港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!! -3ページ目

社内の噂話がネットに出たらどうすればいいのでしょうか?

今回は「社内の噂話がネットに出たらどうすればいいのでしょうか?」を解説します。

 

インフラの発達により、個人がいつでもどこでも情報を発信できる時代となりました。

 

とても便利になりましたが、その反面、私たちがいつ、どこで、情報にさらされるかもしれません。

 

便利な世の中ですが、情報に対するリスクが高くなったといえるのです。

 

特にSNSの発達で、個人が発信した情報が「簡単」にメディアに情報として取り上げられるケースよくあります。

 

そして、多くの会社では「業務上に関することを社員が勝手に情報発信しないように」と神経をとがらせています。

 

そのために「就業規則で情報発信のルールを作ってほしい」などのご要望が来ています。

 

しかし、何でも規制すればよいわけではありません。

 

内部告発者を守るための法律「公益通報者保護法」というものがあるのです。

 

この法律は内部告発の保護対象、要件等が法文化されています。

 

保護される通報の内容は以下となっております。

 

〇個人の生命または身体の保護

 

〇消費者の利益の擁護

 

〇環境の保全

 

〇公正な競争の確保

 

〇その他犯罪行為に関する通報

 

以上のような内容について告発した通報者に対し、解雇等を実施した場合は無効とされ、減額等の装置を実施した場合も無効となるのです。

 

労働基準法ももちろん、対象で、不払い残業等に関する通報も公益通報に該当することとなるのです。

 

よって、何等かの情報がリークされたら、この法律を意識しないといけないのです。

 

しかし、全てが保護されるわけではありません。これに関する裁判があります。

 

<田中千代学園事件 東京地裁 平成23年1月28日>

 

〇総務課長が週刊誌の記者の取材に応じ、学校内部の様子を話した(理事長が学園を乗っ取っている 、理事長が私服を肥やしている、職員は使い捨て)

 

〇学園は「外部に漏らすべき情報ではないものを漏らし、記事として全国に流布された」として、就業規則により懲戒解雇とした。

 

〇総務課長は懲戒解雇を不服として、裁判所に訴えた。

 

そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。

 

〇就業規則を適用して懲戒解雇を行ったことは、何ら問題はない。

 

〇内部告発の内容はいずれも真実ではない、または、真実か分からない。

 

→公益通報者保護法の対象にならない

 

〇内部告発は正当なものではなく、違法である(懲戒解雇は妥当)。

 

以上により学園側が勝訴したのです。

 

 

この裁判では、告発した内容が「真実ではなかった」、「真実かどうかが分からなかった(=証拠を示せなかった)」ので、公益通報者保護法に該当しないとされています。

 

さらに、事実と異なる情報を流して、学園の信用を失墜させ、また、理事長等の名誉を傷つけたことは就業規則の懲戒解雇に該当すると判断されたのです。

 

噂話を真実のように書込みした場合は毅然とした対応を行いましょう。

 

相手が嫌がらなければセクハラに該当しません?

今回は「相手が嫌がらなければセクハラに該当しません?」を解説します。

 

セクハラ(セクシャルハラスメント)の判断は難しいとされています。

 

なぜなら、「相手が嫌と感じたらセクハラになるが相手が嫌と感じなければセクハラに該当しない」と言われているからです。

 

判断の基準に主観が介入してくる割合が高いからです。

 

よく「セクハラと思われてしまった・・・」と委縮して、伝えることもあいまいになっていくとの話を聞きます。

 

しかし、ことのほうが業務上大きな問題なのです。

 

では、セクハラかセクハラではないか?そして、この基準はどのようになっているのでしょうか?

 

 

これに関する裁判があります。

 

<P大学事件 大阪高裁 平成24年2月28日>

 

〇大学教授(男性)Aが女性准教授に対し、しつこく食事に誘っていた。

 

〇上司の誘いなので、女性准教授はしぶしぶ応諾し、その飲酒の席でAは身体を触ってきた。

 

〇女性准教授は、この件後に急激に精神状態が悪化し、カウンセリングを受けるなどした。

 

〇その後、学部長と非公式に面談し、Aにセクハラを受けたことを訴えた。

 

〇さらに、学部執行部に対し同様の訴えをし、防止委員会に対し、救済を求める申立書を提出した。

 

〇大学は調査委員会を設置して調査をした上、Aのセクハラ行為により女性准教授の教育・研究環境を悪化させたなどとして、懲戒処分として、減給処分を行った。

 

〇Aはセクハラ行為を否定し、減額分の賃金の支払いを求めて提訴した。

 

〇地裁では「主張するようなセクハラ行為があったとは認められない」として、処分を無効とした。

 

〇女性准教授はこれを不服として控訴した。

 

そして、高裁では以下の判断を下したのです。

 

〇セクハラ行為を認めて、地裁の判断を取り消した。

 

〇Aの請求を棄却した。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

一般に、セクハラとは、「相手の意に反する性的言動」と定義されます。

 

飲食当日のAの行為は、店舗内において、右隣に座っていた女性准教授の左太股に手を置き、これに不快感を示したにもかかわらず、複数回にわたって同様の行為を繰り返したのです。

 

さらに、「おまえ」と呼びかけて、年齢や婚姻の有無を尋ねたり、地下鉄車内で二の腕をつかむなどしたというものであって、これらの行為は、セクハラに該当すると判断されたのです。

 

Aは「女性准教授は食事後『お気遣いありがとうございました』とお礼のメールが来ている」ことから誘いを嫌がっていないと反論しました。

 

これに対し、裁判所は「上司であるAの機嫌を損ねることを避け、自己に不利益が生じないようにした行為」と判断したのです。

 

職場内のセクハラ行為について被害者が明白な拒否の姿勢を示しておらず、同意があったまたはそのように誤信した等との主張がなされる場合がありますが、これは認められないと考えないといけないでしょう。

 

メールから情報漏洩をさせないためには?

今回は「メールから情報漏洩をさせないためには?」を解説します。

 

先日、「社員がメールで情報漏洩をしている疑いがあります。

 

この社員の過去のメールの内容や送受信状況等を調査するとともに、今後のメールの送受信についても監視したいと思います。

 

このような調査・監視行為は法的に問題ないでしょうか?」

 

 

社員が会社のパソコン等を用いてこれらの行為を行った疑いが生じた場合には、社員のメールの送受信状況等を調査する必要が生じます。

 

このような会社が、社員の行為の有無を確認する目的でメールを調査する場合、私的な電子メールも閲読することが不可避となります。

 

そこで、調査の必要性と社員のプライバシーとの間の調整の問題が生じます。

 

この点に関し、部下の受信メールを上司が本人に無断で監視した行為の適法性が争われた事件があります。

 

F社Z事業部事件<東京地裁 平成13年12月3日>

 

〇Aは部長から、時間を割いて部署の問題点などを教えてほしいとメールで依頼されるも、「単なる呑みの誘い」などとするメールを同僚に送信するつもりが、誤って部長に送信してしまった。

 

〇その後、部長はAのメールの監視を始め、「部長のスキャンダルでも探して何とかしましょうよ」と同僚にメールし、部長をセクハラで告発しようとしていること等を知った。

 

〇Aがパスワードを変更したが、部長はIT部に依頼し、監視を続けた。

 

〇Aは、部長が許可なしにメールを閲読したことを理由に損害賠償を請求した。

 

そして、裁判所は以下の判断をしたのです。

 

〇部長の行為はプライバシーの侵害には当たらない。

 

〇Aの主張は退けられた。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。裁判で、プライバシーの侵害にあたる例として以下のものを上げています。

 

〇職務上私用メールを監視するような立場にない者の監視

 

〇上記の立場の者でも、合理的な必要性がなく個人的な好奇心で監視した場合

 

〇社内の管理部署などに断りもなく個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合

 

社内の管理部署などに断りもなく個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合について、IT部に依頼するまでの監視方法については相当でないとの判断がされました。

 

しかし、他の部分ではプライバシー侵害にまであたらず、一方でAのメールの使用は私的利用の限度を超えており、それが部長の監視を招いたとして、Aの請求を棄却しましたのです。

 

この裁判でのメール閲覧については、法的保護に値するプライバシーの侵害には当たらないとなったのです。

 

この事例が裁判まで発展した大きな理由の一つに、メールの私用での利用禁止や会社による電子メールの閲読について就業規則に 定めていなかったことがあります。

 

あらかじめ閲読をすることを通知しておけば、プライバシー保護の期待はなくなるので、このようなトラブルは生じないでしょう。

 

少しのケアでトラブル防止となるのです。

経歴詐称で入社した社員を解雇できますか?

今回は「経歴詐称で入社した社員を解雇できますか?」を解説します。

 

採用難といわれてます。

 

大手企業でも中小企業でも「いい人がいなくて・・・」という言葉は枕詞のように使われています。

 

しかし、人が足りないからと言って「誰でもいい」というわけにはいきません。

 

採用に当たり、応募者から履歴書、職務経歴書などを吟味して、面接を行い、人となりやスキルをみることになります。

 

 

しかし、実際には経歴を偽ったり、能力を高く見せたりと事実に反することも見受けられます。

 

これに関する裁判があります。

 

<KPIソリュージョンズ事件 東京地裁 平成27年6月2日>

 

〇A(外国人)は会社の求人をハローワークで見て応募してきた。

 

→求人はシステムエンジニアであった

 

→Aの応募書類に日本語はビジネスレベルと記載があり、PCスキルは、画像処理に関する様々なスキル対応可能との記載あり

 

〇会社は履歴書等のスキルなら即戦力になると考え採用を検討し、そして、Aは面接時に自身のスキルのアピールを行い、賃金の上乗せを交渉し、上乗せ金額で採用となった。

 

→月給40万円から60万円でAは採用となった

 

〇Aは採用され、会社の雇用契約を締結したが、採用後に提出された、前職の離職票は履歴書と異なる会社名が記載され、また、退職理由も履歴書と整合性が取れないものであった。

 

(会社は理由を問いただしたが、Aにはぐらかされた)

 

〇Aにかませた画像解析および日本語コンテキスト解析システムの開発業務が進まないため、開発者を派遣会社から派遣してもらい、これに委任した。

 

(Aは漢字が読めず、文法も間違った日本語を使っていた。採用時に提出した履歴書等は紹介会社の添削が入っていた) 

 

〇会社の代表は、Aに対し、「画像解析の抽出システムに関する設計書」を求め、提出したものは既に外部で発表されていたものの盗用であった。

 

〇会社はAを解雇したが、不当解雇を主張して裁判となった。

 

→会社は経歴詐称による損害賠償で反訴した

 

そして、裁判所は以下の判断をしたのです。

 

〇採用面接時の虚偽事実の対する解雇は有効である。

 

〇会社を欺く行為による損害賠償を認める。

 

Aの主張は退けられ、会社側の主張が通ったのです。

 

本件の解雇は就業規則にのっとったものであり客観的かつ合理的な理由があり、そして、社会通念上も相当と判断されました。

 

なぜなら、日本語の能力、業務上のスキルについての詐称により、雇用契約を締結させ、かつ、論文の盗用など指導、指摘を行っても問題解消とはならないと判断されました。 

 

さらに、逆切れや開き直りの態度等もみられ、会社との信頼関係が破壊している悪質なものと裁判所も判断したのです。

 

採用で重視する能力、資格や役割があれば、履歴書、職務経歴書のチェックを念入りにすることは基本ですので再度確認しましょう。

 

傷病で復帰できない場合、解雇はできるのでしょうか?

今回は「傷病で復帰できない場合、解雇はできるのでしょうか?」を解説します。

 

社員が病気やケガで、業務に就けない場合、多くの会社では、休職制度を活用して回復を待つということになります。

 

そして、病気やケガの程度では、休職期間が経過しても業務に戻れない場合もあります。

 

こんな場合、就業規則等では「期間満了により退職、解雇」と記載されているケースがほとんどと思われます。

 

しかし、実際の対応として、「満了によりすぐに退職、解雇」という判断を躊躇する会社も多く、その理由としては「本当に法的に有効なのか?」と疑問の声も上がっています。

 

これに関する裁判があります。

 

<三洋電機ほか事件 大阪地裁 平成30年5月24日>

 

〇社員Aは自転車による通勤途中で自動車と接触し、頭部、胸部、腰部打撲、腰椎ヘルニア等の傷害を負った。

 

→3年程度の間、休職して回復を待った  

 

〇その後、子会社の人事で復職し、内勤業務を行っていた。

 

〇そして、腰椎椎間板ヘルニアを理由に私傷病休職で約3年間休職扱いとなった。

 

〇休職後、復職となって内勤業務に従事していたが、進行直腸がんが判明し、休職となった

 

〇約3年超の期間を経てAは復職を希望したため、親会社、子会社、Aとの面談が行われた。

 

〇さらに、産業医との面談が実施された。

 

→会社が主治医の病状照会を依頼したが、Aは拒否した

 

〇その後、Aは子会社に復職したが、7日間の外勤活動を行ったが、その後有給休暇を取得した。

 

〇有給休暇消化後は欠勤となった。

 

〇会社は就業規則の条文である「精神または身体上の故障のため、業務に堪えられない時」に該当するとして、解雇を実施した。

 

〇Aは「解雇は無効」と主張し、裁判を起こした。

 

→腰痛は業務が起因したとも主張し、会社に対し、安全配慮義務違反等の主張も行った。

 

そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。

 

〇解雇は有効

 

〇腰痛の原因は業務が起因していない

 

→会社の安全配慮義務違反ではない

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

最後の休職期間が満了する前に、Aから復職を希望したが、会社が主治医の病状照会を希望したのも関わらず、それを拒否したのです。

 

そして、僅か7日間の勤務で欠勤等に陥っていることなどを鑑みれば、就業規則の「精神または身体上の故障のため、業務に堪えられない時」に該当するのは明らかと判断されたのです。

 

さらに、本件解雇は、客観的に合理的理由を欠くとは言えず、社会通念上相当であると認められると判断されました。

 

本来の労働契約は労働者が労務の提供を行いそれに対し、会社が賃金支払い義務を負います。

 

よって、労務の提供がなければ、解雇理由になるというのは当たり前のことなのです。

 

休職制度とは「解雇にさせないための執行猶予」と考えられます。

 

積極性が無い社員を解雇したいのですが・・・

今回は「積極性が無い社員を解雇したいのですが・・・」を解説します。

 

 

従業員が「協調性がなく、注意及び指導しても改善の見込みがない」等の場合は解雇が可能となる場合があります。

 

もちろん、就業規則に解雇の条文が存在し、その項目に該当しないと解雇はできません。

 

さらに、現実は厳しく、協調性の欠如、積極性の欠如などですぐに解雇は厳しいと考えられます。

 

なぜなら、その基準となる項目があやふやで、客観的にわからないことが多いからです。

 

しかし、本当に「協調性の欠如」、「積極性の欠如」などで解雇はできないのでしょうか?

 

 

これに関する裁判があります。

 

<アクセンチュア事件 東京地裁 平成30年9月27日>

 

〇社員Aは、得意な分野の技術力は相当程度評価されていたが、他のメンバーと協働して得意な分野以外の業務について、積極性が欠けると指摘されていた。

 

〇会社の業務はプロジェクトチームを中心として動くものばかりなので、所属チームがなくなることが多くなり、配属待ちの状態が多くなった。

 

〇会社は「フィードバック」等による指摘によって問題を容易に認識させていた。

 

〇会社はAに対してPIP(Performance Improvement Plan)開始通知を発出し、仕事を率先して行う姿勢がない点を指摘し、

3ヵ月の期間内に改善がなければ、普通解雇をすると告げた。

 

〇Aに対し、3ヵ月の役割を与えたが、職位に鑑みた役割を達成していないと評価された。

 

〇会社はAに対し、2ヵ月分の給与相当額の一時金と再就職支援サービスの提供を内容とする合意退職案を提案したが、Aはこれを断った。

 

〇その後、会社はAを解雇した。

 

〇Aは「解雇は無効、かつ違法」と主張し、裁判を起こした。

 

そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。

 

〇本件解雇は客観的に合理性があり、社会通念上も相当であって有効である。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

Aの業務に臨む姿勢において、根本的な姿勢の問題について、会社は入社当初から繰り返し指摘していた。

 

しかし、Aは「自分の得意な仕事を与えられないのは会社側の問題」として、その問題をすり替えていた。

 

そして、自身の仕事ぶりを全く省みることなく、これにより他のメンバーとの協働に支障をきたしていた。

 

これにより、就業規則の解雇事由に該当し、解雇は「合理的な理由」があると判断されたのです。

 

さらに、長年にわたって繰り返されたフィードバック等による指摘によって問題点について容易に認識し得たにもかかわらず、PIPでも改善されず「積極性」の意味を勝手な解釈で押し通していた。

 

そして、自分の考えに対し、反対の意見等を一切受け入れてこなかったのです。

 

以上の状況での解雇は、社会通念上相当なものと判断されたのです。

 

事例で解雇が有効となったポイントは、長年にわたり、繰り返し行われていたフィードバックと考えられます。

 

一時的ではなく継続した対応が必要となるのです。

 

LINEやチャットのやり取りでセクハラが認められる?

今回は「 LINEやチャットのやり取りでセクハラが認められるの?」を解説します。

 

インフラの発達で、業務でLINEやチャットを利用するケースが増えています。

 

メールより、「主旨が伝わりやすい」「簡潔にメッセージが表現できる」「グループ単位でのコミュニケーションが可能」などのメリットがあります。

 

しかし、メールよりも気軽で使いやすい半面、やり取りがフランクになり、ビジネスにそぐわないと感じられる面もあります。

 

どんな場面で、どのように運用するかを明確にすれば非常に使いやすいツールと感じます。

 

さらに、この流れは止められないとも感じています。コミュニケーションツールでフランクに使用されることが多い場面から、ビジネスコミュニケーションへの移行は容易と考えらえます。

 

 

しかし、その手軽さからコミュニケーションが暴走し、ハラスメントとなるケースも見受けらえます。

 

これに関する裁判があります。

 

<X大学事件 東京地裁 平成30年8月8日>

 

〇准教授Aは、自ら運営するゼミの女子学生とLINEのやり取りを行っていた。

 

〇このやり取りの中でセクハラがあった。

 

→痴漢が多いのは埼京線だっけ?

 

→お尻は無理だけど二の腕はOK?

 

→特定の女子学生に対し「かわいくないから(ゼミから)切る 

 

→今度、デートしよう

 

〇女子学生はLINEのやり取りを行った翌日に人権コーディネーターに相談をした。

 

→Aのゼミは続けることができないと相談

 

→その後、女子学生は精神的ショックを受け、通院を強いられるようになった

 

〇この件で、大学は就業規則の懲戒処分を実施した。

 

→1か月の停職処分

 

〇Aはこの処分は重すぎると考え、裁判を起こした。

 

そして、裁判で以下の判断が下されました。

 

〇1か月の停職処分は無効である。

 

〇停職処分に対応する金員の支払いを命じた。    

 

この裁判をみてみましょう。

 

まず、停職処分の無効についてですが、停職処分は懲戒解雇に次ぐ重い罪ということです。

 

しかし、Aは以前に懲戒処分歴はありません。

 

さらに、今回の言動について「反省している」と認められています。

 

そして、女子学生がLINEのやり取りに「過剰に反応したと認められる」としたのです。

 

Aは「コミュニケーションの取り方を反省し、今後同様の行為を繰り返さない」と述べています。

 

これにより「一定限度、情状酌量すべきである」と裁判所はコメントしているのです。

 

事例の裁判は懲戒処分の程度と情状酌量などの状況を考えての結論となったのですが、ハラスメントそのものは認められているのです。

 

この裁判からいえることは、「LINE等のコミュニケーションはテキストで残るので証拠としての取り上げられやすい」「懲戒処分の程度を考慮することが重要」と考えられます。

 

セクハラやパワハラの問題で処分する側も過剰に「感情的」になり、客観的な判断ができなくなることが見受けられます。

 

そして、NGの基準を提示して予防を行いましょう。

 

役職者の解任を行うにはどうしたら良いのでしょうか?

今回は「役職者の解任を行うにはどうしたら良いのでしょうか? 」を解説します。

 

「社員を昇格させて、役職の地位の仕事をこなしてもらおうとしたのですが、仕事をこなすどころか、地位にあぐらをかいて人が変わったような社員がいるのですが・・・」

 

このような相談が先日ありました。

 

課長の業務や部長の業務は今までと異なり、マネジメントの 能力が試されます。昇格させてポジションにつかせたら、「あれ?こんなはずじゃなかった・・・」となるのです。

 

そんなときは、すぐに解任するのではなく、もう一度、ポジションに見合う働きができように再教育することになるのです。

 

しかし、再教育等では対応できないことがあります。

 

そんな時は「役職の解任」となりますが、どのように進めれば良いのでしょうか?

 

 

これに関する裁判があります。

 

<社会福祉法人X社事件 大阪高裁 平成29年7月7日>

 

〇Aは特別養護老人ホームの施設長(管理職)をしていた。

 

〇ショートステイ利用者の補聴器の紛失が生じ、保険にて補償を行ったが、新たに購入した領収書の提示がなく、混乱が生じた。

 

〇死亡した入所者の遺留品を遺族に引き渡す際に確認書に署名押印をしてもらうルールであるが、これが実施されていなかった。

 

〇Aは施設内での喫煙ルールを守らず、喫煙場所を利用しないで、空き缶等を灰皿にして室内で喫煙していた。

 

〇職員が退職の申し出をし、退職したが、会社への報告は事後であったことが度々あった。

 

〇施設長として出席しなくてはいけない会議を正当な理由無く欠席し、「会議に出なくても理解できないし、知る必要もない」等の暴言を吐いた。

 

→会社は「不適切な問題行動」であるとした。

 

〇職員へのパワーハラスメントも存在した。

 

〇Aは整理整頓ができず、また、服を脱ぎっぱなしにして、ジャージ姿でうろうろしている等、職場の規律を乱す行為をした。

 

〇会社はAを施設長から解任した。

 

〇Aは、「この解任について、社会通念上相当ではないし、人事権を逸脱するので無効」と主張し、裁判所に訴えた。

 

〇一審では、「人事権の濫用ではない」とし、会社側の主張が通り、Aはこれを不服として控訴した。

 

そして、高裁では次の判断をおこなったのです。

 

〇本件解任処分は人事権の範囲を逸脱し、または濫用したものに当たるとはいえない。

 

〇したがって解任は有効である。

 

この裁判をみていきましょう。

 

Aが起こした数々の不適切な言動等は、施設長としての業務遂行の適格性を疑われる不適切な事情に該当すると判断されています。

 

人事権の行使として、一定の役職を解くことは、労働契約上、使用者の権限の範囲内のものなのです。

 

よって、「人事権の行使としての施設長の解任要件として、懲戒処分と同様またはそれに準ずるほどの事情が必要とは言い難い」と裁判所は判断しています。

 

懲戒処分より人事権行使の範囲は「広い」ので、このことを参考にして対応を考えましょう。

 

転勤命令を出してもいいのでしょうか?

今回は「転勤命令を出してもいいのでしょうか?」を解説します。

 

勤務する者にとって、転勤等の場合は転居が伴うケースがあるので、私生活が大きく変わる場合があります。

 

それだけ、社員等にとっては大きく気になる部分でもあるのです。

 

最近では、事業所の閉鎖等に対しての異動についてのご相談や社員に対しての整理解雇についてのご相談などもあります。

 

特に年度末はこの手の相談が多く集まる時期でもあるのです。

 

そして、「転勤をしてもらいたい社員がいるが、法的に転勤させることは可能でしょうか?」というご相談が多いです。

 

これは、労働基準法等の問題ではなく、社内のルールの問題なので、就業規則にどのような規定になっているのかで、できる、できないが大きく変わってきます。

 

そして、最近では事業所閉鎖、人員の削減等で異動命令が発動されることも多く、このような場合、前例等もなく、また、感情的にトラブルになることもあるのです。

 

では、転勤、特に転居を伴う異動について、どのような時にNGなのでしょうか?

 

これに関する裁判があります。

 

<ハンターダグラスジャパン事件 東京地裁 平成30年6月8日>

 

〇会社は東京事務所の閉鎖を決め、社員4名が茨城工場へと異動いた。

 

〇社員Aは東京の自宅から茨城の工場まで、片道約3時間かけて通勤をしていた。

 

〇Aは、異動してすぐに通勤途中に過失なく車に衝突され、約4か月の休職と40日間のリハビリ勤務を経て復職した。

 

〇その後、会社はAに対し「工場の近くに単身赴任せよ」と転居命令を出した。

 

→会社は「安全管理の面」からの判断

 

→Aは通勤費を一部、自己負担しても東京の自宅から通勤したいと主張

 

〇会社は転居命令を拒否したことを理由に解雇を実施

 

〇Aは「解雇は客観的理由、社会通念上相当性を欠き、労働契約法上無効」と主張し、裁判を起こした。

 

→同時に不幸行為の慰謝料も請求

 

 そして、裁判所は以下の判断を下したのです。

 

〇転居命令は無効である。

 

〇転居命令に従わないとして行われた解雇も無効。

 

〇慰謝料請求は認められない。 

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

会社の就業規則では以下となっていました。

 

〇会社の判断で社員の配置転換または転勤を命じることができる。

 

〇業務以上の必要もしくは業務上の都合により、社員に対する就業場所もしくは従事する職務の変更を命じることがある。

 

〇人事異動により、居住地の変更を要する場合の取り扱いは別途定める。

 

従って、社員に対して会社の裁量で勤務場所や居移住地を決定できることになります。

 

また、会社の転勤、転居命令権は無制限ではなく、濫用は許されません。

 

転勤、転居命令が権利濫用となるのは、業務上の必要性がない場合、または、必要性があっても不当な動機、目的がある場合などです。

 

このように、命令する前に要性を吟味することが重要です。

 

労災認定が否決されても民事の損害賠償が認められます

今回は「労災認定が否決されても民事の損害賠償が認められます」を解説します。

 

業務中の事故があった場合、労災が認定されます。

 

これは、業務が原因で、ケガや病気になった事の因果関係が明白だからです。

 

そして、事故等の遭遇した人が不幸にも障害が残ったり、お亡くなりになった場合は、民事の損害賠償請求が行われています。

 

労災保険でカバーされる部分は一部であり、「会社の責任はもっと重い」として民事裁判が行われています。

 

 

さて、労災認定が降りなければ、損害賠償とはならないのでしょうか?

 

これに関する裁判があります。

 

<損害賠償請求事件 大阪地裁 平成30年3月1日>

 

〇Aは店舗及び宅配を行う飲食店に勤務していた。

 

〇Aは肝臓障害で入院し、その後、酒が残ったまま出勤して嘔吐しながら仕込み作業を行うなどしていた。

 

〇その後、店舗を異動となり、店長として勤務したが、二日酔いのまま出勤するなど、仕事に支障が出てきた。

 

〇会社は「仕事に支障を来すようであれば辞めてほしい」と伝えた。  

 

〇その後、Aは「抑うつ状態、神経症、不眠症」の診断を受けて休職となった。

 

→Aは「過重な労働があってうつ病となった」として医師の診断を受けていた。

 

〇そして、Aは5か月後に自殺した。

 

〇遺族は労災認定を求め、裁判を起こしたが、地裁で請求を棄却され、控訴したが高裁でも棄却され、確定となった。

 

〇それから、遺族は会社等を相手取り損害賠償金の支払いを求めて、裁判を起こした。

 

そして、裁判は以下の判断を行ったのです。  

 

〇過重な労働が存在し、Aの心理的負荷を「強」と認定。

 

〇飲食の診断で仕事に支障が出ていたが、業務と発病、自殺の因果関係を否定するものではない。

 

〇代表取締役の使用者責任も認めた。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

Aが店長になったことにより業務過重性については、店の売上ノルマ等も課せられておらず、心理的負荷が大きいとは認められないと判断されました。

 

 

他方、長時間労働については医師からの話、パート、アルバイトからの話で、「3か月休みなく、82日間連続勤務していた」と認められたのです。

 

これにより、うつ病が発症した要因と考えられると結論づけられたのです。

 

遺族が行った労災請求に係る不支給決定に対する取消訴訟ではAの過重労働は認められませんでした。

 

しかし、損害賠償請求では過重労働が認められました。

 

これは82日間の連続勤務が認定されたため、因果関係がありとなったのです。

 

前提となる「自殺と過重労働の因果関係があり」となったので異なる結果となりました。

 

いずれにせよ、本事例は長時間労働の有無、休日取得の有無をより適切に管理することの重要性を再認識させられる事例です。

 

過重労働は働く社員に大きな負担をかけるものですが、社員の家族等の周りの人間も巻き込む問題と認識しないといけません。