろとします。ちなみに、タバコはこうした酸化ストレスをつくる要素になります。


 私たちの身体には、グルタチオン(ホルモン)、ビリルビン(ヘモグロビンが代謝されてできたもの)など、抗酸化力を持つ物質が多種あります。また、野菜や果物などの食材には、抗酸化力のあるものが多々あります。これらが身体の免疫力などの自然治癒力を高めてくれます。


 健康を保ち、若々しさを保つためには、酸化ストレスと抗酸化力のバランスをとることが重要なのです。


動脈硬化や脳梗塞などのリスクを高める「糖化ストレス」


 糖(グルコース)は、私たちが生きてゆくために必須の物質です。しかし、血糖値スパイクのため、糖の代謝に異常が起こると、その一部が反応しやすいアルデヒド(R-CHO)となり(摂取した糖の0.1%)、体内のタンパク質を変性(コゲ)させてしまいます。これが「糖化ストレス」です。糖化ストレスは血管の壁を傷つけたり、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞を起こしやすくします。

 

 糖化ストレスには、段階があります。最終段階がAGEs(エイジス)という物質をつくり出すことです。私たちは、より早期の糖化ストレスを測定できる方法はないかと模索し、特殊な顕微鏡で血液を生きたまま観察することに成功しました。その結果、糖化の初期状態を見ることができるようになりました。
 

酸素を運べない「ドロドロ血液」が全身に及ぼす悪影響


 私たちの身体の血管のなかには、体内の細胞にくまなく酸素を運ぶためにたくさんの赤血球があります。この赤血球は骨髄で毎日2000億個つくられています。赤血球の寿命は約120日間で、その間に20?30万回ほど全身を循環して酸素を運んでいます。


 古くなった赤血球は脾臓(ひぞう)や肝臓などのマクロファージ(白血球の1種)に捕捉され、分解されて壊れてゆきます。ウンチや小水が黄色いのは、壊れた赤血球の残骸(ビリルビン)の色です。


 健常者の血液を見ると、赤血球は1個1個独立して血液中を流れています。しかし、糖化が起こると、本来はバラバラに存在している赤血球が変形したり、硬貨が連なったような形になる連銭形成(れんせんけいせい)を起したり、ついには、団塊化したりします。変形したり連銭形成した赤血球では、酸素を十分に運べません。

 
 私たちの身体は37兆もの体細胞でつくられており、血糖(グルコース、ブドウ糖)は、細胞のエネルギー源となります。細胞のミトコンドリアが、ブドウ糖(血糖)を酸素に結合させて(燃焼させて)、細胞が直接使えるエネルギー源ATP(アデノシン3リン酸)をつくります。いわば、ブドウ糖が原油なら、ATPはきれいなガソリンです。先述したように、これが生命を維持する代謝です。


 その作用に必要な酸素が赤血球によって運ばれなくてはたいへんなことになります。一般的にいう「血液ドロドロ」では、正しく酸素を運べません。すなわち、生きてはいけません。身体の免疫力や自然治癒力が衰え、さまざまな部位に不調をきたすようになります。その大きな原因は血糖値スパイクにあったのです。
 


「疲労物質=乳酸」はもう古い

 「疲れ」はどこから来るのか


 そもそも「疲れ」って何なのでしょうか? 疲れのメカニズムを解説します。


 近年、ストレスの過重蓄積による過労死やメンタルヘルスが問題視される中で、これらにいかに対処するかという気運が高まり、「疲労の科学」 が注目を集めています。しかし、「なかなか疲れが取れない」ことを理由に病院を受診しても、検査で原因が判明することはほとんどありません。検査で異常が見つからないことから、精神科や心療内科を受診する人もいます。しかし、そこでも疲れを説明できるような病気が見つからないことが往々にしてあります。そもそも「疲れ」って何なのでしょうか?どのようにして起こるのでしょうか? 疲れのメカニズムについて解説します。


■疲労には2種類ある


「疲れる」ということはヒトが生命活動をしていく上で必要なサインで、過剰な活動に よって疲弊したり病気になるのを防ぐための重要な症状なのです。


 疲れるサインを無視して働き続けたり体を酷使し続けると、過労死やうつ病、生活習慣病をはじめとする様々な病気が起こってしまいます。じつは、その「疲労」は、カラダとアタマを守るための機構として2種類に大別されます。


 一つはカラダの疲労、運動などによる肉体的な疲労「末梢性疲労」、もう一つは肉体的な限界に至る前に感じられる疲労「中枢性疲労」です。この2種類の疲れは表裏一体の関係にありますが、『今、自分がどちらの疲れを強く感じているのか』を自覚することで、その時有効な疲れの対処法が変わりますので、疲れを感じた時、まずこの2種類を意識するようにしましょう。


 それを踏まえた上で、疲労の原因が何かを解説したいと思います。


■「疲労物質=乳酸」はもう古い!?


 これまで「乳酸」が疲労の原因物質と考えられていましたが、近年の研究によりその考え方は過去のものになりつつあります。従来、乳酸は筋肉の中では疲労回復を遅らせると考えられてきました。血中に放出された乳酸は体内pHの低下(体液のバランスが酸性に傾く)を生じさせることに加え、乳酸が脳にも回り、これが筋肉疲労を脳に知らせているシグナルで、かつ脳の疲労の原因物質であるかのように極めて単純に考えられた時代もありました。


 しかし、乳酸は疲労を抑制するように働く、という従来と真逆の研究成果が注目を集めています。乳酸は運動により筋内から血中に放出されますが、筋肉や心臓に取り込まれ、エネルギー源として利用されることが判明しました。また、脳でも乳酸が神経細胞周囲の細胞によって作られますが、疲労の抑制やエネルギー物質として利用されることがわかってきたのです。


■末梢性疲労は「カラダの疲れ」!休息することで改善する


 末梢性疲労は「筋疲労」と「末梢神経性疲労」に大別されます。これらの疲労現象は、筋肉に存在するグリコーゲンなどのエネルギー源の枯渇、血液の恒常性の失調(一時的な血流不全など)、調整機能失調(神経筋伝達の遅延)などによって、筋が発揮できる力が減り、俊敏性や巧緻性も低下し、パフォーマンスが低下します。また、筋疲労に引き続いて起こる筋肉痛は、運動中に生じた筋肉の損傷後の炎症に伴う機械的刺激や化学的刺激によって起こり、さらにパフォーマンスが低下します。しかし、末梢性疲労は炎症の収束とともに回復するのが特徴で、十分な休息と栄養を取ることが末梢性疲労を解消するカギになります。


■中枢性疲労は「脳の疲れ」。解消にはストレスのフィルターを鍛えろ!


 一方、中枢性疲労は精神的(ココロ)な疲れで、「痛い」「寒い」などの"感覚"に近いものと言えます。疲労の度合いはカラダやアタマを酷使する量と比例せず、心理的な疲れであることを考えると、理解しやすいでしょう。例えば、スポーツでカラダを酷使した後であっても心地よさを感じることがある一方で、カラダは酷使していないのに長時間続く会議など、ストレスや緊張状態が続くことで、ぐったり疲れてしまうことがあります。このように「ストレスの感じ方」が中枢性疲労には重要になってきます。


 ストレスの処理は主に脳の「前頭前野」と呼ばれる場所で行われ、ここの処理能力はその日の体調やコンディションに影響を受けます。日によって疲れ方が異なるのは前頭前野の「ストレスのフィルター」としての能力が関係しているのです。この処理がうまくいかないと強い疲労や過労死などを生む原因となるのです。逆に、このフィルターを意識して鍛えることで中枢性疲労を改善することができるのです。


■脳の疲れと疲れに伴う症状は「酸化ストレス」が引き起こしていた


 前頭前野で処理されたストレス刺激が脳内で大きくなると、脳の活動が活発になり脳の酸素消費量が増大します。酸素がたくさん使われた後には、その副産物として大量の活性酸素、つまり酸化ストレスが産生されます。通常は酸化ストレスから細胞を守るシステムが働き、活性酸素は除去されますが、処理しきれないほどの酸化ストレスが産生されると、細胞がダメージを受け機能不全に陥ってしまいます。このダメージやストレス負荷が脳の各部位に伝わることで、疲れやだるさを感じたりカラダに異常が生じるのです。


■前頭前野:作業効率が落ちる、やる気がなくなる、寝られないなどの症状が現れます。これは疲労感を増悪させ、さらにストレスがかかるという負の連鎖に陥ります。


■大脳辺縁系:大脳辺縁系にストレス負荷が伝わると、ストレスから身を守るために自律神経、内分泌などを介してストレス反応を形成します。その結果、胃腸の不良、肩こり、頭痛、注意力低下、抑うつ感などが症状として現れます。


■脳内神経伝達:疲労感と脳内の「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質の枯渇は密接に関係しているとされます。脳細胞が酸化ストレスによりダメージを受けることでセロトニンが枯渇してしまい疲労感が増します。うつ病では、このセロトニンの低下がうつ状態の主因と考えられており、セロトニン神経伝達部位でのセロトニンを薬剤によって増やすとうつ状態が改善されることが知られています。


 疲労や精神的ストレスは脳内で活性酸素などの酸化ストレスを生む。前頭前野ではセロトニン分泌が低下し、抑うつ感、疲労感、意欲的か、作業効率低下などを生じさせる。大脳辺縁系では自律神経やホルモンバランスが崩れ、頭痛や肩こりなどの症状が生じる。酸化ストレスを解消するために免疫細胞から「インターフェロン」などの免疫物質が分泌されるが、これは酸化ストレスの処理だけでなく、脳内神経伝達物質である「セロトニン」の分泌も阻害し疲労感に拍車がかかる負の連鎖を生む。


 それだけではありません。酸化ストレスが発生すると、それから体を守ろうとする免疫機構が働きます。例えば、免疫物質の「インターフェロン」は上述のセロトニン分泌を弱めてしまうことがわかっています。B型肝炎、C型肝炎の治療などで用いられた「インターフェロン治療」の代表的な副作用が「うつ病」であったことは多くの人が知るところです。インターフェロンはカラダを守る物質として有益ですが、疲労感やうつ病の原因にもなるのです。


 以上、疲労のメカニズムについて解説しました。日常であなたが「疲れた」と感じるのはカラダの疲れでしょうか?脳の疲れでしょうか?まずは、この違いを意識しましょう。それぞれ、疲れを感じるメカニズムは異なりますし、それに応じた対処法も異なります。さて、どのように対処するのがいいのか、次回解説することにします。


酸化ストレスがうつ病に関係している?


 うつ病は現在、研究中の疾患であり精神疾患として原因はまだ解明されていません。

 症状として、多くは不眠や仮眠、集中力の低下、思考力の減退などがみられます。その他にも、うつ病がいろんな疾患につながる可能性が高いと考えられています。


 現在、研究が進んでいく中で様々な仮説が出てきています。脳の疾患や心理学的なアプローチからメンタル的なストレスが原因とする場合、アルコールや薬物が原因であるという場合なども出てきています。しかし原因が解明されてないため、現在、薬物療法や認知行動療法、運動療法など様々な治療法がとられています。


 実際に、うつ病を診ておられる病院があります。そちらは、食事指導でうつ病を改善している有名な病院なのですが、食事指導の中でも「糖質制限」を行い、糖質による酸化ストレスを抑えています。そして酸化ストレスを抑えることによって、脳の中の炎症性物質と酸化ストレス物質を下げうつ病の改善に成功しているという結果が出ています。


    プロテインがなぜ、有用なのか?
     
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12703604597.html


酸化ストレスとうつ病


 うつ病だから酸化ストレスが上がるのか、酸化ストレスが上がっているからうつ病になってしまうのか、どちらが先なのかは解明されていませんが糖質制限をして酸化ストレスを下げることによってうつ病が改善されるという人は存在します。


それを考えると酸化ストレスとうつ病は関係があると考えられます。


精神的なストレスと酸化ストレス


 うつ病の要因のひとつとして考えられている「社会的ストレス」について、日常的にストレスの多い生活をしているとうつ病になってしまう可能性が高まるといわれています。


 うつ病と酸化ストレスが関係があるのであればメンタル的なストレスも酸化ストレスと関係があるのでしょうか?

 実は、メンタル的なストレスは酸化ストレスを上げてしまいます。仕事や家庭などのストレスが高まっていると、酸化ストレスも上がってしまうのです。


 実は、うつ病と酸化ストレスの関係と同じで、メンタル的なストレスが高まっているから、酸化ストレスが上がるのか。酸化ストレスが上がっているから、メンタル的なストレスが高まるのか。は解明されていません。

 しかし、酸化ストレスとの関係があるのは明らかになっています。


 生活をしていく上で、日常的なストレスを避け続けることは難しいですが、酸化ストレスが上がると老化や疾患につながることを考え、少しでも酸化ストレスを下げる生活を心掛けていただければと思います。

 

 

 

 

 皆さんが好感を持たれる医師像はどのようなものなのでしょうか???

 昨年12月17日午前、大阪市北区の繁華街・北新地にある雑居ビル4階の心療内科・精神科の医療機関「西梅田こころとからだのクリニック」で起きた放火事件。
 この事件に関連して、これまでも


      マスコミで報道されない事実・・
    
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12716680470.html


 を肇として、いろいろな角度から述べて参りました。多くの読者にとっては、私の考えるようなことは全く無関心で、ブログで幾ら小遣い稼ぎをするか、ブログの内容を如何にして世間に徹底しようか、といった本来の趣旨とは異なる方々しか興味をひかず、逆に、こうした方々の格好の餌食に成り下がってしまったようです。

 考えようでは、こうした世間常識しかないが故に、今回のような事件が起きたのかもしれません。
 このような泣き言を言っている場面ではありませんので、本筋に戻します。それは、患者と医師の関係は、どのようにあるべきなのか、についての考察です。
 本来、医師と患者の関係は、患者さんが病気になったときに相談する先が医師です。この場合、病気の種類で異なるためなのでしょうか、ガンであればどこの病院、単なる風邪であれば、どこのクリニックか、・・といったように無意識のうちに選択しています。
 ところが・・ところがです。「頭痛」の場合、脳神経外科のクリニックを受診されたり、神経内科もしくは心療内科を受診されます。裕福な方々では「頭痛外来」を受診されます。お金のない貧乏人は、整骨院・カイロでお茶を濁される方もおられます。しかし、このように通院されたからといって、必ず、好くなる保証はどこにもありません。治しもしないのに高額な医療費だけは毟り取る施設もあります。なかには、生活習慣を見直すだけで、「頭痛」を治す医療機関も多く出てくるようになりました。
 このように、ただ単に「頭痛」だけでも、このような状況に置かれています。


 それでは、今回被害に遭われた医療機関の先生というか医師は、どういった先生だったのでしょうか。先程の記事でも院長の西沢先生を悪く言う患者さんはいないようです。皆さん口を揃えて、大変評判のよい先生ということです。問題は、精神科・心療内科を取り巻く医療環境がどのような医療状況に置かれているのかは、これまで、マスコミでは報道されず、薬物依存、麻薬中毒との関連、等々一変して犯罪組織の恥部へと直結していきます。こうしたなかで、評判のよい先生ほど、必ず”ウラがあります”。
 いずれにしても、精神科・心療内科で、患者受けのする医師像とはどのようなものなのでしょうか? それは、医師の立場から医学的知識を患者さんに押しつけないことが鉄則と思われます。このようなやり方は、”上から目線”とされ、最も忌み嫌われている診療方針とされています。このことをまず、確認しておく必要があります。


      マスコミで報道されない事実・・
    
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12716680470.html


 その上で、患者さん自身のブログを熟読して下さい。それは・・


   「適応障害と鳴りやまない耳鳴り日記」  博多くまさん
    
https://ameblo.jp/remindsounds/entry-12376734140.html


 このブログは博多くまさんが「うつ寄りの適応障害」と診断され、この治療経過を綴ったものです。私の眼からみれば、全経過中にくまさんを悩ませた「耳鳴り」は「脳過敏」のなせるワザであり、絶えず出没する「頭痛」は「脳内セロトニンの低下」によるものです。
「不眠」は、セロトニンやメラトニンというホルモンが関与しています。
   昼夜逆転の生活をしていたり、日中部屋の中にばかりいると、セロトニンとメラトニンの分泌のバランスが崩れ、「不眠症」になったり、「片頭痛」が起きやすくしてしまうのです。
  太陽の光(のような非常に強い光・明かり)を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、代わりに脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発化されるのです。

 毎朝日光を浴びる行為は、セロトニンを鍛えるだけで無く、生活リズムを整えることにもつながります。以下、下の記事をご覧下さい。


  その8 睡眠の役割
    
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12258603600.html


 このような睡眠の機序について医学的に指導すれば、一挙にすべてが解決するはずでありながら、くまさんの主治医はこうしたことは指導することなく、すべて本人任せです。なぜなのでしょうか??
 ここに、医師と患者さんの本来の関係があるようです。
 ただ単に「寄り添っているだけ」です。これが本来のあり方とでも申されるようです。あたかも、「頭痛」領域と全く同様の対応をされます。

 

 ところが、これとは別に、某心療内科・精神科医は以下のように述べ、診療方針を明確にされる先生もおられます。


うつ状態、うつ病について


 うつ状態、うつ病は「ガス欠状態の車」によく例えられます。


 これは、どういったことなのでしょうか。


  うつ状態とは、無理を重ねることによって、私達の体が作ることのできるエネルギー以上の作業を強いられることによって、エネルギー不足に陥っている状態を意味しています。


 これを車に例えて言いますと、以下のようになります。
 自動車は、ガソリンを使ってエンジンを動かします。ガソリンに相当するのが食事のグルコース・脂質で、エンジンに相当するのがミトコンドリアです。
 ガソリンを使ってエンジンを動かしたら、排気ガスが出ます。
 同じように、ミトコンドリアも、エネルギーを作り出したら、排気ガスと同じようなものが出てしまうのです。それが、活性酸素です。
 例えば、360ccの軽自動車をブンブンふかしていたのではダメで、エンジンを大きくして(=ミトコンドリアを増やして)少ないガソリンで効率よくエネルギーを出し、排気ガス(活性酸素)の少ない良質なエンジンを積んでおくことが重要になってきます。
 生活環境の影響や年齢を重ねると、このミトコンドリアの数が減少していき、さらにミトコンドリアの働きも低下していきます。ガソリンばかり食ってあまりエネルギーが出ないような質の悪いエンジンになってしまうわけです。
 細胞内小器官である「ミトコンドリア」は私達に生きるエネルギーを与えてくれますが、反面、活性酸素を最も多く発生する細胞内小器官でもあります。
 ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミトコンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する機能も高まります。
 しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪循環が始まります。
  このように、活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくことになります。
  ストレスの多い生活環境の影響で、このミトコンドリアの数が減少していき、さらにミトコンドリアの働きも低下することによって、エネルギー産生が十分に行われなくなることによって、”ガス欠の状態”、「ガス欠状態の車」になって、うつ状態・うつ病を発症させることになります
 このように、うつ状態・うつ病発症の根本的な原因は、ミトコンドリアの働きが低下することにあります。


  ミトコンドリアの機能を悪化させる要因として、以下のものがあります。


1.生活環境の問題


  活性酸素・・抗酸化食品の摂取不足
   有害物質の摂取・・デトックスを怠る


2.生活習慣の問題


   睡眠不足・・睡眠の重要性
   運動不足
   食べ過ぎ・過食
   インスリン過分泌・・早食い・ドカ喰い
   薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬


3.食生活の問題


  マグネシウム不足・・マグネシウムの重要性
   鉄不足
   必須脂肪酸の摂取のアンバランス 

 

「健康的な生活を送る」ためには


 「健康的な生活を送る」ためには、”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
 すなわち、ミトコンドリアは、私達の体を構成する細胞の中にあり、食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出しています。エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。


 私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
 「セロトニン神経系」の神経核は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。


 セロトニン神経系は、”大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する、自律神経を調節する、筋肉へ働きかける、痛みの感覚を抑制する、心のバランスを保つ”などの重要な働きをし、「健康的な生活」を送るためには欠かせない働きをしています。
 こういったことから、うつ状態になることによって、セロトニン神経系の機能は必然的に低下することになります。


 「健康的な生活」とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。
 この「生体のリズム」は「ホメオスターシス」によって維持され、「体内時計」により刻まれ、「体内時計」は「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」により制御されています。

 

 ホメオスターシス・恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっており、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角」と呼ばれます。
  ホメオスターシスはストレスなどに大きく影響されます。例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。


  この3つのバランスが崩れてホメオスターシス機能が保てない状態になると、先述のような、”うつ状態”が現れることになります。


  一方「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めています。

 
  ”セロトニン神経系”の機能低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
 「脳内セロトニンが低下」することによって、うつ状態・うつ病の際に現れる多彩な症状を形成してきます。例えば、痛みを感じやすいといった症状・「頭痛」です。「脳過敏」のためとされる「耳鳴り」です。


  内分泌ホルモンに相当する”生理活性物質”のひとつのエイコサノイドは、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6で作られ、この摂取バランスがよくないと、局所ホルモンのエイコサノイド・プロスタグランジンのバランスを乱すことになります。
  必須脂肪酸は生体膜(細胞膜)を構成しており、オメガ3とオメガ6の摂取バランスがよくないと、ミトコンドリアの機能・セロトニン神経系の機能にも影響を及ぼし、結果的に、細胞機能のバランスを欠くことになります。


  ”腸内環境”は、欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。
  また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。
  腸内環境が悪くなれば、セロトニンの産生が低下してきます。
  それは、脳に存在し、精神を安定させる神経伝達物質、セロトニンの95%が腸で作られることが指摘されています。
  常在細菌もトリプトファンからナイアシン(ビタミンB3)をつくってくれるからです。常在細菌がナイアシンをたくさんつくってくれれば、その分を体内でつくる必要がなくなって、脳内セロトニン用の材料となるトリプトファンを余分に確保できるのです。

 
  このように、「ホメオスターシス三角」を構成する”この3つ”は、生活習慣とくに食生活・ストレス等によって影響を受けています。


  このため、「健康的な生活を送る」ためには自然治癒力を高めることが重要で、このためには「ホメオスターシス三角」を構成する”この3つ”を「健全化」させておくことが大切になり、特に食生活に配慮する必要があります。


「姿勢への関与」・・「耳鳴り」との関与で重要です


 ミトコンドリアは、全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ「抗重力筋群」に多く存在し、ミトコンドリアの働きが悪くなれば当然のこととして「体の歪み(ストレートネック)」引き起こしてきます。


 セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることによって、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉に働きかけていることから、セロトニンが不足してきますと、セロトニン本来の働きである「正しい姿勢の保持」が困難となり、「体の歪み」を招来し、結果的に「ストレートネック」を引き起こします。


  私達の生活環境は活性酸素に満ち溢れており、ここ50年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることから、生活習慣の問題により引き起こされた「脳内セロトニン低下」と相まって、体の歪み(ストレートネック)を引き起こしやすい状況にあります。すなわち、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”への関与、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、関与しています。
  こういったことから、うつ状態・うつ病になりますと、姿勢が悪くなってきます。・・・耳鳴りに進展する以前に対処すべきです。


うつ状態とは”未病”の段階にある


 このような、うつ状態は、東洋医学では、本来、”未病”ともいうべき範疇にあるものです。
  ”未病”の段階にある、このようなうつ状態とは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があるということです。
  このため「うつ状態」を改善させるためには「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”を改善することが重要になってきます。

 
憂うつ、うつ状態、うつ病の相違点

 

 普通の人間であれば誰でも、失敗したり、思いがけない事態に遭遇したりすると、辛くなり、悲しくなり、落ち込んで憂うつになり、悲哀を感じます。感じる心の痛みの程度は、人によっても異なり、出来事の大小や強弱によっても違ってきます。こうした心の所作が日々刻々、日常茶飯であることを考えるとき、人間はこの抑うつから逃れられない存在ともいえます。問題は、その抑うつがどこまで「普通の憂うつ感」なのか、どこからが「病的なうつ状態」なのかが問われていると言えます。しかし実際には、この二つのうつは連続性のあるものであって、これを明確に区別することは難しいことです。

 
「普通の憂うつ」と「うつ状態」の違い


①普通の憂うつの場合、大きなストレスや嫌なことがあると、憂うつになり、気分が滅入ったり落ち込んだり、やる気をなくしたり、夜眠れなかったり、食欲もなくなったり、疲労感や倦怠感を抱くことがあります。しかし、それは耐えられる範囲ですが、これがうつ状態になると、憂うつの程度がもっと強くなり、苦しみも激しくなり、耐える事が困難になってきます。
 ②憂うつの持続時間ですが、普通の憂うつはそれほど長く続きませんが、うつ状態になると、かなり長時間にわたって苦しむことになります。
 ③日常生活に与える影響ですが、普通の憂うつですと、仕事や生活、対人関係については何とか維持できますが、うつ状態になるとそれらを維持することが困難になってきます。
 ④うつになった理由や原因について、普通の憂うつでは理解できますが、うつ状態になると、ある程度は理解できても「なぜ自分はこんなにひどく落ち込むのか?」「なぜこんなに長く苦しむのか?」が理解できません。自分はどうしてよいのか分からなくなって、それがまたうつ状態を進行させる原因になります。
 ⑤憂うつ気分になっても、普通の憂うつでは、何か気晴らしになることをしたり、友達と会話をするなどして気分転換をはかれば、気持ちが楽になることがありますが、うつ状態ではそんなことで気分転換にはなりません。逆に気晴らしをしようとすると息苦しくなり、人に会うことがひどく苦痛に感じられます。
 ⑥悲しみや苦痛があっても、普通の憂うつではそれを受け入れて味わうこともできますが、うつ状態では悲哀を受け入れられないどころか、自分自身が悲しめない、悲しんでいる自分がわからない、さらには悲哀さえ感じられなくなります。
 ⑦悲哀や苦悩があっても、普通の憂うつでは、その出来事の重要性を味わったり、自分自身を取り巻く人間関係や社会を見直したりして、自分の成長の機会にすることができます。ところが、うつ状態では苦しみにがんじがらめになって苦しみがさらに増殖し、自身の発展性や生産性にはつながりません。
 ⑧普通の憂うつの場合、自分の力で、また周囲の人の助けによって解決していけますが、うつ状態になると自力でも、他人が助けることも難しくなります。励ましたり同情したりすると、かえって悪化することもあります。

 
「うつ状態」と「うつ病」の違い

 
 「うつ状態とうつ病とはどう違うのか?」といった患者の質問がよくあります。患者心理からすれば、自分の状態はどちらなのか、問題はどこにあり、どうすれば治るのかを知りたがっているのです。

 しかし、「うつ状態」と「うつ病」の区別も明確にできるものではありません。またその区別にこだわっても、治療的な意味はそれほどないのです。
 

うつ状態とはどのような状態か


 それまで主婦として何の問題も無くやれていた人が、家事などが思うようにできなくなる、有能な会社員が、仕事ができなくなり、自分が無能になったように感じるなど、うつ状態の時にはよく見られることです。
  それではうつ状態とはどのような状態なのでしょうか。
  本人たちが思っているように、これらの人たちは本当に能力が落ちてだめになってしまったのでしょうか。
  結論から先に言えば、無能になったのでもだめになったのでもありません。
  ただ精神的なエネルギーが低下してしまったのです。
  先述しましたように、車を例にして模式的に述べてみましょう。うつ状態の人間を車にたとえると、「ガス欠状態の車」であるといえます。車自体はどこも壊れていませんし、修理も必要ありません。必要なのはガソリンを入れてあげることです。
 「ガス欠状態の車」をイメージすると、どうしてうつ状態になったのか、どのようにすれば回復できるのかが理解しやすくなります。


どうしてうつ状態になるのでしょうか


 うつ状態になる人の元々の性格としてメランコリー親和型性格の人が多いといわれています。これは内向的、まじめ、几帳面、人の和を大切にして我を張らない、責任感が強い、人からの評価を気にするなどの特徴があります。
  この性格特徴をまとめると、物事をきちんとしておきたいという「秩序愛」と、自分のことよりも他者の気持ちを優先するという「他者配慮性」の二つの大きな傾向を取り出すことができます。
 なおそれぞれの対概念としては「ずぼら」「自己中心性」でしょうか。
 このような性格の人が状況の変化があったときに、うまく対応できず、おかしな悪循環にはまり込み、心身の疲労が積み重なってうつ状態になることが多いと思われます。


 例えば、昇進をして、人から指示される立場から、上司からは指示され部下には指示をするという中間管理職となり、その役割をうまく果たせず、何とかしようともがく中で疲弊していく場合です。
  ここで大切なのは、新しい役割が果たせず、うまくやれなかったときの取る行動です。
  うまくやれず、どのようにやればいいのか分からない時に、この人は周りの人にうまくSOSを出すことができません。上司に聞くなり、同じような立場の同僚に相談することも無く、一人でどうすれば良いのか思い悩んでしまいます。弱音を見せたり、人に頼ったりすることが苦手なのです。そうしてしだいしだに疲労が心身に蓄積されていきます。
 仕事に対して負担を感じ、疲労も感じるようになり、以前よりも仕事の能率が落ちていくことになります。
 次に大切なことは、この疲れて能率の落ちた時にとったうつ状態になる人の行動です。
 普通であれば疲れたら休みます。ペースを落とすなりして負担を減らすものです。
 しかしうつ状態になる人は自分の疲れは省みず、落ちた能率だけをみてそれを何とかしようとします。
 うつ状態になる人の性格傾向を考えてください。責任感が強いので手を抜くことはできません。自分のことよりも他者のことを優先するので、自分の疲労など二の次で会社の期待などを優先させてしまいます。結果は、休むのと逆に、今まで以上の努力をすることで落ちた能率を何とかしようとしたのです。
 そのため更なる疲弊状態をもたらし、能率はさらに落ちてしまいます。
 そしてより落ちた能率を何とかしようとして更なる努力をして・・・
 そのような悪循環の果てに限界に達し、うつ状態となってしまうのです。


  無理に無理を重ねてきて、もう余力は残っていません。
  マラソンの42.195キロを全力で走りきった後のランナーのようなものです。
  これ以上走ること、努力するエネルギーは残っていません。
  これがうつ状態、「ガス欠状態の車」です。


 うつ状態の原因は


 このように、うつ状態の原因は、身体的・精神的・外部生活環境からくる様々なストレスです。


  ホメオスターシス・恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっており、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角」と呼ばれます。
  ホメオスターシスは、こうしたストレスなどに大きく影響されます。例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。
  この3つのバランスが崩れてホメオスターシス機能が保てない状態になると、”うつ状態”を始めとするいろいろな”未病の状態”が現れることになります。

 そして、ストレスが長期間持続してきますと、マグネシウムが枯渇し、さらに活性酸素が過剰に産生されてきます。これらは全てミトコンドリアの働きを悪化させます。
  日常的にストレスの多い忙しい生き方が続いていると、交感神経刺激により血管は収縮し血流障害と低体温を招きます。つまり、低酸素と低体温です。ミトコンドリアは十分機能できず、白血球の働きが低下してしまいます。感染症の病原体に敗北したりしてしまいます。本来からだを守るべき白血球が働けない、危機的状態になっているのです。
  このようにして、ミトコンドリアの機能が低下してくることになります。
  ミトコンドリアの働きが低下すれば、同時に、セロトニン神経系の働きも低下し、脳内セロトニンの低下が引き起こされてくることになります。


マグネシウム低下が精神機能に影響
 

 生体内のマグネシウムは精神的ストレスにより量的に低下することから, 中枢神経機能においても重要な役割を担っていることが知られています。
  マグネシウムの低下がうつ病や月経前不快気分障害に関与していることや, 大うつ症状の代表的な症状である自殺企図が現れている患者の脳脊髄液においてマグネシウムが低下しているなど, マグネシウムと情動障害の関連について様々な報告があります。また, 双極性のうつ病患者にマグネシウム(アスパラギン酸マグネシウム塩酸塩として) を投与すると情動面において有効性が認められたという報告があります。
  マグネシウムは日常の食生活により体内に必要な量を十分に維持できるといわれています。しかし, 過剰なアルコール摂取や利尿薬の長期投与などによりマグネシウム不足が生じること, さらに, 精神的ストレスにより生体内のマグネシウムが量的に低下することが知られています。ストレス社会といわれる現代は, マグネシウムの低下を起こしやすい環境にあります。
  また, 基礎的研究においても, マグネシウムの低下がうつ様症状や不安症状などの精神障害の成因に関わっている可能性が考えられています。低マグネシウム含有食で飼育したマウスにおいて不安様, うつ様症状を発現することや, マグネシウムを投与が, 抗不安, 抗うつ作用を認めたことが行動薬理学的試験により示されました。
  したがって, マグネシウムの低下が精神障害の成因に関わっている可能性が考えられます。


  脳がきちんと働いているように見える時でも、マグネシウム不足によって、イライラ・怒りの他、落ち込み、鬱など、感情のコントロールが出来なくなります。これは、脳の神経細胞(ニューロン)同士の電気信号の漏れをマグネシウムが防いでいるのですが、マグネシウムは神経細胞にあるストレスホルモンの受容体を普段は覆ってストレス信号の量を調節しているのですが、マグネシウムが不足すると、この覆いが外れてストレス信号が脳内を駆け巡るような漏電状態になり、脳の彼方此方に不必要に伝達されて、ヒステリーなど、感情の暴走が止まらなくなるわけです。これがマグネシウム不足による現代人の最も深刻な問題(8割が該当)で、その原因は人類の農耕開始時から現代へ至る食生活の大幅な変化です。この数年、欧米を中心に狩猟採取時代の食材を取り入れたパレオ食事法 (Paleo diet) が流行っていますが、炭水化物をタンパク質・脂質に置き換えるだけでなく、こういったミネラル不足を補う事も大きな目的なのです。
 

 また、この際に(あるいは感情をコントロール出来ている人でも)脳内の抗ストレスホルモンであるコルチゾールが多量に分泌されます。このコルチゾール、脳内の炎症を起こし、放っておくと神経細胞を次々に死滅させていくのですが、その最たるものが、短期記憶(ワーキングメモリー)を司る海馬です。このため、マグネシウム不足に限らず、ストレスを受けやすい状態を放置しておくと、海馬がだんだん萎縮し、短期記憶力が低下し(もの忘れが増え)、海馬が使い物にならなくなります。海馬は記憶に白黒のラベリングをする事により、ストレスをコントロールする器官なので、放っておくと、更に感情に翻弄されやすく、他人の言動に対して敏感・ネガティブになります。これが慢性的ストレス・疲労感の大きな要因の1つです。


  マグネシウムは、副交感神経を優位にしてリラックスさせるため、特に睡眠全般の質の改善(寝付き・寝入りが悪い、睡眠が浅い、早朝に目覚めてしまうなど)に効果があります。就寝前に亜鉛なと摂取すると更に効果があります。
  また、このリラックス効果や睡眠改善効果、心身の疲労感削減効果により、鬱への改善効果があります。摂取をきちんと続けていると、数日で気分・ムードが大分良くなってきます。

 

うつ病になった時の脳の状態とは?


 うつ病が発生している時の脳の状態は、エネルギーが欠乏して働きが弱くなっている、と言えます。外部からのストレスにより、脳の視床下部(自律神経をつかさどる部分)が刺激を受け、体を危険に備えさせますが、ストレスが長期にわたって続いた場合、視床下部は刺激を受け続けて過剰に働いてしまい、これがうつ病を引き起こすといわれています。 こうしたストレスによる脳の反応をストレス反応といい、セロトニンやノルアドレナリンなどのホルモン分泌のバランスを崩してしまいます。短期であれば問題はなく、むしろ脳にとって必要なことなのですが、限度が過ぎてしまうと疲労し、長期の休息が必要になってしまいます。
 

うつ病の脳を近赤外線でみると…?
 

 近赤外線を使うと、脳内の血流量が分かります。ちなみに人体に害はありません。脳は何かを考えるとき、血流が良くなるのですが、うつ病の人の脳を近赤外線で調べると、血流が悪くなっていることが分かります。
 うつ病の状態では脳の働きが悪くなっているため、集中力に欠けたりうっかりミスをしやすくなったり、話し方や行動がゆっくりになったりします。

 
その他の脳の特徴

 
 うつ病が発症している時の脳は、前頭前野と海馬の血流が減り、萎縮が見られることがあります。するとどんなことに支障が出てくるのか、それぞれの脳の働きを列挙したいと思います。

 

前頭前野


  集中力、注意力、思考力、コミュニケーション能力、感情の制御、行動の制御、意思決定、判断、記憶のコントロールなど。
 

海馬


  一時的な記憶をつかさどっている部分です。昔のことは思い出せてもたった今のことが思い出せない、ということが起こります。同時に2つ以上のことができなかったり、簡単な計算ができなくなったりします。
 
 脳が萎縮する、と聞くと元に戻るのかどうか心配になってしまうかと思いますが、脳は萎縮してもうつ病が治れば元に戻ります。安心してください。


  このような脳の変化は認知症に共通してみられる変化です。こうしたことから、認知症とうつ病の病像が似通ってくる理由になっています。


 うつ状態改善のための基本的な考え方


 このため、うつ状態から脱するためには、ミトコンドリアの機能を改善させると同時に、脳内セロトニンを増やすことが大切になってきます。
 脳内セロトニンを増やすためには、最低でも3カ月は必要とされます。
 さらに、ミトコンドリアの機能を改善させるためにも、気長に行うことが必要となりますが、うつ状態で特に注意すべきことは、ここまでに至った原因となったミトコンドリアの機能をさらに悪化させないことが必要になってきます。
  このため「ガス欠状態」を改善させていくためには、当初”一時的”に抗うつ薬を使いながら「長期間の十分な休養」が必要となってきます。
  こういったことから、長期間にわたって抗うつ薬だけで対処していけば、抗うつ薬によって、さらにミトコンドリアの機能をさらに悪化させることになってしまいます。
  そのため、うつ病を益々、悪化させることになってしまいます。


  こういったことから、未病の段階のうつ状態の段階から早期に対処しなくてはなりません。すべきことは、これまで述べてきましたような未病への対策と同様に考えて行っていく必要があります。この詳細は、これまでも繰り返し述べてきたことですので、ここでは述べません。

 以下で、それぞれの項目を参照して下さい。主として行うべきことは、ミトコンドリアの機能をこれ以上悪化させないことと、ミトコンドリアの機能をよくすることと同時に「脳内セロトニンを増やす」ことです。

 このためには、先程も述べましたように、最低3カ月は必要とされます。じっくり腰を据えて、気長に根気強く行っていく必要があります。

 このように、「長期間の十分な休養」をとっている間には、ただ単に、”のほほんと”無為に寝てばかりの休養をとっておればよいということではありません。
  特に、うつ病まで移行してしまっておれば、相当な覚悟をもって対処しなくてはなりません。抗うつ薬だけでは到底改善は望めないことを念頭におく必要があります。
  これまで、どれだけ多くの方々が薬漬けにされ廃人同様になってきたのかを直視する必要があります。
  こういったことから、未病の段階にある「うつ状態」で、極力早期に対処する必要があります。

 

 片頭痛には、こうしたうつ状態・パニック障害を同時に併発してくることが多いのは、こうした共通の要因が存在するからです。
  頭痛の専門家のなかには、片頭痛に合併した、こうした「うつ状態・パニック障害」までもが、トリプタン製剤を服用しておれば、改善されるといった馬鹿げたことを申されますが、このようなことでは改善されるはずはないことは容易に理解されたはずです。

 

参考記事


第11章 ミトコンドリアの機能を回復させる

 

 その1 https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12443390894.html


 その2 https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12443397113.html


 その3 https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12443399347.html


第12章 脳内セロトニンを増やす


 https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12443405075.html

 

6.「うつ」「不眠症」も腸内フローラを整えれば治る!?
   
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12320934899.html

 

ベンゾの怖さ 向精神薬減薬の難しさ!!
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12701022156.html

 

 ベンゾの恐怖から逃れるために・・
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12703964302.html


ストレスはなぜよくないの???
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12641170617.html

 

医師や薬に頼らない!すべての不調は自分で治せる 藤川徳美   


  以上のように、博多くまさんの主治医とは、考え方は全く別物であり「上から目線」といった患者さんからの批判は全く無視されます。

 このように、医師それぞれのようで、一般化された方式はないようです。
 
 
  ということは、どなたがよいとか、悪いといった問題ではなさそうです。この際、皆さんのコメントをお待ちします。但し、野次馬根性での冷やかしだけは謹んで下さい。それは、今回、犠牲になられた西沢院長を冒涜することにも繋がります。二度と、このような事件を繰り返さないためにも、厳に慎んで下さい。是非とも、ご意見を・・・

 最近のマスコミ報道を注意して監視していませんと、私には到底理解不能なヘリクツが罷り通っていることに気が付かされます。
 例えば、大阪のビル放火殺人事件で容疑者の男が事情聴取ができないまま死亡したことについて、遺族の代理人は「遺族の『知る機会』が失われたことは痛恨の極み」と話しています。
 12月17日に大阪・北新地の心療内科クリニックが放火され25人が死亡した事件で、谷本盛雄容疑者(61)は自身も救急搬送されて治療を受けていましたが、12月30日に大阪市内の病院で死亡しました。意識不明が続いていたため事情聴取はできておらず、死亡により動機の解明は困難となる見通しです。
 遺族の代理人を務める奥村昌裕弁護士は取材に対して「刑にも服さず遺族への謝罪もないまま自分の思いをわがままに叶え亡くなった」と容疑者の身勝手さを批判した上で「遺族の『知る機会』がなくなったことは痛恨の極みだ」と語りました。


 この報道によれば、谷本盛雄容疑者(61)は、12月17日に大阪・北新地の心療内科クリニックに放火して25人を殺傷した後に、自らの口で犯行声明を出して、遺族へ謝罪して、刑に服すべきであり、そのまま死んでしまうのは身勝手で、我が儘な行為であると、奥村昌裕弁護士は批判されます。


 しかし、谷本盛雄容疑者(61)からすれば、犯行後、自責の念から自ら命を絶とうとしたはずです。ところが、出火後駆けつけた救急隊員に真っ先に救助され、病院に搬送され、救命処置が施され治療が継続されたことは、本人にとって極めて心外なことだったはずです。
 「西沢先生のような、やさしい先生の病院になぜ、放火したのか、知りたかった。谷本容疑者が死亡して、事件の真相が闇に葬られるかもしれないと思うと、より悲しくなります」と事件に巻き込まれ、心療内科クリニックの西沢弘太郎院長(49)や病院スタッフ、患者ら24人の尊い命が奪われた。クリニックに通っていた患者はこのように語っています。このような意味合いでの真相解明であれば、理解できなくはありませんが・・・


 府警は今後、被疑者死亡のまま書類送検する方針で、事件の真相や動機は「藪の中」となった。
 谷本容疑者は事件があった17日、心肺停止状態で搬送され、手足や喉に火傷を負った上、一酸化炭素中毒で重篤な状態が続いていた。
 「谷本容疑者はクリニックに放火した後、階段付近で倒れていたところ、消防隊に早々に救助されていた。だが、煙による一酸化炭素中毒で意識はずっと回復しなかった。結局、捜査員は一度も事情聴取をできぬまま、亡くなった」(捜査関係者)

 このような行為自体は、警察の思惑から行われていることは明らかです。意識不明が続いておれば、事情聴取はできず、動機の解明はできないから行っているだけのことであり、谷本盛雄容疑者(61)の意志に基づいて行われているわけではありません。ただ単に起訴するために行っていただけにすぎません。職責上、行っているだけです。


 府警によると、谷本容疑者はクリニックの出入り口付近で火を付けた後も逃げるそぶりは一切なく、院内中央付近のドア手前で倒れているのが見つかった。ドアを挟んで院内奥のスペースでは26人が見つかり、うち重篤の1人を除く25人が死亡。府警は同容疑者が閉じ込めたとみているが、クリニックとのトラブルなどは確認されていない。
 大阪府警天満署捜査本部は、谷本盛雄容疑者(61)=死亡=が自ら炎の中に突き進み、多数の人を巻き込んだとみて調べている。このことからも、自殺覚悟でやり遂げたことは容易に推測可能です。

 専門家は、自分以外の人に責任があるという他責的な傾向が強まり引き起こした「拡大自殺」の可能性を指摘。孤独感などが事件の背景にあったとの見方を示している。

 「拡大自殺」に関する著書がある精神科医の片田珠美さんは事件について、「自殺願望を抱いた人が、他人を道連れにしようと大量殺人を引き起こした拡大自殺だ」と指摘する。

 片田さんによると、自殺願望のある人は自責的傾向が強まることが多い。ただ、「人生がうまくいかないのは他人や社会のせいだ」と他責的傾向が強まるケースもあり、復讐(ふくしゅう)心から大量殺人につながる恐れがあるという。

 谷本容疑者は2011年、25歳だった長男に対する殺人未遂罪で実刑判決を受けた。判決では、離婚後の寂しさに耐えかね、自殺の踏ん切りをつけるため別居中の長男らを道連れにしようとしたと認定された。

 片田さんは今回の事件でも、谷本容疑者が出所後に経済的困窮や孤独に陥ったと推測。他責的傾向が強まり、患者として接点のあったクリニックの院長や患者らを巻き添えにしたのではないかと分析した。 


 一方、谷本容疑者は数年前から通院するようになったとみられるが、復旧作業を続けるクリニックの電子カルテでの裏付けは終わっておらず、通院状況や治療内容などは明確になっていない。また死亡した西澤弘太郎院長(49)とのトラブルも確認されていないという。

 容疑者の死亡により真相解明は遠のいた形だが、捜査本部はクリニック関係者らへの聴取を重ね、動機の特定を進める方針だ。(小松大騎)


 問題は、谷本容疑者は数年前から通院中であったことが明らかになっていますが、この当時の初診時の訴えが何であるかが、電子カルテで明確にされるかということです。

 死亡した谷本容疑者の知人が語る”ブチ切れた”瞬間「クスリを酒で流し込み、自暴自棄に」なっていたという証言です。ここが最大のポイントになるはずです。


 AERAdot.は事件当日夜に谷本容疑者の知人である居酒屋経営者Aさんを取材したところ、こう証言していた。

「西淀川区で自宅を放火し、曽根崎新地のクリニックで放火事件を起こした男には心当たりがある」

 翌朝、Aさんから教えてもらった西淀川区の阪神電車姫島駅から徒歩5分の場所にある谷本容疑者宅を訪れたところ、すでに府警の捜査員や消防が集まっていた。

 その後、谷本容疑者が12年前まで勤務していた板金工場の社長も取材したところ、「事件をニュースで知った時、ひょっとして谷本容疑者がやったのではないか」と頭を過ったという。

 知人らが語る谷本容疑者の特徴は、「カッとして切れやすい」という点だ。前出のAさんは3年ほど前に谷本容疑者が突然、激怒したシーンを目撃し、今でもハッキリと覚えているという。

 その日は、谷本容疑者が好きな競馬のG1レースの日だった。谷本容疑者は居酒屋の飲み仲間と場外馬券売り場で競馬を楽しんでいた。しかし、レースでアクシデントが発生して、谷本容疑者の馬券は紙くずとなった。

谷本容疑者は仲間と自転車で居酒屋にやってきたという。

「最初は競馬の新聞を見ながら『惜しかった』『アクシデントがなければ』と和気あいあいと残念会のように語り合っていた。谷本容疑者はタニさんと呼ばれていましたね。酒が入って1時間ほど経過すると、急に谷本容疑者がブチ切れた。『騎手が悪い。それで大損したじゃないか』などと言い出した。飲み仲間がなだめて、いったんは収まった。しかし、また怒り出して、立ち上がり、椅子を手にし、『くそー』などと暴れそうになった。私も他のお客様に迷惑になるので『まあまあ』と割って入った。しばらくすると、谷本容疑者は白い錠剤を手に持っていた。たぶん、10錠くらいあったと思う。それを口に含んで、焼酎で流し込んだ。気づいた飲み仲間が『やばい、また暴れるぞ』と谷本容疑者を店の外に出し、どこかに連れて行った」(Aさん)

 それから1週間ほどして、飲み仲間がAさんの店にやってきた。

「あの夜はタニさんがクスリと酒を飲んで切れてしまって手が付けられず、えらいことになったとぼやいていました。谷本容疑者がうちの店でも酒を飲んで暴れ、悪態をつくことが、2、3回あった」(同前)

 記者は谷本容疑者と場外馬券売り場に一緒に行っていた飲み仲間のBさんもこう証言する。

「タニさん、ここ1、2年くらいは昼から飲んでいた。放火した心療内科に通い、『クスリを飲んでも治らない』と精神科医の文句を言っていた。こんなとんでもない犯行に及んだのは、クスリを酒で流し込んでブチ切れてしまったのではないかと思う。タニさんは気に入らないことがあると、クスリを取り出して、ビールや焼酎と一緒に飲む。当然、その後はとんでもないことになる。酒を飲まなければ、気のいいおっちゃんで、放火殺人なんて大それたことなどできるように見えない。だが、離婚後、奥さんや子供らにも見放されて、コロナで外へ飲みにも行けず、ひとりぼっちでさみしいと繰り返しこぼしていた。クスリと酒を飲むと、人格が変わってしまう」 このような都合のよい瞬間的な激慌を抑制するクスリは私には処方することは無理です。あなたは出来ますか? こうした極めて理不尽なクスリが処方できなかったからといって、怨まれたとしたとすれば、堪ったものではありません。

 こうしたことを、電子カルテを修復させた上で確認する必要があります。


 被疑者死亡により、動機は永遠に謎のままとなった。だが、謎を解くヒントになる資料をAERAdotは入手している。既報したように、谷本容疑者は長男の頭部などを包丁で切りつけるという殺人未遂事件を2011年4月に起こし、実刑判決を受けていた。入手した判決資料によると、今回の事件を彷彿とさせる動機が記されていた。

 <谷本容疑者は離婚後、家族と離れて一人暮らしをするようになったが、寂しさに耐えかねて、2009年9月ごろに元妻に復縁を申し込んだが、断られた。孤独感などから自殺を考えるようになった。

 しかし、死ぬのが怖くてなかなか自殺に踏み切れなかった。そのため、誰かを殺せば、死ねるのではないか、元妻に迷惑をかけている長男を殺そう、家族一緒でなければならないから、元妻や次男も道連れにしようなどと思うようになった>(判決文より抜粋)


 谷本容疑者の自宅には19年7月に起こった京都アニメーション放火殺人事件の資料が残されていた。青葉真司被告(43)も重篤な容態だったが、懸命の治療の末に回復し、起訴された。

「谷本容疑者と青葉被告の大きな違いは2つ。青葉被告は事件当時41歳とまだ、若く、体力があった。そして犯行後、青葉被告は走って逃走を図り、重症の原因は火傷だった。しかし、谷本容疑者は61歳と高齢で、火傷より一酸化炭素中毒で重体となり、意識も戻らなかった。救命できたとしても、脳機能に深刻な後遺症が残り、起訴は難しかったと思う」(前出の捜査関係者)

 事件に巻き込まれ、心療内科クリニックの西沢弘太郎院長(49)や病院スタッフ、患者ら24人の尊い命が奪われた。クリニックに通っていた患者はこう語る。

 「西沢先生のような、やさしい先生の病院になぜ、放火したのか、知りたかった。谷本容疑者が死亡して、事件の真相が闇に葬られるかもしれないと思うと、より悲しくなります」

 

(AERAdot.編集部 今西憲之)


《大阪ビル放火殺人事件》谷本容疑者「詩吟教室に通う物静かな男」が凶行に走るまで

 
 「事件のあった4、5日前の午前9時ごろ、空き家だと思っていた家から容疑者が作業服で出てきて、自転車で出かけようとしとったんよ。それで“ここに住んどんの?”と聞いたら、“はい”って。とても優しい感じの人やったわ。まさか、あんなことするなんて……」


 大阪市西淀川区を流れる淀川からすぐそばにある谷本盛雄容疑者(61)の自宅。その近所の住民はこう振り返った。

 12月17日午前10時20分ごろ、同市北区の雑居ビル4階の心療内科『働く人の西梅田こころとからだのクリニック』で放火事件が発生。同病院の患者ら27人が心肺停止状態で救急搬送され、うち25人が死亡。谷本容疑者を含めて2人が重体という、大惨事となった。

 「同院に通っていた容疑者が、クリニックの入口付近にあったストーブにガソリンを入れた紙袋を蹴って火をつけました。11月末、ガソリンスタンドでガソリンを10リットル購入していたことから、計画的な犯行と見られています」(全国紙社会部記者)

 

自宅で放火の実験か


 事件を起こす30分ほど前、容疑者は現場から3キロメートルほど離れた同市西淀川区の自宅でボヤを起こしていた。

 別の住民はこう話す。

「事前に実験したんだろうね、たいした出火じゃなかったから、すぐに鎮火したけど。その後、自転車で30分ほどかけて現場に向かったみたいやわ」

 のちに自宅から、19年7月に起きた『京都アニメーション放火殺人事件』について報じる新聞記事の切り抜きも見つかったことから、この事件を参考にしていたとみられている。


 容疑者は、ボヤを起こした一軒家を30数年前に購入。妻、長男、次男と4人で住んでいた。

 「当時から近所づきあいをまったくしない家でね。容疑者はスラッと背が高くて、おとなしい感じの人でした。酒に酔っている姿や、おかしな行動はいっさい見たことはなく、近所とのトラブルもなかったですよ」(近所の住民)

 

 他の住民も、「“詩吟の教室に通っている”と聞いた。若いのに珍しい人がおるな、静かな人やなと思うた」

 だが15年ほど前、容疑者一家は1.5キロメートルほど離れたマンションに引っ越したという。同マンションの住民によると、「いつの間にか旦那さん(容疑者)がいなくなって、奥さんとお子さん2人になっていたんです」

 引っ越しから2年後、容疑者は妻と離婚。「その後、容疑者が妻に復縁を迫るも、拒否。孤独を募らせた容疑者が無理心中を企てて、長男を刃物で刺しています」(前出・社会部記者)

 

 当時の捜査関係者によると、長男をはじめに殺害し、元妻と次男も道連れにしようとしていたと供述したという。長男は一命をとりとめ、容疑者は殺人未遂で逮捕。懲役5年の刑になったが、3年ほどで出所している。

 容疑者は一体どんな人物だったのか。大阪市此花区に生まれ、父親は板金工場を経営していた。

 「そこらを遊び回る元気いっぱいの子ではなく、おとなしかった。そろばん塾に通っていましたね」(容疑者が通った小学校の後輩)

 父親の仕事に憧れて、兄とともに実家で板金工として働いた。だが30年ほど前に父親が他界すると、実家の跡を継いだ兄とのいさかいが多くなり、別の板金工場で働くことになったが……。前出した通り、一家心中の事件を起こしてしまう。

 

過去にもあった“火災”事件


 実は出所から数年後、容疑者が住んでいたと思われるマンションで火災が起きていた。

 「丸々1部屋が焼けていました。その火元になった部屋の住民男性がいま考えると、年齢や背丈が容疑者と似ているんだよね。その男性は“コンビニに行って、帰宅したら布団が燃えていた”と言っていたようです」(同マンションの住民)

 容疑者の行先行先で火災が起きているのは、単なる偶然とは到底思えないが……。


《北新地ビル放火》「明日は我が身。診断書や処方箋を巡るトラブルは絶えない」精神科関係者が明かす“構造的な問題点” 医師が患者の「言いなりに…」


《北新地ビル放火》「真面目で職人気質で寡黙。でもカチンとくると顔を真っ赤にして…」実兄と元雇用主が証言する“放火容疑者”の正体  から続く


 12月17日午前、大阪市北区の繁華街・北新地にある雑居ビル4階の心療内科・精神科の医療機関「西梅田こころとからだのクリニック」で起きた放火事件。過去に長男に対する殺人未遂罪で服役経験のある谷本盛雄容疑者(61)による、強固な殺意に基づく計画的な犯行だった可能性が高まっている。犠牲者は西澤弘太郎院長(49)を含む計25人にものぼる大惨事となった。

「意識不明の重体となっている谷本容疑者は、一酸化炭素中毒による低酸素脳症の状態です。一命をとりとめたとしても脳に深刻な障害を負い、回復は難しく、もう二度と会話をすることのできない植物状態になる可能性もあります」(社会部記者)


「確かに精神医療の現場にトラブルは多い」


 25人もの尊い命を奪いながら、その動機などが本人の口から語られる可能性が極めて低くなっている状況だ。

 別の大手紙記者によると、事件が起きたクリニックは大阪屈指の繁華街の雑居ビルにあることもあり、患者リストには800人程度の名前が記載されていたという。そのうちの1人が谷本容疑者だった。

 「亡くなった西澤院長から事件前に患者とのトラブルを聞いた院長の父親が、警察に相談をしていたという情報もあります。谷本容疑者とは関係がなさそうですが、クリニックでのトラブルはそう珍しいことでもなかったのかもしれません」(同前) 


 今回の事件を受けて、「確かに精神医療の現場にトラブルは多い」と語るのが早稲田メンタルクリニック(東京都新宿区)の益田裕介院長だ。益田院長は様々な「心の病」をYouTubeで解説してもいる。

 「街中のメンタルクリニックを訪れる患者さんは比較的軽症の方が多いのですが、なかには会社を休職したり、生活保護を受給されている方もいます。ですから、働けないことを証明するために診断書はとても重要です。診断書の内容などで納得できずに抗議してくる患者さんも一定数いらっしゃいます」


 精神科医が書く診断書は障害年金、休業手当などその用途はさまざまで、患者の生活に直結する大事な場で必要となることも多い。その内容によって、障害年金の等級が左右されて受給できる金額に差が出るため、患者側も中には「症状をひどく書いてほしい」という希望が出る場合もあるようだ。

 「しかし、書けないものは書けないんです。納得してもらうためには、対話を重ねていくしかない。それで転院する患者もいます。また、薬を多く出してほしいと言われるケースもあります。こちらも出せないものは出せない。

 多くの方が勘違いしていますが、開業医であっても診断は基本的にガイドラインに沿って行っているので、好きに診断書や処方箋を出すことはできない。本来はどこで診療を受けても同じ結果になるというのが基本なんです」(益田院長)


診断書も処方箋も“患者の言いなり”になるケース


 こうした精神科へでのトラブルは、他の精神科病院でもあることだという。東北地方の精神科勤務の50代女性も、実際に起きた出来事を明かしてくれた。

「診断書などをめぐるトラブルは日常茶飯事ですよ。例えば待合室ではイチャイチャしていたカップルが、診断室に入ると急に体調が悪そうにして静かになったり。『これは演技なんじゃないかな』と思うこともあります。

 私が勤める病院には複数の先生がいますが、先生によっては文句を言われたらすぐに診断書を書き換えてしまうこともあります。こちらとしては納得できませんが、そういう先生ほど患者さんには人気があります。揉めるくらいなら、書いちゃうんですよね。処方箋も同様で、先生によっては患者の言いなりになってしまう人もいます」


 12月12日、滋賀県で篠原聖奈さん(当時19)が薬物中毒で亡くなった。篠原さんが倒れていたアパートからは、100錠程度の薬の空き殻が見つかっている。彼女たちは “オーバードーズの会”を定期的に開いていたという。

 

「明日は我が身」経験した患者によるボヤ騒ぎ


 「オーバードーズの方は増えていますよ。自分で飲みすぎてしまう人もいれば、明らかな転売目的の人もいます。病院に来るたびに『薬を掃除していたら捨ててしまった』『バスに置き忘れた』とか理由をつけてもらおうとするんです。特に生活保護の患者さんだと、薬は無料ですから。インターネット上にはこの病院は薬をたくさんもらえる、この先生はもらいやすいみたいな裏掲示板もあるんです。

 幻聴、幻覚の症状が出てしまっている人もいるので、患者さん同士でのトラブルも絶えません。もちろんある程度は仕方ないことです。ただ、しっかり前を向こうとして治療に向き合う患者さんがたくさんいるなかで、心ない患者さんや、言いなりになってしまう先生がいるのは事実です」(同前)

 実際にこんなトラブルも起こっているという。

 「実はうちの病院でも過去に患者さんによる小火騒ぎがありました。大事には至りませんでしたが『患者に逆恨みされて火でもつけられたら怖いね』なんて同僚と話していたんです。そんななかで北新地の放火事件があって……。明日は我が身という思いで、本当に怖いです」(同前)

 精神医療の現場に詳しく「ブラック精神医療」(扶桑社)などの著書もある米田倫康氏は、今回の北新地の放火事件について「行政の欠陥から、クリニックに過度な負担がかかっていた可能性がある」と指摘する。

 「心療内科・精神科クリニックは各地に乱立しており、行政機関がそれをひとつひとつチェックできていないのが現状です。かつては1日に1人の医師が300人診ていたケースもありました。現在は『5分縛り』というルールがあって、1人の患者の診療にあてる最低時間が決まっていますが、これも短すぎる。

 患者側も本当は働けるのに働かずに手当をもらうために診断書を求めるケースがありますが、こういった不正をたくさんの患者を抱える先生が1人で見抜くのは困難です。かつては障害者手帳を入手するためのマニュアルが出回る組織犯罪もありました」

 「谷本容疑者がいわゆる“精神科受診難民(複数の病院に通う人のこと)”だったという報道もあります。事件現場の院長が患者思いで人が集まっていたのかもしれないが、過度な負担がかかっていた可能性もあるでしょうね。

 他にも、診断書が各医師のさじ加減次第であることなど、精神科行政にはさまざまな欠陥があり、見直すべき時に来ているのではないでしょうか」(米田氏)

 

「親から通院をやめろと…」広がる精神科への偏見


 こうした事件をきっかけに注目を集める精神科の構造的な問題。それに伴って、患者の不安も増している。前出の益田院長は「精神科について、偏見が強まるのではないかといった不安を抱えている人がいます」とも語っていた。

 「事件を受けて、クリニックへ通う患者さんのなかには不安定になっている人もいます。中には『親から通院をやめろと言われたけど、薬がなくなったら困る』という相談もありました。患者さんに言っているのは『事件や自死はあることなので、大丈夫ですよ。動揺するのも落ち込むのも当然のことです』と声をかけて寄り添っています。トラブルはありますが、大多数の患者さんはなんとかいまの状態を脱するために頑張っている真面目な方です」

 そんな人々が医療から遠ざけられることがあってはならない。益田院長はこうした取り組みを行っているという。

 「私が1ヶ月でみている患者さんは約900人いるのですが、関わる人を増やすことでチームによる解決を目指しています。例えばマイナスのイメージが持たれる生活保護ですが、申請をするとケースワーカーも患者さんと接するようになる。そうすればもっと総合的で丁寧な治療ができるはずです」(益田院長)

 容疑者の口から犯行の動機などが語られれば、事件の真相解明が進み、こうした様々な問題を解決するためのヒントが明らかになることもあるだろう。しかし「谷本容疑者の回復は絶望的だ」(前出・社会部記者)。大惨事の“原因”が明らかになることはあるのだろうか。


「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班)


 以下の記事は、12月30日の谷本容疑者の死亡前日の記事です。


大阪クリニック放火事件 現時点での犯罪心理学的分析


事件の分析をする意義


 25人もの人が死亡した大阪市のkクリニック放火事件。容疑者は、依然重篤な状況であり、捜査機関は話を聞くことすらできていない。この状況で、事件の動機や背景を分析するのは無理がある。しかし、報道によれば、容疑者の脳機能には深刻なダメージがあるとのことで、最悪の場合、容疑者の供述を得ることができないまま、事件の解明が不可能となってしまう可能性もある。

 だとすれば、現時点で明らかになっている事実を元に、限られた中であることは承知で、一定の分析をすることが、われわれにできる最善のことと言えるかもしれない。

 この段階で犯罪心理学的な分析をすることには、2つの意義がある。第1に、事件の背景や考えられる心理を分析することによって、本事件の解明だけでなく、将来の類似の事件を防止するうえで、何らかの有益なことが見えてくる可能性があり、それは社会的意義が大きい。

 第2に、社会の耳目を集めた事件ともなれば、多くの「自称専門家」や非専門家が、メディアでさまざまな発言をしたり、自己流の分析をしたりということが横行する。それは多くの場合、過度に情緒的な「物語」の創作に終わることが多く、事実とはかけ離れたものとなりがちである。これは、犯罪心理学の専門家として、看過できないものがある。したがって、専門家として科学的な見地から事件を分析し、この事件や犯罪一般、そして加害者や被害者について、誤った情報が流布してしまうことを防止する責務がある。 

 一方で、先述のとおり、やはり拙速な分析には限界があり、問題もある。したがって、現時点でわかっていることとわからないことをきちんと区別したうえで、あくまでも「現時点」での分析、あるいは仮説として提示しておき、また新たな情報が判明した時点で、それを修正していくことで、一定の正確さを担保することができるだろう。

 とはいえ、もちろんこれも絶対のものではない。まず、この基準はアメリカ精神医学会の倫理基準であり、わが国に直ちにあてはまるものではない。また、主に精神科医の「診断」に対する基準であるので、犯罪心理分析までをも対象としたものではない。さらに、分析を行うことに顕著な社会的意義が認められる場合、むしろ、何もしないことのほうが非倫理的だとも言える。

 とはいえ、もちろんこれも絶対のものではない。まず、この基準はアメリカ精神医学会の倫理基準であり、わが国に直ちにあてはまるものではない。また、主に精神科医の「診断」に対する基準であるので、犯罪心理分析までをも対象としたものではない。さらに、分析を行うことに顕著な社会的意義が認められる場合、むしろ、何もしないことのほうが非倫理的だとも言える。

 前置きが長くなったが、こうした前提に立って、慎重にかつ科学的根拠に基づきながら、本事件とその背景、心理などについて、専門的見地から現時点での分析を行うことは、社会的意義も大きく、倫理的な問題をはらむものではないと考えられる。


前回の事件

 容疑者は、2011年にも殺人未遂事件を起こして、懲役刑を受けている。この事件から見えてくることは、本事件を解明するうえでも重要な大きな手掛かりを提供してくれる。

 容疑者は、2008年に元妻と離婚、その後2010年には仕事を辞めている。孤独感や不適応感に苛まれていた容疑者は、妻に何度も復縁を迫ったが、にべもなく断られていたという。そして、2011年に前途を悲観して、無理心中をしてしまおうという考えに至り、家族が集まる席に刃物を持って出かけ、長男を何度も刺して殺害しようとした。

 この事件の動機から見えてくるのは、本人の「破滅的思考」である。これは本事件においても、1つの重要なキーワードとなる。仕事や家庭でうまくいかず、職を失ったり、家族失ったりした場合、一旦は落胆したり抑うつ的になったりしても、周囲の助けを借りたり、気持ちを立て直そうと努力したりして、徐々に前向きに人生の歩みを進めることができる人もいる。

 一方で、その事実にうちのめされ、「もう先は真っ暗だ」「死ぬしかない」などと思い詰めた挙句、「破滅的思考」にとらわれ、その結果、心理的視野が極端に狭窄し、破滅的に自殺や他殺などの重大な犯罪に及ぶ者がいる。この人物の心理的特徴は、これにあてはまるだろう。

 そして、この心理が今回の事件にも同じようにあてはまると見ることができる。今回の場合は、前回の事件で懲役4年の実刑判決を受け、刑務所を出所してからおよそ10年後に起こしている。その間、仕事や住居を転々とし、借金を膨らませ、孤独の中で前回以上に心理的に追い詰められていったと考えられる。

 そのせいだろうか、今回の場合は、直接恨みのある相手だけでなく、関係のない多くの人々を狙っており、しかも「絶対に失敗してはいけない」「1人でも多くの犠牲者を出す」という執拗な悪意や激しい攻撃性が読み取れる。 


セントラルエイト


 犯罪心理の分析を行う際に、最初に私が検討するのは、いつも「セントラルエイト」と呼ばれる犯罪リスク要因の検討である。これは、複数のメタアナリシスによって導き出されたエビデンスに基づく犯罪リスク要因のことである。その概要は、表のとおりである。
 ここでセントラルエイトを見ていくと、実に多くの項目がこの容疑者にあてはまることがわかる。第1の犯罪歴に関しては、過去に息子に対する殺人未遂という重大な犯罪で懲役刑に処せられた事実があることは、上に述べたとおりである。

 第2、第3の反社会的パーソナリティ、反社会的態度もこの人物にはよくあてはまる。中でも、先にキーワードとして挙げた「破滅的思考」は、衝動性、攻撃性など他のパーソナリティ傾向と結びつき、きわめて悪質な反社会性を帯びている。そこには、人を傷つけることや社会規範などを一顧だにしない「反社会的態度」が明白である。

 第4の反社会的交流については、現時点ではよくわからない。おそらくそのような交流はなかったであろうと思われる。第5の家庭内の問題には、多くの点が挙げられる。まずは何らかのトラブルで離婚をして、本人は大きな孤独感に苛まれていたこと、そして何より実の息子を殺そうとしたのであるから、大きな問題や軋轢があったことは明白である。

 第6の職場での問題に関しては、犯行時は無職であったことがわかっている。職人の仕事をしており、腕のいい職人であったという証言があるが、仕事仲間とのトラブルなどで職場を転々としていたことも報じられている。第7の薬物・アルコール問題については、よくわかっていないが、飲酒上のトラブルや問題があったという証言もある。第8の余暇活用に関しても、よくわかっていない。しかし、これは推測の域を出ないが、深刻な不適応感、孤独感に苛まれていたものの、それを癒すような余暇の楽しみ方をしていたようには思えない。

 このように分析していくと、セントラルエイトの多くがあてはまり、きわめて犯罪リスクの高い人物であったことがわかる。おそらくは元来反社会的パーソナリティ、反社会的態度が目立ち、それゆえに対人的、家庭的トラブルを頻発させていた人物像が推測される。そして、それが元で離婚、離職などに結び付き、孤独感や不適応感、そして社会への反感を募らせていったのだと推測できる。それがさらに、元来の反社会的パーソナリティを悪化させ、破滅的思考へと収束して、破滅的な重大犯罪へと結びついていったのだと言えるだろう。


課題


 前の事件のあと、せっかく精神科のクリニックにつながっていたのに、彼の問題性を「治療」することができなかったのは残念である。というのも、一般の精神科では、「うつ病」「抑うつ状態」のように、診断のつく病気の治療はできても、その根底に横たわるパーソナリティの治療までを行うところはほとんどない。しかも、反社会性については、司法観察医療機関のような専門機関を除いて、対処できる医療機関は皆無といってよいだろう。これは、わが国の司法や医療が抱える大きな課題であると言える。

 さらに、この事件に関しては、容疑者が「京都アニメーション放火事件」などの類似事件の記事を所持していたことが明らかになっている。事件を起こそうとする者が、その計画の時点で、過去の事件の手口を参考にするのはよくあることである。なぜならば、失敗したくないからである。

 だとすれば、今後同様の災禍を生まないためにも、この事件においても、詳細な手口の報道をすることは控えるべきである。大きな事件が起きたとき、その背景などを知るうえで、詳細な報道がなされることは仕方ない。とはいえ、たとえば被害者のプライバシーに立ち入るような報道に対しては、多くの批判が集まり、最近は抑制的にもなった。それと同じように、詳細な手口の報道も、模倣犯を生まないためにも避けるべきである。

 今年8月小田急線放火事件、10月京王線放火事件の際にも、同じようなことを指摘したが(プレジデントオンライン「マスコミが模倣犯を育てている」 心理学者である私が軽はずみなコメントをしない理由)、今回も残念ながら同じことが繰り返されている。

 国民の「知る権利」を十分に保障したうえで、知る必要があるとまではいえないような事件の詳細な手口を報じることに、社会的な意義があるのか、それに害はないのか、その点を十分に議論していく必要を感じている。

 

 結局、今回の事件は、いろいろなことに現代社会の疑問を投げかけています。


 最初のタイトルのように、容疑者死亡で、・・「遺族の『知る機会』失われたことは痛恨の極み」???・・が一般的な現代社会です。
 私から診れば、これだけで、現代社会は異常性を秘めています。
 これを、異常と思わないのは、テレビ・ドラマによる感化のためなのでしょうか?


  現代では、「独り寂しく、自殺するのは」現代的でないようです。

 道連れ自殺が、当世風のようです。このような現代風の謎は池上彰か、若い社会学者が解説すべきのようです。

 私のようなシニクサシの出る幕ではなさそうです。