第11章 ミトコンドリアの機能を回復させる
片頭痛は、後天的に諸々の要因によって、ミトコンドリアの機能が低下してきたことによる頭痛です。
ミトコンドリアの機能を低下させる要因として、マグネシウム不足、鉄不足、必須脂肪酸の摂取のアンバランス、活性酸素、有害物質の摂取、薬剤による影響、寝不足、過食と運動不足等々があります。
まず、これらのミトコンドリアの機能を低下させる要因を是正しておく必要があります。
その1 マグネシウムの問題
マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。
そして、私達の生活環境は、マグネシウムが不足しやすい環境にあり、いろいろな要因で、マグネシウム不足が引き起こされるため、とくに片頭痛の遺伝素因がある場合は、マグネシウム不足に常に配慮しなくてはなりません。
次のような身の回りの生活環境は、容易にマグネシウム不足を起こしてきます。
・アルコールの飲み過ぎ
アルコールの多飲により 尿中にマグネシウムを排泄する量が増加します
・毎日の牛乳摂取
カルシウムばかりが多い牛乳を いつも飲むことで 2:1が望ましいカルシウム:マグネシウムのバランスが狂い、マグネシウムの相対的欠乏を招いてしまいます
・ストレス
ストレス対応ホルモンがマグネシウムの排泄を促してしまいます。最初に、その機序は説明しました。
・激しい運動や暑すぎる環境
マグネシウムは 汗とともに大量に排泄されます。
・食材のマグネシウム含有量が低い
日本の土壌は火山灰土でミネラルが少ないため その土壌で育った作物はあまりミネラルを含まないのです。
さらに農薬の使用で土壌が枯れ 以前より含有率は低下していると言われています。
・白米小麦粉など精製食品の摂取
精製過程でミネラル分がそぎ落とされてしまっています。
・白砂糖の摂取
消化分解にマグネシウムが大量に消費されます。
・加工品や清涼飲料水の摂取
これらに多く含まれるリンによりマグネシウムの吸収が妨げられます。
・食品添加物や農薬等の摂取
有害物質を解毒するために肝臓でマグネシウムを消費します。
・エストロゲン過剰(環境ホルモン含む)
本来月経期間中はエストロゲン濃度が低いはずですが、肉・乳製品・環境ホルモンの摂取でエストロゲンが高濃度になると、マグネシウムの体内濃度は低下します。
肉・牛乳・乳製品、これらにホルモン剤(エストロゲン様環境ホルモン)が含まれている可能性がある事をご存知ですか?
例えば乳牛は、早くから、そして大量にお乳を出させるために、遺伝子組み換え牛成長ホルモンというのが投与されている事があります。日本では規制も表示義務もないですが)
アメリカでは、逆にこのホルモン剤を「投与してません」と書くと、投与している牛乳の販売を妨害する、と裁判が起こり、区別してはいけないようになっています。
ホルモン剤投与でたくさんお乳を出す牛さんは、ママさん達ならわかると思いますが、乳腺炎を起こしやすくなります。その乳腺炎防ぐために、抗生剤も投与されているのです。
肉牛にもホルモン剤は使われており、日本では4種類のホルモン剤投与が認可されているようです。(EUでは一切禁止されていますが・・)
ホルモン剤に抗生剤をお肉や牛乳・乳製品から取っているかもしれない、なんて、普通は気付きませんので注意が必要です。
・食の欧米化
洋食より和食の方がマグネシウムを多く含む献立ですが、食の欧米化によりマグネシウムの摂取量は低下しています。
・生理時には・・
特に更年期以前の女性は、月経前に血中マグネシウムを骨や筋肉へと移行させるため、生理中は脳内のマグネシウムレベルが低下してきます。
などなど。。。
こうしたことから、常日頃、マグネシウムの補充を考えなくてはなりません。そのためには、基本的には食事から摂取することです。
マグネシウムの補充はどのように・・
欧米化した食事では、マグネシウム不足が懸念され、基本的には和食が勧められ、食事から摂取するのが原則です。
●マグネシウムを多く含む食品
玄米によるご飯 100g 48mg
白米によるご飯 100g 40mg
米、麦こうじ味噌 100g 80mg
豆こうじ味噌 100g 130mg
アーモンド 30g 87mg
カシューナッツ 30g 72mg
国産大豆 30g 66mg
落花生 30g 60mg
干しひじき 10g 54mg
納豆 1パック 100g 100mg
かき 70g 50mg
ほうれん草 70g 50mg
いんげん豆 30g 45mg
かつお 100g 40mg
あおのり 3g 40mg
あずき 30g 36mg
とうもろこし 1本120g 35mg
枝豆 50g 35mg
バナナ 100g 34mg
食品から摂取するのが一番ですが、より確実に補充していく場合は「マグネシウム原液」を作成され、これで必要量を補充する方法があります。
以下は、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の考案されたものです。
マグネシウム原液の作り方
マグネシウムの原料は、スーパーでニガリ(200円/100cc)を求めるか、薬局で「塩化マグネシウム」(500g/1本、1000円~1200円)を買い求めることです。豆腐屋で用いる20Kg袋を買って(4000円程度です)つくるのは量が多すぎて現実的でないため、薬局で「塩化マグネシウム」(500g/1本、1000円~1200円)を買い求めるのが適当と思われます。
50 mg マグネシウム原液の作り方:
こうしたマグネシウムの原液は、本来「片頭痛治療薬」として製品化されるべきですが、メーカーには利益にならないため、市場には出回っていません。ですから、自分でつくるしかないようです。(トリプタン製剤のように利潤が上がらないためです)
2リットルの空きペットボトルの1.2リットルのところにマジックインクで線を入れておきます。
漏斗等を用い塩化マグネシウム粉末500gをペットボトルに入れます。
塩化マグネシウムはネット通販で買いましょう
( 薬局で入手できにくい地域もあります)。
加熱後冷却水か市販の飲料水を1.2リットルの線近くまで入れます。
ペットボトルに栓をし、よく振って溶解させます。
(その後、静置し正確に1.2リットルになるよう水を追加します)。
以上で完成です
これを、もっと簡略化させたものが、「マグCプラス」です。
「マグCプラス」は、「万能健康ジュース」の材料に登場する「50 mg マグネシウム原液」をちょっとアレンジしたものです。つくり方はすごく簡単です。
材料
水 75 cc
塩化マグネシウム 100g
ビタミンC 3g
つくり方
水に塩化マグネシウムとビタミンCをよくかき混ぜて溶かして完成! あとは冷蔵庫で保存して下さい
サプリメントを飲んでもマグネシウム不足は解消されません
マグネシウム不足を解消するのが目的ならば、市販のサプリメントでマグネシムを補えばよいのでは??と思われる方が多いかと思うのですが、残念ながらサプリメントではマグネシウム不足を解消するのは難しいのです。
なぜならばマグネシウムは大量の水で希釈しないと吸収されないからです。 サプリメントでマグネシウム不足を解消しようと思ったら2リットルくらいの水と一緒に飲まないと効果はありません。サプリメントを2リットルの水で飲むなんてとても現実的ではありません。そこで確実&簡単にマグネシウムを摂取する手段として、この「マグネシウム水溶液」が考案されました。多くの方々はサプリメントで代用されようとされますが、全く効果はありません。
マグネシウム水溶液の飲み方
[飲み方の基本]
500ccの水に小さじ1杯程度のマグネシウム水溶液を入れて飲みます。
[味付けの工夫]
上記の様に水で薄めるだけで、マグネシウム不足を補う事がでますので、効果的にはこれで問題無いのですが。このままでは”ニガくて”飲めません。
味付けを工夫して楽しみながらマグネシウムを摂取するのがよいのです。
クエン酸とビタミンCを1gずつ入れて飲む事をオススメしています。
こうする事によってレモン水の様な味になり、味のバリエーションが増えます。
もう一つのオススメはクエン酸、ビタミンCの他、更に「蜂蜜」を加えることです。甘味が出るので美味しく頂けます。
[実際の飲むタイミング]
飲むタイミングは
(1)片頭痛の前兆時に飲む
(2)日頃の”水分補給時”に飲む
この2点です。
その必要量は年齢によって異なっていますので、上の表を参考にして補充していくようにして下さい。
常時、マグネシウム補充を行うためには
(1)先程説明した[飲み方の基本][味付けの基本]を基に出来たものを、ペットボトル等に詰めて常に携帯し、必要に応じて飲むようにします。水分補給とかねて・・
(2)もしくは、原液の状態(小さじ1杯あたり500gの水に希釈しない状態)の物を小さな小瓶(弁当に入っている醤油挿しの様なもの)に詰めて携帯し、出先で必要に応じて水に薄めて飲む。頭痛がきそうな予感がしたときに服用します。
の2種類の方法をオススメしています。
これらはあなたの生活スタイルに合わせて、やりやすい方を実行して頂ければOKです。
このように、これを原液として、万能健康ジュースにも使用できますし、スポーツドリンクなどの代わりに、500mlの水(ペットボトル)に2~3cc入れて飲むのもOK。また、ご飯を炊くときに少し入れるのもいいですね。
塩化マグネシウム(粉末)はドラッグストアなどでは手に入れにくいので、ネットで購入するのがいいでしょう。市販のニガリ(水溶液)でもよいのですが、ちょつと割高になります。おとうふ屋さんでもらえるとラッキーですね。
以上のように、慢性頭痛を改善させるためにはマグネシウムの補充は極めて重要になっています。
問題は、日常生活を送る際にちょっとしたことがマグネシウム不足を引き起こすことになりますので、注意が必要になってきます。ここが最も大切なことです。
マグネシウムの補充は、片頭痛治療の根幹”要(かなめ)となっていることを忘れないで下さい。
その2 ビタミンB2
ミトコンドリアは、細胞の中で呼吸し、エネルギーを生産している工場の役割を担っています。ミトコンドリアの働きが低下したり、異常をきたす病気を「ミトコンドリア病」といい、この病気を持つ人のほとんどが、片頭痛を持病として持っています。
このミトコンドリア病を持つ人々にミトコンドリアの機能をよくするビタミンB2を摂取させると、片頭痛が改善されることが分かりました。
逆に、片頭痛もちの人たちもビタミンB2を摂取することで、7割近くの人の頭痛が改善することが分かっています。
1998年にShoenenらによって発表された論文によりますと、ミトコンドリア病の患者さんに1日1回400mgのB2を服用させた所、ミトコンドリアが元気になりミトコンドリア病が改善しました。このミトコンドリア病の主症状が片頭痛です。この事にヒントを得て、ミトコンドリア病に限らず片頭痛の患者さん55人に1日1回400mgのリボフラビン(ビタミンB2)を3ヶ月服用させた所、片頭痛の起す割合が半分に減った患者さんが37名だったと言う事でした。
その理由は、ビタミンB2がミトコンドリアの電子のやりとり(電子伝達によりエネルギーを産生する)を円滑にしたことにより、ミトコンドリア代謝機能を向上させたからだと考えられています。
また、ビタミンB2には体内で生成される過酸化脂質を分解する作用もあり、この作用によって片頭痛が軽減された可能性もあります。いずれにしても、ビタミンB2が片頭痛患者の半数以上に改善効果を与えたことは事実ですから、ビタミンB2を積極的にとりたいものです。
ビタミンB2を多く含む食品としては、牛、豚、鶏のレバーやハツ(心臓)、うなぎ、うに、すじこ、サバ、ズワイガニ、納豆、いくら、タラコ、卵黄、まいたけ、モロヘイヤ、のり、煎茶の茶葉、唐辛子などがあります。
その3 鉄の補充を常に念頭に・・・鉄分不足と女性
女性は月経の出血により鉄分が少しずつ失われていくことで鉄欠乏性貧血になる人が多く、20代、30代、40代と年齢が高くなるにつれて貧血の人が増える傾向にあります。40代になると女性の約3割が貧血になっています。
体内で鉄が減少すると、貯蔵鉄であるフェリチンが使われ減っていきます。フェリチンが不足すると血液中の鉄分も徐々に不足し、最後にヘモグロビンが減少し貧血が起こります。
貯蔵鉄のフェリチン、理想値は100~300 で、男性の99.9%はフェリチン100以上です。 50歳以上の女性の80%はフェリチン100以上です。
しかし、15~50歳女性の80%はフェリチン30以下の鉄不足で、40%はフェリチン10以下の深刻な鉄不足です。
鉄欠乏性貧血にまで至らない鉄欠乏状態である方々は成人女性の約40%存在します。
鉄不足ですと電子伝達系の機能が低下し、十分なATPが産生できません。
このように、鉄不足はTCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。
このように、鉄分の不足は、ミトコンドリアのエネルギー代謝がスムーズに行かなくなるため、片頭痛を引き起こしやすくなってきます。
鉄分不足の貧血が片頭痛を引き起こす!?
鉄は体内で以下のような様々な重要な役割を果たしています。
1.鉄は赤血球の重要な構成要素として酸素の運搬に関わっています
全身の細胞へ酸素を運び、蓄えます。
・酸素の運搬 : 赤血球のヘモグロビン
・酸素の備蓄 : 筋肉細胞のミオグロビン
2.エネルギーを生み出す
ミトコンドリアでATPを産生します。ATPは細胞の中にあるミトコンドリアで作られます。そして、ミトコンドリアの中には鉄が保存されています。
たとえば、過度なダイエットなどで鉄分が不足すると、ミトコンドリアに蓄えられていた鉄が使われて減っていきます。
鉄が減ればATPを充分に作れなくなりますので、体温を維持することができず、冷え症が起こってくるのです。鉄不足がもっと進むと貧血になりますが、冷え症はその前に起こる現象です。
電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須なのです。すなわち、鉄不
足があると、ATP不足と乳酸蓄積を生じます。ミトコンドリアはチトクローム系酵素「ヘム酵素」を含みヘム鉄が材料のため、ミトコンドリアの多い臓器は鉄の赤い色をしています。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。鉄は、ヘモグロビンの材料になるだけではなく、各細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の触媒のような働きをします。
3.活性酸素から体を守る
抗酸化酵素(カタラーゼ・SOD)の補因子として働きます。
カタラーゼやグルタチオン・ペルオキシターゼなどの抗酸化酵素の構成要素となって活性酸素の消去に関わっています。
4.コラーゲンの合成を助ける
酵素シトクロムP450は鉄を補因子として、ビタミンCを補酵素としてコラーゲン特有のアミノ酸 (ヒドロキシプロリン・ヒドロキシリジン)を合成します。これは皮膚に関連し、美肌に影響があります。
5.有害物質の排泄を助ける
肝臓に多い水酸化酵素シトクロムP450の補因子として、水に溶けやすく排泄されやすい形に換えます。ミトコンドリア内でシトクローム酵素の構成成分としてATPの合成に重要な働きを負っています。
6.神経伝達物質(脳内セロトニン)の産生に関わっている
鉄分が不足すると、ヘモグロビンが充分に作られないので、貧血が起こります。貧血が起こると、脳内にも酸素や栄養素がしっかりと届かなくなるため、充分なセロトニンを合成することもできなくなります。
鉄分は実はセロトニンなどの神経伝達物質を作るときの酵素を助ける「補酵素」として機能しているため、鉄分が充分潤っている体内ではセロトニンがスムーズに作られますが、鉄分不足だと、セロトニンの生成自体が出来なくなるわけです。
つまり、セロトニンの合成には、トリプトファンとビタミンB6とマグネシウムとナイアシンが必要!であり、実は「鉄分」も必要なのです。
トリプトファンというアミノ酸からセロトニンができる過程や、チロシンというアミノ酸からドーパミンができる過程で、鉄が必要になってくるのです。
片頭痛持ちの人は、鉄欠乏性貧血になると頭痛が増え、頭痛の強度が増強してきます。
鉄不足はエネルギー不足と心得ましょう
鉄については新しい認識として「鉄不足=貧血」ではなく、「鉄不足=エネルギー不足」だと思って下さい。というのも鉄はエネルギーを作り出すうえで欠かせない成分なので、鉄が不足するとエネルギー不足になります。
その結果、元気もでませんし、疲れやすいし、体温も上がらないので冷え症にもなりやすくなります。体のすべての機能が低下してしまうのです。
鉄不足の影響が体のどこにでるか、どういった症状であらわれるかは人それぞれなのですが、いわゆる女性特有のトラブルといわれるものの背景には鉄不足が関わっているケースが多いということは覚えておくと良いと思います。
実際に、不正出血だったり、鉄を摂取したところ便秘が改善したというケースもあるのです。この例は筋肉を収縮させる働きもする鉄分を補ったことで、子宮の筋肉がきちんと収縮するようになったこと、腸の蠕動(ぜんどう)運動が正常化したと考えられます。
今現在、体の調子がいまいちすぐれないとか、年齢のせいかな?と思う衰えを感じているようなら、まずは鉄を補給するようにしてみてください。病院に行くのはそれからでも良いと思います。
カフェインの作用として コーヒーの飲み過ぎ
カフェインには鉄分や亜鉛などミネラルの吸収を阻害する性質があります。
カフェインは鉄分の吸収を阻害しますので、貧血気味の女性、貧血の人は、せっかく他で鉄分を補ってもカフェインのせいで鉄分吸収がうまく行われないことがあります。
その他にも体から亜鉛、カリウム、カルシウムなどのミネラル、ビタミンCやB群を奪うことが知られており、このためエネルギー代謝を始め、多くの代謝に支障がでます。
またカフェインの過剰摂取(1日300mg以上)はホルモンバランスを崩しますので、こちらも様々な影響を及ぼします。
コーラ類や紅茶にはインスタント・コーヒーと同じくらいカフェインが含まれていますし、緑茶、ココア、チョコレートなどにも含まれます。市販薬に多量のカフェインが含まれているケースもあります。
知らず知らずのうちに、自分が思っている以上にカフェインを摂ってしまう状況があります。有効な部分ももちろんあるのですが、摂りすぎには注意した方が良い成分、ということです。
その良い例が、カフェインは頭痛を抑える働きがあるのですが、飲みすぎると逆に頭痛を引き起こす、という作用です。
うまく摂り入れると良いのですが、過剰になると毒となります。注意したいものです。
何でもそうですが、偏った摂り方に良いことはありません。
鉄が大事だと思えば普段から食事の中で症状が出ていない人でもなるべく鉄を摂るようにしていきましょうという風に考えて頂きたいと思います。その時の鉄、食べ物で言えばやはりレバーです、それからお肉の赤身です、レバー嫌いな人はお肉の赤身でいいですからそれをしっかり摂って下さい。そしてひじきにも入っていますが、少ないのでひじきだけで鉄をまかなうのはかなり難しいです。小松菜、ほうれん草に至っては鉄分が非常に少く、農薬を使っていますのでこれで摂るのもかなり厳しいです。バケツ1杯とか2杯とかのほうれん草を食べると賄えるかもしれませんがちょっと考えただけでも食べたくないです。それよりはお肉の赤身ということになってきます。
その4 睡眠は十分とりましょう。
第9章では、規則正しい生活を送るように心掛けましょうと述べました。
規則正しい生活とは、生まれつき体に備わっている生体リズムに沿った生活という意味で、最も自然で健康的な生活と言えます。
規則正しい生活は健康のためにいい、とよく言いますが、このことは第9章で述べたことです。
それでは、なぜ十分な睡眠が必要なのでしょうか? もう一度・・
それは、活性酸素等で傷ついたミトコンドリアの修復は寝ている間に行われるため、その修復には睡眠が不可欠です。もしその傷が大きければそれだけ長い睡眠が必要になります。
そうなのです、必要とされる睡眠時間は状況によって大きく変わるのです。例えば1 日中テレビを見たり本を読んで過ごした日は6 時間の睡眠でいいかもしれませんが、殴り合いのケンカで死にそうになった日は15 時間でも足りないかもしれません。
起きている間の活動で細胞が傷つき、寝ている間にそれを修復します。しかし前述したように完全には修復できないため徐々に傷が蓄積し、それが致命的な状態にまで達したときお迎えが来るわけです。つまり起きている間にできる傷が大きいほど睡眠時間は長くなって寿命は縮むのです。
片頭痛の場合、特に子供の場合、片頭痛の発作を起こした際に、一眠りした後に頭痛が軽快することはよく経験されます。これは、寝ている間に、活性酸素等で傷ついたミトコンドリアが修復されることによって、頭痛が軽快したものと思われます。
大人の場合、生活習慣に問題があるとか、ストレスをためているために活性酸素等で傷ついたミトコンドリアを修復させるために、自然と睡眠時間が長くなりますが、過大なストレスにさらされている状態が持続していれば、傷ついたミトコンドリアは、長時間睡眠をとったにも関わらず、完全には修復されないため、頭痛が起きやすい条件が残ることになり、朝食を抜いて寝ていれば、低血糖・脱水などの要因が加わり起床後に頭痛に見舞われることになります。
こうしたことから、寝過ぎによる片頭痛発作をなくすためには、日頃から「生活習慣の問題点を是正」し、「ストレスをためないための対策」が必要となってきます。
このため寝不足は”論外”ということになります。
嫌なこと、辛いことを眠って忘れると言うように睡眠中には心の修復、記憶(情報)の整理までもが行われています。
記憶が整理され、定着するのは、深い睡眠中です。このため、睡眠時間を削ってまで、勉強をすることは極めて効率が悪く、学習機能は向上することはありません。寝る子の方が成績のよいことは、海外の最新の睡眠研究で明らかにされています。
睡眠中に分泌されるホルモンの役割
夜、眠りについてから朝起きて活動を始めるまでに、体の中ではさまざまなホルモンが分泌され、大切な働きをしています。
ノンレム睡眠中には、新陳代謝を活発にする成長ホルモンや免疫細胞同士の情報伝達の役割をするサイトカインなどが活発に分泌され、病原菌に対する抵抗力が強化されたりします。
成長ホルモンは22時頃から活発になり2~3時頃にピークを迎えます。「寝る子は育つというように」、睡眠の深い子ども程たくさん分泌され、子どもの成長に重要なホルモンですが、大人にとっても体の修復に欠かせません。たんぱく質や骨などを合成する働きの促進、疲労回復、リンパ球の働きを活発にさせて傷の修復、お酒を飲んで代謝に使われた肝臓細胞の再生など、細胞を活性化させ、体全体のダメージを回復するホルモンです。
女性にとってもこの4時間は、お肌のゴールデンタイムといわれ、肌の生まれ変わりが最も活発になり、熟睡によって皮膚の新陳代謝が促進され、肌がみずみずしく、つやつやしていきます。このことは、先程も述べたことです。
それでは、睡眠時間に関して最近一番よく聞くのが、6時間半~7時間半くらい、つまり平均して7時間くらいが良いということです。従って11時頃就寝し、6時頃起床するのが理想的と言われています。この点に関しては、本人にとって適正な時間であれば十分であり、それよりは起床時間と就寝時間を一定にさせることが最も大事な点です。
適切な睡眠時間は、各人によって異なっていることを理解され、睡眠時間を適正に確保し、起床・就寝時間を一定にすべきです。これが最低限必要とされています。
とくに、仕事の関係で十分な睡眠時間が確保できない状況においては、最低限、朝の起床時間を一定にする必要があります。
以上、睡眠は、健康的な生活を送る上、さらに片頭痛治療上、極めて大切であるかが理解して頂けたかと思います。
しかし、問題は職業柄夜勤だけの場合です。ガードマン、夜警などの方々は、このような考え方では睡眠がとれません。このため、このような方々の慢性頭痛のコントロールには難渋していることは事実です。こうしたことは、睡眠が十分に確保できないとどのようになるかを証明していると言えます。
経験的に、睡眠時間の問題が解決しなければ、いかなる手段を用いようとも、慢性頭痛を改善させることは不可能といえる程、重要な位置を占めております。
その5 抗酸化食品をしっかり摂取する
フリーラジカルスカベンジャーは、活性酸素の毒消しをする物質です。これを増やすことによって、人体に蓄積された有害な活性酸素を無害化することができます。
活性酸素とは、人間の身体に取り込まれて燃焼した酸素からできたもの。本来は殺菌や消毒作用がある有益なものですが、増えすぎると体内物質を酸化させ、老化や病気の原因になってしまうのです。
抗酸化作用のある野菜や果物などの食品・食べ物
アントシアニン(ブルーベリー・カシス)、ケルセチン(そば)、ルチン(そば)、カテキン(お茶)、イソフラボン(大豆)、カルコン(明日葉)、クロロゲン酸(コーヒー豆)、ロズマリン酸(シソ)、ゴマリグナン(ゴマ)、クルクミン(ウコン)、タンニン(お茶)、スルフォラファン(ブロッコリー)、βカロチン(緑黄色野菜)、リコピン(トマト)、カプサイシン(唐辛子)、アスタキサンチン(鮭・イクラ)、ルテイン(ケール・ほうれん草)、フコイダン(海藻)、βグルカン(キノコ)、ペクチン(リンゴ)、テアフラビン(紅茶)
■ 体内の活性酸素を除去する食品をまとめてみますと・・
ビタミンA:ニンジン、ほうれん草、卵黄、牛乳、バター
ビタミンC : ブロッコリー、小松菜、ピーマン、トマト、イチゴ、緑茶、ジャガイモ
ビタミンE:大豆、落花生、しじみ、うなぎ
βーカロテン : ニンジン、小松菜、ほうれん草、かぼちゃ、ニラなど
ポリフェノール : 赤ワインなど
リコピン : トマトなど
スルフォラファン : ブロッコリー、キャベツ、カリフラワーなど
メラノイジン : みそ、しょうゆなど
抗酸化食品のほとんどは、日ごろから食べている野菜や果物に含まれています。
つまり、日ごろから、好き嫌いなく、バランス良く積極的に野菜や果物を食べていれば不足することはないと考えられます。
しかし、一人暮らしの方や外食が多い方などは野菜不足になりがちです。
また、高カロリー・高脂肪な肉食中心の欧米型の食事は、体が酸化しやすいため、活性酸素の攻撃を受けやすいと考えられます。
少しずつ食生活を変え、上手に抗酸化作用があるサプリメントを取り入れて、活性酸素を抑えましょう。
その6 食べ過ぎ・過食はよくありません
■お腹をすかせて若くなる「週末断食」のすすめ
自由に食べ物を食べさせた猿とカロリーを70%に抑えた猿との二つの群に分け、20年間比較した研究がありました。カロリー制限した猿は、そうでない群に比べ、生活習慣病や老年病で亡くなる数が1/3程度で、しわや白髪が少なく、目の輝きも違っていたといいます。猿は人間と最も近い動物ですので、カロリーを抑えると若々しく長寿になると考えられます。
しかし、実際に20年もの間、3割もカロリーを減らし続けるのは至難の業です。その後、研究は進み、総カロリーを減らすよりもミトコンドリアを増やし長寿遺伝子のスイッチをオンにすることが大切なこと、そしてミトコンドリアを増やすには、空腹感が最も重要であることも分かってきました。
更なる実験の結果、20年間カロリーを7割に抑え続けるのと、週2日、30%のカロリーにすることでは同じ効果があることが分かりました。カロリー制限に捉われるとストレスに繋がりますが、毎日食事制限をしなくても、時々空腹感を味わう「プチ週末断食」をお勧めします。空腹になると体はもっとエネルギーを作らなければと認識してミトコンドリアを増やし、エネルギーを作ろうとするのです。
難しく考える必要はありません。平日は普段通りの食事を摂り、週末の1~2日だけ3割程度のカロリーにすれば良いのです。例えば朝は野菜ジュース、昼はざるそばなどの軽食、軽めの夕食にする程度で十分です。経験者の方はいずれも体調が良くなったと言います。但し、回復期が肝心ですから、回復期にはいきなり普通の食事をせずに徐々に普通の食事レベルに戻していくようにして下さい。
カロリー制限でミトコンドリアを増やす
カロリー制限には細胞内のミトコンドリアを増やして活性化する効果があるといいます。
健康で若々しく長生きするためには、この「ミトコンドリア」が元気であることが重要ともいわれますから、この面から見ても、カロリー制限は健康効果が高いと考えられます。
ミトコンドリアは細胞内で、エネルギー源を作る仕事を担っています。
私たちが食物から取り入れた糖分や脂肪などの栄養素と、呼吸で取り入れた酸素を利用して、効率的にエネルギー源である「ATP」を作りだします。筋肉に特に多く存在しています。
お年寄りと若者のミトコンドリアを比べてみると、お年寄りの方がその量も少なく、機能も低下してます。
私たちのすべての活動は「ATP」から放出されるエネルギーが元になってます。ミトコンドリアが活発に働いていて、しかも量が多いことが元気の秘訣ともいえるわけです。
そして、その鍵を握るのが「AMPキナーゼ」という酵素。AMPキナーゼはATPをコントロールしているといわれます。
いつでも、体内のATP量をチェックしていて、少なくなればATP生産量を増やすように働きかけます。
ATPが不足しているということはエネルギー不足ということです。なので、脂肪の蓄積よりも、ブドウ糖を細胞内のミトコンドリアに運んで、より多くのATPを作るようにしていきます。
それと同時に、ATP生産工場であるミトコンドリア自体の量を増やすようにも働きかけます。
●カロリー制限でミトコンドリアも増える
カロリー制限でもミトコンドリアが増えます。
カロリー制限をして摂取カロリーが減ると、当然、その材料であるブドウ糖(グルコース)の外部からの供給が一時的に減ってATP生産量も減ってきます。
すると、それを感知したAMPキナーゼが活性化。この働きにより、先ほどのようにミトコンドリアを活性化させたり、量を増やしたりしていきます。
また、カロリー制限をしていると無駄にたまった脂肪も分解されていきます。 脂肪細胞にたまっていた中性脂肪が少なくなっていくわけです。
脂肪細胞は、ただ単に脂肪をため込むだけのものではなく、それ自身が生理活性物質を分泌しています。脂肪細胞に脂肪がたまりすぎてぶくぶくになっているときは悪玉物質、脂肪がたまっていないときは善玉物質が分泌されるようになっているのです。
そして、善玉物質の1つに「アディポネクチン」というのがありますが、これがAMPキナーゼを活性化する働きも持っています。
こうしてみると、適度なカロリー制限をすることは、二重にも三重にもいい効果が得られると考えられます。
そういえば、女優の黒木瞳さんも、以前、笑っていいともに出演されていたときに、美しさの秘訣をタモリさんに聞かれて、「腹八分目とミトコンドリアを増やすこと」というのを言われていました。
適度なカロリー制限「腹八分」をして、結果ミトコンドリアが活性化し増えてもいます。その結果が、今の黒木さんの若々しさ、美しさにつながっているのかもしれません。あの美しさをみれば、非常に説得力のある考え方です。