港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!
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副業、兼業を認めることはできますか?

今回は「副業、兼業を認めることはできますか?」を解説します。

 

副業、兼業を希望する労働者が増え、政府も「働き方改革」の一環としてこれを推進しています。

 

しかし、会社が副業、兼業を認めると、長時間労働を助長するなどさまざまな問題が考えられるので慎重に検討することが必要です。

 

では、副業、兼業が現状どのようになっているか?みてみましょう。

 

〇副業、兼業を希望する者は年々増加傾向にあり、副業、兼業を行う理由は、自分がやりたい仕事であること、スキルアップ、資格の活用、十分な収入の確保等さまざまである。

 

〇副業、兼業の形態も、正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主等さまざまである。

 

〇多くの企業では、副業・兼業を認めていない。

 

→会社が副業、兼業を認めるにあたっての課題・懸念としては、自社での業務がおろそかになること、情報漏洩のリスク、競業、利益相反になること等が挙げられる。

 

〇副業、兼業に係る就業時間や健康管理の取扱いのルールが分かりにくい。

 

〇副業、兼業自体への法的な規制はないが、厚生労働省が成29年12月で示しているモデル就業規則では、労働者の遵守事項に、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定がある。

 

〇裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由と考える。

 

〇各企業においてそれを制限することが許されるのは、労務提供上の支障となる場合、企業秘密が漏洩する場合、企業の名誉、信用を損なう行為などである。

 

→競業により企業の利益を害するも同様と考えられる。

 

 

このように、副業、兼業に否定的な意見もありますが、国の政策としては「働き方改革」で副業、兼業を推奨する流れとなっています。 

 

これは、AIをはじめとする技術の進化で仕事が大きく変化する可能性があり、その時に働く人が一つのスキルに頼らないために副業、兼業を進めているという話もあります。

 

しかし、現実的には情報漏洩や長時間労働の助長など、対応しなければならないことがたくさんあり、特に中小企業が及び腰です。

 

よって、副業、兼業を許可制にしたり、禁止したりしている会社が多いのも事実です。

 

しかし、副業、兼業をしたことで懲戒処分が合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められなければ、懲戒権濫用となるのです。

 

標準的な処分としては戒告、減給ということが妥当と考えらえます。

 

なぜなら、公務員のガイドラインや裁判の判断でも「即解雇」等の前例は見当たらなかったのです。

 

前例や許可なく行った副業、兼業の程度を調査して、適切な判断が必要となるでしょう。

 

これを感情的に「けしからん」として、処分を決めることのないように冷静な判断が求められるのです。

 

そのためには懲戒処分の進め方が重要となってくるのです。

 

そのためには詳細な規定を決めておくことをおすすめします。

 

 

正社員と契約社員で異なる休暇制度は問題ですか?

今回は「正社員と契約社員で異なる休暇制度は問題ですか」を解説します。

 

働き方改革法、目玉の1つである「同一労働同一賃金」は大企業が2020年4月からですが、中小企業は2021年4月からの施行となりました。

 

しかし、正社員と契約社員とで「手当」「休暇」等に「差」がある場合で、裁判となると否定されてしまう可能性が高いのです。

 

「同一労働同一賃金にかかる労働条件、正社員と契約社員の処遇が異なる差を考えるのは先で問題ない」と思っている会社は危険です。

 

なぜなら、現在、このような条件差が問題となり、多くの裁判が起こっているのです。

 

法改正はしばらく先でも、訴えられたら即対応しないといけない状況が皆さんの会社でも可能性があるかもしれないのです。

 

参考となる裁判が以下です。

 

<日本郵便(佐賀)事件 福岡高裁 平成30年5月24日>

 

〇正社員と契約社員の労働条件の差が不当として裁判となった。

 

〇正社員と契約社員は勤務日数、勤務時間でほぼ同様であった。

 

〇就業規則は正社員用、契約社員用として別で運用されていた。

 

〇正社員は特別休暇(夏期、冬期)が認められていたが、契約社員は認められていなかった。

 

〇正社員と契約社員では基本給、各種手当の取り扱い相違があった。

 

〇第1審では、手当、特別休暇とも違法ではないと判断された。

 

→裁判は高裁まで進んだ

 

そして、高裁は以下の判断を下したのです。

 

〇特別休暇については不合理な相違である。

 

→第1審の判断を覆して、特別休暇の部分は違法と判断した

 

この裁判を詳しくみてみましょう。

 

夏期及び冬期休暇が、お盆や年末年始の慣習を背景にしたものであることに照らすと、休暇が正社員に対し定年までの長期にわたり会社に貢献するというインセンティブを与えることです。

 

そして、このような時期に同様に就労している正社員と契約社員との間で休暇の有無に相違があることについて、その職務内容等の違いを理由にその相違を説明することはできません。

 

契約社員は、正社員と異なりお盆や年末年始の期間が当然に勤務日となっているわけではなく、勤務日と指定されたとしても、期間中にその全てが正社員と同じ日数の勤務に従事するとは限りません。

 

ただし、休暇が設けられた趣旨を考えれば、契約社員もこの期間中の実際の勤務の有無や、平均的な勤務日数などの要件を付加した上で、一定割合の日数を付与するという方法も考えられます。

 

 

当該期間中に実際に勤務したにもかかわらず、正社員と異なり、特別休暇が得られないというのは不合理な相違と考えられます。

 

しかし、これだけでは不合理性を否定することはできないと考えらえます。

 

そして、契約社員が正社員と同程度の勤務日数、勤務時間で就労していたとので契約社員に対し、同程度の休暇を付与するのが、相当と考えられます。

賃金体系を変えて、減額するにはどうすれば良いでしょうか?

今回は「賃金体系を変えて、減額するにはどうすれば良いでしょうか?」を解説します。

 

 

賃金に対するご相談は途絶えることはありません。

 

〇給料の仕組みを変えたい

 

〇手当を廃止したい

 

〇月給を下げたい

 

等のご相談をお受けすることがあります。

 

 

しかし、賃金を含む労働条件を会社側が勝手に下げることは「不利益変更」となり、簡単に認められないのです。

 

変更するのは「それなり」の合理性が必要となるのです。

 

ただし、賃金カットは何%まで、程度までなら可能かということに明確な基準があるわけではありません。

 

手がかりとなるのは、まず賃金カットの必要性がどれだけあるかということになるのです。

 

これに関する裁判があります。

 

<シオン学園事件 東京高裁 平成26年2月26日>

 

〇会社は自動車教習所を経営していた。

 

〇自動車教習業は構造的不況業種のため、賃金体系を変えて従業員の賃金を減額し、黒字化を目指すこととした。

 

→入所者数の減少、教習料の値下げ競争

 

〇会社と労働組合は賃金改定についての話し合いを持った。

 

→3年間で合計20回以上にわたり団体交渉を実施

 

〇給与規定を改定し、労働基準監督署に届け出て、賃金改定(減額)を実行した。

 

〇教習指導員らは、給与規定等の変更は「不利益変更」であり、無効を主張し、裁判となった。

 

そして、高裁の判断は以下となった。

 

〇平均約8.1%の賃金減額は、不利益の程度が小さいとは言えない。

 

〇自動車教習業は構造的不況業種である。 

 

〇減額後も県内の同業他社より会社は高額の賃金であった。

 

〇労働組合と団体交渉が3年間で計20回以上実施されていた。

 

〇規程等の変更で、従業員代表から意見なし。

 

〇変更についての合理性を認め、会社の主張が通った。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

まず、減額の幅については「不利益の程度は小さいとはいえない」と判断したのですが、同業他社との比較で、減額後も他より高額としています(同業他社:23~26万円、減額後39万円)。

 

変更の必要性については、業種が後続的に不況としました。

 

これは、入所者数が平成14年度では約2000名超でしたが、平成21年度では約1500名であった。

 

そして、新規採用の抑制、社長の報酬、管理職の賃金等も減額しており、車両11台も売却等をしたのです(これでも赤字は解消せず)。

 

さらに、労働組合との団体交渉も3年間で20回以上重ねており、以上の事情から賃金減額の合理性ありと判断されたのです。

 

もし、賃金体系を見直し、その後、従業員の賃金を減額せざるを得ない場合、プロセスを守り改定を行ってください。

 

就業規則だけを見直して、賃金の減額が実行できるということはありません。

 

酒気を帯びて業務についた社員を懲戒処分できるのでしょうか?

今回は「酒気を帯びて業務についた社員を懲戒処分できるのでしょうか?」を解説します。

 

皆さんの会社の就業規則の服務規律で、「従業員は、次の各項に掲げる事項を守り、服務に精励しなければならない。<略>酒気を帯びて勤務しないこと」と記載されている場合が多いでしょう。

 

これを守らないと、「服務規律違反」で懲戒処分の対象となります。

 

しかし、実際に「処分」となると、なかなか難しいとご相談をお受けします。

 

〇仕事に支障が出るぐらいであれば、処分となるのでしょうが、怪しいレベルでは対応が難しい。

 

〇自動車等の運転をする場合としない場合で、処分の差をつけて良いのでしょうか?

 

等があります。

 

 

これが運転等の業務の場合は、「口頭注意」では済まないのは容易に想像がつくでしょう。

 

では、具体的にどの程度の処分となるのか、参考となる裁判をみてみましょう。

 

<JR東海事件 東京高裁 平成25年8月7日>

 

〇新幹線の運転士Aが業務開始前の点呼を受けた際に、上司から酒臭を指摘され、飲酒の有無を尋ねられ、前夜自宅で飲酒したことを認めた。

 

〇社内基準で点呼時に乗務員の飲酒の懐疑を認めた場合、アルコール検知器の使用を指示するとなっていた。

 

→0.10mg/L以上の値が出たら、乗務不可とする規定となっている

 

〇Aは検知器で検査となり1回目:0.071mg/L、0.070mg/Lの値が検知された。

 

〇その後、複数の上司が酒気を感じたためAは乗務不可となった。

 

〇そして、会社から1日の平均賃金の2分の1を減給する旨の減給処分を受けた。

 

〇Aは、減給処分は「懲戒権の乱用」と主張し、裁判を起こした。

 

〇地裁では、懲戒事由は存在するが、過去の処分例、JR他社との比較でも懲戒権は社会相当性を欠き、濫用したものとして無効であると判断した。

 

そして、裁判は高裁まで行き、次の結論となった。

 

〇本件、懲戒処分は社会通念上相当と認められるとし、有効であるとした。

 

 

この裁判を詳しくみてみましょう。

 

高裁の判断は、酒気帯び状態で勤務した従業員に対する懲戒処分について

 

〇従業員の職種

 

〇酒気帯びの状態

 

〇実際に勤務に就いたか否か

 

〇その影響

 

〇反省の有無

 

〇過去の処分歴等

 

を総合的に見て判断するとしています。

 

 

さらに、この裁判では「新幹線の運転士」という点で「運転士の心身の状態は乗客の生命、身体の安全等に直結する」として、厳しく判断しています。

 

その他の業種でも、冒頭の「酒気帯禁止」の服務規律を持つ会社がほとんどだと思います。

 

「事務職だから関係ない」ではなくて、あまりにひどい社員がいたら、懲戒の対象とするべきです口頭注意からプロセスを踏んで対応してください。

 

36協定をオーバーする固定残業は無効でしょうか?

今回は「36協定をオーバーする固定残業は無効でしょうか?」を解説します。

 

労働基準法で、従業員に働いてもらうことのできる時間は週40時間、1日8時間と決まっています。

 

しかし、多くの会社では法定の時間で業務が収まらず、残業を実施しているところがほとんどと考えられます。

 

法定の労働時間を超えて、残業をさせる場合、会社と従業員代表とで労使協定を結んで、この協定を所轄労働基準監督署に届け出て許可となるのです。

 

このことが労働基準法36条に記載されているので、この協定書を通称「36協定」と呼んでいます。

 

そして、36協定においては、「1日」「1日を超えて3ヵ月以内の期間」「1年」のそれぞれについて、延長することができる時間を定めることができます。 

 

仮に、36協定で決めた時間を超えた固定の残業時間を設定した場合、この制度は果たして有効なのでしょうか?それとも無効となってしまうのでしょうか? 

 

これに関する裁判があります。

 

<コロワイドMD事件 東京高裁 平成28年1月27日>  

 

〇社員Aは固定残業代をもらって仕事に従事していた。

 

〇会社が業務手当は月当たり時間外労働70時間、深夜労働100時間の対価として支給していた。

 

〇Aは「月45時間を超える時間外労働をさせることは法令の趣旨に反する」「36協定に反する」ので、この時間外労働を予定した定額の割増賃金は無効であると主張した。

 

〇そして、裁判を起し、残業、休日、深夜労働についての割増賃金及び付加金を請求した。

 

〇原審(横浜地裁平成26年9月3日)では、Aの主張が退けられ控訴となった。

 

そして、高裁の判断は以下となったのです。

 

〇Aは会社の業務手当に関する規定は、労働基準法37条に違反して無効であると主張しているが、労働基準法15条及び同法施行規則5条は、固定残業代に対応する想定時間の明示を求めていない。

 

〇業務手当として支払われている額が明示されている以上、法に定める割増率をもとに、労働基準法所定の残業代が支払われているかを計算して検証することは十分に可能である。

 

〇会社は実際に計算を行ったものを書証として提出している。

 

〇会社の業務手当に関する規定は、そもそも残業代を支払う旨を定めているにすぎない労働基準法37条に違反しているとはいえない。

 

〇残業代の支払の定め方として無効であるともいえないとして会社側の主張が通った。

 

この裁判のポイントをみてみましょう。

 

まず、会社は業務手当を

 

〇月当たり時間外労働70時間、

 

〇深夜労働100時間

 

の対価として支給していると主張しました。

 

そして、Aは月45時間を超える時間外労働をさせることは法令の趣旨に反するし、36協定にも反するから、この制度は全部又は一部が無効であると主張したのです。

 

しかし、労働省告示第154号の基準(上限45時間)は時間外労働の絶対的上限とは解されず、労使協定に対して強行的な基準を設定する趣旨とは解されないと判断されたのです。

 

労災だと解雇制限で解雇ができませんが・・・

今回は「労災だと解雇制限で解雇ができませんが・・・を解説します。

 

解雇を実施したいが解雇できない期間があるのをご存じですか?

 

解雇は、会社側の都合によって労働者との労働契約を解除することです。

 

そして、会社から従業員に一方的に通知するものなのです。

 

しかし、解雇は労働者に大きな不利益をもたらすため、不公正解雇は法律で禁止されているのです。

 

また、労働者が解雇後の就職活動に困難を来たすことがないように、次の一定期間については、解雇を一時制限しています。 

 

〇業務上災害により療養のため休業する期間とその後の30日間

 

〇産前産後休業期間とその後の30日間  

 

このため、これに該当する労働者は法的に解雇ができないのです。

 

但し、上記の解雇制限期間中であっても、

 

〇打切補償を支払う場合

 

〇天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合

は解雇することができます。

 

ただし、いずれの場合であっても、労働者保護のために客観的な判断が必要ですので、所轄労働基準監督署の認定を受けずに解雇することはできません。   

 

そして、半日程度、通院した場合でもこの解雇制限に関連するのでしょうか?

 

これに関する裁判があります。

 

<日本マイクロソフト事件 東京地裁 平成29年12月15日>

 

〇社員Aは顧客企業に対し、商品のサポート、技術セミナー、ワークショップの開発等、各種支援事業をしていた。

 

〇Aは仕事の稼働率を上げるため、多くの業務を担当するため仕事をどんどん受けたが、期限が守れず、品質維持ができなかった。

 

〇Aは勝手に残業したり、休日出勤を行ったりしていた。

 

〇その後、会社はAに対し「承認の無い残業、休日出勤をしないように指示」したが、Aはこれを無視していた。

 

〇会社は、Aの「今までの状況、今回の対応等」を鑑み、解雇予告を行った。

 

〇Aは、解雇予告の3ヵ月前に「休日出勤をして左足を骨折する事故」が労災事故なので、解雇は不当と主張し、裁判をおこした。

 

そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。

 

〇解雇は有効。

 

〇会社側の主張がとおった。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

Aが解雇前に起こした労災事故についてです。

 

解雇制限について、裁判所は「制限はかからない」と判断したのです。

 

なぜなら、Aは一部休業とし、勤務実績があり、また、所定労働時間以上の実績がある日もあり「休業の事実が認められない」としたのです。

 

労働基準法19条の解雇が禁止されていますが、適用について

 

〇あくまでも業務上負傷

 

〇療養のため休業する機関

 

が前提なのです。

 

 

労働者が業務災害で労働能力を喪失している期間及びその回復に必要な30日間は解雇制限を行うということです。

 

休業とは「全部休業」を意味するのは当然のことなのです。

 

即戦力の営業マンを採用したが、期待外れだった場合は?

今回は「即戦力の営業マンを採用したが、期待外れだった場合は?」を解説します。

 

「即戦力の営業マンが中途入社したと思ったのですが・・・。」このようなお話しをよく聞きます。

 

そこで、「辞めてもらいたい」「給与を減額したい」等のご相談もよくお受けします。

 

確かに、期待をして入社した社員が、こちらの思惑と異なり戦力化できなかったら、落胆も大きいです。

 

このような場合はどんな対応策があるのでしょうか?

 

これに関する裁判があります。

 

<ニチネン事件 東京地裁 平成30年2月28日>

 

〇社員Aは中途採用で、即戦力の営業マンとして期待され入社した。

 

〇入社1ヵ月後Aの業績が上がらず、営業先の訪問件数も少なく上司から営業活動計画をまとめるように指示された。

 

〇提出書面の内容が期待とは異なったので、訪問先を増やす等の営業活動の改善を求めたが、売り上げはほとんど無かった。


〇上司は給与の減額にいて、Aの意向を確認することにつき、役員会の了解を得て、Aと2時間半程度の面談を行った。

 

〇面談内容は「このままだと雇用が継続できないので、退職してもらうか、給与半額支給か」と選択をせまり、明日までに返事が欲しいとして期日を設定した。

 

〇翌日の面談で、管理部長が「解雇予告手当を支払えばAを解雇できる、辞めるか、給与減額か二択しかない」と告げた。

 

〇Aは面談後「会社の方針に従う」として、給与が半額となった。

 

その後、Aは自ら退職し、「給与減額は違法だ」と主張し、裁判をおこした。

 

そして、裁判所の判断は以下となったのです。

 

〇給与の減額が「半額」で、従業員側の不利益の程度は著しい。

 

〇管理部長の「解雇予告手当を払えば解雇できる」との発言は、不正確な情報を伝え、退職か?給与の減額か?の選択をせまり、翌日までに決断するのは、判断の時間が少ない。

 

〇本件給与の減額の判断はAの自由な意思に基づいてされたものと認められず、減額は無効である(会社側の主張は認められない)。

 

この裁判では、会社側は給与の減額は本人の「自由な意思に基づく同意の下でされたものであり、有効である」と主張しました。

 

しかし、管理部長からの不正確な情報、意思決定は翌日にもとめるなど、十分な熟慮期間を与えられない中で、選択を迫られた形となったので、退職を回避し、今後の業績で給与が増えるとされることを期待して減額を受け入れたと認められます。

 

給与の減額を行うことに「社員の自由な意思に基づく同意を得る以外に、給与減額を行うことができる法的根拠がなかった」のです。よって、この「本人の自由な意思に基づく同意か否か?」が争点となったのです。

 

不利益の程度の差はありますが、ルールを作成し、間違いの無い運用を実施すれば、給与減額も法的に有効となるのです。

 

ただし、「単に数字が悪いから下げろ」はできません。

 

減額の程度、ルール化を行い、厳密に運用することが求められます。

 

定額残業制度で実残業時間数の明示は必須でしょうか?

今回は「定額残業制度で実残業時間数の明示は必須でしょうか?」を解説します。

 

定額残業制度の導入は、企業規模を問わず浸透しています。

 

そんな中、定額残業制度の法的要件について、質問を受けるケースが多いです。

 

その要件は以下となります。

 

〇明確区分性(通常の労働時間の賃金に当たる部分と残業の賃金が明確に区分されていること)

 

〇対価要件(割増賃金の対価として支払われていること)

 

〇差額支払の合意(定額部分を超える割増賃金の差額を支払う合意)

 

しかし、昨今の労働基準監督署の指摘も加味すると、つぎの項目もクローズアップされます。

 

〇固定残業に該当する労働時間

 

〇固定残業に該当する賃金

 

この両方が明確になっていないと固定残業制度そのものが認められない可能性が高くなるともいわれています。

 

この判断に疑問も多く、果たして、労働時間が明記されていないと定額残業制度は無効となってしまうのでしょうか?

 

これに関する裁判があります。

 

<日本ケミカル事件 最高裁 平成30年7月19日>

 

〇薬剤師として勤務していたAは「月額給与」と「業務手当」を支給されていた。

 

〇採用確認書には「業務手当はみなし時間外手当である」と説明され、「時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」との記載があった。

 

〇賃金規程にも、業務手当を「時間外手当の代わりとして支給する」と明記し、会社と各従業員の間で確認書が交わされていた。

 

〇原審(東京高裁 平成29年2月1日)では、「業務手当が何時間分の時間外手当になるのか伝えられていない」等を理由に業務手当は割増賃金として認められないとした。

 

そして、最高裁まで裁判は続き、以下の判断が下されたのです。

 

〇雇用契約書、確認書そして、賃金規程において業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨の記載がある。

 

〇会社と各従業員との間で作成された確認書で、業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載され、業務手当が時間外労働等に対する対価として位置づけられていた。

 

〇業務手当は約28時間の時間外労働に対する割増賃金に相当するものであり、実際の時間外労働等の状況と大きくかい離するものではない。

 

〇業務手当は時間外労働等に対する対価として支払われていたと認められる。

 

→会社側の主張が通った(高裁の判断と逆の結論となった)

 

賃金のうち割増賃金がその部分なのかが明確であることは必要ですが、定額残業代として、月例給の一部を残業代としたり、手当で毎月一定額を支給する方法も可能であることがはっきりしました。

 

但し、あらかじめ雇用契約書や賃金規程に明示されなければ何の効力も持たなくなるので注意が必要です。

 

産業医の診断で会社が判断する場合のリスク

今回は「産業医の診断で会社が判断する場合のリスク」を解説します。

 

 

精神疾患、とりわけ「うつ病」の社員の取扱いについてのご相談は後を絶ちません。

 

業種、業態、企業規模を問わず、いろいろな会社が精神疾患の問題で悩んでいます。

 

この問題で特に難しいのが復職の判断についてです。会社の思惑で「復職させたくなく、退職になりませんか?」と相談されるケースも多くあります。

 

しかし、「復職させたくない」という意見が出る場合は、冷静な判断ではない場合がほとんどです。

 

感情的に「戻したくない」「戻られると厄介だ」との感情から判断される場合で、医学的な判断から会社がアプローチしていない場合が多いです。

 

これに関する裁判があります。

 

<神奈川SR経営労務センター事件 横浜地裁 平成30年5月10日>

 

〇従業員Aがうつ状態、従業員Bが適応障害で休職していた。

 

〇それぞれの休職期間が満了となるので、それぞれの主治医の診断で、診断書が提出され「復職可」となっていた。

 

〇会社は産業医の判断もあおぐとのことで、産業医に診断してもらい、その結果2名とも「復職不可」となった。

 

〇会社は産業医の判断で2名を「自然退職扱い」とした。

 

〇それぞれの従業員は「この判断はおかしい」として裁判に訴えた。

 

そして、裁判所の判断は以下となったのです。

 

〇退職時の健康状態は2名とも「従前の業務が行えるまで回復」しており、休職事由は消滅している。

 

→主治医の判断は信用できる

 

〇就業規則に「休職事由が消滅した場合は復職する」となっている。

 

〇従業員側の主張が通り、会社が敗訴となる。

 

 

この裁判でのポイントは「産業医の意見の信用性」についてです。

 

産業医の証言等では、従業員らの状況は「うつ病、適応障害が寛解し職務を行えない状況ではない」とのことでした。

 

そして、産業医が職場復帰不可とした理由は、休職前の状況からすると、職場の他の従業員に多大な影響が出る可能性が高いというもので、これは、病気の状況とは関係のない事情だったのです。

 

産業医はこの2名について、冷静に判断できる状況ではなく、組織の一員としての倫理観や周囲との融和意識に乏しいことに加え、職場の状況に原因があるとしたのです。

 

この2名はいままで、他の者に対し、誹謗するのに終始したと判断していたのです。

 

しかし、これらの職員間のトラブルは医学的な判断とは異なり、裁判所はこれを理由に産業医の判断を採用できないとしたのです。

 

この裁判でも分かるように、診断書に「復職不可」となっていればそれを理由に復職させないと判断するのはリスクが高いのです。

 

精神疾患等で休職させた社員を「戻すのか」「戻さないのか」について、医者の診断書は必須ですが、会社が判断する場合、疑問がわいたら「産業医、指定医」などのセカンドオピニオンは必要です。

 

そして、意見にギャップが出たら、そのギャップについて、会社として調査し、それから判断すべきなのです。

 

事業場外みなし労働時間は、活用できるのでしょうか?

今回は「事業場外みなし労働時間は、活用できるのでしょうか?」を解説します。

 

 

出張や外回りの営業のように事業場外でなされる業務は、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難になる場合がしばしばあります。

 

この場合、労働基準法は、合理的に対処するために、労働時間をみなし制により算定することができるようにしました。

 

すなわち、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときには、所定労働時間労働したものとみなされます。

 

この制度の第一の要件は、事業場の外で労働がなされることです。

 

労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし計算がなされます。

 

これによると、一部事業場外労働において所定労働時間みなしを行う場合は、原則として、事業場外労働に対応する部分の所定労働時間がみなしの対象となると考えられます。 

 

たとえば、午前中は自宅から営業先に直行し、午後4時以降事業場に戻って内勤業務を行う場合は、午後4時までは所定時間労働したものとみなされ、それ以後は実労働時間で計算して合計が労働時間となるのです。 

 

次に、みなし制を適用するためには、労働時間を算定しがたいことが第二の要件となります。

 

労働時間を算定しがたいかどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより判断されます。

 

行政解釈(昭63.1.1基発1号)によれば、

 

〇業務を行うグループの中に時間管理者が含まれる場合

 

〇無線やポケットベル(当時は携帯電話がまだ普及していません)により随時使用者の指示を受ける場合

 

〇訪問先や帰社時刻などにつき具体的な指示を受けてその指示どおりに業務を行い、その後事業場に戻る場合

 

以上はこの要件を充たさないとされています。

 

 

最近では携帯電話や携帯端末を使う従業員がほとんどですが、これらにより随時指示を受ける場合も同様と考えられます。

 

したがって、厳密に言えば現在では、外回りで働く営業職やセールス職の労働者のほとんどはみなし制の適用対象とはならないことになります。

 

しかし、外勤の営業マンが頻繁に会社に連絡できない場合等はどうなってしまうのでしょうか?

 

ナック事件(東京地裁 平成30年1月5日)では、具体的な業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、業務に関する指示及び報告の方法、その実施の態様等に照らして、勤務の状況を把握することは、煩雑な事務で不可能な状況でした。

 

よって、会社が営業マンの事業場外労働の状況を把握することは困難であったと判断されたのです。

 

今の時代、情報機器の発達で事業場外労働の要件である「労働時間を算定し難い」ことがあり得るかが問われた裁判です。

 

この裁判では「携帯電話等を所持」していれば、そのことのみで「労働時間を算定し難い時」に当たらないということです。

 

皆様の会社ではいかがでしょうか?

 

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