ミトコンドリアDNA | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 初回には、以下のように述べました。


癌も活性酸素が原因で発生する


 細胞の外側を覆っている細胞膜が活性酸素によって過酸化脂質に変化することにより細胞膜自体が破壊されると、活性酸素が細胞内に侵入し核のある「DNA」に直接襲いかかります。「DNA」は人間を正常な体に構成するために一つ一つ作り上げるための、いわば遺伝子の基になるものです。この「DNA」が活性酸素によって狂わせられて、突然変異の遺伝子をつくり出してしまいます。この変異した細胞がガン細胞なのです。


 このように述べました。


 細胞内では、ほとんどの遺伝情報はDNAとして「核」とよばれる細胞小器官の中にあるのですが、ミトコンドリアの遺伝情報の一部だけが特別に、ミトコンドリアDNAとしてミトコンドリアの中に存在しているのです。
 ミトコンドリアDNAとは、ミトコンドリアの中に含まれるDNAのことです。


「細胞内共生説」

 
 私たちにとって大切な役割を持ったミトコンドリアですが、実はもともとは細胞内には無かったものだと言われています。現在最も支持されている説は、地球上に初めて現れた生物、原核生物から真核生物、つまり細胞核をもつ生物に進化する過程で、ミトコンドリアの祖先を体内に取り込んだと言うものです。
 ミトコンドリアは細胞内で細菌のように見え、実際、昔真核細胞生物に入り込んだある種の細菌がその先祖であると考えられています。


 ミトコンドリアの祖先であるその細菌は、現在のその機能と同じく、酸素を使ってエネルギーを作り出していました。この方法は、酸素を使わない場合に比べ、20倍近い効率でエネルギーを作り出すことが出来ます。その細菌(αプロテオ細菌とよばれている)を酸素をつかうことの出来ない真核細胞生物が細胞質の中に取り込み、共生をはじめたのです。
 その細菌を取り込んだ真核細胞生物、つまり宿主細胞はその共生を始めた初期にそのミトコンドリアの先祖から、DNAの大部分を奪い、自らの核内DNAへと情報をうつしかえたようです。そしてミトコンドリアがふたたび外へと出て、生きてゆくことの出来ないようにしました。
 今ではミトコンドリアは細菌だった時代の1割程度のDNAしかもっていないようです。


ミトコンドリアDNAについて


 そしてミトコンドリアは細胞核にあるDNAとは違う、独自のDNAを持っていることが分かりました。ミトコンドリアがDNAを持っていることは、1963 年スウェーデンのストックホルム大学の生物学者マーギット・ナス教授が発見しました。ミトコンドリアのDNAは本来のDNAと混乱しないよう、「ミトコンドリアDNA」(「mtDNA」と書きます)といいます。ミトコンドリアには核のようなものはなく、数千ものミトコンドリアDNAがミトコンドリア内に存在することが分かっています。
 ちなみに、ミトコンドリアを持つ宿主細胞はミトコンドリアが自分に刃向かうことのないよう、対策もしているようです。
 まず、宿主細胞は、ミトコンドリアの分裂をコントロールできるようにしています。
 核内の遺伝子から作られるタンパク質で、ミトコンドリアを強制的に分裂させているようです。
 また、有性生殖を行う生物のほとんどでは、母親由来のミトコンドリアだけが子供へ伝えるようになっています。これをミトコンドリアの母性遺伝といいます。
 このことで、違う種類のミトコンドリアDNAが混ざり合い、多様性を持って、進化をとげることを妨げているのではないでしょうか。
 このようにミトコンドリアは細胞核に大きく支配されているようです。
 つまり、ミトコンドリアは細胞内で、奴隷のように扱われている、と考えられます。
 ミトコンドリアDNAは母親のものだけが子供に伝わることが分かっています。父親のミトコンドリアDNAは卵と精子が受精した後、排除されることが確認されています。みなさんの体の中のミトコンドリアDNAはすべておかあさんと同じミトコンドリアDNAなのです。なぜおとうさんのミトコンドリアDNAが伝わらないのかは、色々と説がありますが、いまだによく理解されていません。


 ところで、この特性は生物の進化を調べるのにある利点があります。それは、ある特定の祖先にたどり着くと言うことです。例えば、皆さんのDNAはどの祖先のDNAですか?と聞かれた場合、まずおとうさんとおかあさんがいて、またそれぞれにおとうさんとおかあさんがいます。そして、それぞれにまたおとうさんとおかあさんがいて・・・と途中であまりにも多い人が出てきてわけが分からなくなってしまいます。ところが、ミトコンドリアDNAの場合は母親のみを辿ればいいのですから、一人の女性にたどり着くわけです。この特徴は、種がどのように進化してきたかを調べるのに非常にわかりやすくて助かります。


 このように言いますと、すべてが母親から遺伝素因を受け継ぐように思われますが、しかし、臨床的には、父親からの遺伝素因を受け継ぐ場合も当然あります。
 この理由は、ミトコンドリアの機能に関する遺伝子はミトコンドリアのDNA に乗っているものと核内の染色体に乗っているものがあります。核内にあればメンデルの遺伝法則に従って、父親から遺伝し、ミトコンドリア内であれば母親から遺伝します。
 今後は「母系遺伝」という言い方をやめて「細胞質遺伝」という言葉に統一することが望ましいように思っています。


なぜミトコンドリアDNAなのでしょうか?


 生物がどのように進化したのかを調べるのに、mtDNAが今盛んに取り上げられています。なぜ、核にあるDNAではなく、mtDNAなのでしょうか? その理由にはmtDNAの特徴が、研究に適していることが挙げられます。

 細胞は増える時に、自らの遺伝子をコピーします。このコピーですが、時々間違ってコピーされることがあります。この間違いを塩基置換といいます。  また、コピー時だけでなく、何らかの刺激などで、DNAの配列が変わってしまう塩基置換もあります。塩基置換は致命的なときもありますが、なにも影響がなかったり、少し影響したりする場合があります。塩基置換は生物が環境に適応するのに、とても大切なことです。もし遺伝子が完璧にコピーばかりされていたら、環境が変化した時、その生物はそれに適応できずに絶滅してしまいます。
 このように「ミトコンドリアDNA」は、「生活習慣の要因」と「外部の生活環境の要因」によって時々刻々変化していくものです。


 mtDNAの塩基置換は通常のDNAと比べると5~10倍早いとされています。人とチンパンジーのDNAを見てみましょう。チンパンジーは人と同じ祖先から進化したといわれています。DNAを比べてみると1%しか違わないということが分かります。
 一方、ミトコンドリアDNAを比較するとその違いは9%とDNAと比べると多いことが分かります。チンパンジーも人も同じ祖先から進化したことを考えると(決して、チンパンジーが人間に進化したのではないのです)、mtDNAの方が同じ期間に塩基置換がより多く行われていることがわかります。つまり、最近Aという種がBとCという種に分かれた場合、DNAをみてもあまり違いがないのに対し、mtDNAはDNAの5~10倍違いがあるため、比較しやすいということになります。


母の力は子孫に大きく影響!?

 
 ほとんどの遺伝情報は核の中のDNAにあり、ミトコンドリアDNAはそれほど大きな働きはしていないように思われますが、近年、このミトコンドリアDNAの変異が、老化や加齢に伴う病気に大きく関わっていることがわかってきています。


 スウェーデンのカロリンスカ研究所のグループは、母親から引き継いだミトコンドリアDNAが低頻度で変異している変異体のマウスを作製して、変異していないマウスと比較しました。変異マウスは、以前に示されているような老化形質を示しただけでなく、変異を持っていないマウスの寿命が平均140日程度だったのに対し、変異のあるマウスは平均100日程度と、寿命が30%も短くなっていたのです。

 このことは母から由来した変異が子孫の寿命や健康に大きく影響を与えるということを示しているのです。長寿の母親から生まれた子は長寿、でも父親が長寿でもあまり関係ないということなのでしょうか?母の力は偉大だと改めて感じます。


 ミトコンドリアDNA(mtDNA)に変異が生じて発症する難病の一群を『ミトコンドリア病』と呼びます。


 この病気は、発症年齢も乳児期から中年頃までと幅広く、易疲労感、下痢・便秘といった 比較的穏やかな自覚症状から、低身長、視力低下や四肢筋力低下、感覚鈍麻、心筋症・不整脈、時に認知症や脳卒中症状など様々な症状を生じます。また、全身症状を呈するばかりでなく、糖尿病・感音性難聴・片頭痛などの単独症状の原因になり、潜在的な患者が多数いると推測されています。
 また、慢性進行性の経過をとることが多いため、一刻も早く診断し、対症療法を開始することが望まれます。  
 このミトコンドリアDNA変異検査では、代表的なミトコンドリア病に関連する主要な遺伝子変異を検出することができます。


母から娘へと片頭痛が遺伝する理由はミトコンドリアにあった!?


 母と娘の間で片頭痛が遺伝しやすいのは、ミトコンドリアに関係があります。 先程述べましたように、遺伝にDNAが関係することは誰もが知っていることですが、細胞内のDNAとは別に、ミトコンドリアは独自のDNAを持っており、この”ミトコンドリアDNA”が片頭痛の遺伝に関係しています。
 ヒトの精子には16個程度のミトコンドリアが存在します。一方の卵子は10万個といわれています。そして、精子に含まれるミトコンドリアは受精後にすべて死滅してしまいます。父性よりも母性のほうが強いということです。
 ということは、ミトコンドリアのDNAに関していえば、卵子に含まれるものだけが子どもへと受け継がれます。つまり100%の母性遺伝です。もし母親のミトコンドリアの代謝活性(元気さ)が低ければその影響を当然受けやすくなります。さらに、男性に比べて女性のほうが脳内セロトニンの合成量がもともと少ないわけですから、片頭痛の症状が発生しやすいのです。母から娘へと片頭痛が遺伝してしまうのには、こういう理由があったのです。
 このように、私達の体を構成する細胞のDNAは両親の遺伝子を受け継ぐのですが、その細胞内に存在するミトコンドリアのDNAは母親の遺伝子だけが引き継がれていくことになります(100%の母性遺伝)。
 そのため、母親のミトコンドリアの数が少なく活性が低くければ、その子にはその性質が引き継がれ易くなります。
 また、男性に比べ女性の脳内セロトニン合成能力はもともと少ないことなどの理由から、母娘や姉妹に片頭痛持ちであることが多くなります。男性のミトコンドリア活性がその子に引き継がれていくことはありません。
 ミトコンドリアの活性が低くなると、細胞が活動するために必要なエネルギー発生量も少なくなります。その結果、器官や組織を構成する個々の細胞のエネルギーの不足が直接的に器官の機能低下を引き起こすことになります。


 分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、「単一遺伝子」については遺伝的要因と捉えていますが、こういった「多因子遺伝」については遺伝的要因としてではなく、代謝異常の一要因として捉え、以下のように述べておられます。


 片頭痛の遺伝的因子としては、核遺伝子(DNA)のミトコンドリアへの影響も否定できませんが、ミトコンドリア活性が主と考えられます。
 ミトコンドリアの遺伝子は母親の遺伝子だけが引き継がれ、女性は男性に比べセロトニンの合成能力が低いため、母と娘の間で遺伝しやすい、これが「単一遺伝子異常」を除く、唯一の遺伝的な要因です。
 それも、ミトコンドリアのどの部分のDNAがどうだから、どうなるといった類のものではなく、人にも背が高い人、低い人、肥えた人、痩せた人があるように、ミトコンドリアにも元気なもの、元気の無いものがいて、元気のいい母ミトコンドリアからは元気のいいミトコンドリアが生まれやすく、元気の無い母ミトコンドリアからは元気の無いミトコンドリアが生まれやすい程度のことです。ミトコンドリアは今の環境に満足してしまえば数を増やすことも元気に働くこともしない怠け者ですので、何らかの刺激で慌てさせるとその数や活性を増す生き物と考えられます。
 ということは、少々元気の無いミトコンドリアであっても鍛えればそこそこ強くなるし、殺してしまえば(アスピリンなど)どうしようもなくなってしまうということです。
 片頭痛の方はもともと活性の低いミトコンドリアを引き継いでいるわけですので、直ぐに活性を高めるということは困難ですが、少なくとも殺すことを止め、元気を取り戻す刺激を与えれば、片頭痛の原因とならない程度には回復できるものと考えられます。
 片頭痛関連遺伝子の可能性のある遺伝子としての、ドーパミン受容体、セロトニン受容体の遺伝子多型、メチレンテトラヒドロ葉酸酵素、アンギオテンシン変換酵素遺伝子多型などについては、代謝異常と考えられます。
 ドーパミン受容体やセロトニン受容体についても、さまざまなホルモンのバランスで受容体の活性は異なりますし、そこに活性酸素(電磁波、化学物質などの刺激による)が加わることや、さまざまな生理活性物質の影響を受けて、受容体の活性は異なると思われます。
 当然、代謝の一種と考えると酵素、補酵素、ビタミン類、ミネラル類などの因子も考えねばなりません。
 結論として、「片頭痛は決して遺伝だけにより起きる病気ではなく、生活習慣の乱れによって惹起される病気であり、生活習慣を正すことにより治る病気である」と考えられます。



 片頭痛の場合、母親から引き継がれる遺伝素因として生まれつき存在する「ミトコンドリア働きの悪さ」の程度は”さまざま”です。この程度によって片頭痛の発症時期が左右されることになります。極端に悪ければ、発症年齢も低くなるということです。小児期に発症することになります。
 細胞は増える時に、自らの遺伝子をコピーします。このコピーですが、時々間違ってコピーされることがあります。この間違いを「塩基置換」といいます。 また、コピー時だけでなく、何らかの刺激などで、DNAの配列が変わってしまう塩基置換もあります。塩基置換は致命的なときもありますが、なにも影響がなかったり、少し影響したりする場合があります。塩基置換は生物が環境に適応するのに、とても大切なことです。もし遺伝子が完璧にコピーばかりされていたら、環境が変化した時、その生物はそれに適応できずに絶滅してしまいます。
 このように、ミトコンドリアDNAは、環境の変化に対応して、変化する特徴があります。このことは、片頭痛の場合の遺伝的素因であるミトコンドリアDNAを考える際に重要になってきます。
 こうしたことから、片頭痛関連遺伝子が、単純には同定できないことを意味しています。


ミトコンドリアDNAとは一体??


 この遺伝素因とされる「ミトコンドリア活性の低さ」は、患者さんそれぞれ程度は異なっているはずです。この遺伝因子とされる”ミトコンドリアDNA”とはどんなものでしょうか。この本質を考えることが重要と思われます。

 生まれつき存在する「ミトコンドリアの働きの悪さ」が存在するところに、いろいろな状況が加わってくることによって「活性酸素」が過剰に産生されます。このため、さらにミトコンドリアを傷つけることによって、ミトコンドリアの状態は変化してきます。こうしたことは時々刻々と変化しています。さらに母親から受け継がれた”生まれつき存在する「ミトコンドリア(”ミトコンドリアDNA”)の働きの悪さ」”は各人各様であり、さまざまなはずです。
 こうしたものを「遺伝子異常」として、捉えようとしていることを意味しています。
 単純に考えても、このように各人各様であり、さらに状況によって、ミトコンドリアの状態は時々刻々変化しています。これまで確認されたものは、マグネシウムが異常に低下した状態が持続したために死滅したミトコンドリアの残骸を偶然発見したものと思われます。さらに、単一の遺伝子による極めて頻度の少ないものを発見したものと考えるべきです。このように考える限り、こうしたものを遺伝子異常として捉えることには無理があります。このため、関連遺伝子をすべて確認できるまでに、今後何年かかるのでしょうか?
 恐らく、1,000年かけても無理のようにしか思われません。


 こうした無駄な研究に、私達の税金から捻出された貴重な国家予算の一部から研究費が出ていることを考えるなら、こうした無駄な研究をすべきではなく、片頭痛を”多因子遺伝”と考え、その”環境因子”の探索を優先すべきであり、ここに指導者としての資質が問われているはずです。


 本来、片頭痛は本来、以下のように考えるべきものです。


  まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
 さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
 片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
 そして、片頭痛の大半は、ミトコンドリアDNAによって継承されます。
 このミトコンドリアDNAは「生活習慣の要因」と「外部の生活環境の要因」によって時々刻々変化していくものです。
 すなわち、このミトコンドリアDNAに影響を及ぼすものには、以下の6要因があります。

    1.ホメオスターシス・・ストレスの関与
   2.免疫(腸内環境)の関与
   3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
   4.体の歪み(ストレートネック)の関与
   5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
   6.マグネシウム、活性酸素、有害物質、睡眠等々


 このように、片頭痛の大半は”多因子遺伝”と考えるべきです。
 こうしたことが未解決のまま、いつまでも放置されるべきではありません。

ところが、頭痛の専門家は、決してこのようには現在では何故だか考えようとはされません。何故なのでしょうか? ここがまさに深遠な謎とされるところです。この論点の差異を念頭におくことが極めて重要になってきます。


頭痛の専門家の見解は・・


 片頭痛を生じる単一遺伝子性疾患としては、家族性片麻痺性片頭痛1型、家族性片麻痺性片頭痛2型、CADASIL、MELAS、Osler-Rendu-Weber症候群がこれまで確認されております。このようなタイプは極めて頻度的に少ないものです。例外的です。
 しかし、専門家はこのように、片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべての片頭痛が、あたかも、単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考えており、こうした関連遺伝子の探索に日夜、腐心される現状が存在しています。


「頭痛は遺伝するのか」という関しては専門家は以下のように説明されます。


 ある程度は遺伝します。頭痛に限らず家族内で同じ病気にかかられることがあります。一部は遺伝で、一部は同じような生活環境や食習慣によると考えられています。
 オランタでの調査ですが、前兆を伴わない片頭痛患者の第一度近親者(両親、兄弟・姉妹,子)が前兆を伴わない片頭痛になる危険性は無縁の人と比較して1.9倍になります。 また、配偶者(妻、夫)が前兆を伴わない片頭痛になる危険性は約1.5倍です。第一度近親者は遺伝と環境の両方が共通しており、配偶者は遺伝的には他人で、食事を含め生活環境が共通しているということより、前兆を伴わない片頭痛では遺伝と環境の両方が関与していると考えられています。一方前兆を伴う片頭痛では、配偶者の危険度は0.8倍(約1倍で全くの他人と同じ)、第一度近親者はなんと3.8倍になることが報告されています。 前兆を伴う片頭痛では遺伝の関与がかなり強いと理解されています。
 しかし、現実の患者さんでは、前兆を伴う片頭痛の患者さんが、頭痛発作時に毎回、前兆を伴うとは限らず、時に、前兆を伴うことなく頭痛だけのこともあります。


 それではどのような体質の場合に片頭痛になりやすいかということですが、まだ確実な証拠は少ないのが現状です。ドパミン受容体遺伝子、MTHFR遺伝子、ACE遺伝子などのあるタイプ(血液型や背が高い低いといった個人差としての違いと同様に個性の一部と考えてください)が片頭痛になりやすいのではないかということが少しづつわかってきたところです。この遺伝子を持っていると100%片頭痛になるというわけではありません。 また、持っていなければ絶対に片頭痛にならないというわけでもありませんので、現状ではあまり気にされないほうがよいでしょう。将来的には、遺伝子のタイプによって、片頭痛にかかりやすいかどうかや片頭痛になった場合にどのような治療法が合っているかというようなことがわかるようになるかもしれません。こういうことを目指して頭痛の”遺伝子研究”が進められています。


 こういったまさに歯切れの悪い説明に終始され、はっきりと「片頭痛の大半は、”多因子遺伝”である、といった論点で述べられることはありません。それでは、どうして、このような論点で述べることはないのでしょうか?


 専門家は、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、欧米の研究者が”多因子遺伝”の観点から考えないことから無条件に受け入れています。結局、”片頭痛の大半は多因子遺伝である”といったことは容認されることはありません。
 「片頭痛の大半は、”多因子遺伝”である、といった考え方は、鳥取大学医学部・神経内科のグループの先生方の考え方であったため、容認されない理由にもなっています。
 さらに、専門家が遵守されるのが「国際頭痛分類 第3版β版」です。ここには明確には記載されてはいませんが、この「国際頭痛分類第3版 β版」は元を正せば、欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものです。トリプタン製薬メーカーの真の目的とすることは、製薬市場拡大の基盤として片頭痛を存続させ続けることです。片頭痛を存続させるためには、片頭痛は片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく思い込ませることが必要になってきます。こういったことから、片頭痛は”多因子遺伝”では、あってはならないことになっています。こうしたことから、片頭痛が”多因子遺伝”であるとは、一切記載されることなく、あたかも”遺伝的疾患”とされているようです。
 このように、決して、エビデンスに基づいたものではありません。
 このように極めて曖昧なオブラートに包まれたようにされたままになっています。
(”多因子遺伝”とすれば、片頭痛は生活習慣病そのものとなり、予防可能となってしまいます。ということは、この世から、片頭痛が消滅する可能性があるということです)


実際には、どうなのでしょうか


 片頭痛は、あたかも「遺伝」しているような「印象」はあります。しかし、その遺伝の様式は、メンデル型”の”単一遺伝子異常”の優性遺伝でなく(あったとしても極めて少数です)、大半の片頭痛では、”多因子遺伝”の様式で、親や祖父母から受け継がれます。この”多因子遺伝”とは、複数(3つ以上)の関連遺伝子をもとに、これに環境因子が加わって病気が発症してくるものを言います。ということは、”遺伝的素因”が存在しても、これに”環境因子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということです。これにはミトコンドリアDNAが関与しています。


 こうしたことを裏付ける臨床的事実として挙げられる点は、以下のようなものです。


 富永病院・頭痛センターの竹島多賀夫先生によれば、反復性の片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪するとされます。
 Lyngbergらの報告では、成人片頭痛患者さんを12年間追跡し、完全・部分寛解:42 %、不変:38 %でした。一方、20 %は変容性片頭痛つまり片頭痛が慢性化しました。


 このような事実をどのように考えるかが、ポイントになります。3割の方々が治っているということです。そして、4割の方々が、発作を繰り返しているということです。
 ここに、片頭痛が”多因子遺伝”であるかどうかの鍵があると考えるべきです。
 仮に片頭痛が”遺伝性疾患”であるとすれば、治癒してしまうものがあるといったことは論理的に説明ができないことになります。


 トリプタン製剤が導入される以前から、生活指導として、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、リラックスするように」とされ、これで完璧に片頭痛発作が抑制されていたことを思い出すべきです。
 さらに、神経内科関係の専門医は、「片頭痛のセルフケアー自己管理」を完璧に行う限り、”9割”の方々はうまくコントロールされると豪語されていることも忘れてはなりません。
 こうした2つの事実は、取りも直さず、片頭痛の大半は”多因子遺伝”であることを如実に示しているはずです。”環境因子”を取り除けば、改善されることを意味します。
 現実に、専門家による指導でなく、患者さん自ら自分で工夫され片頭痛を克服されているという事実がこれを証明しているはずです。このような自分の体験をもとにして、多くの方々が「片頭痛改善マニュアル」を作成され、これらを実践された方々の喜びの声がネット上では多数掲載されています。
 そして、「ゲルソンの食事療法」が存在します。
 現実に、日本頭痛学会の理事長は、常々、「生活習慣の見直し」を強調されかつ指導して来られました。これで改善されるとされます。


片頭痛が多因子遺伝であるとの根拠として・・


 ”遺伝素因”が同一であるはずの一卵性双生児の場合、必ずしも2人とも片頭痛を発症することはありません。
 すなわち、一卵性双生児で、”遺伝的素因が全く同一である”はずのものが、必ずしも2人とも片頭痛を発症するわけではないという事実があります。
 これは、何を意味しているのでしょうか? その後の後天的な要素、環境因子等々が関係している証拠ではないでしょうか?
 一卵双生児の「片頭痛を発症」していない方に、もう片方の片頭痛を発症している人の「片頭痛の環境因子」を多数負荷すれば、恐らく、頭痛は誘発されるでしょう。
 ただ、このような「実験」は人道上、許されることではないため、されていないだけの話です。
 単純に言えば、一卵性双生児の子供の2人の学業成績が全く同じ成績かどうかをみれば理路整然としているはずです。二人とも優秀な成績ではありません。


 もう一つ興味ある事実があります。それは、東京女子医科大学の清水俊彦先生が「頭痛女子のトリセツ」(マガジンハウス)の中で、以下のような興味深い記述をされています。


 もともと母親が頭痛持ちだったのですが、本人は今まで全く頭痛というものを経験したことがなかったある女性がおられました。
 嫁いだ先では、旦那さんを含めて、おじいちゃん、おばあちゃん・・家族みんなひどい頭痛持ちの家系でした。ところが頭痛の経験のなかった彼女が、嫁いだ途端にひどい頭痛に悩まされるようになり、私のところへ来たのです。
 話を聞いてみると、嫁姑の争いもなく生活環境的にはストレスも全くなく、特に問題はありませんでした。もしかして「片頭痛は伝染する病気なの?」といった疑問も湧いてきます。
 が、じつはそうではありません。さらに話を聞いてみると、この嫁いだ先の食生活に問題があることがわかりました。ほぼ毎日、洋食の連続。彼女は、もともと母親と同じ片頭痛を起こすかもしれない体質を持っていました。そこへ、血管拡張物質を多く含んだ毎日の食事が刺激となり、ついに脳の血管が耐えきれず、片頭痛を発症してしまったというわけです。


 あなたの兄弟姉妹がすべて片頭痛を発症しているのでしょうか。もし、そうであれば極めて特殊なケースと考えるべきです。あなたの家族全体の食生活・食習慣・住環境に問題があるものと推測されます。兄弟姉妹すべてが片頭痛を発症していません。


このように、これまでの研究から


 家系解析や双生児研究などの結果,一般の片頭痛は多遺伝子的疾患,すなわち高血圧や糖尿病などの疾患と同様に,複数の遺伝因子と複数の環境因子が関与している病態であることが示されています。.
 頭痛発作のトリガーになる要因としては、遺伝的因子(素因)と環境因子(誘因)があります。頭痛は複数の環境因子と遺伝因子が重なって発症します。遺伝子は、環境的トリガー、すなわち外的因子(天候の変化、運動、飲酒、光・音・臭い刺激など)や内的因子(ホルモン・睡眠習慣・心理的な変化など)に対する感受性に関与しています。分離解析の結果から、頭痛は複数の遺伝子の構成が関与して発症することが示唆されています。
 この点は Cady の機能性頭痛一元論のなかに明確に示されています。
 ちなみに高血圧や糖尿病などの生活習慣病も多因子疾患と考えられています。患者対照関連解析によって患者集団内で正常対照集団内より頻度の高いアリル(対立遺伝子)を見つけることができます。このアリルが存在する遺伝子が疾患感受性遺伝子であり、その同定により、疾患発症の機序や他の発症因子との関係の解明が期待されます。


”多因子遺伝”をする生活習慣病


 このような”多因子遺伝”をする病気としては、身近なものとして、生活習慣病であるⅡ型糖尿病があります。Ⅱ型糖尿病は、糖尿病になりやすい素質(遺伝素因)をもっている人に、”環境因子”として、食べ過ぎや運動不足による肥満、アルコール、精神的ストレス、年をとること、その他多種多様の要因が加わって発症します。
 こうしたことから、糖尿病の治療方針として、この環境因子の是正に努めるべく「食事療法」と「運動療法」がまず行われ、これに「薬物療法」が追加されます。
 本態性高血圧の場合は、遺伝的体質的素因に加え、食塩摂取量、肥満、寒冷、ストレスなどの環境因子が加わり発症すると考えられています。
 このように生活習慣病すべては、”多因子遺伝”と考えられています。


 その他、”多因子”神経疾患として、特発性てんかん、孤発性パーキンソン病、多系統萎縮症、片頭痛、多発性硬化症が挙げられています。


 分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、片頭痛の大半は、その遺伝素因である「ミトコンドリア活性の低さ」に、”環境因子”として、食生活が原因で「さらに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)を形成することにより引き起こされる生活習慣病とされると述べておられます。
 さらに片頭痛の”環境因子”として「ミトコンドリアを弱らせる”環境因子”」「脳内セロトニンを低下させる”環境因子”」「体の歪み(ストレートネック)を引き起こす”環境因子”」の3つがあります。これらの”環境因子”の関わり方は人それぞれです。
 片頭痛という頭痛は、皆さんのこれまでの生活習慣とくに食生活・姿勢等の問題が原因となり、謂わば、あなたの”生き方(ざま)”すべてが関与して起きてくるものです。これらは、いずれも日常生活を送る上で、”何気なく無意識に”行ってきた「食事・姿勢・体の使い方」が原因となっていることを意味しています。このために、あたかも”遺伝的疾患”であると誤解された理由でもあります。とくに食習慣の関与が大きいのが特徴です。
 さらに、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、”多因子遺伝”というよりは「代謝障害」と考えることの方が妥当ではないかと、述べられるほどです。


 このように、片頭痛が”遺伝的疾患”なのか”生活習慣病”なのかということは、ミトコンドリアとくにミトコンドリアDNAの観点から理論的に考えるべきものです。
 このように、「片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛」と考えなくてはなりません。