港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!! -3ページ目

36協定の有効期間について

今回は「36協定の有効期間について」を解説いたします。

 

 

先日、次の質問がありました。

 

「時間外・休日労働(36)協定の有効期間が、1年よりも短いケースでも受理されるのでしょうか。対象期間と有効期間は1年固定とばかり思っていたのですが、有効期間の考え方に変更があったということなのでしょうか?」

 

法定時間外労働や法定休日労働(残業、休日出勤等)は、その例外として、労働基準法第36条の規定により「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」を締結し、管轄の労働基準監督署に届け出ることが必要です。

 

また、「36協定を1度提出すれば、それ以降は36協定を提出しなくても残業させてもよい」と誤解をされている会社もあるかもしれませんが、36協定には1年間の有効期間があり、毎年、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

特に、1月や4月を起算日として、1年間の有効期間を定めている場合が多いため、残業がある会社は、一度、自社の36協定の有効期間を確認し、有効期間が切れている場合は、速やかに36協定届を届け出てください。

 

届け出た36協定は、就業規則やその他の労使協定と同様に、常時、各作業場の見やすい場所へ備え付ける、書面を交付する等の方法により、労働者に周知する必要があります。

 

36協定の「対象期間」は、法36条の規定により時間外・休日労働させることができる期間をいい、1年間に限られます。なぜなら、時間外・休日労働の上限が年単位で規制され、特別条項の発動回数も年単位で考える必要があります。

 

 

これに対して「有効期間」は、労使協定が効力を有する期間を指します。

 

期間は1年間が望ましいとされています。

 

 

そして「働き方改革」より前の36協定では「1日を超える一定期間」の延長限度を定める必要がありました。

 

36協定の締結当事者が労働組合の場合には、労働組合の要望等に応じて有効期間を3カ月等とすることがありました。

 

 

しかし、時間外労働の上限規制が労基法に規定され、対象期間が1年に固定されました。

 

有効期間も1年とする必要があるのか、それとも3カ月間として良いのかを示した行政解釈があります。

 

「対象期間(1年間)の起算日を固定したうえで行う」なら、協定の有効期間を3カ月ずつ4回に分けることも可能としています。

 

平成30年通達がいう原則1年の例外として、対象期間を特定したうえで、1カ月の延長時間を3カ月ごとに見直す方法も許容されるのです。

 

 

時間外・休日労働協定の適正化に係る指導について(令6・1・12基発0112第1号)でも、協定内容の見直しの機会をより多く設けることを目的にしていること等が確認できた場合は、有効期間が1年でなくても、労働基準監督署の窓口で指導等はしないとしています。

 

 

また、36協定締結後は、従業員に労働時間に関する取り決めの周知を徹底しましょう。

 

上限を超えないように注意することが大切です。

管理監督者にあたる?あたらない?

今回は「管理監督者にあたる?あたらない?」を解説いたします。

 

 

管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。

 

そして、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日に関する規制の適用を受けません。

 

さらに、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されるのが管理監督者となります。

 

 

管理監督者とは、企業の中で相応の地位と権限が与えられ、労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場と評価することができる従業員のことをいいます。

 

労働基準法第41条2号では「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」と定義しています。

 

労働基準法で定められた労働時間、休日等に関する規制が適用されないことも特徴です。

 

では、管理監督者と認められる条件を見ていきましょう。

 

一般的に会社ではマネジメントを行う人を管理職と呼びますが、「管理職=管理監督者ではありません」。

 

管理監督者に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様などの実態に基づいて判断します。

 

厚生労働省の資料では、以下4つの判断基準に基づき総合的に判断する必要があることが述べられています。

 

(1)労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない「重要な職務内容」を有していること

労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない「重要な職務内容」を有していなければ、管理監督者とは言えません。

 

(2)労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない「重要な責任と権限」を有していること

労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあると定義するためには、経営者から「重要な責任と権限」を委ねられている必要があります。

「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するだけだったりする者は、管理監督者とは言えません。

 

(3)現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること

管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要があります。労働時間について厳格な管理をされているような場合は、管理監督者とは言えません。

 

(4)賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていなければなりません。

 

従業員が管理監督者に該当するかどうか、上記を参考にして判断してください。

 

そして、「管理監督者」に該当しない場合は、法的には一般従業員と同様の扱いとなりますので、割増賃金の支給を行う必要があるのです。

割増賃金の計算の基礎に含める手当について

今回は「割増賃金の計算の基礎に含める手当について」を解説いたします。

 

 

先日、次のご相談をお受けしました。

 

「賃金制度の見直しをすることになり、割増賃金の計算に含めるもの・含めないものを改めて理解しておきたいと思います。基準などを教えてください。また、別居手当や子女教育手当について、どのような性質のものが該当するかなどを示した資料はあるでしょうか。」

 

割増賃金とは、残業や休日出勤など、イレギュラーな勤務が行われた場合に支払わなければならないものです。

 

そして割増賃金を算定する際に必要になるのが、「1時間あたりの賃金」です。

 

割増賃金は、従業員の適切な働き方を守るための重要な規定であり、負担分の対価として必ず支給しなければなりません。

 

正しく設定しておかなければ違法になってしまう上に、より良い労働環境をつくるためにも非常に重要な要素です。

 

 

割増賃金の計算の基礎となるのは、「通常の労働時間または労働日の賃金」です。

 

割増賃金を支払うべき労働(時間外・休日・深夜の労働)が深夜でない所定労働時間中に行われた場合に支払われる賃金を指すとしています。

 

ここから除外できる賃金を、労働基準法37条5項と労基則21条で挙げています。

 

家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類です。

 

制限的に列挙されているものであり、これらの手当に該当しない「通常の労働時間または労働日の賃金」はすべて割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならないとしています。

 

また、名称にかかわらず実質によって取り扱います(昭22・9・13発基17号)。

 

 

基準は解釈例規などで示されています。

 

例えば家族手当は、扶養家族数またはこれを基礎とする手当額を基準として算出した手当を指します(昭22・11・5基発231号)。

 

物価手当や生活手当などの名称でも、この基準で算出する部分については家族手当と扱い、除外賃金とできます。

 

一方、独身者にも支払っていたり、家族数に無関係に支給されたりしていると、その部分は家族手当に当たらず除外賃金とできません。

 

 

子女教育手当は、教育を要する子女の数という個人的事情により支給される場合に除外手当に当たるとしています。

 

別居手当は、配偶者ある労働者だけに対し勤務を理由とする別居という事実を条件として支給する手当などが該当します。

 

「別居手当・単身赴任手当」と単身赴任手当を並列して記載しているものもあります。

 

 

7種類以外の賃金は基本、基礎となる賃金に含めます。

 

たとえば、ある作業に就いた際に支給される特殊作業手当があり、その作業を割増賃金が発生する時間に行った場合、特殊作業手当は通常の労働時間または労働日の賃金に含まれます(昭23・11・23基発1681号)。

 

逆に、通常の労働時間または労働日の賃金に該当しないものは含めなくてもよく、勤務の一部または全部が深夜に行われる看護等の業務に対し支給する夜間看護手当は、算入しなくても差し支えないとされています(昭41・4・2基収1262号)。

 

 

採用選考時のSNS調査について

今回は「採用選考時のSNS調査について」を解説いたします。

 

 

先日、次のご相談がありました。

 

「採用選考の時に応募者のSNSの調査を実施したいと考えております。自社で行う場合、あらかじめ本人の同意を得ることは必要でしょうか?」

 

 

採用活動でSNSチェックが注目されるようになったのは、多くの社会人がSNSを利用しているという状況があるからです。

 

総務省の調査(令和4年情報通信白書)によると、20代から40代の70%以上がSNSの利用経験があり、20代と30代は半数以上がSNSを積極的に活用していることが分かりました。

 

SNSチェックを行う企業が増えている理由に、「候補者のさまざまな側面を知ったうえで採用したい」ことが挙げられます。

 

一般的な採用選考で得られる候補者の情報といえば、履歴書や職務経歴書といった選考書類の内容と、面接での受け答えが中心となります。

 

候補者は選考中、よく見せようと振る舞うため、選考書類や面接の内容は、候補者の日常の姿とは異なることもあるでしょう。

 

個人で情報等の発信が容易な時代となり、SNS等で自身の意見をストレートに発信できるのが簡単にできます。

 

これにより、インターネットで「個人がどのような意見を発信しているか?」「どのような人物なのか?」も情報がキャッチでるようになりました。

 

一方、個人情報保護法などで、プライベートの情報も保護されています。果たして、どの程度の情報に制限がかけられているのでしょうか?

 

 

個人情報を含む情報がインターネット等により公にされている場合、それらの情報を単に閲覧するにすぎない場合には「個人情報を取得」したとは解されません(個人情報保護委員会)。

 

一方で、情報を転記するなど個人情報を取得したと解し得る場合もあるとしています。

 

この場合、利用目的等の通知公表は必要となるでしょう。

 

 

職業安定法5条の4は求職者等の個人情報の取扱いに関して規定しています。

 

求職者等の個人情報をその業務の目的の達成に必要な範囲内で収集し、保管し、または使用しなければならないとしています。

 

また、職業紹介事業者等は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、または本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならないとしています。

 

 

厚生労働省の「募集・求人業務取扱要領」(令和3年4月)は、本人が不特定多数に公表している情報から収集する場合は、上記「等」に含み、適法かつ公正な手段としています。

 

 

ただし、この場合でも原則として収集してはならない情報があることには注意が必要です。

 

前掲告示では、職業紹介事業者等は、①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、②思想および信条、③労働組合への加入状況を挙げています。

 

例外的に収集できる場合としては、特別な職務上の必要性があることその他業務の目的に必要に達成不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合としています。

 

SNSの調査にはこうした情報に触れるリスクがあることには留意しておく必要があるでしょう。

 

消化できない有給は、会社が買い取らなければならないのでしょうか?

今回は「消化できない有給休暇は、会社が買い取らなければならないのでしょうか?」について解説します。

 

 

従業員から、「繁忙につき消滅時効にかかる年次有給休暇について埋め合わせが欲しいとありました。買上げなどに応じてもよいのでしょうか?」という質問がありました。

 

 

年次有給休暇の法的効果は、所定労働日における労働義務の消滅とされています。

 

また、労働基準法39条5項は、年休を労働者の請求する時季に「与えなければならない」という規定です。このため、現実に所定労働日に休業せず、代わりに金銭を支給する場合は、年休を与えたことにはなりません。解釈例規(昭30・11・30基収4718号)

 

でも、年休の買上げを予約して請求可能な年休の日数を減少させたり与えなかったりすることは労働基準法39条に違反するとしています。

 

東京労働局の資料には、「在職中に従業員から消滅となる年休の買い取りを求められても、労働基準法ではそれを認めてはいません」と強い書き方をしているものもあります(東京労働局「素朴な疑問Q&A」)。

 

 

一方、従業員が年休を取得せず、その後に時効、退職等の理由で年休が消滅するような場合に、残日数に応じて調整的に金銭の給付をすることは、事前の買上げと異なるのであって、必ずしも労働基準法39条に違反するものではないとしています。

 

ただし、このような取扱いによって年休の取得を抑制する効果を持つようになることは好ましくなく、むしろ、取得しやすい環境を整備することが重要ともしています。

 

 

つまり、年休の買上げは、消滅する場合まで禁止しているというわけではありませんが、望ましくない扱いであるといえます。

 

 

また退職時などは、在職中に有給休暇を消化しきれないこともあります。

 

そのような場合には、未消化の有給休暇を会社に買い取ってもらえる場合があります。

 

有給休暇の目的は「労働者が十分に休暇を取る」ことですので、その必要性がなくなった退職時の有給休暇を買い取ったとしても、労働者の権利は侵害されないと考えられています。

 

 

また、いわゆる失効した年休の積み立て制度など、消滅した年休を積み立てておき、介護などに利用できるようにすることは、本来給付が必要ないものについて休暇を付与する法定外年休として、法定年休の利用を妨げるものではありません。

 

法定外年休については、成立要件、法的効果は労使の取決めによるとされております。

 

しかし、法定年休に上乗せする形で法定年休と同じ規定のなかに定められており、要件や効果について特別の定めがされていない場合には、法定年休と同様の要件・効果が約定されたと考えられます。

 

但し、会社が法律で決められた日数以上の有給休暇を付与している場合、会社が「法定基準を上回っている部分の有給休暇」を買い取っても問題ないとされています。

 

 

以上の事柄を理解した上で、年休の買い取りについて会社でルール化し、運用することが重要です。

 

法定で定められているものか?そうでないものなのかを区分けし、運用しましょう。

 

職種限定合意と異なる配転命令は有効でしょうか?

今回は「職種限定合意と異なる配転命令は有効でしょうか?」を解説いたします。

 

 

まず、職種限定の合意があると認められるのはどのような場合かをみていきましょう。

 

 「職種限定の合意」とは、労働契約において、会社と従業員との間で、従業員を一定の職種に限定して配置する旨の合意をいいます。

 

職種限定の合意がある場合、該当する従業員の合意がない限り、この者を他の職種へ配転することはできません。

 

 

では、どのような場合に職種限定の合意があると認められるのかについてみてみましょう。

 

まず、職種・部門限定社員や契約社員のように、定年までの長期雇用を予定せずに職種や所属部門を限定して雇用されている労働者については、職種限定の合意があると認められやすいと考えられます。

 

 

また、特殊な技術、技能、資格が必要な職種の場合も、使用者と労働者との間に明示又は黙示の職種限定の合意があったと認められやすいと考えられます。

 

 

他方で、労働契約書に記載されている「業務の内容」が、職種限定の合意があると認められるのかについては、通常、採用直後の当面の業務の内容として記載してあるものと考えられることから、労働契約書の「業務の内容」の明示のみをもって職種限定の合意があるとは認められにくいでしょう。

 

さらに、長期間同一の業務に従事していたような場合について、そのような労働実態のみをもって職種限定の合意があるとは認められにくいと考えます。

 

参考となる裁判があります。

 

<社会福祉法人 滋賀県社会福祉協議会事件 最高裁 令和6年4月26日>

 

〇社会福祉法人「滋賀県社会福祉協議会」が運営する施設の元職員の男性が、職種限定合意があったのに配置転換を命じたのは違法だとして同協議会に110万円の賠償を求めた。

 

〇裁判は最高裁まで進んだ。

 

〇最高裁は職種限定合意がある場合は同意のない配転を命じる権限はないとの判断を示したのです(命令を「適法」とした二審大阪高裁判決を破棄し、審理を差し戻した)。

 

労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないということが明確になったのです。

 

職種又は勤務地限定合意に関連して、現在、労働条件の明示を強化する傾向があるところです。令和6年4月1日以降に労働契約を締結する際には、会社は就業場所、業務の内容、就業場所及び業務の変更の範囲を明示することが義務付けられています。

 

労働条件通知書により、明示的な職種又は勤務地限定合意が認められやすくなれば、今後は、配転命令を自由に行うことはできなくなります。変更の範囲の記載については、慎重に検討したうえで記載内容を決定することが必要になってくるでしょう。

 

今後は「とりあえずの配属」ではなく、その後のキャリア等を考慮しないと、配置転換もままならなくなってしまいます。

 

健康診断で結果が悪い社員が発生した場合の対応

本年もよろしくお願いします。

 

 

今回は「健康診断で結果が悪い社員が発生した場合の対応」について解説いたします。

 

 

多くの会社で健康診断は実施されていますが、その事後の措置は、これまで正直あまりやっていないという声をよく聞きます。

 

ある会社では「新しい嘱託の産業医の先生にお願いするようになって、健診結果の結果が悪い人に対して、就業制限の判定がどんどん出るようになりました。高血圧の従業員には「残業禁止などが出ています。確かに数値が悪い社員がいるのは気になっていましたが、数値だけで制限をかけられても現場は困ってしまいます。検診後の事後措置をどう考えたらいいのでしょうか。」

 

このような相談がありました。

 

健診結果を医師に判定させて適切な事後措置をすることは、労働安全衛生法66条の5に定められた事業者の基本的な安全配慮義務の1つとなっています。

 

 

有害業務を行う労働者に対して、作業関連疾患(いわゆる職業病)を予防するために健康診断を行う場合は分かりやすい例です。

 

たとえば、粉じんの職場で働く人のレントゲンをチェックして、じん肺の疑いがあれば就業を制限するといった措置です。

 

しかし、生活習慣病(高血圧や糖尿病など)の人にどのように就業制限をかけるのが適切かは難しいところです。

 

 

健康診断結果が一定の数値以上の場合にすべて制限をかけてしまうことで、産業医が判定に要する時間を節約する会社もあるようです。

 

ただその場合も産業医ひとりの判断に頼るより、人間ドック学会の基準値などを参考に、目安となる「就業制限の発動できる基準」を衛生委員会で審議したうえで内規として持っておくといった組織としての対応が望ましいと考えられます。

 

 

そもそも就業制限にはいろいろな意味があり、医学的な見解だけでかけるのではありません。

 

その意味は大きく4つあるとされています。

 

(1)労働者の疾病の悪化の防止(心不全の労働者に対する重筋作業制限など)
 

(2)ケガや事故の防止(意識障害をきたす恐れのある労働者に対する運転業務制限など)
 

(3)労働者本人の適切な受診や健康管理への行動変容の促し(高血圧を放置している労働者に対する運転業務制限など)
 

(4)就業環境の改善の必要性の事業者への情報発信(長時間残業が常態化している職場の労働者に対する残業制限など)

 

 

つまり、事後措置をするには、健診結果から見ることのできる健康状態のほかに、本人の現在の自己保健行動、働く現場の状況の把握が大切になってきます。

 

 

事業者は産業医に健診判定をしてもらう際、労働者がどんな働き方をしているかについて情報を提供しなくてはいけないことになっています(安衛則51条の2ほか)。

 

現場の事情についての情報提供と意見交換を行いながら、産業医に適切な判定をしてもらう流れを作れるとよいでしょう。

 

数値のみの判断ではなく、個別の働き方を理解した上での判断が望ましいと考えられます。

 

この点を会社もルール化して対応しましょう。

 

通勤の途中で買い物をして、その後に災害にあった場合の対応

今回は「通勤の途中で買い物をして、その後に災害にあった場合の対応」について解説いたします。

 

 

「社員が通勤途上において、事故に巻きもまれましたが、通勤災害となるのでしょうか?」このような相談がありました。

 

通勤途中でも、逸脱・中断が「日常生活上必要な行為」を行うためであった場合は、この逸脱・中断の間を除いて、通常の通勤経路に戻った後は通勤と認められるとのことです。

 

まず、「日常生活上必要な行為」については、厚生労働省令に定められています。

 

そして、「日常生活上必要な行為」は、労災則8条で次のように定められています。

 

では、この「日常生活上必要な行為」の具体例は以下となります。

 

(1)日用品の購入その他これに準ずる行為

 

(2)職業訓練や学校教育、その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

 

(3)選挙権の行使その他これに準ずる行為

 

(4)病院または診療所において診察または治療を受けることその他これに準ずる行為

 

(5)要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に、または反復して行われるものに限る)

 

さらに、通達で具体例も掲げられています。(平27・3・31基発0331第21号)

 

(1)日用品の購入その他これに準ずる行為」については、帰途で惣菜等を購入する場合、帰途で理・美容院に立ち寄る場合、クリーニング店に立ち寄る場合等がこれに該当します。

 

(2)職業能力開発促進法に規定する公共職業能力開発施設において行われる職業訓練、学校教育法1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為が該当します。

 

(3)「選挙権の行使その他これに準ずる行為」については、選挙権行使のほか、最高裁裁判官の国民審査権の行使、住民の直接請求権の行使等がこれに該当します。

 

(4)「病院または診療所において診察または治療を受けることその他これに準ずる行為」については、病院または診療所において通常の医療を受ける行為に限らず、人工透析など比較的長時間を要する医療を受けることも含まれます。また、「これに準ずる行為」の具体例としては、施術所において、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師等の施術を受ける行為があります。

 

(5)同居している者の介護を行う場合としては、介護保険法に規定する施設サービスが提供されない施設(養護老人ホーム、軽費老人ホーム等)に一時的に入所している者を介護する場合等が想定されます。また、「扶養」とは、主として当該労働者が経済的援助をすることにより生計を維持させることをいいます。

 

これらを参考に「通勤災害になるのか?ならないのか?」を会社は判断をしてください。

 

通勤経路を離れて、飲食した場合は認められるケースはほとんど無いと考えてください。

 

この場合、「日常生活上必要な行為」ではないと考えられるからです。

 

パート社員に特別な賞与の支払いは必要でしょうか?

今回は「パート社員に特別な賞与支払いは必要でしょうか?」を解説いたします。

 

 

先日、質問がありました。

 

「無期転換した社員にも就業規則で、賞与を支給することがあります。この人たちは、パートや有期雇用労働者のときから、一定額を支給してきました。このたび、正社員を対象に年2回の賞与に加えて利益還元賞与の支給を検討していますが、パートらも支給対象とせざるを得ないのでしょうか。」

 

パートや有期雇用労働者に明示すべき労働条件の中に、賞与の有無があります。

 

「賞与」とは、定期または臨時に支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定されていないものをいいます。

 

季節的に支払う賞与のみを指すわけではなく、決算賞与や利益還元賞与等も、定義上はひとまとめの賞与になり得ます。

 

賞与の制度はあるけれど業績等に基づき支給しない可能性があるならば、制度としては「有」と明示しつつ、パートらに対しては、例えば「契約の更新時に新たな賞与に関しては支給しない」ことの明示が必要でしょう。

 

ただし、明示よりも前に支給時期が到来したときには、就業規則等の規定の問題があります。

 

 

次に、無期転換した従業員ですが、無期転換権は権利の行使により労働契約の期間のみを変更するのが原則で、「別段の定め」をすることによって労働条件を変更することが可能となっています。

 

転換権を行使する前の期間の定めがあるときに賞与を一部でも支給していれば、無期転換後もこれを引き継ぐ形が自然の流れでしょう。

 

 

パート・アルバイトも無期転換した労働者も「就業規則の基準に達しない労働契約は無効、その部分は就業規則で定める基準による」ことになります。

 

個別の労働契約が優先するのは、就業規則を上回る場合(労動契約法7条)ですから、新設する賞与の支給対象から除外するのであれば、就業規則等の確認と見直しが必要です。

 

 

新たに支給を検討している賞与は、正社員とパート・有期雇用労働者間における待遇の相違には違いありません。

 

パート・有期法8条の不合理な待遇の禁止等の適用があり、事業者は法14条2項で労働者から求めがあったときの説明義務も負うことから、新たな賞与の性質や支給目的なども明らかにしておきたいところです。

 

例えば、会社が将来的に収益を見込める部門へ経営資源をシフトするという目的で、正社員には異動や転勤等が頻繁に起こることを考慮して支給したり、その場合でも時限的な措置として支給するなど導入の目的を確認・整理してみてください。

 

無期パート労働者に対しても、一般的には、常に全く同一水準での待遇にする必要があるとまではいえないと考えられます。

 

このように、パート社員等への賞与の支給は「支給することが前提」であるというスタンスを取りつつも、至急の性質、目的を明らかにして、都度対応を行うことがポイントとなるでしょう。

 

無期転換パート、有期パート、有期契約社員など、様々な処遇の中での対応は、事前の取り決めが重要となってくるでしょう。

 

業務災害と通勤災害の境界線について

今回は「業務災害と通勤災害の境界線について」を解説いたします。

 

 

業務災害と通勤災害の境界線は、主に就業場所と住居の関係によって決まります。以下に主な境界線を説明します。

 

〇就業場所内外の境界

 

業務災害は就業場所内で発生した事故や疾病を対象とし、通勤災害は就業場所外での移動中に発生した事故や疾病を対象とします。

 

〇住居の種類による境界

 

アパートやマンションの場合:自室の外戸(玄関ドア)を出た時点から通勤経路となり、通勤災害の対象となります。戸建て住宅の場合:家の門扉、つまり自宅敷地外から通勤となり、通勤災害の対象となります。

 

〇就業時間との関係

 

業務終了後、就業場所を出てから通勤災害の対象となります。例えば、勤務終了後にオフィスビルを出る際、ビル内のエレベーターや階段での事故は業務災害として扱われます。

 

〇合理的な経路と方法

通勤災害と認められるためには、住居と就業場所の往復が合理的な経路と方法で行われている必要があります。不必要な寄り道や中断がある場合、その後の移動は通勤とは認められません。

 

〇複数の就業場所がある場合

複数の異なる事業場で働く労働者の場合、一つ目の就業場所での勤務終了後、二つ目の就業場所へ向かう移動も通勤災害となります。

 

これらの境界線を理解することで、労災と通災の違いを明確に区別することができます。

 

 

そして、通災と考えがちですが、事業主の支配下にある場合は業務災害に該当するものもあるのです。

 

通勤災害としては取り扱われない「業務の性質を有するもの」とは、会社が用意した交通手段で通勤している往復行為または移動に伴って発生した災害について、「業務災害」として取り扱うものをいいます(平18・3・31基発0331042号)。

 

通勤は、労働者の業務に必然的に伴うもので、その途上は業務と密接な関連性をもっているのは事実ですが、いまだ事業主の支配下ではないので、業務外の災害になります。

 

しかし、通勤途上の災害であっても次のような事例は業務災害と判断されることになります。

 

 ①会社の通勤専用バスで通勤している労働者の災害(昭25・5・9基収32号)

 

○事例:会社が提供する通勤専用バスで通勤している労働者が、バスを降りた直後にバスの後輪にひかれたもの

 

○解説:当該災害は、事業主の提供する通勤専用バスの利用に起因して発生したものであり、「業務の性質を有するもの」に該当

し、通勤災害ではなく、業務災害に該当することになります。

 

事業主が提供する専用交通機関を利用して通勤している場合には、その利用に起因する災害は業務起因性が認められ、業務災害として取り扱われることになります。

 

つまり、通勤災害とみられるような状況であっても、「労働者が事業主の支配下にある」状況下での災害は、業務災害として取り扱われるものがあるということです。