LINEやチャットのやり取りでセクハラが認められる?
今回は「 LINEやチャットのやり取りでセクハラが認められるの?」を解説します。
インフラの発達で、業務でLINEやチャットを利用するケースが増えています。
メールより、「主旨が伝わりやすい」「簡潔にメッセージが表現できる」「グループ単位でのコミュニケーションが可能」などのメリットがあります。
しかし、メールよりも気軽で使いやすい半面、やり取りがフランクになり、ビジネスにそぐわないと感じられる面もあります。
どんな場面で、どのように運用するかを明確にすれば非常に使いやすいツールと感じます。
さらに、この流れは止められないとも感じています。コミュニケーションツールでフランクに使用されることが多い場面から、ビジネスコミュニケーションへの移行は容易と考えらえます。
しかし、その手軽さからコミュニケーションが暴走し、ハラスメントとなるケースも見受けらえます。
これに関する裁判があります。
<X大学事件 東京地裁 平成30年8月8日>
〇准教授Aは、自ら運営するゼミの女子学生とLINEのやり取りを行っていた。
〇このやり取りの中でセクハラがあった。
→痴漢が多いのは埼京線だっけ?
→お尻は無理だけど二の腕はOK?
→特定の女子学生に対し「かわいくないから(ゼミから)切る
→今度、デートしよう
〇女子学生はLINEのやり取りを行った翌日に人権コーディネーターに相談をした。
→Aのゼミは続けることができないと相談
→その後、女子学生は精神的ショックを受け、通院を強いられるようになった
〇この件で、大学は就業規則の懲戒処分を実施した。
→1か月の停職処分
〇Aはこの処分は重すぎると考え、裁判を起こした。
そして、裁判で以下の判断が下されました。
〇1か月の停職処分は無効である。
〇停職処分に対応する金員の支払いを命じた。
この裁判をみてみましょう。
まず、停職処分の無効についてですが、停職処分は懲戒解雇に次ぐ重い罪ということです。
しかし、Aは以前に懲戒処分歴はありません。
さらに、今回の言動について「反省している」と認められています。
そして、女子学生がLINEのやり取りに「過剰に反応したと認められる」としたのです。
Aは「コミュニケーションの取り方を反省し、今後同様の行為を繰り返さない」と述べています。
これにより「一定限度、情状酌量すべきである」と裁判所はコメントしているのです。
事例の裁判は懲戒処分の程度と情状酌量などの状況を考えての結論となったのですが、ハラスメントそのものは認められているのです。
この裁判からいえることは、「LINE等のコミュニケーションはテキストで残るので証拠としての取り上げられやすい」「懲戒処分の程度を考慮することが重要」と考えられます。
セクハラやパワハラの問題で処分する側も過剰に「感情的」になり、客観的な判断ができなくなることが見受けられます。
そして、NGの基準を提示して予防を行いましょう。