千葉市議会議員+千葉から日本を元気にする
山本直史です。
壱岐市は4町が合併して壱岐市となり、町の歴史などを伝える施設がそれぞれの町にあったことから、合併を機に似たような機能を持つ4つの施設のうち2つは廃止し、新たに島の拠点として博物館を作った。
コンセプトは「島全体が博物館」という位置づけで、博物館は「企画展示室」と位置づけられ、各神社やお寺から文化財は書物などの大切なものを雨に濡れたり盗まれたりしないような「金庫」の役割も果たしている。
「島全体が博物館」というコンセプトは、「遺跡」の本物の質感などを伝えるためには直接現地でしか見ることが出来ないという考え方に立脚しているため、遺跡公園は「1/1の模型」と位置付けたり、壱岐市の島民全員が博物館のボランティアスタッフという位置づけとなっている。
今回訪問し、説明を受けた「壱岐市立一支国博物館」は著名な建築家である黒川紀章の遺作(国内最期の作品)とされ、博物館自体が自然との共生するようなコンセプトで、山の稜線と溶け込むように設定されている。
運営は指定管理者制度を採用し、たくさんの説明文というよりは、言葉が無くても伝わるようにしてあり、身長110㎝の小学校高学年の子どもの目線で作られている。
もう一つのこだわりは「原風景に近づける」ということだ。
原風景を守るため住民にも協力を依頼し農業では必要となり「ビニールハウス」も指定されたエリア内では禁止されたり、電柱を地中化したり、通常は白色のガードレールは茶色のガードパイプを代替して使用するなど、「原風景に近づける」ために様々な取り組みが進められていた。
また、この博物館には毎年約10万人の入館者があり、壱岐市の人口が2万8千人なので、実にその3倍の方々が同博物館を訪れているため、博物館が「島の拠点」となっている。
博物館を運営する中で一番難しいのは「保存」と「活用」とのバランスとのことで、つまり、歴史的に価値のあるものをしっかり後世のために保存しなければならないものの、いかに本物を多くの方々に見て触っていただくかという意味だ。
〇博物館の目的
古くから東アジアとの交流拠点であった特性を生かし、原始から現代に至る壱岐の歴史に秘められた夢とロマンを伝え、未来を創造する力を基本理念とし、しまごと博物館、しまごと大学、しまごと元気館の3つのしまづくりの方向性を掲げ、貴重な歴史的遺産や豊かな自然環境などを一体的かつ計画的に保存するとともに、体験、研究、学習、観光等の舞台として活用しながら持続可能な活性化を目指す。
〇原の辻遺跡の概要
遺跡に指定されているのは約100ヘクタール→第一期目は15ヘクタールを掘る予定となっている。(85%は未開)現在、24ヘクタールが国の特別史跡として指定されている平成5年から25年間調査を継続している。
【山本の視点】
百聞は一見に如かずということわざがある通り、この博物館は是非とも現地へ足を運んでいただくことが、その価値や魅力が最もわかりやすく伝わるとは思います。
一番のポイントは「遺跡」と「博物館」をしっかりと紐づける仕組みが出来ていることです。
壱岐の歴史的価値や、文化財としての価値を単に展示したり、公園として保存するだけでなく、遺跡から少し離れた場所にある博物館がキーとなり、過去から現在までの歴史的ストーリーを打ち出すことで、学びやすく、興味を促す仕組みが確立されています。
千葉市の加曽利貝塚も特別史跡ではありますが、これから求められるのは史跡としての価値を保存し、伝えて行くことはもとより、その魅力を伝えるストーリーなど、本来史跡が持っている魅力や価値をしっかりと伝えていくための工夫が求められます。
千葉市では加曽利貝塚を所管しているのは千葉市教育委員会ですが、特別史跡に指定されたこのタイミングで、是非とも千葉市の担当者自身が壱岐市の「原の辻遺跡」と「壱岐市立一支国博物館」を訪問する機会を作り、実際に見ていただきたいと思いました。
ハードの整備も大切ですが、伝え、見せるために仕組みやストーリーとの紐づけなどのソフト部分のつくりこみが非常にレベルが高く秀逸なので必ず参考になると思います。