厳しい叱責と長時間労働が結びついたら・・・ | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

厳しい叱責と長時間労働が結びついたら・・・

今回は「厳しい叱責と長時間労働が結びついたら・・・」を解説します。

 

厳しい叱責はパワーハラスメントとして取り扱われることが多くなってきました。

 

しかし、「厳しく指導する」ことがパワハラではありません。

 

業務に関連することについての叱責や注意は「多少、荒い言葉」でもパワハラに認定されるケースは少ないでしょう。

 

しかし、長時間労働等の過重労働と結びついて、精神的に追い詰めたらパワハラの可能性が高くなるのです。

 

これに関する裁判があります。 

 

<岡山県貨物運送事件 仙台地裁 平成25年6月25日、仙台高裁 平成26年6月27日>

 

〇新入社員が連日の長時間残業(月100時間超)をしていた。

 

〇ミスが発生し、所長から厳しい叱責を受けていた。

 

〇ミスが直らないので、所長は「解雇の可能性」を示した。

 

〇その後、精神疾患を発症し、自殺した。

 

〇遺族は会社には安全配慮義務違反、所長には不法行為で裁判を起こした。

 

→約1億2千万円の損害賠償金額を請求

 

そして、第一審では以下となったのです。

 

〇自殺5か月前から月平均100時間程度か、これを超える恒常的な残業があり、自殺前3か月間は月平均129時間の残業だった。

 

〇所長による叱責や新入社員としての緊張や不安が心理的負荷を増加させた。

 

〇これにより適応障害を発症したが、その後も長時間の残業があった。

 

〇これらの結果、正常な認識、行為および抑制力が阻害された状態となり、自殺した。

 

〇会社は新入社員に長時間労働を強いた。

 

〇業務の負担や職場環境などに何らの配慮をすることなく、残業状態を漫然と放置。

 

〇所長には人員配置の権限があったとは認められない。

 

〇会社「のみ」に対し、合計約6,900万円の支払を命じた。

 

この結果を受け、遺族は「所長の責任」を追及すべく控訴したのです。

 

そして、第二審では以下の結果となったのです。

 

〇所長が新入社員に、勤務時間を実際より短く申告するよう強要した。

 

〇他の従業員の前で繰り返し「ばか野郎」と怒鳴りつけた。

 

〇その結果、長時間残業を強いられ、パワハラを受け自殺に至った。

 

〇所長のパワハラも認めた。

 

〇会社と所長の「両方」に約6,900万円の支払いを命じた。

 

第一審の結果は「会社の安全配慮義務違反」を認めましたが、所長のパワハラは認められませんでした。

 

しかし、第二審では所長のパワハラが認められ、所長に対しても支払い命令が出たのです。

 

この高裁の判決で、パワハラ認定のポイントとなったのが「継続的な叱責」です。

 

恒常的、日常的な発言、行為がパワハラとなるということです。

 

 

時間外労働時間がこれだけ多いと、それだけで労災と判断され、また、会社の安全配慮義務違反を認定される可能性が高くなるのです。

 

会社側としては、従業員の労働時間が過大になっていないか、常に配慮すべきです。