これまでダイジェスト版として9回にわたって述べてきました。
結局、慢性頭痛がどのようにして発症し、この中で片頭痛へとどのように進展していくのかを理解することが極めて重要になってきます。
慢性頭痛の基本的な病態は3つにあります。それは以下のようなものです。
1.「ホメオスターシスの乱れ」
2.「体の歪み(ストレートネック)」
3.ミトコンドリアと脳内セロトニン
「ホメオスターシスの乱れ」
「慢性頭痛」は「健康的な生活」が送れていないことに根本的な原因があり、”慢性頭痛”とは、「不健康な生活を送っている」という生体の警告(危険)の信号”サイン”なのです。
健康的な生活とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。 この生活のリズムは「ホメオスターシス」によって維持され、体内時計により刻まれ、ミトコンドリア・セロトニンにより制御されています。
ホメオスターシスの維持には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深く関わっており、「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めています。
この3つは、生活習慣とくに食生活・ストレスによって影響を受けています。
この「ホメオスターシスの乱れ」が頭痛を起こしやすい状態を作ってきます。
「体の歪み(ストレートネック)」
私達は、日常生活を送る場面では、日常的に「前屈みの姿勢」を強いられており、このため、当然のこととして、「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてきます。
この日常的な「前屈みの姿勢」は緊張型頭痛の原因となり「体の歪み(ストレートネック)」が形成されることによって緊張型頭痛が増強してくることになります。
これが、慢性頭痛の起点となり、片頭痛の基本骨格となっています。
ミトコンドリアと脳内セロトニン
片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。ミトコンドリアの働きが悪ければ、当然、同時に「セロトニン神経系の機能低下」が起きてきます。このセロトニン神経は、生活習慣および食生活の問題から「脳内セロトニンの低下」が引き起こされます。
また、ミトコンドリアの働きも、生活習慣および食生活の問題から悪化してきます。
そして、「ミトコンドリアの働きが悪さ」と「脳内セロトニンの低下」は、「体の歪み(ストレートネック)」の形成に関与してきます。
このように、慢性頭痛の基本病態はすべて、生活習慣および食生活の問題によって影響を受けています。
緊張型頭痛、片頭痛は、一連の連続したもの
片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine
片頭痛
big(true)migraine
連続体
緊張型頭痛 緊張型頭痛
small migraine (脳内セロトニンの関与)
片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪してきます。
自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するための「環境に対する適応力」により治癒したものです。
”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わらない状態(発作がいつまでも繰り返される)が持続することになります。
「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続された状態に、さらに「ミトコンドリアの問題」、「脳内セロトニンの低下」、さらに「体の歪み(ストレートネック)」等々の慢性化の要因が加わることによって、2~3割の方々が慢性化に至ってきます。
このように片頭痛は”未病”の段階にあり、緊張型頭痛を起点として、さまざまな生活習慣の問題点が重なることによって、「いろいろな段階の片頭痛」へと進行し、最終的に「慢性片頭痛」という難治な段階に至ることになりますので、常に自らの生活習慣に気を配り、何か問題があれば、その都度改善に努める必要があります。このように進行性疾患です。
このように片頭痛は生活習慣病、そのものということです。
このため、片頭痛に至るまでに生活習慣の問題点が、それぞれどのように関与しているかを具体的に知ることが重要になってきます。そして、このような生活習慣の問題点を改善・是正しないことには片頭痛を治すことはできないということです。
具体的には、例えば、なぜ「女性になぜ慢性頭痛が多いのか」を考えてみることです。
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12062613031.html
ここに、片頭痛発症に至るまでに生活習慣の問題点が凝縮されています。女性の場合、慢性頭痛を引き起こす要因すべてを持っていることから、片頭痛が多くなっています。
片頭痛が生活習慣の問題点から引き起こされることから、例え片頭痛発作時にトリプタン製剤を服用し、発作頻度が多いからといって予防薬を服用しようとも、片頭痛を治すことはできません。生活習慣の問題点を改善・是正することが必要です。
トリプタン製剤は、あくまでも痛みを抑えるための”鎮痛薬”にすぎず、予防薬にしても発作の程度・頻度を多少少なくするだけの効果しかなく、片頭痛を治すことはできません。
そして、専門家が行う「生活上の注意」は以下のようなものです。その大半は、片頭痛の誘因を避けるといったお粗末なもので、これでは片頭痛が治ることはあり得ません。
①騒音に過敏性のある方は、ガード下やゲームセンターなどの騒音環境や人混みを避ける。
② 光への過敏性のある方は、明るい日差しや照明を避け、パソコンの輝度を和らげる。偏光サングラス装着も考慮する。
③タバコや香水のにおいへの過敏のある方は、においの淀んでいるような場所を避けたり、周りの喫煙者に配慮してもらう。
④激しい運動で誘発されやすい方は、もちろんそのような運動を避けるべきですが、運動不足にならないようにストレッチやラジオ体操、速足散歩などを心がける。
⑤乗物酔いし易い方は、し易い乗物を避けるか乗車時に席位置への配慮や遠方を見るなどの対策をする。
⑥寝不足や寝過ぎを避け、就寝時刻や睡眠時間を適量一定に保つ。
⑦気候の変動に注意し、室内や衣服内環境を整える。合わない気象時の外出を控える。
⑧月経前に決まって起きるような方は、医師と相談して短期間の予防治療を取り入れる。
⑨アルコールで誘発される方は、控えるべきですが、チーズやチョコレートなどの食物は誘発されたことがなければ、神経質になることはありません。
⑩精神的ストレスは避けにくいものですが、ストレスがゆるんだときに起こりやすいので、休日などでも⑥を含め、生活時間の一定化を図る。
⑪片頭痛発作を含む多くの因子が肩こりを来しやすく、肩こりが緊張型頭痛と共に片頭痛発作も引き起こしやすいので、肩こりの誘因(悪い姿勢、眼精疲労、寒冷・冷気、虫歯・歯肉炎、腰痛など)排除や肩こり対策(肩回し体操や速歩散歩などの適度の運動、温湿布の利用、入浴)を日頃から心がけておく。但し、首の細い部分へのカイロプラクティックやマッサージは脳血管障害のリスクがあるので避けること。
このような極めて姑息的な指導しかされることはありません。
片頭痛治療は、「生活習慣の改善」がすべてです。それも食生活の注意が大きな比重を占め、食生活の改善なしには、片頭痛改善はあり得ないほど重要です。
これに、運動療法が付け加えられ、さらに「日常の生活指導」があります。このなかには、「体の歪み(ストレートネック)」を形成させない注意・「セロトニン生活」が重要になってきます。
この指導の目的とすることは、ミトコンドリアの働きを悪くさせない・改善させることです。さらに「脳内セロトニン」をいかに低下させず・増やすことに主眼が置かれています。
このようなことを、今回のダイジェスト版で明らかに致しました。
専門家の指導となぜ異なるのでしょうか?
ダイジェスト版の最初で述べましたように、専門家は国際頭痛学会が作成された「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および研究の絶対的な基準とされることにあります。
このため、「国際頭痛分類 第3版β版」に記載されないものはすべてエビデンスなし、すなわち根拠がないとされます。このため、慢性頭痛の基本病態であるはずの、1.「ホメオスターシスの乱れ」 2.「体の歪み(ストレートネック)」の2つはまったく否定というか念頭にはありません。そして、「脳内セロトニン」の関与しか念頭にありません。
皆さんが片頭痛発作時に服用されるトリプタン製剤は、片頭痛発作時に生じている「脳内セロトニンの低下」を補うために投与されているにすぎません。
そして、片頭痛発作時に生じている「脳内セロトニンの低下」がどこから起きているのかは全く不明とされます。
専門家は、片頭痛の起こり方はすべてトリプタン製剤の作用機序からのみ説明しようとされることに原因があります。「脳内セロトニンの低下」を指摘しながら、脳内セロトニンをいかにして増やすか、といった生活指導をされることはまったくありません。
このように矛盾に満ちたことをされているわけです。こうしたことから、先程述べたような姑息的な「生活上の注意」しかされないことになっています。
このような「脳内セロトニンの低下」は、本来、ミトコンドリアの働きが悪ければ、当然、セロトニン神経系の機能低下がもたらされ、これに生活習慣・食生活の問題点が加わることによって引き起こされたものです。 専門家には、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である、といった基本的な考えがありません。
以上のことを念頭において、頭痛外来を受診しなくてはなりません。
片頭痛治療の根幹は「生活習慣の改善」にあります
このように現在では、片頭痛治療は、誘因と思われるものをできるだけ取り除くこと、それでも痛くなったら片頭痛治療薬を飲むこと、そして頻発するようであれば予防薬を飲むこと、という3つの柱(原則)から成り立っているとされています。しかし、このような3本の柱がいかに不適切なものかは冒頭で述べました。
片頭痛は、これまでの生活習慣の問題点によって起きてきた頭痛です。このため、自分の頭痛が、どのような問題点から起きてきたものかを自分で点検する必要があります。
自分の片頭痛が、どのようにして発症してきたのかを、冷静に振り返ってみることです。「最初に頭痛」を自覚してから、この頭痛が、現在のように”日常生活に支障を来す程の頭痛”に至るまでの間に、生活習慣・生活環境にどのような変化があったかを冷静沈着に内省することです。このことから、どういった問題点が浮上してくるかを点検することです。その大半は、「食生活」・「体の使い方」・「姿勢」にあります。
そして問題点が分かれば、これを是正するだけのことです。発作時にはトリプタン製剤を服用せざるを得ません。そして、発作回数が多ければ、たちまちは予防薬を併用しなくてはならないかもしれません。しかし、必ず、平行して、見つかった生活習慣上の問題点を同時に是正しなくてはならないということです。
このように片頭痛は生活習慣病そのものです。生活習慣病全般で言えることですが、このような生活習慣病は「お薬」を飲んでいたからといってよくはなりません。基本は生活習慣の問題点を改善できなければ改善は不可能です。改善できていないために「お薬」が補助的に使われているにすぎません。
片頭痛も全く同様です。自分の生活習慣の問題点(これは患者さん個々で異なります)を自分で点検し、これを自分で改善・是正する必要があります。これをされませんと、何時までも片頭痛発作が繰り返されることになります。このため、トリプタン製剤を何時までも服用せざるを得なくなり、さらに生活習慣の問題点が追加されることによって発作頻度が増加することになり、これに対してこのような追加された生活習慣の問題点を改善させることもなく、今度は予防薬を追加されることになります。しかし、こうした予防薬が追加されようとも追加された生活習慣の問題点を改善させなければ延々と服用せざるを得なくなります。こうなれば発作回数が減少しないことからトリプタン製剤の服用回数が増加し、このダブルパンチによって薬剤乱用頭痛に至り、どうにもならなくなります。
こうしたことから、「生活習慣の問題点」を改善させることが重要になってきます。
それも、早い時期からこのような観点から対処すべきで、薬剤乱用頭痛に至らせない配慮が必要になってきます。このような指導は、片頭痛発症時に必ず行うべきです。
さらに欲を言えば、片頭痛まで移行する以前の段階である緊張型頭痛の時点から指導を行うべきであり、とくに市販の鎮痛薬の継続服用の弊害を指導しなくてはなりません。
このような指導は、専門家が陣頭に立って行われなくてはならないはずですが、なぜだかこのような指導は一切行われることはありません。まさに、緊張型頭痛から片頭痛への移行を黙視し、片頭痛をあたかも熟成させているかのごとき印象があります。
こうしたことから、私達、慢性頭痛でお悩みの方々は、専門家を頼ることなく、自分で考えて対処していくしかありません。ここが重要なことです。
現在、片頭痛でお悩みの方々の子供さんが頭痛を訴えた場合、片頭痛予備軍として対処しなくてはなりません。自分の子供さんに、二度と同じ苦痛を味あわさせない配慮を当初から行わなくてはなりません。こうした考え方は現在の専門家にはまったくありませんので、ご自分の経験から照らし合わせて工夫をすべきです。そのためには「体の歪み(ストレートネック)」是正を目的として、「背骨伸ばしのストレッチ」を毎日日課として行い、マグネシウム不足を来さないように、栄養素・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取すべく偏食をさせず、食事を規則正しくさせ、牛乳の飲み過ぎ、甘い物の摂りすぎに注意し、油の使い方に配慮するように努めます。こうした食事の摂取のしかたはお母さんのすることです。
そして、早寝・早起きを励行させ、食事をよく噛んで摂取させましょう。室内でのゲームばかりに熱中させることなく、戸外で遊ばせるようにしましょう。
こうした配慮の積み重ねだけで、片頭痛までは移行することはないはずです。
専門家は、決してこのような指導を行うことはありません。専門家の信じることは、欧米の学者さんの申されることがすべてであり、「国際頭痛分類第3版 β版」が絶対です。
素人の言うことは、まさに論外として歯牙にもかけないのが特徴と心得るべきです。
専門家は、片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考えており、原因不明の”不思議な・神秘的な頭痛”とされ、一生、お付き合いすべきとされ、高価なトリプタン製剤と予防薬の併用を行う「薬物療法」に終始され、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛で、生活習慣病であるなどとは、毛頭考えておりません。このため、「生活習慣の改善」などを指導することはありません。期待すること自体、無理な話です。専門家とはこのようなものと考えておく必要があります。このため、自分自身で対処しなくてはなりません。
過去の歴史をみても、片頭痛を克服された方々は、専門家の指導に基づいたものではなく(極めて、例外的な先生もいらっしますが・・)、患者さん自身の血の滲むような工夫と努力で克服してこられた事実は忘れてはなりません。
現時点では、片頭痛は自分で「生活習慣の問題点」を点検し、自分で改善しなくてはならないという、悲しむべき時代でしかありません。
今後、片頭痛治療における「食事療法」をさらに綿密に・具体的に・実践しやすいように再構築していかなくてはならないと考えております。
結局、「国際頭痛分類 第3版β版」も欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものであり、このため片頭痛治療のメインにトリプタン製剤が第一選択薬に、これに付随して薬効の極めて不確かな予防薬が据えられ(本来、これらは、生活習慣病でいう”補助的手段(薬剤)”であるはずです)、最も重要であるはずの「生活習慣の改善」の項目はまったく存在せず、わずか「誘因を避けましょう」といった「生活上の注意」に終始されます。こうしたことから、先程の片頭痛への移行を黙視し、片頭痛を熟成させる”姿勢”そのものが理解されることになるはずです。私達、慢性頭痛で悩む立場としては、決して黙認できないことであり、今後は、患者独自の立場から「臨床頭痛学」を学会とは別に構築し、患者さんのための「臨床頭痛学」を新たに作成していく必要があります。